第106話:預金と光(24時間の金庫と、両替商の終焉)
「物流」を握ったケニーが次に目をつけたのは、この世界の歪んだ「金」の流れだった。
1. 守銭奴たちの反乱
王国と帝国の経済を牛耳ってきた大銀行家や金貸したちが、ケニーの「中立物流特区」に危機感を抱き、一斉に牙を剥いた。
「ケニー殿、調子に乗りすぎだ。物流は譲っても、金の貸し借りと保管は我ら特権階級の領分。……明日から君の店への融資をすべて止め、硬貨の流通を制限させてもらう!」
彼らは高笑いし、ケニーの「息の根」を止めたつもりでいた。
2. 「魔導キャッシュレス」の衝撃
だが、ケニーは動じなかった。
「融資? いりませんよ。うちは今日から、自前で『ケニー・バンク』を開設しましたから」
ケニーが発表したのは、800店舗すべてを窓口とする、世界初の「24時間営業銀行」だった。
客は店内に設置された「魔導預金機(ATM)」に手持ちの硬貨を入れるだけで、自分の「魔導カード」に数値が記録される。
「重い金貨を持ち歩く必要はない。24時間、どの村のコンビニでも引き出せるし、買い物もカード一枚で済む。……これ、便利だと思いませんか?」
3. 信頼の逆転
銀行家たちは鼻で笑った。「どこの馬の骨とも知れぬ店主に、誰が金を預けるものか!」
しかし、現実は残酷だった。
民衆が信じたのは、重厚な石造りの、昼間しか開かない傲慢な銀行ではなく、夜道でいつも温かい光を放ち、毎日カップ麺を提供してくれる「800のコンビニ」だった。
「銀行に預けても、戦争が起きれば没収される。だが、ケニーの店は『中立』だ。あそこに預ければ、帝国に行っても王国に行っても金が使えるんだぞ!」
預金は津波のようにケニーの元へ集まり、既存の銀行からは一気に資金が流出した。
4. 49歳の「経済封鎖」
慌てて泣きついてきた銀行家たちを、ケニーはレジ越しに冷たく見据えた。
「……人を管理するのはしんどいですが、数字を管理するのは実に快適ですね」
ケニーは、かつて自分を苦しめた「不誠実な従業員」を裁いた時のように、利権に溺れた特権階級を静かに切り捨てた。
「これからは私の発行する『魔導ポイント』が、この世界の共通通貨です。……乗り遅れたくないなら、今すぐお宅の金庫を空にして、うちに預けなさい」
コンビニは、ついに「国家の財布」をも飲み込んだ。
深夜の店舗、ATMの前で不器用そうにカードを操作するロイを見ながら、ケニーは確信した。
(……これで、金のために争う必要もなくなる。すべては私の『棚割』と『残高』の中で完結するんだ)
24時間の灯火は、今や世界の富をも照らす聖域となっていた。




