第107話:防犯の結界(消える夜盗と、不可視の警備)
ケニー・バンクの成功は、旧勢力の銀行家たちだけでなく、各地の領主やならず者たちの欲望に火をつけた。
「コンビニなんて、しょせんはただの店だ。夜中に数人で押し入れば、金塊など奪い放題だろう」
彼らはそう高を括り、800の灯火を「無防備な金庫」だと見くびっていた。
1. 深夜の強襲
月明かりのない夜。国境付近の第502支店に、重装備の私兵団が押し寄せた。狙いは店内に設置された「魔導預金機(ATM)」だ。
「壊せ! 中の金貨をすべて吐き出させろ!」
彼らが斧を振り下ろし、店のガラスを割ろうとした瞬間――。
空気を切り裂くような**「高周波の警告音」が響き渡り、店全体が眩いばかりの「防犯魔導灯」**に包まれた。
2. コンビニの「要塞化」
「な、なんだこの光は!? 目が開けられん!」
狼狽する夜盗たちに対し、店舗の屋根から無数の「魔導追跡弾」が放たれた。それは一度付着すれば、魔法で浄化しない限り数ヶ月は消えない、特殊な発光染料だった。
さらに、店内の魔導カメラ(記録機)は犯人たちの顔を鮮明に捉え、瞬時に800全店舗の「指名手配ボード」へと転送した。
「……無駄だ。うちの店で悪事を働けば、この世界のどの街のコンビニにも二度と入れない。つまり、飯も食えず、金も引き出せないということだ」
ケニーは司令室で、冷徹にその映像を眺めていた。
3. 「警備」という名の新商品
ケニーは、単に守るだけでは終わらなかった。
彼は、職を失っていた元騎士や冒険者たちを組織し、**「24時間巡回警備(セコムのような組織)」**を立ち上げた。
「ロイ。これからは店を守るだけじゃない。この警備網を、付近の住民や商店にも『サブスクリプション(月額制)』で販売するんだ」
「警備を……売るんですか?」
「そうだ。ケニー・バンクに預金している者なら、格安で守ってやる。……治安を買えるのは、うちの客だけの特権だ」
4. 49歳の「平和な支配」
暴力で金を奪おうとした者たちは、今や「コンビニのブラックリスト」に載り、社会的に抹殺されていた。一方で、ケニーに守られた街は、異世界で最も安全な場所となった。
「……人を疑うのはしんどいが、システムで『悪事のコスト』を跳ね上げるのは、実に合理的だ」
かつて従業員のサボりに頭を抱えていた49歳の男は、今や「防犯」という概念そのものを商品に変え、国家の軍隊よりも頼られる「安全の守護者」となっていた。
深夜、自ら最新の防犯ゲートを確認するケニーの横で、ロイが感心したように呟いた。
「オーナーの作る店は、どんどん世界を優しく変えていきますね」
ケニーは苦笑いし、指先でATMの表面を撫でた。
(……優しい世界を作るためじゃない。ただ、安心してレジを打てる場所を守りたいだけさ)
800店舗の灯火は、もはや夜道を照らすだけでなく、悪を寄せ付けない「絶対的な結界」へと進化していた。




