第105話:生命の配送網(800の血脈と、絶対不戦の誓い)
ケニーが提示した「中立物流特区」構想。それは、王国と帝国の間に引かれた実質的な「コンビニの国境線」だった。800の店舗を結ぶ配送ルート上では、いかなる軍事行動も許されない。
1. 「食べ物」以上の価値
特区が機能し始めると、コンビニの役割はさらに変質した。
「オーナー、第422支店付近の村で流行り病が発生しました。……騎士団の派遣は間に合いませんが、我々のルートなら、明朝までに特効薬を全戸に届けられます」
ソラリスの報告を受け、ケニーは即座に指示を出した。
「『魔法の器』の配送便に、コストナーが調合した薬を載せろ。空きスペースは全部だ」
800店舗という網の目は、国家の行政すら届かない辺境に、一晩で物資を届ける「世界の血管」となっていた。
2. 皇帝と王の「依存」
特区内では、略奪や戦火に怯えていた民たちが、24時間灯るコンビニの明かりを頼りに集まり始めていた。
「……ケニー殿。我が領民が、そちらの店の薬で救われた。感謝する」
王国の王も、帝国の皇帝も、今や自分の国民を救うためにケニーの物流網に頼らざるを得ない。
「感謝は不要です。ただ、その薬の代金と配送料は、次の『物流拠点建設』の土地代として相殺させていただきますよ」
49歳の経営者は、冷徹に、かつ確実に、国家の土地を「コンビニの敷地」として切り取っていった。
3. ロイとの再会
そんな喧騒の中、ケニーはかつての「澱み」を払拭したあの店に立ち寄った。
そこには、店長として凛と立ち、新入りを指導するロイの姿があった。
「オーナー! お疲れ様です。……見てください、今じゃ帝国軍の偵察兵も、ここではおとなしく掃除を手伝ってから帰りますよ」
ロイが指差す先では、かつて反目し合っていた両国の兵士たちが、同じ制服を着て品出しを手伝っていた。
「……ここでは、誰も『敵』じゃない。ただの『客』か『スタッフ』だもんな」
ケニーは、少年の成長と、店が作り出した奇妙な平和に、心の底から安堵した。
4. 49歳の「次なる野望」
深夜、ケニーは800の灯火が灯る地図を広げた。
国家を操り、平和を強制し、病すらも物流で解決する。
「……しんどいことも多いが、これだから商売はやめられない」
ケニーの視線は、まだ明かりの灯っていない「未開の地」へと向けられていた。
「ソラリス。次は、この世界の『金』の流れをすべてコンビニに集約させる。……魔導決済、あるいは『共通通貨』の導入だ。銀行も国も要らない世界を作ってやる」
800店舗の凱歌はまだ終わらない。
経営者ケニーの「ライフワーク」は、世界の形そのものをパッカーンと作り変えるまで、止まることはなかった。




