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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第二章【大航海先に立たず…編】
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第四十八幕【いつもの車内泊】

水平線に沈む夕日。

その陽の光をバックに海岸沿いの原っぱに一台のピンク色の二人乗り軽自動車【取り立てくん】が泊まっている。


「トーヤマ先輩〜。タイヤの空気、入りましたよー!」


空気入れを片手に後部ガラスからひょっこりと中を覗くセリザワ。


「おっす〜。パンクじゃなくて良かったよ〜。"上"に修理の申請出すの面倒臭いからね〜」


トーヤマは運転席で自分の足を台にしてノートに何かを書き留めている。


「トーヤマ先輩…また漫画描いてるんですか?私しか読まない漫画」


セリザワは後部ドアを開けて空気入れを納めた後、助手席に戻る。


「んー?違うよ〜。ウチら"KHK・徴収課"のマスコットキャラクターを考えていたのだ」


「へぇ〜?どんなのですか!見たいです!」


トーヤマはそう言われ、バン!と開いたノートを見せつける。


「ドヤ!」


そこには、棺桶から手足が生え、ギョロッとした目玉がつき、ポカンと開けた口から何故か吐血しているキャラクターが描かれていた。

挿絵(By みてみん)

「…何ですかコレ…」


「名付けて"りんじゅうくん"だよ!可愛いっしょ!"ポプエゲ"っしょ!」


「なんですか"ポプエゲ"って…」


「"ポップでエゲツない"の略だよ!ウチが創った造語だよ〜」


「却下で!」


「ガーーーン!!!何でー!?」


「気持ち悪いですって!!なんで血吐いてるんですか!」


「ソレが良いんじゃん!!ポプエゲでしょー!?ウチは絶対この子を有名マスコットにして見せるんだ!」


「はぁ。トーヤマ先輩がそこまで言うなら止めないですけど…」


そんな事を話していると次第に辺りは暗くなってくる。

車内のライトを付けて二人は他愛もない会話をしたり…おにぎりを頬張ったり…ボードゲームをしたり…


それがいつもの二人。

暗くなると車中泊。眠たくなるまでのんびり時間を潰すのがお決まりだった。


「そう言えば…次の滞納者の名前…どっかで聞いた事ないですか?………あ、陣地拡大です!」


セリザワはボードゲームのコマを動かしながら言う。


「んー?ダル…クスだっけ?そうかな?ウチは聞いた事ないけど…。っと…ここで防衛カードを使うっと…」


トーヤマは手持ちのカードを盤面に出しながら言った。


「ま、先輩は世間の事とかほんとに興味ないですもんね。知らないのも無理ないですね〜…」


「お?馬鹿にしたね〜?そんな後輩ちゃんには…こうだ!!ベシッ!本体ダメージ!!」


トーヤマはセリザワの頭にチョップをする。


「あ!ダメですよトーヤマ先輩!本体攻撃は貫通タイプのカードじゃないと!」


「あれ?そうだっけ?じゃあ貫通カード4枚出し〜アチョアチョアチョアチョ〜はい、死亡ー」


トーヤマは4回セリザワの頭をチョップする。


「ちょちょちょっと!まだトーヤマ先輩のターンじゃ………さては飽きましたね?」


「んー?何が〜?フワァ〜」


トーヤマは大きなアクビをしている。


「眠たいんですね?………もう寝ましょうか」


セリザワはヤレヤレと一息つき、ボードゲームと着ていた背広を脱いで後部にしまう。代わりにブランケットを取り出し一枚をトーヤマに渡した。


「今日もお疲れ様でしたトーヤマ先輩…明日も厳しく取り立て…頑張りましょう。ふぁ〜」


セリザワも大きくアクビをつき、赤いネクタイを緩める。

車内のライトを暗めのほんのりオレンジ色のライトに切り替えた。


「…とは言っても…目的地はまだまだ遠そうだよ…海を渡らないとだし…」


トーヤマが声のトーンを落として目を瞑りながら言った。


「そうですね…取り立てくんが乗れる船が…あれば良いですけど…」


…と、セリザワも目を瞑りながら返す。


小さい二人乗りの軽自動車でシートは倒す事が出来ないので、二人は座った状態でいつも眠っていた。慣れたものでそれでも問題なくいつも寝むれてしまっていた。


「ねぇ…後輩ちゃん…何かお話して…」


「なんですか急に…」


「お話して〜…じゃないと寝れないよ〜…」


「いつもそんなの無くても寝てるじゃないですか…」


「お話〜…何か面白い話〜…」


「はいはい…え〜と…そうですね…」


セリザワは目を瞑りながらも何を話そうか決めて口を開く。


「トーヤマ先輩って寝た時…自分の指おしゃぶりしてるの自覚ありましたっけ?」


急にそんな事を言われ、トーヤマはガバっと身体を起こす。


「えっ!?」


「そうですよ〜…トーヤマ先輩、いっつもチューチュー指おしゃぶりしてるんです」


「嘘だ!」


「ほんとですよ…それに…人差し指と中指の2本ですよ?…フフ…少し変わってますよね。普通親指じゃないですか?」


「絶対嘘だよ!」


「ほんとですって…なんなら朝起きたら指見てみて下さいよ…歯型付いてるハズですから…」


「い、いつから?」


「トーヤマ先輩と一緒になって最初の夜から既に…あ、面白い話はここからなんですけど…」


「その先聞くのめちょ怖いんだけど…」


「ついこの間…フと夜中に目が醒めたんです…そしたら案の定トーヤマ先輩、チューチュー言わせてて…」


「……………」


「私…その指外してみたんです。そしたらトーヤマ先輩凄くうなされ始めて…フフフ」


「や、やめてよ!」


「私…ちょっと興味で自分の指を近付けてみたんです…そしたらトーヤマ先輩…今度は私の指チューチュー吸い出して…」


「はい嘘ー。絶対嘘」


「ガッチリ吸い付いちゃって…朝まで離されなかったんですよ…この間私が人差し指と中指に絆創膏を貼ってたのはそのせいで…」


「……………」


「可愛かったなぁ〜…あの時のトーヤマ先輩…赤ちゃんみたいで…フフフ」


「…ウチ今日絶対寝ない」


「なんでですか!可愛いんだから…良いじゃないですか…」


「やだよ恥ずかしい!!え、ほんとに?ほんとにウチ、指しゃぶりしてるの?」


「はい〜…」


「衝撃の事実なんだけど!!」


トーヤマは顔を手で覆ってフルフルと首を振る。


「フフ…大丈夫ですよ………私達の間だけの秘密です………くぅ………」


セリザワはそのまま寝落ちしてしまった。


「ちょ、ちょっと!そこで寝ないでよ!」


そんなトーヤマの声が虚しく車内に響くのだった。




続く…

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