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1018A:真実のその先にあったものに、我々は手を触れてしまった

 恐るべき結論が出た。この事故は機械的故障でも、テロでも、ストライキでもない。機関車を作った人間、そして、この機関車をこの樺太に運んだ人間に全ての責任があった。


「樺太は、本土と比べて、マイナス20℃ほど気温が低い。我々はそれを想定していなかった。我々の責任だ」


 井関は、責任を痛感していた。水野も同じく、深い悔いに包まれていた。小林もまた、思うところがあるようで黙りこくっている。

 だがその中で、笹井だけが怪気炎を上げた。


「まだ、決まったわけじゃない!」


 この期に及んで、笹井だけが現実を拒否していた。


「お前、まだそんなことを……!」


「だってそうだろう! 我々はまだ事実の一側面を見たに過ぎない。結論は早計だ」


「ということは君は、この事故の原因がテロだと思っているのか」


「ああそうだ。そう言う話だったじゃないか」


「では、証拠はあるか」


 井関は、笹井の目をまっすぐに見据えてそう言った。


「な、なんでそんなことを聞くんだい?」


「そりゃそうだろう。犯人探しには証拠が必要だ」


 笹井は目を泳がせながら答える。


「そう言う約束だっただろう! これはテロということにして、片づけると!」


「だから、そんな主張をしていると?」


「ああそうだ!」


 井関は、笹井の肩を優しく叩いた。


「同じ会話を、したな。もっとも、立場は逆だったが」


 笹井はハッとした顔になる。


「もしこれが、君以外の誰かの主張であったならば、ボクは納得した」


「なら……!」


「だが君はダメだ。何故かわかるかい?」


 井関は笑いかけた。


「君が親友だからだ。ボクには全てわかる。君がウソをついているということぐらい。まるで君が、ボクの嘘に気が付いたように」


「お前に……、お前たちに何が分かる! お前たちの中で一番真っ先に出世をしたワシの、何がわかるって言うんだ!」


 激昂する笹井に、小林はピシャリと、それでいて優しく声をかけた。


「言葉にしてくれなきゃわからんよ。だが、言ってくれれば全てわかる。君が井関の苦しみを見抜いたようにね」


 最後に、水野が彼の手を握った。


「もう、いいでしょう」


 笹井は一粒のしずくを瞳から流した。それから、意を決したように、その胸元にずっと仕舞い続けていたものを叩きつけた。


「お前、それは……」


 それは、辞表だった。驚いた小林が見上げた先には、決意を固めた笹井の顔があった。


「ワシは今から、真実を告げる」

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