第9話
今回は前回の話と違い、メルヘンな感じです。宜しくお願いします。
夜にもう1話、投稿予定でいます。
養子先で酷い目に遭って欲しくて、私は子供を産んだ訳じゃないのです。
ラシェッタ様は、私の初恋相手で、私が結婚相手に絶望した時に現れてくれた時には、どれほど、嬉しかったでしょう。
その初恋相手が、私との間に子供が生まれた時は、それはもうとっても喜んでくれました。
その喜んだ姿も、私にプロポーズをしに徹夜で駆けつけた事も、彼の本心だったのだと思いますわ。
まさか、それら全てが彼の祖父母の計略による差し金だとは、ラシェッタ様も私も知らずにいて、踊らされましたけれど。
彼の愛情が、私以外の何人にも向けられていて、ダイヤモンドのような愛情が、本当は人工のダイヤの様に偽物であったと知った時、私の世界から白と黒以外の色が消えました…。
白黒だけになった私の世界を再び色付かせてくれたのは、夫となっていたダブラン様でしたわ。
だからこそ、トノ様に、ダブラン様には知らせずに、ラシェッタ様との間に産まれた我が子を、息子を助けて欲しいと、こっそりとお願いしました。
ダブラン様が養子に出した息子の事これからもを気にしない様にしてほしかったのです。そういう理由から、ダブラン様には内緒で、不幸な事故で亡くなられたラシェッタ様の家へ、血のつながっている息子をラシェッタ様のいた侯爵家に連れて行ってもらったのです。
ダブラン様と私の間には、この2年で、双子の男の子が産まれましたわ。
今も、私のお腹の中には、ダブラン様との子供がいますの。
ラシェッタ様との間に産まれた息子が侯爵家に引き取られてから半年が過ぎました。
あの子の事も心配ですけれど、私にはもうどうする事も出来ないのです。今は、お腹の中の子の事を考えて過ごさなくてはならないわ。
お腹の中にいる子の性別は生まれるまで不明ですのよ。
この世界では前世の様に性別が分かるような器具や機械がありませんの。
産まれてくる子の性別が、ある種の賭け事の対象になる位なのですわ。殿方は賭け事がお好きなのね。
お爺様は、今度は女の子がいい。と言って、女の子に賭けているんだとか。
ダブラン様は、次も男の子でいいよ。と男の子の方に。
トノ様は、女の子が生まれたら、我が家の孫の嫁にしたいので。と双子を妊娠している時も、事あるごとに言っていたので、今回も女の子に賭けているんですって。
今日も、ダブラン様と私に会いに来てくださったトノ様と、そのご夫人とのお茶会でしたの。
お2人のように、仲良く年を重ねてゆきたいと思わせる仲の良さを毎回、見せられますけれど。
そんな穏やかな時間が過ぎて、お茶会から帰ろうとしていたトノ様が「忘れ物をしたんで、取りに行ってきます。」と告げ、私の所へいらっしゃいましたわ。
その時に、ニコニコとしたトノ様から、ダブラン様には聞こえないように私だけに告げられました。
「あの侯爵家の嫡男は、元々結婚する気がなかったようで、前々から弟の子を養子にするつもりでいたのだそうです。今回、義息子が出来て、最初は戸惑っていたようですけれど、今は親子で幸せそうに過ごしていましたよ。
どこからどう見ても、親子にしか見えないです。甥ですからね、外から見るとそっくりなんですよ。
義息子も父親となった方によく懐いて、近頃では可愛らしいわがまままで言うようになったとか。」と、トノ様が言ってくれましたの。
家に無用な争いを起こさないために、ダブラン様との間に産まれた子達が不公平にならないように、と思って、手放した我が子の事をこの先、心配せずに済んだ安堵からか、涙が出そうになりました。
でも、ダブラン様が「どうしたんだい?」と心配するのですが、一言でも話したら涙がこぼれそうで、何も言えなかったんですの。
怪訝そうなダブラン様に、「ちょっと嬉しい話を伝えていただけさ。ダブランが心配するほどの事じゃないんだ。世間話さ。」とトノ様が煙に巻いて下さいました。
「それならいいけれど。トノは、ジョークがキツイ時があるからね。心配したんだ。」
「何でもないですわ。ご心配をおかけしました。大丈夫です。」
何とか、そう言えた私を気遣うダブラン様の目付きではあったけれど、そこで話を切り上げてくださったの。
それは、知っていても知らない振りをしてくれるダブラン様の優しさだって知っていますもの。私にこの後、深く追求されないのも分かっていますわ。
ダブラン様から与えられる愛情で、私の心も身体も健全な状態になりました。ラシェッタ様の事は、過去の出来事だと思えるようにもなれたのですから。
ただ、半年以上前に起きた出来事、ラシェッタ様が見受けした娼婦達と一緒に亡くなったのは、不幸な出来事でしたけれど、その話を聞いても、私はあんまりショックではなかったのです。
いつか、ラシェッタ様にはそんな日が来るのではないかと私がどこかで思っていたのと、私がダブラン様と一緒に過ごすようになって、夫婦での相互の愛情を感じられているようになったからだと思えましたの。
復縁を望むラシェッタ様の所へ戻りたいと思う気持ちさえ、湧きませんでしたわ。
人によっては、それを薄情だと思うのでしょうが、彼は、私を通して他の人を想っていたのだと理解していたので、もう私には何も出来ないと知っていたから、復縁する気が起きなかったのです。
ええ、そうなんです。ラシェッタ様が私と一緒にいた時も、私を抱きしめていても、どこか違う所を見ているような視線だった事に、女性である私が気付かない程の鈍感ではなかったのですわ。
彼が誰を捜していたのかは今はもう知りたいとも思いませんが、私が彼の想い人のうちの一人だっただけなのですわ。
前世でも、女性の恋は上書き保存で、男性の恋はファイル保存でしたっけ、そんな言葉があったような気がします。
女性は恋をしても、別れて次の恋をしたら、以前の事を上書きで書き換えて消して、過去を無かった事に出来るけれど、男性は、ずらーっとファイルの様に並べて残すだけ。恋をしたり、それまでに付き合った女性を並列に保存すして、いつまでもその女性達が自分を好きでいてくれているのだと勘違いしている。でしたかしら?
そんな都合の良い話なんてある筈ないのに…と、初めて聞いた時に呆れた覚えがありましたわね。懐かしい。
それからまた数か月後には、お爺様とトノ様待望の女の子を私は生みましたわ。
ダブラン様も、生まれてすぐから娘にでろでろで、「嫁には出さん!」と宣言していましたの。後日、私の出産のお祝いに来てくださったトノ様が「孫嫁…。」と呟きながら、涙目になったのも良い思い出ですわ。
その娘が10歳を超える頃、私は、前世と同じように、酷い頭痛で動けなくなり、亡くなったようですの。
だって、あり得ないような光景が今、私の見ている下の方で、起きているんですもの。
初めて見ましたわ。自分の葬式をしている所を上の方から眺めるなんて。
私の身体は半分以上透けていますし、宙に浮いているんですもの。不思議!ワクワクしますのよ。
でも、家族が泣いている姿を見るのは悲しいわ。長男次男、長女の娘が涙をこらえつつ、頑張っていたようだけれど、涙が止まらないようね。ああ、次女がダブラン様の足から離れずに泣いていますわ。三男も、四男も声を上げて泣いてますわ。ダブラン様も泣いてくださっていますのね。
今世は、前世よりも短い時間でしたけど、前世よりはよっぽど幸せに生きていけたのではないかと思いますの。
空が青くていい天気。家族が幸せになれますように。
そうして、ふっと気が遠くなったので、消えたのだと思ったんですが…。
今日も晴れていますわ。今日は、次女の結婚式でしたのね。トノ様の所の孫嫁になるんでしたっけ。キレイな姿で良かったわ。
三男、四男が結婚する所も見れましたの。孫達も健やかに育っているようですわ。ラシェッタ様のご実家に引き取られた息子の所にも良いお嫁さんが来て、子供達も生まれて、家族で幸せに過ごしているんですのよ。
私、いつまでここにいれるかしら?いえ、いつまでここにいるのかしら?ちょいちょい気が遠くなるけど、子供達に何かある節目には、こうやってその光景を眺められているのよね~。
私の様にお気楽な様子で、彷徨っている人を見た事がないの。
白くて光った丸いモノが上に向かって消えていくのとか、黒くて地面を這いずっているモノを見たのだけ。
どういう仕組みなのかしら?
私にはまったく分からないまま、私の家族の時間が過ぎてゆくのを眺めていると、ある日、夫のダブランが病に倒れたの!
私の姿は誰にも見えていないようだけど、心配で心配で、ダブランの側から離れなかったわ。その間は、私の気が遠くなる事もなく、ダブランの側に付いていられたの。
それでもね、彼にも寿命があるの…。ついに、彼の息が浅くなって、意識が朦朧としたわ。
とっくに先に死んでしまった私が言えた義理ではないけれど、凄く凄く悲しいわ。並みだなんて出るはずないのに、泣いている気になっているんですもの。
誰にも見えないから、彼の手を握って、彼の一番近くにいたわ。フワフワ浮いているのは仕方ないんだけど。
「……リ、エン、ヌ、迎え、に、来、…くれ…んだ…。あ、り、………う…。」
う、嘘ッ!私が見えるの?!ダブラン!私が見えたのね!うん!うん!今、一緒にいるのよ!ずっと家族を見て来たわ!貴方が誘惑されそうになって、慌てて逃げてこけたのも、子供達の結婚式で涙ぐんだのも、孫に浮かれて、おもちゃの買い過ぎで怒られた事も見ていたわ!全部!
貴女が私だけだと再婚もせずにいてくれた事も、嬉しい事があると、私の名前を呟いてくれていた事も知っているわ!今でもあなたを愛しているわ!!未練たらしく、この世でフラフラしていたのも、貴方と少しでも一緒にいたかったからなの!!
ダブランは私の叫びが聞こえたかのように、微笑んでから、息を引き取ったわ…。
彼の身体から白く輝く丸い光が出てきて、私の周りを飛んでいたの。でもね、上に向かっていっちゃったわ。だから、私は叫んだの!心を全部ダブランだった光に向かって!
「愛してくれてありがとう!!私も愛していたわ!!また会えたら嬉しいわ!!」
ダブランだった光は、「知ってる。またね。」というように2回だけ点滅してから、空高く消えて行ったの。
私は、それでも消えれなかった…。
まだ何かあるのね。と思って、家族を見守ったわ。見ているだけだったけれど。
家族の居る屋敷に火をつけて、私の家族を殺そうとした者が見えたので、屋敷の中へ入り込んで一生懸命家族を起こすようにしていたら、その男が外で目立たないようにしていたのに、「お化けだー!」と叫んで、腰を抜かした挙句、気を失ったわ。
その叫び声で、屋敷の護衛や家族も気付いたようで、何とか難を逃れたのよ。もう!私の家族に何をするのよっ!最低だわ!
プンプンと怒っていた私の手を後ろから掴んだモノがいた。
振り返った私の目に映ったのは、在りし日の若いままの姿で、透けた姿のラシェッタだった。
『こんな所で散歩かい?』
え?!何で?
『君に振られてから、家族にも色々と迷惑をかけていたのに気付いたんだけど、それでは遅かったみたいでね。
結局は、家族や周りの者達に依頼された者に殺されたんだ。
一緒に死んだはずの祖父母は、ね、生まれ変わったチャンスをモノに出来なかったせいで、消滅してしまったようで、見当たらなかったんだ。
気付いたら、俺だけしかいなくて、何十年も過ぎていたんだよ。
俺と同じようなモノがいないかと探し回ったんだけど、今まで見つからなかったんだけど、君の姿を見かけてね、何をするのかと見ていたんだ。
一生懸命な君を見ていたら懐かしくなって。
だから、俺も手伝う気になってさ、放火しようとした男を脅してみたんだ。上手くいって良かったよ。』
私が驚きと、理解出来ない出来事にあわあわ慌てている姿を見て、ラシェッタは、笑い転げていたわ。
失礼ね!再会したと思ったら、いきなり笑い転げるなんて酷いわ!!
私がむくれて怒っていると、私の上からも声がしたの!
『私の妻には手を出さないで欲しいんだけど。』
え?!ダブランの声よ、ね?
上を見ると、ダブランが私やラシェッタの様に若い姿で、透けている姿で浮いていたわ!
『神様がね、リエンヌが生まれ変わる手はずを整え終えているのに、一向に上に上って来ないから、私にリエンヌを迎えに行くように言われたんだ。
なのに、君の側には、死んだ後でも、邪魔な間男が近寄っているとは思わなかったよ。退けよ!』
『俺だって、さっき再会したばっかりなんだ!けち臭いな!』
ええと、私、生まれ変わる順番が来ているのに、上に行けていなかったの?それで、ダブランが迎えに来てくれたんだー。そっか。じゃあ、一緒に行かなくちゃ。
『そうだね、リエンヌ。また一緒に。』
『俺も一緒に行くからな!』
『死んでも邪魔な所は変わりないな、君も!』
往きましょう。ダブラン。あ、ラシェッタは、勝手にすればいいわ。私は一切、関わらないし、知らないから。お好きにどうぞ。
ねぇ、ダブラン。抱きしめたまま、連れて行ってくれる?
『いいよ、マイハニー。私もそうしたいって思っていたから。嬉しいなぁ。』
私も嬉しいわ!
ダブランに抱き締められたまま、一緒に上に向かったわ。その後ろを不貞腐れたまま、付いてくるラシェッタの姿に、ダブランと2人で吹き出しそうになったけれど。
大きな光に包まれて、気が遠くなってゆく中、ラシェッタの声が聞こえたわ。
『ま、いいや、またね。』って。
ダブランが私の耳元で、囁いた。
『もう会いたくないよ、アイツには。君にはまた会って、恋をして、一緒に生きたいけどね。』
私は、ダブランにはまた会いたいけれど、ラシェッタにはもう会わなくても全然平気だし、もういいわよ!会いたくないわ!次も振り回されるのはイヤなの!と思った所で、私の記憶が途切れたわ。
最終話を夜に、投稿予定です。宜しくお願いします。




