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 平等にする為、太陽をどちらも背にしない位置につく。彼が魔法具に手をかけ、私達も既に各々の武器に手を伸ばしている。

 私は、今回剣を一刀式にしている。二刀式より手数は劣るが、防御や一撃の威力で言えばこちらが上である為、初見の相手には有効なのだ。

「それでは、始め!」

 アクトの合図がかかり、彼はおもむろに魔法具を持ち上げ叫んだ。

「エイドリアァァァァァァァァン!!!!!!!」

 何やら叫びながら、手にした魔法具から雷属性らしい魔力を乱射する。

「きゃ、きゃあ!?」

「オイオイマジか!」

 その量に一瞬だけ驚いたが、あれではそうそう長くは持たないはず。そう判断した私は、デフィアに声をかけた。

「ほう……デフィア!」

「おうよ」

 即座に反応し、風で障壁を張ってくれたデフィア。彼の障壁は国王直属部隊の中でもそれなりに上位の防御力を誇る。障壁に関しては、確かイゼフの部下であるクルイアが一番丈夫だったはずだ。


「くっ……耐え切れるか……!? お、おいイゼフ、頼む!」

「はいっ! 我に宿りし力よ……今彼に力を貸さん!」

 流石にあれだけの量は受け止めきれるかわからないと断じたらしい。イゼフが詠唱を済ませ、素早く彼に魔力効率増強の効果をもたらす。

「うむ、面倒な……だが無駄だ!」

 今度はイゼフに向かい、一点集中で大量の弾丸をばら撒いてくる。なるほど、彼女が障壁を強化したと一瞬で見破ったらしい。流石アクトが連れてきただけある。

「きゃあ!」

 短い悲鳴をあげ、咄嗟の判断で上空に逃げたイゼフ。と、同時に風の障壁は耐え切れずに貫通を許す。

 おかげで風に乱れが生じてしまったらしく、障壁としての役目を終える。

「今度は私が!」

 それにいち早く気付いたらしいセシアが、既に土を変形させた障壁を創り出していた。

 しかし、あろうことか彼は雷から風へと射出する魔力の属性を変えたのだ。二重属性持ちだったのか……!

「ぐぅぅぅぅぅ……! も、もう持ちませんっ!」

 しかも威力も高いらしく、デフィア程ではないがそれなりの防御力を持つはずのセシアの障壁が、ほんの数瞬で砕け散る。

「くぅぅ……うわあぁぁぁッ!!」

 しかし、彼が時間を稼いでくれたおかげで他に被害は無く全員が散開した。

「セシア、戦闘不能! 残り四人だ」

「ふむ、流石じゃのう。あれだけ弾をばら撒いて魔力が枯渇せんとは」

 国王様の言う事は、恐らく使っている当人以外全ての者が思ったことだろう。あそこまで乱射すれば、60でなくとも大抵のものは枯渇してしまう。なんという大きな容量だ。



 再び横に薙ぐように掃射される弾丸をなんとかかわし、弾き、隙を窺う。

 そんな時、ゼルキスが我慢しきれなかったか上空に素早く飛ぶ。その前に詠唱を小声で行っていたことから、恐らく素早さと攻撃力の二つは上がっている。しかし、明らかに油断している。

 私が止める間もなく五本の雷の閃光が襲い、思わず体勢を崩したところに今度は風が撃ち込まれて吹き飛ぶ。

「ゼルキス戦闘不能! 残り三人だ」

「ライデイーン!」

 天に向かい叫んだ彼。と、同時に空から幾筋もの落雷が発生する。全く、何て魔力だ!

「ぎゃああああ!」

「くっ!」

「きゃあっ!」

 私とイゼフは剣と炎を使い雷を相殺する。デフィアだけは取り回しの悪い巨大な槍だった為か間に合わずモロに食らってしまったらしい。

「デフィア戦闘不能! 残り二人だ」



 アクトの通達と同時に……私の口からは考える前に言葉が出てきた。

「……イゼフ、スマンが一度彼とサシで戦わせてくれ」

 彼の実力を見て……小細工抜きに彼と戦ってみたくなったのだ。

「へ?」

「……いいぜ、かかってきな」

「わ、わかりました」

 二人はあっさりと許可してくれた。いや、彼が許可してくれるとは思っていなかった。戦士としてとても良い心を持っているのだろう。

「ありがとう、タクミ。では行くぞ!」

 右下段に構え、炎の魔力を注ぎ込む。もとより炎の魔力を増幅してくれるこの武器なら、ある程度なら魔力をかなり使う技でも連発できるのだ、この戦いで魔力切れはないだろう。


 互いに走り出し、中央付近で刃物同士が甲高い音を立て激突する。

 その力を利用したのか上空に跳ね上がり、そのまま急降下しつつ斬りかかってきた。どうにか剣の腹で受け止める。

 更にその反動すら利用され、空中から連続で斬りかかってくる。なんとか捌ききり、一旦一歩だけ後ろに下がる。

「くっ! だがまだだ!」

 一歩下がったのは撤退の意思ではなく、踏み込む為のスペースを作っただけ。

「はぁっ!」

 着地の瞬間を狙い、左から右へ、若干斬り上げるように剣を振う。

「龍巻閃!」

「がはあっ!?」

 それすらも読まれていたというのか、受け止めたと見せかけ回転するように私の後ろに回り込み、勢いを殺していない一撃が背中に直撃する。

 中央近辺から一気にフロアの外まで飛んだところで、私の視界は暗くなってしまった。





 それからしばらく、私が目を覚ましたのはイゼフが構えをとっている時だった。左手の剣のみ逆手に持ち替える彼女の数少ない戦闘用剣技。

 確か二段式のその斬撃は豪炎を纏い、貫通系の魔法にも対応できる技だったはず。私やゼルキスより威力は劣るが、それでも国王直属部隊全体では大分上位の剣技だ。

 襲いかかっていた電撃を打ち破り、二段目の斬撃と同時に放たれた炎が、彼に直撃すると思っていた時。それすらも読み切っていた彼は、先程の電撃と違い収束させた電撃を放つ。それなりに近い距離で放たれたそれは、剣で防ぐ前にイゼフに直撃する。フロア外まで吹き飛び、その体が地に落ちた。

「……イゼフ、戦闘不可能。勝者、タクミ!!」



 完敗だった。彼の実力は本物、と私達は知ることができ、そして自分達の未熟さも実感したのだった。

 いちおう、前回からそうですが拓海視点とは違い、一部の名詞が変更されています。もし分からない物があったらごめんなさい。

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