CODO.1
第一章、「Another」のスタートと同時に、いよいよ「テケトーな俺と神と異世界と A&A」スタートです!
国王直属部隊。それは、王国軍が持つ軍隊の内双壁を成す二つの部隊のうちの一つ。得意分野ごとに計六つに分かれ、それぞれが補い合っている。国王様直属である為任務の幅も広く、過酷な物が多い。しかし、それゆえに死線を共にくぐるからか隊員達、そして隊同士の仲も良く国民から、そして国王様からの信頼も厚い。
そんな軍隊に身を置いて数年。軍に入ってからそれなりに経験を積んできているが、それでもこんな経験は初めてだったのだ。
ある一つの報告。超大型のブル・ビーストが、一瞬にして消えたという報告が入ったのだ。ブル・ビーストといえばビーストより獣の割合が高いブル種のことになる。戦闘能力は総合的には高くは無いがとにかく突進力とタフさは侮れない。ビースト、エルフ、ヴァンプ、エンジェリア、魔族、その他諸々、単独で行っては全ての種族が苦戦する程だ。それが、一瞬で消えた。これに驚かずにいられようか?
その件に関し、国王様より調査命令が下った為第一隊が向かった。
そして更に私は驚くことになった。王国ではトップクラスの戦闘能力を有するはずの国王直属部隊、その第一隊が数分ももたず敗北してきたのだ。隊長、アクトの活躍でその張本人が城へ到着したらしく、国王様に挨拶に行っているらしい。その間に私らは挨拶のためにという事で王城の中庭に集まった。何でも、その張本人を国王直属部隊に入れるかららしい。
しばらくすると、中庭に通ずる四つの扉の内一つが開き、アクトと……見知らぬ一人の男性が出てきた。恐らく今回の張本人というのが彼なのだろう。
黒い髪に瞳とは……珍しいものだ。種族は何なのだろうか?
「彼が拓海だ」
立ち止まり、アクトが彼の名前と思しき言葉を口にする。タクミ、か。珍しい名だ。
「この男がか。一見だけでは強そうには見えないが……まあ見た目ではそんなもの分かりはしないがな」
思った事を素直に口にする。別に凛々しい顔や厳つい顔をしているでもなく、どちらかといえば平々凡々な顔つきである彼はそこまで強そうには見えない。もっとも、そこにいるデフィアがいい例だ。一見大人しそうではあるがこいつは実際好戦的だし野性的だ。
「私はレム。種族はエルフだ。国王直属部隊第二隊隊長を務めている」
事務的で簡潔だ。自分でもそう思う。それでも、彼は嫌な顔一つしないでいてくれた。それどころか、宜しくお願いします、などと敬語で返してくれるなど誰が想像しようか。
他にもゼルキス、セシア、イゼフ、デフィアが自己紹介を済ませる。彼らを含め、ここにいるのは国王直属部隊の隊長達。はっきりいってしまえば、この国での武力的にはトップクラスの戦力がここに集まっている。だが、これは珍しい光景ではない。普段から会議は六つの隊全て合同で行うし、何より隊同士仲が良いためだ。
「えと、市川 拓海です。よろしくお願いします」
最後に、彼の自己紹介だった。イチカワ タクミ……全く聞いたことのない名前の組み合わせだ。彼の独特な黒い髪と目と相まって、彼の出身が何処なのかわからない。
「で、タクミには何をさせるつもり?」
今現在、恐らくアクト以外の全員が気になっている事を聞いてみる。どこの隊に入るのか……そうとばかり考えていた私達の予想は、呆気なく裏切られた。
「彼には俺達王国軍の軍隊全体顧問をしてもらうことになった」
「は!?」
……何故タクミが驚く!? 驚くのは私達の方では!?
「まて、それは本当か? 見ず知らずの者に教わるというのか?」
「ですよねですよね! 俺も予想してませんでした!」
なんというか……彼が知らないというのはどうかと思う。そもそも当人ではないのか?
「国王の決定だ」
「うぅむ……」
「なら、一つ提案がある」
突如、デフィアが口を挟んだ。何だというのだ?
「なんだデフィア」
「俺らが彼と戦ってみて、納得すれば顧問に、というのでどうだ」
「ふむ、別にかまわんぞ」
聞きなれた声に後ろを振り向けば、そこには予想と違わず国王様が。
「こ、国王様!」
ゼルキスが驚きの声を上げる。気付いていた私とはいえ、確かに彼と同じく何故ここにいるのかと驚いた。
「うむ、それならよかろう。どうだ、タクミ?」
「は、はぁ。まあ国王様の許可があるとならば」
歯切れ悪く応対しているところをみると……なんというか、彼がこの事を知らなかったのは本当なのだろう。
「うむ。では、審判はアクトに務めてもらおう」
「はっ。では形式だが……彼対隊長全員一斉だ」
何!? 五対一だと!?
「は!?」
一番驚いているのは張本人のイチカワ タクミその人。何というか……国王様も行き当たりばったりなところがあると普段から忠告はしているのだが……それでも、アクトが提案したのだろうこの方式。ならば、そのアクトの意思を信じてやっても良い。
「うむ、よかろう。皆はどうじゃ?」
「私は構いません」
「俺も構いません」
「ええ、もちろん」
「え、ええ。大丈夫ですっ!」
「国王様のご意向ならば」
「うむ。タクミ殿は?」
「……構いましぇん……」
うなだれた様子で答える彼はどうやら乗り気ではないらしい。それでも国王様には権力的に逆らえないと悟ったのだろう……不憫であるが、しかたがない。
「さて、ではタクミ、お前が持ってる装備は?」
国王様の質問は、多分彼の人柄を試すものだったんだと思う。今から戦う相手達の目の前で装備を晒さねばならぬのだから。
「カタナと片手用魔法具、あと小刃です」
「ほう、それだけで第一隊を……」
「いえ、正確にはカタナは使われませんでした」
「ほう、なおさら興味が出てきたのう」
「だが、私達五人一斉だろう。少しハンデが大きくないか?」
一応、助け船を出しておこう。流石に負けた時に言い訳するような性格には見えないが……保険だ。
「確かにのう。よし、おい、そこの! 魔法具60を持ってまいれ」
国王様が何故か対応して下さった。私的には他の隊長に相談しただけのつもりだったのだが……?
「ハッ!」
「魔法具60?」
「うむ。この大陸には魔法を動力源とする武器があり、私たちは主に魔法具と呼ぶ。その後の数字はいわばタイプなどを直接表すのだよ」
なるほど、彼の国には元々魔法具などは存在しなかったらしい。と、いうことはいきなり60では難しいのでは……もっとも、国王様には何かしら意図があるのかもしれないが。
「で、60というのは魔法力を連射するタイプのものだ。かなり魔力を必要とするが、相応の威力を誇るぞ」
「ふむ……あ、スミマセン、ちょっと厠借りれます?」
「おお。おい、この方を案内して差し上げろ」
「ハッ!」
そう言って彼は一時この場を離れた。ならば、恐らく彼はその合間に少しでも作戦を立てようとしているのだろうか。と、いうことで私達も簡易的に作戦会議に移ることとなった。
「さて……どうする? いつも通りの布陣で行くのか?」
「いいや、よく考えてみろ、ゼルキス。このフロアは狙撃に徹する程の広さは無い。デフィアは別の所に移動する必要がある」
「そうですよ。そうなると、他も動かねばなりませんね」
「は、はうぅ……私は戦闘は……」
「イゼフ、安心しろ。お前のポジションは変わらないはずだ」
「そうだぞ。では、私とゼルキスが前衛。イゼフとデフィアは後衛。セシアは遊撃。ただしデフィアはいつもより前に出る。障壁を担当して貰っていいか?」
私の提案に、皆は異議を出さなかった。普段通り、平等に意見を出し合い議論するやり方である私達はお互いが納得しやすい。とりあえず今回も滞りなく進むだろう。
そうこうしている内に、彼が戻ってきた。戦闘開始だ!
と、言うわけで始めさせて頂きました続編。
お楽しみいただけたら幸いです。




