周りの視線
「ご、ごめんなさい」
ミレイユが少し肩を縮こませながら小声で言った。それに続くように、俺も口を開く。
「すまなかった。話に夢中になっていた」
するとセレナは俺達を静かに見て、軽く頷いた。
「気をつけて下さい」
それだけ言うと、本を抱えたまま踵を返し、その場を後にした。俺とミレイユは顔を見合わせると、ミレイユが少し困ったように笑う。
「少し盛り上がり過ぎましたね……」
その顔は少ししゅんとしていて、どこか悲しげにも見えた。……強いな、ゲームでも思ってたけど。こういう表情、普通の男だったら結構やられるんじゃないか。
庇いたくなるというか、放っておけないというか。流石ヒロインだ。そんなことを考えながら俺は肩をすくめた。
「今回は図書室で話してた俺らが悪かったな」
ミレイユも素直に頷くと、探し終えた資料を持つと、ちょうど戻る時間だった。
「隣の教室ですし、一緒に帰りませんか?」
そう言われ、俺も了承すると教室へ向かう途中。
先程のことを気にしていないようにミレイユは、授業のこと、先生のこと、学園のこと。楽しそうに話していた。
その中で、ふと気がついた。ちらちらと女子生徒達がこちらを見ている。いや、別に攻略対象だから珍しいと言う事じゃない。
だけど、何か違う。見られているというより、観察されている。監視されている。そんな感覚に近い感じがする。
教室前に着くとミレイユは立ち止まると、こちらに軽く手を振ってくる。
「では、またお話ししましょう!」
それに反応するように俺も手を上げる。すると、ミレイユはそのまま教室へ入り、一直線にテオの席へ向かった。
楽しそうに何か話していいて、テオも笑って返していた。順調なんだな、うん。別に、別に羨ましくないし、テオを攻略できて羨ましいとか思ってないし。
俺は視線を逸らすと、さっきまで俺達に向いていた監視するような視線は、ミレイユとテオへ向いていた。
何人かは明らかに嫌そうな顔しているのが達観すると明らかにわかる。
……ああ、もうそろそろか。俺とテオとの好感度が上がる事によって起こるイベント噴水イベントである。まもなく、ジェイクとの接触がある。
教室へ戻るとセレナは既に席に座っていた。机の上には、さっき借りたであろう本があり、姿勢正しくページをめくっている。
俺は借りてきた資料を置くと、少し迷ったがセレナへ近付いた。
「先程はすまなかったな」
セレナが顔を上げる。
「話に夢中で声量に気付かなかった」
本当は少し考え事してたなんて言えなかったが、再度頭を下げ謝った。セレナは少しだけ目を見開き、驚いたような顔をした。
急に話しかけたからか?と思い、俺は付け加える。
「すまない。急に声を掛けて」
セレナは数秒黙るが、それから視線を俺から本へ戻した。
「いえ」
短い返事をすると少しの間があり続けた
「気をつけて下さいね」
ページをめくらながら、
「周りの視線もあるので」
静かにそう告げた。俺は一瞬意味が分からなかったが、セレナはそれ以上何も言わない。静かに本を読見続けていた。




