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俺の好感度イベント

 何日か経つと、ディルに成り代わったばかりの頃の緊張も少しずつ薄れ、生活に慣れてきた。


 入学式の日に少し話したのがきっかけだったのか、ミレイユとは廊下ですれ違えば挨拶をするし、休み時間に見かければ少し話す。シナリオ通りに顔合わせれば話す仲になった。


 人との距離感が上手くて、流石ヒロインだと思う場面になんだも遭遇した。


 テオとも、あの日以来毎日昼食を共にするようになった。中庭の同じ場所、木陰のベンチ、自然とそこへ行って、話すのはルーティンになっていた。


 不思議なもので、最初は攻略対象だと思って少し身構えていたのに、今は普通に友達みたいに話している。

 攻略しようとかじゃない。もうゲームじゃないしリアルになって行くこの感覚。


 一方、セレナ・ノワールとは同じクラスだけど席は遠いし、話すこともない。たまに授業中視界に入るくらい、それだけだった。これもシナリオ通りだった。

 悪役令嬢と攻略対象そのままの距離感だった。


 そして、生徒会にも立候補した。問題なく入ることができ、役職は書記。前世でも生徒会入っていた事もあり、何か縁あるのかもしれないなんて考えてしまう。


 この数日のことを考えながら、俺は休み時間に図書室へ足を運んでいた。理由は簡単だ、ディルとヒロインの最初の好感度イベント。


 ゲーム知識が正しければ、生徒会に入ったあと図書館で資料探し、そこへミレイユが現れてそこから交流、そんな流れだった。


 図書室へ入ると、高い本棚がずらりと並べられており、独特な本の匂いが鼻を掠める。静かな空気に安心を感じる。


 俺は目的の棚へ向かうと、いた。待ち構えていたみたいに、ミレイユ・アクターが本を持って振り返った。


 「あ! ディル様、こんにちは!」


 元気な笑顔を向け、ゲームのままの台詞を言った。俺も軽く笑い応える。


 「やあ、ミレイユ嬢。貴方も調べ物ですか?」


 あの日、お互いに自己紹介してから。


 俺達はディル様、ミレイユ嬢と呼び合うようになっていた。


 「はい! 少し課題で」

 「そうなんですね」


 軽く話しながら本棚を見ながら、流石ヒロインだ話しやすいし明るく、自然と会話が続く。


 「聞きましたよ?」

 とミレイユが少し身を乗り出した。


 「ディル様、生徒会に入られたんですよね?」

 「そうなんですよ。それに必要な資料を探しに来ました」


 するとミレイユは目を少し輝かせた。


 「それなら私もお手伝いしてもよろしいですか?」


 少し上目遣いで、身長差のせいか近い。ゲームやってた頃は普通に可愛いなって思ってた。今実際に見ると、ヒロインってこういう感じなんだな思った。


 「じゃあお願いしようかな」

 そう返すと、ミレイユは嬉しそうに笑った。


 「もちろんです!」


 それから一緒に軽い雑談をしながら、本を探した。

ゲームで見た通り、純粋で明るいミレイユ。ふと考える。今回は誰ルートなんだろう。テオか?まだ出会ってない二人?それとも俺?


 まだ分からないけど、こんな楽しそうに話してるのに、そんなこと考えるの少し失礼だと思い俺は苦笑した。

 少し話が盛り上がってしまった時。


 「ここは図書室ですよ」

 透き通るような声が聞こえて、俺達は振り返る。

 正確には少しだけ下をみる、そこには。本を両手で抱えるように持った、セレナ・ノワールが立っていた。

 淡々とした声で、真顔のままセレナは俺達を見る。



 「声量には気を付けてください」



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