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可愛い系は攻略しておくべきだった

 ホームルームが終わったが、今のところ大きな問題はない。まぁ、少なくともゲーム開始日に断罪イベントなんて起きるわけないか。


 うん。平和だ。いいことなんだけどね?教室でぼんやりしていると、周囲が少し騒がしくなる。


 昼休みだ。そういえば朝から何も食べてないことに気がついた俺は、楽しみだった食堂行くことにした。ゲームでも出てきた豪華な料理が無料で食べられるとか太っ腹かよ学園!


 席を立って廊下へ出ると、やっぱり攻略対象って目立つんだな。やたら見られる、いや、気持ちはわかるけどな?


 食堂へは向かったんだけど、人多すぎ。いや、無理だろ。新作のパンケーキ屋でも見ない長蛇の列と、当たり前のように空席ゼロ。


 え?入学初日ってこんな集まるの?少し考えて、諦めた。

 購買でサンドイッチと飲み物を買って外へ向かうと、中庭は思ったより静かだった。


 どこぞの家族の家にありそうな噴水が中央にあり、近くには木々が生い茂り、緑豊かで結構気に入った。 

 ぽつぽつ人はいるけど食堂より全然いい。座って食べられる場所を探し歩いていると。俺は見つけてしまった。


 小さい、じゃなくて可愛い。ベンチに座って本を読んでいる男子生徒。明るい髪色をした、柔らかい雰囲気を持つ小柄な彼は俺が唯一攻略し損ねた攻略対象のテオ。



 何でだよ過去の俺、何で俺様キャラのレオン先に攻略した?何でセクシー担当のジェイクまでやった?

 可愛い系残すなよ!順番逆だろ!


 今なら分かる、先に攻略すべきだった。俺は軽く絶望した。だって目の前にいる攻略してないも情報もない。

 なのに、可愛い!!悔しいよ俺!!まじで徹夜でゲームやっとけばよかった。


 俺が立ち止まっていたことに気付いたのか、テオが顔を上げると、しっかりと目が合った。終わった。

 知ってる人に見られたみたいな顔してる。


 テオは少し目を丸くしたあと、小さく笑った。

 「ディル様ですよね?」


 面識ないけど。貴族同士ってそんなもんなのか?

勿論俺はテオ以上に知ってる自信があるが。


 「……知ってるのか?」


 テオは本を閉じる。

 「もちろんです。有名人ですし」


 可愛い、。いや、落ち着け。攻略対象だ。しかも相手は男だ。


 「テオ様も有名だろ」

 テオは少し笑った。


 「そうですか?」


 何だその反応、可愛い。俺は空いていたベンチの反対側に座った。特に話す話題がなく沈黙が続く。うん。変に気まずい。


 ゲームやってた時なら攻略対象として見てたのに、今は攻略対象仲間みたいな感覚になる。、いや仲間ではないか。何言ってんだ俺。

 先に沈黙を破ったのはテオだった。


 「ディル様も食堂諦めたんですか?」

 「人多すぎた」

 「あ、やっぱり」


 テオが笑う。その姿に申し訳ないが普通だと感じてしまった。いや、思ってたより普通だっただけだ。

 もっとあざとい感じかと思ってた。


 それを皮切りに、サンドウィッチを食べながら他愛もない話をした。まるで、攻略対象相手じゃなくてじゃなくて、普通に友達と話すみたいに。



 気付けば昼休み終わりそうになっていた。テオが立ち上がり、軽くこちらに会釈をした。

 「あ、僕そろそろ戻ります」


 俺も続いて立ち上がる。


 「クラス違うんだっけ」

 テオは頷く。


「はい。ミレイユ・アクターさんと同じクラスです」


ヒロインと、そうか確か教室でのイベントの時、テオが端に少しだけ映っていたような気がしなくもない。


 同学年でも別クラスか。楽しく話せたのに、これからはあんまり関わる機会無いかもなと少し残念に思えた。

 その様子に気がついたのか、テオは少し考えて言った。


 「また会ったら話してください」


 俺はその笑顔に、うわ。攻略したかった。何なら、今からでも攻略したい。いや違う、攻略じゃない。

知りたいと思った。

 何で残したんだ過去の俺。


 テオは手を振って去っていった。俺もしばらくして教室へ戻る。席に座ると少し前の窓際、セレナ・ノワールが静かに本を読んでいた。



 テオのことでいっぱいだったが、同じ教室だったなと思い出す。リアルで感じるその距離は、ゲームの時よりずっと近く感じた。



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