表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

ヒロインとの出会い

 人混みの向こうへ消えていくその姿を、俺は少しの間目で追っていた。

 ゲームの中で何度も見たキャラクターなのに、実際に目の前で動いている姿は知っていた印象と少し違った。


 

 やっぱり本物の方が何億倍も可愛いわ。うん。何あのしゃがむ時の仕草!堪らないんだけど。しかも、あの透き通るような声!オタク歓喜ですよ!しかも生で!

 あっと、周りを見ると不思議そうにこちらにちらちらと視線を送ってきている女子生徒達に気がつくと、深呼吸をして、正気を保った。


 まあ、まだ始まったばっかだしな。俺は、軽い足取りで校舎へ向かった。


 入学式自体は想像していたより普通だった。学園長っぽい人の長い話。昔からこう言うの苦手だったんだよな、なんて思いながら。

 睡魔と戦いながら話を聞いていた。まぁ実際、途中から全然聞いてなかったけど。


 

 近くを見ると、攻略対象っぽい顔の男達が何人かいる。あれがレオンかな。あっちがジェイクか?実際見るとゲームより顔いいな。いや、俺も負けてないけど。

 

 そんなことを考えているうちに式は終わり、教室へ移動する流れになる。ここから自由時間だ。


 確かゲームだと、この辺でヒロインとの最初の接触イベントがあったはず。でも俺ルートってどうだったっけ?

 話しかけたような、ぶつかったような、忘れた。全ルート攻略してない弊害が早速出ているな。


 教室へ向かう途中、廊下は人で混雑していた。知り合いを見つけて話す人、教室を探す人、何となく歩く人、そんな中


 視界の先で

「あ……っ」


 一人の女子生徒が持っていた書類を落としていた。

紙がばさっと散らばり、周囲は気付いてるけど、通り過ぎ一人で拾い集めていた。

 まあ、拾うよな。俺は近付いて紙を集める。


「あ、ご、ごめんなさい!」

 顔が上がる。


 そこで拾い上げる俺の手が止まった。明るいブラウンの髪、柔らかそうな雰囲気にどこか見覚えを感じる

ヒロインだ。


 この乙女ゲーム主人公のミレイユ・アクター


 「あ、ありがとうございます」


 差し出した紙を受け取って、彼女はぺこっと頭を下げる。あー、そう言えばこんな出会い方だったなと少しだけ思い出す。

 確かディルはこう言うんだったな


 「同じ一年?」

 「はい!」

 「そっか。よろしく」

そして、軽く笑いかける。よし、完璧だ。ディルとして違和感なかったはず。


 ヒロインは少し目を丸くしたあと、小さく笑った。

「よろしくお願いします」


それだけだった。流石ヒロイン、こんなイケメンに微笑まれたのに微動だにしない。俺なら男だけど惚れちゃうね!


 そんなことを考えていると、周りの生徒達がこっちを見ている事に気がついた。


 え?何?何かした?ミレイユもそれに気付いたのか、少し居心地悪そうに視線を下げた。


 「失礼します」

 静かな声が人混みの向こうから聞こえ、自然に割れた。そこを通り過ぎたのは、セレナだった。


 セレナは俺達の方を一瞬見てそのまま教室の方へ歩き出した。いや、見ただけ。本当に見ただけ、なのに。


 「やっぱり気に入らなかったのかな……」

 「怖い……」

 「ミレイユさん可哀想……」


 などと、人混みから聞こえた。いやいやいや、待って。今何もしてなくない?俺、見てたけど。セレナは何も言ってない。なのに、何でそんな空気になってる?


 ミレイユも困った顔をしている。セレナは気付いているのかいないのか、そのままその場から離れていった。


 俺だけが取り残されたみたいに、その背中を見ていた。何か、やっぱり思ってたのと違うな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ