表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーク進化論~勇者がブタに?~  作者: 東雲 寛則


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/75

第六十四話「爆炎と、勇者の舞と、あと偵察」

 思ったより、爆発は大きかった。

 地面に埋めていた魔法弾は、アルドの想定を超える威力で炸裂した。


 追ってきた十体ほどのグレイウルフは、木っ端みじん。


 爆風で四方へ吹き飛び、黒焦げの肉片になって転がっている。


 傍からみれば見事な戦果。

 戦術的には大成功だが、食材としては、かなり怪しい。


 肉片は土に混じり、焦げ、炭となっている。


 これを食うのか?


 いや、食えなくはない。


 だが、できればもっと良い状態で食いたかった。


 皮はぱりっと。

 中はじゅわっと。


 爆発で木っ端みじんにする料理は、いくら何でも雑すぎる。


 アルドは自分の罠設計に、深く反省した。


 火力調整。


 次回の課題である。


 しかし、その爆発に、モンスターの集団は一瞬足を止めた。


 群れ全体が、土煙の向こうのアルドを警戒している。


 さすがのモンスターでも、そこから何も考えずに突っ込んでくるほどアホではないらしい。


 アルドは万能包丁を肩に担ぐ。


 このまま止まられると困る。


 魔法弾は、まだ残っているのだから。


 誘導して踏ませるか、ラディカルショットで撃ち抜くか。


 どちらにせよ、敵が動いてくれなければ意味がない。


 ならば仕方がない、やるかアレを。


 アルドは、封印されし必殺技を思い出した。


『勇者の舞』。


 かつてアルドが、酒の席を盛り上げるために開発した技である。


 勇者アルドの人生を、一つの舞として表現する。


 誕生、修行、旅立ち。


 出会いと別れ。


 そして苦悩。


 勝利。


 それらを、全身の動きで表現する、壮大な舞。


 ただし、仲間からは不評だった。


 心底腹が立つので、二度とするな。


 真顔で言われた。


 そうして、勇者の舞は封印された。


 だが。


 今、解き放つ時!



 アルドは万能包丁を地面へ突き立て、踊り始めた。


 くね。


 ぐね。


 ぬる。


 腰を振り、肩を揺らす。


 短い腕を優雅に伸ばす。


 片足で三回転を決め、止まる。


 喜び。


 怒り。


 哀しみ。


 楽しさ。


 それらを、オーク顔でキメていく。


 そのくねくねとした動きは、不快としか言い表せなかった。


 ふざけているようで。

 挑発しているようで。

 馬鹿にしているようで。


 それでいて、顔の喜怒哀楽だけはやけにしっかりしている。


 だから余計に腹が立つ。


 見てはいけないものを見せられている。


 そんな感じだった。


 遠くで見ていたリアは、真剣に首を傾げた。


「あれ、なにしてるの?」


 ジェイルは額に手を当てた。


「俺に聞くな」


「トンソク、楽しそう」


「いや、あれはたぶん挑発だ」


「挑発?」


「おそらく、だけどな」


 ジェイルにも自信がなかった。


 その時、モンスターの一体が吠えた。

 ランドコカトリスが嘴を鳴らす。


 群れの空気が変わる。


 明らかにキレていた。


 先ほどの爆発で仲間が吹き飛んだ。

 危険への警戒。

 それらを押し流すほどに、目の前のオークの踊りが不快だった。


 そして、モンスターたちは突撃を再開した。


 アホだった。


「ぶひっ」


 かかった。


 単純な連中だ。

 いや、単純ではない。

 勇者の舞が高度すぎたのだ。

 とりあえず、そういうことにしておく。


 アルドは剣を引き抜くと、地面へ向ける。


 ラディカルショット。


 放たれた衝撃波が、二つ目の魔法弾へ直撃した。


 爆発。


 また十体ほどのモンスターが吹き飛んだ。


 ランドコカトリスの羽毛が舞い、ラッシュボアが横転し、スパイクラットが空中でばらける。


 だが、今度は群れ全体が止まらなかった。


 数が多い。


 前列が吹き飛んでも、その後ろが突っ込む。


 犠牲やむなし。

 だからどうした。

 それがモンスターの強みだった。


 知能は獣程度にはあるはず。


 だが、メンタリティは虫に近い。


 命が軽いのだ。

 敵のも味方のも。


 恐れを知らない。


 腕がもげようが。

 足が取れようが。

 痛かろうが。

 痒かろうが関係なし。


 前へ。

 前へ。

 前へ。


 ただ進む。


 武器を持ち魔法が使える人間が、モンスターに遅れを取る理由の一つがこれだ。


 人間は恐れる。

 痛みを嫌う。

 死を避ける。

 仲間の死で止まる。

 自分の損失を計算する。


 モンスターとは違う。


 だから、モンスターを狩るなら……。


 モンスター以上の怪物になるしかない!


 それが勇者。

 それがアルド。


 アルドは逆に集団へ向かって突撃した。


 万能包丁をロングソードの形に保ったまま、真正面から飛び込む。


 ランドコカトリスが嘴を突き出す。


 アルドは半身でかわし、すれ違いざまに刃を振るう。


 首が飛ぶ。


 エッジビーストが鋭い鎌の腕で斬りつけてくる。


 身を沈め、下を潜るように避けながら腹を裂く。


 ラッシュボアの突進。


 直前で横へ滑り、その勢いのまま、後ろ脚をぶった斬る。


 巨体が転がり、後続を巻き込んだ。


 互いに突撃状態なら、目の前の一体以外はいないも同然。


 全力疾走しながら、横への攻撃は難しい。


 通過してしまえば、やれるのは、急ブレーキと急反転。


 だが。


 急制動は、ワイルドオークの十八番だった。


 ワイルドダッシュで地面を噛むように止まる。


 土が弾けると、次の瞬間には、もう反転していた。


 群れが向きを変えるより先に、アルドの体勢は整う。


 ラディカルショット。


 三つ目の魔法弾が炸裂。


 今度は五体ほどが吹き飛んだ。


 爆風で群れ隊列が崩れる。


 そこへアルドが飛び込む。


 斬る。


 オーク一匹が、百を超えるモンスターの群れを掻き回していた。


 その様子を、三人の兵士が見ていた。


 セレスティアが置いた監視役である。


 彼らは昨日の乱闘には参加していない。


 だが、噂には聞いていた、化け物オークがいると。


 檻をすり抜けた。

 兵士を百人以上倒した。


 馬鹿な話だと、最初は笑って聞き流した。


 そんなわけがあるか。

 オーク一匹に何ができる。

 誇張に決まっている。


 だが、食料を半分食われたと聞いて、笑えなくなった。


 そして今日は、そのオークがモンスターの群れに八つ裂きにされる様を見に来た。


 そう思っていた。


 実際には、とんでもないものを見た。


「……強い」


 一人が呟いた。


「とんでもないな」


 もう一人が、喉を鳴らす。


 あれは、ただ暴れているだけではない。


 戦略的に爆弾の位置へ引き込んでいる。


 群れを乱し、集団の弱点を突いている。


 敵の性質を理解している。


 そして何より。


 恐れていない。


 百を超えるモンスターの群れを前にして、怯むどころか、逆にイキイキしている。


「……あれで食料半分なら、安いもんだろ」


 誰かが言った。


 否定する者はいなかった。


 三人は、報告を記録することも忘れ、アルドの戦いに見入っていた。


 モンスターの中心で、アルドは万能包丁を振るう。


 肉を捌くように……敵を斬る!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ