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やっぱり何かおかしかった②


「それでね、私の案なんだが、二人とも今日は家に泊まっていきなさい」


 そう言った店主は、見る人を安心させるような笑みを浮かべていた。


「え? ここにですか?」

「あぁ、正直に言わせてもらえば、これからまだ探すにしても、帰るにしても、どちらも危ないから私としては止めざるを得ない。この辺りは田舎も田舎でね、都会から来たキミたちには想像も出来ないだろうけど、夜は本当に真っ暗なんだ。もうすぐ暗くなるし、駅まで歩くのだけでも危ないよ。舗装された道路には暴走族も出るし、山からクマが降りてくきたこともあるくらいだ」

「ぼ、暴走族に、くま、ですか」

「あはは、少し脅かしすぎたね。悪かった。ただ冗談というわけでもないんだ。だから帰るのも探しに行くのも私はお勧めしない。そこでだ。今日はここに泊まって、明日になったら私が車で町まで送ってあげよう」

「ホントですか⁉」

「ああ、加村君と、蓮実君、だったね。どうだい? これなら加村君が心配する蓮実君はゆっくり休憩できるし、蓮実君も明日になればすぐに町に行ってお友達を探すことが出来る。もちろん、私も手伝おう。向こうの知り合いを当たってみることもできるからね」

「あの、どうしてそんなに?」

「なに、キミたちの友達想いの行動に心動かされたのさ、よく最近の若者はなんて、言葉を聞くけれど、それは一部の話だ。こうしてキミたちみたいに素晴らしい心を持った若者もいる。子供が困っていたら、手助けするのが大人だろう。違うかい?」


 懐かしむような目で微笑む店主と、後ろで見守ってくれているおばさん。

 加村は店主の話しに感動したようで、お礼を言いながら仕切りに頭を下げている。


「さぁ、そうと決まれば今日は腕によりをかけて夕食を作ろうかね!」

「それはいいな。さぁキミたち、今日だけはここが自分の家だと思ってくつろいでいきなさい。それに今日は村の神社で祭りがあってね、きっと楽しめると思うよ」

「おじさん! おばさんも! 本当にありがとうございます!」

「礼はいいから、遠いところから疲れたろ、荷物持ってあがりなさい」


 奥に入っていく店主とおばさん。それに続いていく加村のすそをアヤノはそっと掴んだ。


「ん? どうしたの蓮実さん?」

「おじさん、ちょっといいですか?」

「どうしたんだい? 今日の夕食のメニューが気になるかな?」

「いえ、ただ、どうして私たちが高校生だって分かったんですか?」


 体感温度が下がったような気がした。

 それほど鋭い視線を、一瞬だが確かに向けられたのをアヤノは感じた。


『うん。まず、キミたち今日はここに来ることを高校には言ってあるのかい?』


 少しだけ、本当に少し気になっただけだった。どうして自分たちが高校生だと思ったのか。

 今、アヤノと加村は私服を着ている。

 スミレの写真も私服で写っているものを見せた。

 加村はそれなりの身長があるし、アヤノは自分で言うのもなんだが、高校生にしてはかなり低い身長しかない。

 ここまでバラバラの外見的特徴で、どうして真っ先に高校生と判断したのか、後で聞いてみようと思い、黙って加村と店主の会話を聞いていたアヤノは、もう一つ気になる言葉を耳にした。


『都会から来たキミたちには想像も出来ないだろうけど』


 遠いところから、とかならばまだ何とか納得できた。駅からここまでがそれなりに遠かったから、その道のりのことを言っているのだと思うこともできた。けれど、これだけは納得できなかった。電車で来たにしても在来線だ。この辺に都会と呼べるくらい発展した場所はないし、離れたところから来たにしても、そこが都会だったとは限らないはずである。

 それなのに店主は、高校の件も都会からともよどみなく言っていた。


「う~ん。単純に外見で判断しただけなんだけど、もしかして違ったのかい?」

「いえ、合ってます。私たち私服だし、身長もバラバラなのでよく分かったなと」

「あはは、身長が低いことを気にしてるのかい? 大丈夫さ、女の子は小さい方が可愛らしい」

「後は、どうして都会から来たって分かったのかなって、私たちどこから来たとは言ってないのに」

「いやぁ、キミたちもここを見ただろう? この村と比べたらどこだって都会だよ」

「なるほど、そう言えば、祭りのある神社は隣ですよね? 今から見に行ってもいいですか?」

「ん? まだとくに面白くはないと思うよ」

「いえ、友達が見つかるように、神頼みもしておこうと」

「あぁ、なるほどね。じゃあ荷物は置いていきなよ、重いだろう?」


 アヤノと加村に向かって手を伸ばす店主。

 会話についていけなかった加村は促されるままに鞄を渡した。アヤノは自分の財布を抜き取って鞄を渡す。


「あれ、財布持って行くの? もしかして私を警戒してるのかな? 酷いなぁ?」

「違いますよ。お賽銭が必要じゃないですか」

「ははぁなるほどね。じゃあ気を付けて行ってきなよ」

「はい、ありがとうございます」


 軽く会釈をして、アヤノは戸惑う加村を引っ張るようにして商店から連れ出した。

 先ほど、店主に聞いたことは、本当に細かいことだった。アヤノが揚げ足取りをしただけで、店主は本当にそう思っているのかもしれない。

 ただ、加村と店主の会話を傍から聞いていて、もっと大きな違和感にアヤノは気が付いた。

 電車で出会った老婆を思い出す。

 老婆の言葉はどうだった?

 もっと方言を使って、訛っていたはずだ。

 商店の二人は?

 どうして標準語を話せるのだろうか。

 外は夕暮れ時、空にはいつの間にか分厚い雲がかかっていた。

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