第三話 秘密基地の覚醒と組織命名
フェンリの案内で森の最深部へと進むと、鬱蒼とした木々の間に、驚くほど巨大な古びた魔女の屋敷が現れた。
「おお……! ここを俺たちの秘密基地にするぞ!」
敷地内へ一歩足を踏み入れた瞬間、屋敷全体が眩い白銀の光を放ち、国を護っていたはずの”神レベルの結界”が、アジトを包み込むように自動展開された。
「な、何だ、この神の如き結界は……!? まさか、首領が張っているのですか!?」
フェンリが仰天する中、屋敷の扉が勝手に開き、二階の指令室の壁一面に幾つもの五芒星陣が浮かび上がる。
【管理者登録を検知……管理組織名を音声入力してください】
厳かな機械音声が響く。
短くて呼びやすく、特撮らしい格好良い名前。
こちらの肉体には竜の因子が合成されている。
「よし……組織名は『秘密結社・逆鱗』だ!」
【組織名:秘密結社・逆鱗……登録完了】
五芒星の陣から竜の鱗を模した美しい通信バッジが三つ、放物線を描いて飛び出してきた。
胸に着けると、フェンリは感動に震えて直立不動になる。
「最高だ……! これぞ男のロマン、秘密基地の完成だ!」
興奮のまま、フェンリに戦闘訓練をつけることにした。
前世の特撮番組で狼型怪人が使っていた、右腕を大きく引いて魔力を一点に凝縮させ、一気に振り下ろす「溜め技」の手本を見せる。
――ズガァアアアアアアアン!!!
ただの素振りのつもりだった。
しかし、収束したエネルギー波は、はるか西方へと直撃し、原生林の木々を何キロメートルにもわたって一文字に薙ぎ倒した。
「技の前の『溜め』はお約束……”オツヤク”だからな!」
「はっ! この”オツヤク”こそが、我らの必勝戦闘マニュアルと肝に銘じます!」
◇
一方その頃、崩壊寸前の聖都では、再び絶望の悲鳴が上がっていた。
「ひ、避難命令! 聖都のすぐ近くの東の森が、何者かの超絶的な一撃によって、一瞬で真っ二つに両断されました!」
前線で指揮を執っていたセウトの元へ、兵士が顔を青ざめて飛び込んでくる。
「何だと……!? 魔族の攻撃か?」
「い、いえ! 退却した魔族の残党も、その一撃に巻き込まれて大半が消滅しました! 生き残った魔族は『秘密結社・逆鱗の首領コージに触れた!』と泡を吹いて失神しております!」
(ただのアジトでの技伝授が、国家を滅ぼす天災として世界に轟き始めたとは、コージは微塵も思っていなかった)
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