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44歳おっさん、若返って異世界で秘密結社始めました 〜特撮オタでヒーローが好きなのにいつの間にか恐ろしい首領に見られてた〜  作者: 田島久護


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第二話 特撮オタクと獣人

「やっぱり、若返った二十歳の肉体は最高だな……!」


 聖都からはるか数里離れた東の原生林。


その開けた場所でひたすらに拳を突き出していた。


前世の趣味だったキックボクシングを二十年続けた技のキレが、痛みのない若い体で見事に再現されていく。


ワンツーから流れるような右膝蹴り。


空気を切り裂く風圧だけで、周囲の雑草がなぎ倒されていく。


「チッ……どこだ、ここは」


草木を分けて現れたのはボロボロの防具を身に纏い、左腕から血を流した狼の獣人だった。


「グォオオオオ!」

「クソッ! まだ追いかけてきやがったのか!」


その背後から黒い模様の巨大な虎が三匹、牙を剥いて飛び出してくる。


「な、人間!? お前ごときが敵う相手じゃない、逃げろ!」


狼の獣人が絶望の声を上げるが、特撮オタクとして目の前の弱者を見捨てる選択肢など存在しない。


「後ろに下がってろ、ワン公」


 獣人の襟首を掴んで後ろへ放り投げ、突進してくる先頭の虎の懐へ素早く踏み込む。


襲いかかる爪を紙一重でかわし、無防備な顎目がけて、体重を乗せたフックを叩き込む。


さらに姿勢を崩した頭部へ右膝蹴りを一閃。


――バキィイイン!


一撃で脳震盪を起こした虎が、白目を剥いて地べたに転がった。


その圧倒的な”物理”の威力を目の当たりにした残りの二匹は、尾を巻いて一目散に森の奥へ逃げ去っていく。


「な、なんて奴だ……。素手でモンスターをやりやがった……!」


 震える獣人を見つめ思う。


この世界の獣人は特撮の怪人にシルエットが酷似している。


これは育てるしかない。


「おい、行く当てがないなら俺の仲間にならないか?」


「……え? 救われた命、喜んでお供します!」


一族を追放されたという彼に、ビシッと指を突き差した。


「よろしい。では、組織の基本ポーズを教える。返事をする時は、両拳を斜め四十五度の方向へ一気に突き上げ、少し頭を下げてオツヤク!と叫ぶんだ」

「こ、こうですか……? オツヤク!」


 獣人が不格好にポーズを決めた瞬間、彼を覆う魔力の波長が、こちらの身体特性と奇妙に同調し、周囲の空間をピキリと震わせた。


◇


一方その頃、魔族の急襲に直面する聖都の戦場では、神官セウトが防戦一方に追い込まれていた。


「くそ、数が多すぎる! コージさえいれば、こんな奴ら……!」


 その時、突如として戦場に凄まじい”衝撃波”が吹き荒れた。


―ドォオオオオオオン!!!


「な、何だ、今の暴風は!?」


 前線にいた魔族数百体が一瞬にして消し飛ぶ。


「報告! 魔族の残党どもが『コージの旋風斬りだ!』と勘違いして、大パニックを起こし撤退を始めました!」


(はるか数里先の原生林で、コージがキックボクシングの風圧を発生させただけであるなど、聖都の誰も知る由はなかった)



第二話をお読みいただきありがとうございます。

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