表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/82

42話 太陽の属性

6/5誤字修正

「いいー?ゼーレちゃん、神力は~、二つとも全く同じ量で光属性と火属性に変換してー、流すのよ~?」


 ユーリさんが、私の後ろから念を押してきます。

 前回、メイさんとやったので、わかってます。大丈夫です。




 私は、光を失ったマホージンの前に立っていました。

 え?施設内にいるかもしれない鬼系魔族はどうなったのか、ですか?


 もちろん、片付けましたよ?シキさんが。


 水を抜けて施設に入った後、左右の扉を無視し、急勾配の下り坂を下りきった先にある壁を動かす前、まず、シキさんに私とユーリさんは指示されたんです。飛行している奴を打ち落とすように、と。

 …で、相手の人数を教えてくれないまま、シキさんは壁を押して足元にできた穴へ飛び込んだんです。

 ところが中は、流石に前回私が灯した光も消えていた為、真っ暗だったんです。打ち落とすもなにも、見えませんでしたよ!?

 シキさん、こんな中に飛び込んで……って、魔力が見えるんでしたっけ。けれどその時の私は、その事をすっかり失念していて、慌てて『明光(ミュール)』で部屋を明るくし、人数を確認したんです。


 シキさんが設置した花がある時は二人だった鬼系魔族ですが、私が明るくした時には、二十から三十人程度もいました。

 シキさんが飛び込んだ時に使ったと思われる、水の下敷きになった人以外は全員、壁や床を探っていた感じだったので、多分、脱出手段を探していたんだと思います。

 突然の事態にてんやわんやになりかけて、けれど何かの訓練を積んだ人達だったのか、シキさんの奇襲に対し、すぐに持ち直して戦闘が始まりました。


 …いえ、あれを戦闘と言っていいか、ちょっと疑問ではありますが。

 ヒガンさんが言っていたのは、これだったんですね。

 相手の魔術を己の魔術で相殺させるついでに相手の懐へ飛び込み、肌に一ヶ所、火傷を負わせるだけでバッタバッタと昏倒させていく手際の良さは壮観でした。上から見ていたので、その様をしっかり見させてもらいました。


 一応、私とユーリさんも攻撃神術は放ちましたよ?シキさんに指示された通り、飛行中の鬼系魔族に向かってだけですが。

 飛んでいるという事は、私達が開いて覗いていた天井の入口に辿り着けるわけなので、ここから出すわけにもいかず、しっかり打ち落とさせてもらいました。

 落下後は、もちろんシキさんの餌食です。

 途中、わざわざ敵に接触する危険な戦法を取らなくても、メディス王国の王都ディレアでやったように魔砲筒で倒せるのでは?と思ったのですが、私とユーリさんの攻撃で落とされても起き上がっていたので、やはり魔力を取ってしまうのが一番有効だったのでしょう。


 そんなこんなで二分も経たない内に、幹部らしき最後の一人になって、シキさんの言葉が彼等を地下世界へと帰還させたんです。

 曰く、「人間一人に手間取っているようでは、地上に出ても一瞬で全滅するだろう」と。

 ……シキさん、一応私達も攻撃したので三人だった上に、私達三人とも、人間以外の種族ですからね?と、思った私はおかしくないと思います。

 まあ、そのシキさんの言葉で慌てて撤退しようとした鬼系魔族の幹部っぽい人は、種族を見抜く目を持っていない程度の強さだったという事なんでしょう。シキさんが大量の水を発生させ倒れている鬼系魔族を光の消えたマホージンの上に集めると、悔しさと驚きが混ざった表情を鬼系魔族が浮かべ、全員を連れて地中へと消えました。




 …で、今に至るというわけです。

 魔王なシキさんとの戦いでは土属性を主力に使っていたユーリさんですが、実は火属性の方が得意だそうで、また二人で何回か挑戦しようと言ってみたのですが…。ユーリさんに断られてしまったのです。

 曰く、鬼系魔族には太陽の属性が有効なので、使えるようになった方が良いとの事。

 言われたすぐは、私もそれなら、と思ってここに立ったのですが、よく考えてみたらダメでした。


 だって私、太陽の属性は、存在すら知らなかったので、当然、太陽の属性の神術は一つも知らないのです。

 神力を太陽の属性に変換するだけで神術として発しなければ、何もしていないのと一緒です。

 …ユーリさんは、太陽の属性の神術を何か知っているのでしょうか。


 とにもかくにも、まずは太陽の属性を発現できなければ何も進みません。

 私は一つ深呼吸をして、神力を光属性と火属性に変換して放出し始めました。

 目指すは、前にシキさんがここで行った、あの光の粒子の操作です。

 光りの粒子を散らばせる事なく、マホージンの形に添わせていた、アレです。


 キラキラと舞う、赤と白の光の粒子。


 どうにか纏めてマホージンの形へ流す事はできたものの、赤と白の光が同じ量になりません。

 そもそも、光属性と火属性では経験の差がありすぎなのです。

 片や三十年近く使い続けてきた属性。片や訓練を初めて一ヶ月未満の属性。

 もう歴然の差ですね。


「―――…う、ううぅっ…!」


 シキさんとアイさんは、両腕をマホージンに掲げる私を前に、一言もしゃべりません。

 いえ、話しかけられても集中力が落ちるだけな気がするので静かでも良いのですが………なんか、こう、やりにくさを感じるといいますか…。

 あ、でも、頭の中でごちゃごちゃと色々考えてる時点で、集中できてませんね。

 白い光りは一定の量を保てますが、赤い光りは増えたり減ったりと、量の変動が止まりません。

 こ、このっ!


「…はふぅ……」


 結局できずに膝を付く私。頑張ってマホージンに沿わせた光の粒子も、あっけなく消えていきます。

 発動させてないのに、あれだけで上級神術二回分の神力が消費されてしまいました。


「難し過ぎます…」

「大丈夫よー。ほら、もう一度~」


 ユーリさんが容赦ありません。のほほんとした明るい声が、まるで私を追い立てるかのように響きます。

 …ひ、人ごとだと思って……!

 ですが、火の封印施設と思われる、あの温泉の地下では、八回も挑戦したんです。集中力が、あの時以上に必要な上、神力に至っては二倍必要なので、せめて四回くらいは頑張って挑戦しないと、ですよね。


 私は難し過ぎて萎える気持ちを叱咤し、再び立ち上がって神力を変換し始めました。



◇ ◇ ◆ ◇ ◇



「ユーリさん、ユーリさん、二人の神力を合わせる方向でやりませんか?」


 結局あれから、シキさんによる魔力譲渡の術で神力を回復させてもらいつつ、計十一回は挑戦しました。

 頑張りましたよ、私!…成果は出ていませんが。

 けれど、ユーリさんは全く甘くありませんでした。


「駄目よ~?ここでしっかり練習してぇ、できるようにならないとー」

「……せ、せめて見本が欲しいです…」


 できないものはできないんです!!せめてもの抵抗に、と私が言葉を口にすれば、ユーリさんとシキさんが虚を突かれたように、目をぱちくりとさせ、お互い顔を見合わせました。

 …え、まさかこの二人、見本という概念自体が無いとか言いませんよね?


「見本ができるならば、ゼーレに任せず自分で終わらせていたのだが」

「そもそも太陽の属性はー、天津神系しか使えない神術なのよ~」

「えっ!?」


 一応、見本の概念はあるんですね。

 と思う間もなく、混合神術?混合魔術?な概念すら、少し前まで知らなかった私からすると、衝撃的な話が飛び出しました。

 天津神系しか使えないって……、一部の種族にあるという、固有魔術みたいなものですよね?

 魔族によくある事例かと思っていたのですが、まさか神族にもあるなんて…!!


 って、今は追及するところじゃないですね。

 太陽の属性は、混合神術。それなら、他の混合神術で、属性変換した神力の動きを見せてもらう事ができれば、参考になるのではないでしょうか?


「あ、あの、太陽の属性じゃなくても良いんです。混合神術の属性変換された後の、神力の動きが参考にできれば、と思ったのですが…」

「ああ!そういえばゼーレちゃん、発動前の神力が見えるって言ってたわね~」

「そうなんですっ!なので、このマホージンに沿って神力を乗せて、発動前な状態にするところを見せて貰えたりは……」

「良いわよ~」


 やりました!了承を貰えましたよ!

 これで神力の動きを参考にできますし、何より少し休憩できそうなので、精神力も回復できそうです。


「んーと、それじゃぁわたしが得意なー、岩漿(がんしょう)神術でいくわね~」

岩漿(がんしょう)…?」

「本来は地中深くにある、溶岩よりも高温な灼熱の液体、と思っておけば大方間違いは無い」


 ユーリさんが私の隣に立ち、マホージンに両手を向けました。

 そして…一斉に黒、黄、赤の光がマホージンに沿った形で一斉に輝いたと思えば、一瞬後には全て暗い橙の光の粒子になっていたのです。


「…ユーリさん、三種類ではなく、二種類の混合はできませんか?それに、早いです。もう少しゆっくりだと嬉しいのですが…」

「二種類ー?それなら次は、氷の属性をやってみるわね~」


 私の少し生意気な要求に、どうやらユーリさんは応えてくれるみたいです。

 鬼なのか天使なのか、よくわからない人ですね。

 ユーリさんは暗い橙の光を消し、再びマホージンへ両手を向けました。


 すると今度はマホージンに沿った形で青と若葉色の光が薄っすらと浮かび、一拍後には水色に光の粒子へと変化して徐々に粒子の量を増やし始めました。

 …一応、二色の粒子は、混ぜてからマホージンに沿わせるのではなく、初めから沿わせるのだという事はわかったのですが…。


「混ぜる過程が謎仕様ですね…」

「うーん、わたしは何となくで使っているからー、説明は難しいのよね~」

「…ふるいにかけた粉を、卵白の泡へふわりと混ぜるような感じなのだが…。食事不要な神族には理解できんだろうな」

「「えっ!?」」

「…何だ?」


 何じゃないですよ!驚きの一言が聞こえましたよ!?


「シキさん、料理できるんですか!?」

「シキくんー、混合神術使えたの~!?」

「………」


 シキさんが、あの呆れた時特有の沈黙をしました。

 あれ?私達の疑問、そんなにおかしかったでしょうか?


「とりあえず見ていろ」


 シキさんが、ユーリさんと挟む形で私の隣に立ちました。

 ユーリさんと違い、両腕は下したままです。

 そして…、マホージンに沿って、黒く輝く粒子が現れたのです。他の色は見えません。

 しかもよく見てみれば、黒く輝く粒子は、私の火属性の光の粒子よりましとはいえ、僅かな量の変動が常に行われています。


 私は思わず、隣に立つシキさんの顔を見上げました。


「…ゼーレ、お前が見るべきは魔法陣の方だ」


 私の動きを察知して、すかさず叱るシキさん。

 え、だってしょうがないですよね?水属性も土属性も、弱っている状態であんなにバンバン使っていた人が、闇属性っぽい力を安定させた状態にできないって、普通思わないじゃないですか!

 …でも、そうですね。太陽の属性を発現させる為にも、しっかり観察しなくては、です。


 私が顔をマホージンの方に戻すと、待っていてくれたのか青い光りの粒子が現れ始めました。

 もちろん、マホージンに沿った場所に、です。

 そして徐々に量を増やし、黒く輝く粒子と同じ程度の量になりました。


 …って、あれ?なんだか、青い粒子も量が変動しているような…?


 疑問に思っていると、隣から衣擦れの音がし、視線がそちらに奪われました。

 シキさんが、今まで下げていた左腕を上げ、手の平をマホージンに向けたのです。

 これは…?


 何かを察してマホージンに目を向け直すと、ソレは始まりました。

 光の粒子が数個だけ、黒と青とでくっ付き、紺色の光になったのです。

 それでも光の粒子は大量にある為、何かの見間違いにも感じられる程度の変化でした。

 ですが、また数個、また数個、と、くっ付いて混ざる光の粒子が増えていきます。段々と混ざる感覚が狭くなっていき、仕舞いには一斉に変化したといっても過言でないほど、ザッと光の粒子は紺色になりました。


「シキさん…」

「あまり得意ではない方の属性をできる限り一定にし、得意な属性を得意ではない方の量に合わせて調節をする。最後に量がほぼ一致した時を見計らって二つの属性を混ぜれば良い」

「シキくん、何の属性にしたの~?」

「深海だ」


 あの紺色の光は、深海の属性だったんですね!

 …でも、水属性とどう違うのでしょうか?塩分があるか無いか…?


「深海の属性ー!?あれ、水圧に関する知識がないとー、使えないのよ~?」

「水属性での攻撃方法を研究していれば、勝手に身に付く」


 う…ん?ユーリさんの言葉ではとっても大変そうなのに、シキさんの言葉ではとっても簡単そうです。

 でも、一応、さっきまでよりはいい線いきそうな気がしてきました!


「シキさん、ありがとうございます。とりあえず、また挑戦してみます!」


 シキさんは私を一瞥すると、数歩下がって行きます。ユーリさんも、何故か首を傾げつつ、後ろに下がりました。

 本当はもっと早く教えて欲しかったのですが、効率を重視するきらいがあるシキさんが黙っていたからには、何か意図があったとしか思えません。

 私はもう一度、両腕をマホージンの方へと掲げました。


 思い浮かべるのは、さっきのシキさんの、光の粒子。

 黒い光は赤の光に、青い光は白の光に置き換えて真似をします。


 増減を繰り返す赤い光に合わせ、白い光も増減させるよう頑張る事数十秒。

 いえ、もしかしたら私が集中し過ぎたせいで、本当は数分かかっていた可能性もあります。

 神力的には数十分も持たない事がわかっているので、そこまではかかっていない事以外、わかりません。

 ですが、なんとなく、同じくらいの量に見えます。

 今です!


「えいっ!」


 右腕と左腕を交差させ、白と赤の光を混ぜる感覚を光に伝えます。

 そして。

 光は桃色になる事もなく、白みをおびた淡い黄色の光へと変わったのです。

 マホージンも、淡い黄色の光の粒子をぐんぐん吸収し、光を取り戻していくのが目に見えて判りました。

 成功したようです!




 もしかしたら、嬉しさのあまりに気を抜いた事が原因だったのかもしれません。


 後少しでマホージンが光りの粒子を吸収し終わる頃、パキンッと、私の鼓膜を純度の高い硝子が割れるような音が襲い、意識が遠のくのを感じました。


「ゼーレ!?」

「ゼーレちゃん!?」


 ああ、遠くで二人が叫ぶ声が聞こえます。

 申し訳ないのですが、ちょっと待っていてください。




 きっと、神力の使い過ぎだと思うので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ