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スルーがだめなら叩き折れ!(後)

残酷な描写あります。

「なぜ来なかった!」


 アルシュが青い槍を京介に突きつけながら叫ぶ。


「いや、逆になんであれで来ると思うのかが不思議だけど。」

「そうです。キョウ様のアポイントは秘書である私を通してもらわないと。」

「な、精霊持ちだと・・・。」


 秘書としての矜持が許さなかったのか、姿を現したモモにアルシュが驚愕する。


「ますます面白い。おまえ、さっき来なかった事は許してやる。その精霊を置いて行け。」


 京介は元々気が長い方ではない。大学に入ってからは主にナンパに合コンにと明け暮れていたが、

それまではヤンチャで、喧嘩に明け暮れる毎日を送っていたのだ。しかも疲れから非常に機嫌が悪い。


「ああ?なんでテメーに許されなきゃならねーんだ?バカか?逆にお前が謝れよ?俺の時間を無駄にしやがって。オラ、土下座しろ。」


 当然、キレる京介。


「貴様!私を愚弄するか?」


 槍で切り掛かってくるアルシュ。


「っち。話を聞かねーやつだな。この脳筋が!『アクセル』!」


 京介が戦闘モードにはいると展開された思考加速が体感時間を1/1000秒まで引き延ばす。

 そして『アクセル』は『神々の気まぐれ』を起動させるキーワードであり、

京介の身体機能を引き延ばされた体感時間にあわせる事がができる。


「『神々の気まぐれ』の起動を確認。超加速への最適化を開始」


 人の身では耐えられない超加速への最適化をモモが行う。

 摩擦や衝撃を世界検索で得た魔法の中から最適なものを選び相殺・緩和し、

京介が1/1000秒という世界の中で行動するに足りうる耐久力を与える。


「完了。」


 そして時が止まる。


 いや、止まったように見える世界。

 実際、アルシュや他の人間からすれば京介が恐ろしいスピードで動いているにすぎない。

 京介は音も追いつけないすべてが引き延ばされた世界でアルシュをみる。


「さて、どうしてやろうか?」

「この手の脳筋はしつこいですからね。二度と戦えなくなるよう、

身も心も折って差し上げるのが良いかと。」

「そうだね。」


 モモの黒い提案に笑顔で答える京介。

 止まっている(様に見える)アルシュの隣へ歩いて行くと。

 今、正に振り下ろそうとしている槍の柄をつかみ、魔法を解く。

 身体強化された京介の腕は難なくアルシュの槍を押さえ込み、

アルシュは突然移動したように見える京介に驚愕する。


「なっ」


 アルシュの仲間や集まってきた野次馬からも驚きの声がもれる。


「貴様!何をした!!」


 槍を押さえ込む腕をなんとかしようともがくが京介の腕はびくともしない。


「シッ」


 京介は焦るアルシュの唇にあいた手の人差し指をあてて黙らせる。


「コレからお前は負ける。そして負ければお前は俺の奴隷だ。いまなら土下座で許してやるよ?」


 京介の一方的な宣言にアルシュの顔が怒りで朱に染まる。


「だれが、貴様なんかのー」

「あっそ。でも、お前も勝手に決闘を押し付けたからな。俺も勝手にやらせてもらうぞ。」


 アルシュの言葉が言葉が終わるのを待つ事もなく答えると、

京介は少し強く槍を押さえる腕に力を入れる。


ベキッ


 一瞬でアルシュの持つ槍が握りつぶされる。


「え・・・」


 思考の追いつかないアルシュ。

 手の中で中折れした、自分の字なの元となった青い槍を交互に見つめている。

 その隙に京介はまた超加速を行い、今度はアルシュの後ろに回ると勢いよく膝を踏み抜く。


「あああああっ!」


 くだけた膝を抱え地面にのたうち回るアルシュ。

 先刻までの自信に満ちた表情はそこにはない。


「主人の前だぞ奴隷。頭が高けぇ。」


 超加速を解いた京介がのたうつアルシュを見下す。


「だ、誰が、ぎざまなんかの奴隷にぃ・・・!」


 上半身を起こし、下から獣のような形相でねめつける。


「おー、怖ぇ」


 言葉と裏腹に薄笑いを浮かべた京介は、上半身を支えるアルシュの腕を蹴りとばす。

 支えを失い顔面から地面に突っ伏す。

 起き上がろうともがくがそれはかなわない。

 アルシュの両腕は肘から曲がるはずのない方向に曲がっていた。


「ぎゃああああ・・・・」


 それを認識したアルシュはひとしきり絶叫した後意識を失なった。

 その有様に野次馬も静まり返る。


「やっとわきまえたか、奴隷。」


 静寂の中アルシェの頭髪をつかみあげる京介。


「・・・それまで!」


沈黙を破る声に京介が顔をむけると、そこには厳つい戦士風の男と

やたらイケメンの僧侶の格好をした男がいた。


「神よ彼の者に癒しの息吹を『ブレス』!」


 声を発したと思われる僧侶の格好をした男が

つぶやくとアルシュを淡い光を放つ魔法陣が包み、傷を癒して行く。


「おい、何勝手な事してんだ?」


 京介がすごむと戦士風の男が僧侶風の男をかばうように前に出る。


「俺たちはアルシュのクランの者だ。俺はフェキサ、こいつはベンジン。

 うちの姫さんの事だからだいたい想像がつくが、アンタちょっとやり過ぎじゃねえかい?」

「やり過ぎも何も、人の言い分も聞かずに襲ってきたのはこいつなんだが?」

「それにしてもだ。」

「バカが、てめえの価値観押し付けてんじゃねえ!こっちは命を狙われたんだぞ!」

「それは悪かった。だが、もう気は済んだだろ?許してやってくれ。」

「ってか、おまえさっきから人にもの頼んでんのに、何上からしゃべってんだ?」


アルシュを含め目の前の人間はこのエリアの顔的人物達なのだろう。

野次馬達もこの二人が出てくるとお開きとばかりに離れて行った。

まだ数人物見高い人間が残っているが。

だが、京介それが気に入らない。


「モモ!」

「はいキョウ様。『ディスペル』!」


モモが呪文を口にするとガラスのくだけたような音とともに、アルシュを包んでいた魔法陣が霧散する。


「な!私の神聖魔法が解除された!?」


治療に集中していたベンジンが驚愕の表情をあらわにする。


「こいつはもう、俺の奴隷だ!これ以上よけいな手出しをするようなら・・・」

 言って殺気と魔力を放つ。

 たじろぐ二人。


「じゃ、じゃあその奴隷を買いましょう!」


 ベンジンが気圧されながらも口を開く。


「いくら出す?」

「都合が付く限りあなたの言い値で買い取ります。」

「都合?こっちは理不尽に命を狙われたのに、なぜ、お前達の都合を考える必要がある?」

「で、ではどうすれば?」

「金セシルで5000万」

「バカな!城が建つぞ!」


 京介の出した金額に憤るフェキサ。

 

「もともと、お前達に売る気はないんでね。あ、払えるなら3分以内が期限だから急いだ方が良いよ。」


「き、貴様・・・。」


 フェキサの手が腰の剣にのびる。

 ベンジンも杖を構えている。


「なに?抜くの?お前ら最低だな。結局自分の言い分が通らなかったら殺そうとするとか、野党や山賊と同レベルだな。」


「ぐっ!」


 冷静になれば確かに京介には非はない。ここに付くまでモモの世界検索で知り得た情報では、この世界では奴隷制度は当たり前だし、アルシュが決闘の末今の状況になったのであれば仕方ない事だ。目の前の戦士や僧侶は常識人なのだろう臨戦態勢に入ったまま動けずにいる。


「話がないなら、もう行くぞ。」


 ベンジンの魔法であらかたの傷は癒えたが、未だ気絶したままのアルシュを担ぎ上げる。


「くそったれ!」


 我慢の限界なのか、フェキサが抜刀し切りかかる。

 京介は知る由もないが、フェキサはアルシュの師であり純粋な戦闘力ではアルシュの遥か上を行く。

 アルシュを無傷でボロボロにした目の前の男にももちろん勝つ自信があった。

 だが・・・。


「バカな!」


 衝撃とともに振り下ろされた剣を受け止めていたのはモモだった。

 体調20センチにも満たない体で、フェキサが繰り出す渾身の一撃を、その細い腕一本で防いでいた。


「いい加減にしなさい。キョウ様のアポイントは私を通して下さいと言ったはずです。」

「おお!」


 剣を引こうとするがモモにつかまれた刀身はぴくりとも動かない。


「お仕置きが必要ですね・・・。」


 モモがそういう呟き、刀身を掴む手に力を加える。

 乾いた音を立て刀身にひびが入ると、そのままくだけ散ってしまった。

 力を加えていた支えを失い前のめりに倒れるフェキサ。

 モモはフェキサを見下ろしながら。


「今後、キョウ様へのご用事は私をお通しください。」


 優雅に一礼すると、先行する京介の後を追って行った。


「大丈夫ですか?」

 ベンジンが駆け寄りフェキサに肩を貸す。

 フェキサは自分の手の中で柄のみとなってしまった愛剣を見ながらつぶやいた。


「化け物か・・・。」


 同日、ギルド内で期待の新興クランとして注目されていた、蒼槍のアルシュ率いる「青天の霹靂」は解散。その後「蒼槍」の字を持つ者を見た者もいなかった。











NO!ヒドイン!

「勇者はワガママ」はヒドイン撲滅運動を応援しています。

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