フラグなんて怖くネェ!(後)
久々の更新。
「お前、魔術師なんだってな?」
マッチョな男が京介へと歩み寄る。
「一応そうみたいだけど。何か用?」
警戒しなが答える京介。既にモモとの思考の動機は完了しいつでも動ける状態にある。
「見つけた。」
更に歩み寄ろマッチョな男。緊張感が高まり、次の瞬間ー。
「頼む、助けてくれ!」
マッチョな男は土下座していた。
「へ?」
いきなりの事に肩すかしを食らう京介。
「ニュート、先走るなって言っただろ!」
ニヤけ顔の男が慌てた様子で近づき、ニュートと呼ばれた男の頭をポカリと殴る。
「いてて,でもよウィンザー・・・。」
顔だけ上げたニュートがニヤけ顔に弱々く抵抗する。
「分かってる。」
そういってウィンザーも京介の前にひざまずきニヤけ顔を消し真剣な表情を京介に向ける。
「すまねえ。さっきのカウンターでの話聞いちまった。あんた魔術師だろ?たのむ!俺たち兄弟に力を貸してくれ!」
そういって手を付き頭を下げる。それを見てニュートも頭を下げる。
「イヤイヤイヤ、意味が分かんないから。とりあえず頭あげて。」
男二人にいきなり土下座されるという状況に慌てる京介。二人に顔を上げさせようとするが「頼む!」と繰り返すばかりで頑として動かない。困った事になったと京介が困惑していると
「いい加減にして下さい!キョウ様へのアポイントは全て私を通してからにして頂かないと困ります!」
ポケットの中に隠れていたはずのモモが目の前に現れ、動こうとしない男二人を一喝した。いきなり振って来た女の声に驚いた二人は驚いて顔を上げモモの姿を捉えると驚愕の表情を浮かべ固まった。
「すっげぇ、あんた精霊もちかい?」
我に返ったウインザーが感嘆の声を上げる。
「かわいいなぁ。俺精霊なんて始めて見るよ。」
おくれて、再起動したニュートも同じように声を漏らす。
「精霊?かわいい?」
その言葉に反応するモモ。
「おい、モモ・・・」
「なに、あんたたち話が分かるじゃない。いいわよ。キョウ様に頼み事があるなら私が聞くわ。大丈夫、予定は合コンってことにしておくからー」
「ばか。お前!」
調子に乗るモモを取り押さえる京介。しかし、時既に遅く。
「ありがとうございます!」
モモの言葉を了解と受け取った二人が床に額をこすりつけんばかりに頭を下げていた。
「っち。しかたない話は聞こう。だが頼みを聞くかどうかはその話次第だ。」
「わかった。」
ウィンザーが事情を話し始める。ウィンザーとニュートは同じ故郷で生まれた。ニュートにはペリーニという妹がおり、3人は兄弟のように仲良く育った。しかし、5年前に三人が住む町を魔王の配下が襲った事から3人の運命は大きく変わった。襲撃でニュートの両親が死んでしまったのだ。町も壊滅的被害を受けており、残された兄弟に差し伸べられる手はなかった。悲嘆にくれるニュートは自身と妹を養う為に冒険者になる事を決意した。ウインザーは両親ともに健在だったが、二人を放ってはおけずニュートとともに冒険者となり二人はチームで活動を始めた。幸いニュートの恵まれた体とウインザーの器用さで冒険者生活は軌道に乗り、妹を含め3人でそれなりの暮らしが出来るようになった。再び幸せな時間が訪れたのだ。しかし、二人が冒険者の初段になった時ペリーニも冒険者になりたいと言い出した。二人は猛反対したがペリーニの決意は固く、二人が仕事で町を離れている間に勝手に冒険者になっていた。最初は怒りもしたがなってしまったモノは仕方ないと、まだ弱いペリーニを守るため3人はチームとなり活動を始めた。そして昨日はペリーニの初段昇格の審査の日だった。審査はギルドが指定した依頼を一人でこなすものだ。大抵は町の周辺で魔物を討伐する依頼が選ばれる。今回ペリーニに指定された依頼の魔物も今までの経験から十分対応できる者だった。しかし、ペリーニは夜になっても帰ってこない。心配になったウインザーはペリーニの足跡を追った。探しに探して夜も空けようとした頃ウインザーはペリーニを見つけた。だが見つけた場所が最悪だった。ペリーニはゴブリンの集落に捉えられていたのだ。
「え?ゴブリン?そんなの雑魚じゃん。二人ならどうとでも出来るでしょ?っていうか説明長いな!?」
「確かに数匹くらいなら問題にならんのだが、ざっと見た限り50はいた。しかも集落を率いていたのがゴブリンシャーマンだったんだ。だから魔法を使える仲間が必要なんだよ。」
説明に口を挟んだ京介にウインザーが答える。
「でも、仲間探ししている余裕あるの?」
「ああ、ゴブリンが女をさらうのは繁殖の為だ。あいつらはメスが存在しないからな。ただゴブリンはバカだから最初にはらませるヤツを決めるのに3日は殴り合いをやってる。今回は集落の規模も大きいし昨日の今日なら大丈夫なはずだ。」
ウインザーが忌々しげに表情を歪める。
「俺たちも焦ってんだ。だけど特攻かけて妹だけが助かっても意味がねぇ。3人で家に帰りてぇんだ。だから・・・」
「「たのむ!!」」
再び二人が床に頭をこすりつける。
「家に帰りたい・・・か。」
京介は頭を下げ続ける兄弟を見下ろしながらつぶやく。
はっきりいって京介にとってこの世界の住人がどうなろうが知ったことではない。しかし「帰りたい」という言葉が京介の心をかき乱していた。
「分かった。妹を助けるのに協力しよう。ただ報酬はしっかりもらうぜ。」
「ありがてぇ!!」
「恩に着る!」
二人が顔を跳ね上げ、歓喜と感謝の言葉を口にする。
「じゃあ、報酬の話をしようか。」
京介が話を詰めるためギルドに備え付けてある打ち合わせ用のテーブルに移動しようと視線で促す。
土下座していた二人が立ち上がり移動しようとしたその瞬間。
「待て!そこの魔導士!!」
鋭い女の声が京介を呼び止めた。
振り返るとそこには鎧を着込みその細腕には似合わない大槍を担いだ髪の長い美女が立っていた。
「その話私も混ぜてもらおう!」




