スルーがだめなら叩き折れ!(前)
・・・・言い訳はしない!(キリッ)
「だれ?」
突然の闖入者に眉をひそめる京介。
そこには機動力重視の戦闘スタイルなのか、最低限の急所を金属がカバーする体のラインに合わせた革鎧に身を包んだ女が立っていた。
顔は多少きつめだが整っており十分美女のカテゴリーに分類される。しかし、その美貌より目を引くのは彼女が担ぐ長大な槍だった。
「蒼槍のアルシュ・・・。」
目の前の美女の名であろう言葉がニュートの口から漏れ出る。その表情は驚愕に見開かれている。蒼槍とは彼女が担いでいる大槍をさし示しているとわかる。
「大物そうだな・・・。モモ。」
「了解です。」
モモは京介の意味を汲み取り目の前のアルシェと呼ばれた女のステータスを京介の脳内に展開する。
『アルシュ=チェスター 18 女 LV4 生命力150 魔力0 攻撃力72 守備力51』
「ちなみにニュートとウィンザーはLV3位ですね。」
「二人の反応と字な的な呼び名からすると、LV4になると上位者の仲間入りって感じかな?」
「アルシュ気持ちは嬉しいがどういった風の吹き回しだ?」
京介がアルシュを検索している間も話は進んでいる。アルシュとは顔見知りのようだが良い関係ではないのか、ウインザーの話し方に若干のとげが含まれている。
「たしかにあんたが付いてくれりゃ心強いが、あんたの報酬は法外だ。俺たちには払えねぇよ。」
ウインザーの言葉を継いでニュートが続ける。しかし、目の前の美女はそれを鼻で笑うと
「そんなことはわかってる。でも今回はお金じゃないの。今私がほしーのはーーーーお前よ!」
ビシッと京介を指差す。
「はあ!?」
「またか・・・」
「ったく・・・」
アルシュのいきなりの発言に驚きの声をあげる京介。しかし残りの男二人には思い当たる節があるのか呆れた表情で頭を振る。
「どういうこと?あ、あれかい?俺に一目惚れ的な?」
「それはない。」
冷たいアルシュの答えが返ってくる。
悲しい。
「私はお前の力が欲しいの。いえ、正確にはこの子が欲してるのよ。」
艶かしく自分の槍をなでる。
「キョウ様。」
モモの言葉と同時に京介の脳内にアルシェの持つ武器の情報が展開される。
『魔喰いの槍:攻撃力95 特殊能力:魔力を喰らい攻撃力へ変換する。』
「へえ、魔力を喰う槍か・・・。」
「あら、わかるの?」
「まあね。」
「お前、面白いな。」
アルシェが京介ににじり寄る。
元の世界の女性とはちがう、野生的な女の香りが京介の鼻をくすぐる。
「お前・・・・私と戦え!」
「え?まさかとは思ったけどここでバトルジャンキーフラグ!?」
突然の事に呆然となる京介。
「やっぱり・・・。」
「そうなるわな・・・。」
ウィンザーとニュートはなぜか納得顔である。
「二人とも、いいだろ?彼がだめになっても、ペリー二は私が助けてやるから。」
「って、俺らに聞かれてもなあ。」
「いやいやいや、戦わないし。魔力も渡すつもりもないし!」
流され気味の二人に、慌てて拒否する京介。
だが、そんな京介の言葉も歯牙にもかけず、アルシェはその長大な槍を京介に向け
「悪いが、お前に選択権等ないのだよ。ここで魔力を渡すか、戦って奪われるか。それとも・・・」
アルシェの目が鋭く細められ、さっきが溢れ出す。
突きつけられた槍がそれに呼応するようにバチバチと帯電する。
「死ぬか?」
決めるのは私だぞと、アルシェが獰猛な笑みで語る。
自分が負ける事など考えていない絶対強者の笑みだ。
「奥にギルドの訓練場がある。付いてこい。」
すっと殺気を納め、槍を引くと訓練場のあるであろうギルドの奥へと消えて行く。
アルシェの登場で、遠巻きにいた野次馬もあわせて訓練場の方に移動している。
取り残される京介とウインザー、ニュートの二人、
「じゃあさ・・・。」
京介が口を開く。
「旦那・・・。」
ウインザーが同情の眼差しを京介に送る。
「依頼の打ち合わせしよっか(笑)。」
「行かないんですかい!」
たまらずニュートが突っ込む。
「行くわけないじゃん。あの女一人でなんか言ってたけど、つき合う義理とかないしね。バカじゃね?」
「行くでしょ!もう完全に行く空気だったでしょ!?旦那、空気読んで!」
「空気で他人のワガママにつき合う気はない。それにしても『オマエニセンタクケンハナイノダヨ』とかマジ受けるしwww。」
耐えきれなくなったのか吹き出す京介。
「ほんとですよ。『ソレトモ・・・シヌカ?(キリッ)』とか、キョウ様のアノ病気のときよりイタイですwww。」
モモが笑いながらさらっと京介のイタイ思い出をばらしている。
「うるさいよ!?」
爆笑している二人をウインザーとニュートが呆れ顔で見つめている。
「あー笑った。じゃあ、場所かえよう。あのバカ女が戻ってきたらウザいし。俺はやく階級あげたいんだ。」
言ってギルドの出口へ向かう。
「お、おう。」
マイペースな京介に戸惑いながら続く二人。
こうして、京介は初のバトルジャンキーフラグをスルーしたのだった。
しかし・・・・。
「・・・・面白い。」
人気のなくなったギルドの受付でターナーに笑みが浮かぶ。
京介の知らないところで新たなフラグが立つのだった。
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モモ「どの口が言うのかしらね?」
京介「ほんとだよ。」




