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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第二章 CROSS社契約編

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80/130

第27話 第十階層の守護者

 翌日。


 俺――上塚賢吾は、いつも通り仕事を終えてから帰宅した。


 夕食。


 風呂。


 家事。


 翌日の準備。


 そこまで終えて、ようやくVR機器の前へ座る。


「今日は第十階層か」


 昨日、《南洞窟》第十階層へ到達した。


 転移地点も登録済み。


 その先には――。


《第十階層・守護区域》


 巨大な扉。


 つまり、十階層のボスだ。


 俺たちは情報なしで突入することを避け、いったんシズナへ戻った。


 今日はまず冒険者ギルドで情報確認。


 その後、問題なければ挑戦。


「ログイン」


◇◇◇


《リアルコンディションチェックを開始します》


《睡眠状態:良好》


《栄養状態:問題なし》


《水分状態:問題なし》


《体温:正常範囲》


《身体活動:良好》


《フルダイブ可能》


「……もう見慣れたな」


 最近追加された《リアルコンディションサポート》。


 現実側の身体状態が悪ければ、AWO側で警告や制限がかかる。


 最初はゲームに生活指導されているような気分だったが。


「安全機能なら、あった方がいいか」


 YES。


 ログイン。


◇◇◇


 《銀麦亭》。


「おかえり、ジョウゴ」


「ただいま、マリアさん」


 食堂には――。


「ジョウゴ!」


 ミナ。


「待ってたぞ!」


 カイト。


「今日はボス情報からだな」


 レント。


 全員揃っている。


 そして。


「ジョウゴォ!」


「……バルガまでいる」


「銀星砂!」


「今日はボス戦」


「その前に工房!」


「行かない」


「なんでだ!」


「昨日言っただろ」


 南洞窟産銀星砂は持っている。


 だが、今日はダンジョン。


「帰ってきたら」


「絶対だぞ!」


「生きて帰れたらな」


「縁起でもねぇこと言うな!」


「ボス戦だから一応」


 ミナが苦笑する。


「ジョウゴらしいね」


◇◇◇


 冒険者ギルド。


 南洞窟情報板。


《南洞窟》


《第十階層・守護区域》


《確認済みボス候補》


 俺たちは掲示板へ近づく。


「候補?」


 カイト。


「固定じゃないのか?」


 レントが読む。


「一定期間ごとに守護者が変化する可能性あり」


「へぇ」


 ミナ。


「今回は?」


 最新情報。


《最終確認:昨日》


《ボス》


《アーマードミノタウロス》


《推定Lv:13》


「ミノタウロス」


 俺は名前を見る。


 大型。


 高火力。


 重装甲。


 そういうタイプだろう。


 さらに。


《主武器:大型戦斧》


《特徴》


《高い物理攻撃力》


《前方広範囲攻撃》


《突進》


《一部位に装甲》


《HP低下時、攻撃頻度上昇》


「狂暴化あり」


 レント。


「推奨人数?」


《4~6人》


「四人でもいける」


 カイトが言う。


「レベルは?」


「13」


「俺たち10」


 ミナが少し不安そう。


「推奨帯は10~14だけど……」


「ボス単体だと上寄りだな」


 俺は考える。


 不可能ではない。


 でも。


「準備は必要」


 俺。


「回復薬」


「ある」


 ミナ。


「盾耐久」


「昨日整備した!」


 カイト。


「矢」


「十分」


 レント。


「俺は試作四号」


 耐久問題なし。


「魔力刃は?」


 ミナ。


「切り札」


 常時使わない。


 MP78。


 起動1。


 斬撃ごとに2前後。


 使いどころを選ぶ。


◇◇◇


「配信する?」


 カイト。


「する」


 久しぶりのボス戦。


 CROSS LIVEとしても見たい人は多いだろう。


 でも。


「初見だから、コメントから攻略情報は拾わない」


「なんで?」


 ミナ。


「知りすぎると初見じゃなくなる」


「なるほど」


 レント。


「コメント要約は切る?」


「戦闘中だけ切る」


 それがいい。


◇◇◇


 南洞窟入口。


 配信準備。


【AWO】南洞窟・第十階層ボスに挑戦します


《NPCプライバシー自動保護:ON》


《位置情報遅延:ON》


《現実身元保護:ON》


《コメント要約:ON》


「始めます」


《LIVE――START》


『きた!』


『ボス戦!』


『ミノタウロス!?』


『Lv10でいける?』


『ジョウゴ慎重だから大丈夫そう』


《現在視聴者数:33,417》


「こんばんは。今日は南洞窟第十階層の守護者へ挑戦します」


『試作四号使う?』


「使います」


『魔力刃!』


「必要なら」


『温存勢』


「MP有限なので」


◇◇◇


 転移。


《南洞窟第十階層》


 巨大な扉。


 今日は。


 開ける。


「準備」


 カイト。


 盾。


「OK」


 レント。


 矢。


「OK」


 ミナ。


 杖。


「OK」


 俺。


 試作四号。


「行くぞ」


 扉へ手をかける。


 ゴゴゴゴゴ……。


 重い音。


 開く。


◇◇◇


 広い円形空間。


 中央。


 巨大な影。


 人型。


 牛の頭。


 全身を厚い革と金属板で覆っている。


 右手。


 巨大戦斧。


《BOSS》


《アーマードミノタウロス Lv.13》


「来た」


 ミノタウロスが顔を上げる。


「ブオオオオオオオッ!!」


 咆哮。


 空気が震える。


『でかっ!』


『斧やばい』


『頑張れ!』


「コメント表示切る」


《戦闘集中モード》


《コメント表示:最小化》


「カイト!」


「任せろ!」


 前。


 俺は右。


 レント左後方。


 ミナ中央後方。


「開始!」


◇◇◇


 ミノタウロス。


 いきなり突進。


「来る!」


 カイト。


 盾を構える。


「真正面は駄目!」


「分かってる!」


 盾を斜め。


 ガァァァン!!


「ぐっ!」


 カイトが大きく押される。


 でも。


 完全には吹き飛ばない。


「今!」


 レント。


 矢。


 首。


 カンッ!


「弾かれた!」


「装甲!」


 俺。


 見る。


 胸。


 肩。


 腕。


 脚。


 全部が硬い。


「関節!」


 膝裏。


 脇。


 装甲の隙間。


「そこだ」


 ミノタウロスがカイトへ戦斧を振り下ろす。


「カイト下がれ!」


 ドォン!!


 床が割れる。


 俺は横。


 一歩。


 膝裏。


 試作四号。


 通常。


「ふっ!」


 斬。


《アーマードミノタウロスにダメージ》


 通った。


 でも浅い。


「硬い」


 反撃。


 斧横薙ぎ。


 速い。


《見切り》


 低く。


 潜る。


 ギリギリ。


「危なっ!」


 カイト。


「喋るな!」


◇◇◇


 ミナ。


「《ライトボルト》!」


 光。


 顔。


 ミノタウロスが怯む。


「目には効く!」


 レント。


「狙う」


 矢。


 目元。


 命中。


「ブオオッ!」


 怒った。


「ヘイト変わった!」


 レント。


 ミノタウロスが向く。


「カイト!」


「引き戻す!」


 盾打撃。


 ガン!


「こっちだ!」


 咆哮。


 再びカイトへ。


「盾役って大変だな」


「今さら!?」


◇◇◇


 数分。


 削る。


 関節。


 脇。


 首の隙間。


 急所はある。


 でも。


 硬い。


《BOSS HP:71%》


「まだ七割」


 ミナ。


「MPは?」


「92/112」


「余裕ある」


 カイト。


「盾耐久78%!」


「問題なし」


 レント。


「矢残り十分」


 俺。


《HP:181/194》


《MP:78/78》


 魔力刃はまだ使ってない。


「後半用」


◇◇◇


 ミノタウロス。


 戦斧を両手。


「何か来る!」


 レント。


 大きく振りかぶる。


「離れろ!」


 ドォォォォン!!


 戦斧が床へ。


 衝撃波。


「うわっ!」


 ミナが後ろへ。


「ミナ!」


「大丈夫!」


《HP:137/161》


「範囲攻撃」


 次。


 また構える。


「連発する?」


「いや」


 ミノタウロスが息を吐く。


 隙。


「今!」


 全員。


 攻撃。


 俺。


 膝。


「斬!」


 レント。


 目。


 カイト。


 盾殴打。


 ミナ。


 光魔法。


《BOSS HP:54%》


「半分!」


◇◇◇


 その瞬間。


 ミノタウロスの身体が赤く光る。


「来た」


《狂暴化》


 咆哮。


 攻撃速度。


 上昇。


「カイト!」


「分かって――」


 速い。


 斧。


 ガァン!


「ぐあっ!」


 カイトが飛ぶ。


「カイト!」


《HP:104/224》


「半分持ってかれた!」


「ミナ!」


「《ライトヒール》!」


 回復。


 でも。


 ミノタウロス。


 追撃。


「させない!」


 俺が入る。


 斧。


 正面。


 受けたら無理。


《見切り》


 軌道。


 斜め。


 試作四号を添える。


《受け流しLv.1》


 ガギィィン!!


「っ!」


 重い。


 腕が痺れる。


 でも。


 流れた。


「ブオ!?」


 ミノタウロスの身体が崩れる。


「今だ!」


《崩し》


 足。


 腰。


 重心。


 巨大な相手。


 完全には倒れない。


 でも一瞬。


 傾く。


「レント!」


「分かってる!」


 矢。


 目。


「ミナ!」


「《ライトボルト》!」


 光。


 そして。


「カイト!」


「戻った!」


 盾。


 突撃。


 ドン!!


 ミノタウロス。


 膝をつく。


「ここ」


 俺。


 MP。


 流す。


 スゥゥゥ――。


 試作四号。


 青白い光。


《魔力刃補助:ON》


《MP:77/78》


「行く」


 首。


 装甲と頭部の間。


 隙間。


「ふっ!」


 一閃。


 スッ――。


《クリティカル》


《BOSS HP:38%》


「入った!」


◇◇◇


 怒り。


 ミノタウロスが立つ。


 戦斧。


 連続。


 一。


 二。


 三。


「速い!」


 カイト。


 盾。


 一撃目。


 ガン!


 二撃目。


 流す。


 三撃目。


「無理!」


「下がれ!」


 交代。


 俺。


 全部は受けない。


 かわす。


 流す。


 退く。


 攻撃しない。


 生存優先。


「レント!」


「左脚削る!」


 矢。


「ミナ!」


「カイト回復!」


 役割。


 崩さない。


◇◇◇


《BOSS HP:22%》


 残り。


「もう少し!」


 ミナ。


「ここから油断しない」


 俺。


 ミノタウロス。


 また衝撃波。


「離れろ!」


 ドォォン!!


 全員回避。


 その直後。


 突進。


「カイトじゃない!」


 俺。


 標的。


「来た」


 真正面。


 巨大。


 速い。


「ジョウゴ!」


 ミナ。


 逃げても追いつかれる。


 なら。


 ギリギリ。


 引きつける。


 一歩。


 半歩。


 角。


 肩。


 軌道。


《見切り》


「今」


 身体を横。


 角が通過。


 試作四号。


 魔力刃。


 青。


 すれ違いざま。


「斬!」


 脇。


 深く。


《クリティカル》


《BOSS HP:11%》


「ブオオオオッ!!」


「まだ!」


 ミノタウロス反転。


 レント。


「目!」


 矢。


 命中。


《BOSS HP:8%》


 ミナ。


「《ライトボルト》!」


《BOSS HP:5%》


 カイト。


「これで!」


 盾。


 突撃。


 ドン!


《BOSS HP:2%》


「ジョウゴ!」


「ああ」


 最後。


 斧が上がる。


 俺も。


 刀を構える。


 魔力。


《MP:67/78》


 踏み込む。


 相手が振る前。


 懐。


「ふっ!」


 横一閃。


 スッ――。


 一瞬。


 静寂。


 そして。


《アーマードミノタウロスLv.13を討伐しました》


◇◇◇


 巨体。


 倒れる。


 ドォォン!!


「…………」


「…………」


「…………」


 カイト。


「勝った?」


 ミナ。


「勝った!」


 レント。


「ああ」


 俺。


「ふぅ……」


 魔力刃OFF。


 試作四号。


 確認。


《耐久値:86%》


《魔力経路:安定》


「問題なし」


「まず自分のHP確認しろ!」


 カイト。


「181」


「高っ!」


「俺は受けてないから」


「俺は盾だから受けたんだ!」


「ありがとう」


「急に素直!」


◇◇◇


 戦闘集中モード解除。


 コメント。


 爆発。


『おおおおおお!』


『勝った!』


『Lv10四人でLv13!』


『受け流しやばい』


『カイト盾役お疲れ!』


『ミナ回復ナイス!』


『レント安定してた!』


『最後かっこよすぎ』


《現在視聴者数:186,503》


「十八万……」


 また増えてる。


「こんばんは……じゃないな」


 カイト。


「終わった後だぞ」


「とりあえず勝ちました」


『見てたwww』


「そうだった」


◇◇◇


 報酬。


《南洞窟・第十階層守護者討伐》


《初回討伐報酬》


《経験値獲得》


《討伐評価:A》


「A」


 ミナ。


「SSじゃないんだ」


「普通のボス戦だから」


「灰色谷基準やめよう」


 カイト。


 そして。


《ドロップ》


《ミノタウロスの硬角×2》


《重装皮×3》


《鉄塊×2》


《魔石・中×1》


「素材」


 バルガ喜びそう。


「また鍛冶か」


 レント。


「いや、まず売却も検討」


 俺。


「全部使うと思った」


「俺をバルガと一緒にするな」


◇◇◇


 さらに。


 宝箱。


「ミナ」


 三人。


「はい!」


 幸運担当。


「開けるよ!」


 カチャ。


《宝箱開封》


《希少素材判定》


「お」


《青月石×1》


「何これ?」


 ミナ。


 俺。


 鑑定。


《青月石》


《魔力を穏やかに蓄積する希少鉱石》


《魔力伝導素材との相性が良い》


「…………」


 全員。


 俺を見る。


「何?」


「ジョウゴ」


 カイト。


「鍛冶素材じゃない?」


「……そうだな」


「バルガ案件」


 レント。


「これは隠せないね」


 ミナ。


「配信中だからな……」


『バルガ呼んでくる』


「やめて!」


◇◇◇


 配信終了。


「今日はここまで」


『お疲れ!』


『十階突破!』


『次は十一階?』


「行きません」


『即答』


「十一階から推奨Lv14以上なので」


 まだLv10。


 無理。


「しばらく別の依頼やレベル上げです」


『慎重』


「生きて帰るまでが攻略です」


『正論』


「では、お疲れさまでした」


《LIVE――END》


◇◇◇


 銀麦亭。


「ただいま」


「おかえり」


 マリアさん。


 そして。


「ジョウゴォォォォ!」


「来た」


 バルガ。


「青月石!」


「早すぎる!」


「工房!」


「今日は行かない!」


「なんでだ!」


「ボス戦終わったばっかり!」


「素材は疲れねぇ!」


「俺が疲れてる!」


「じゃあ素材だけ!」


「渡さない!」


「なぜだぁ!」


 いつもの流れ。


 ミナたちは笑っている。


◇◇◇


 俺は椅子へ座る。


 今日。


 Lv13ボス。


 四人。


 勝利。


 数字だけなら不利。


 でも。


 カイトが受け。


 レントが削り。


 ミナが支え。


 俺が隙を作る。


 一人では無理だった。


「やっぱり」


 俺は呟く。


「ステータスだけじゃないな」


「何が?」


 ミナ。


「強さ」


 レベル。


 装備。


 技能。


 現実の技術。


 判断。


 連携。


 全部。


「それがパーティーだろ?」


 カイト。


「たまにいいこと言うな」


「またそれ!?」


 笑い。


◇◇◇


 そして。


 視界端。


 システム通知。


《経験値が一定値に到達しました》


《次回レベルアップまで:62%》


「まだLv11は先」


「次何する?」


 ミナ。


「普通の依頼」


「また?」


「また」


 大事件だけがAWOじゃない。


 むしろ。


 普通の冒険。


 普通の生活。


 その積み重ねがいい。


 ただ。


 机の上。


《青月石》


 青く。


 淡く。


 光る。


 そして横。


 バルガ。


「ジョウゴ」


「何?」


「明日」


「……はい」


「工房」


「分かったよ」


「よっしゃ!」


 俺はため息。


 南洞窟十階層突破。


 新素材。


 そして。


 次はまた――。


 刀研究の日になりそうだった。

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