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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第二章 CROSS社契約編

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第18話 俺は余計なことを言ったらしい

前回と今回はわたくしバモスが少し介入(アップデートや法律等)をAIと相談した上で行いました。

よって前回と今回は介入イベントだと思ってくださいm(_ _)m

 仕事を終え、夕食と風呂、それから最低限の家事を済ませた俺――上塚賢吾は、いつものようにAWOへログインした。


 今日はミナたちと《シズナ南方街道》の共同依頼について相談する予定だ。


 推奨Lv8~11。


 現在Lv9の俺たちにはちょうどいい。


 初めてのスポンサー案件も正式に決まったため、次回配信では冒頭に数分だけ紹介を入れ、その後は普段通りのAWO生活を配信する。


「さて、ログイン――」


 そう思った瞬間。


 視界が暗転したまま、いつもとは違うウィンドウが表示された。


《Another World Online》


《簡易アップデート Ver.1.12》


「アップデート?」


 大型アップデートから、まだそれほど経っていない。


《今回のアップデートでは、生活系システムの一部拡張を実施しました》


「生活系?」


 表示を送る。


《追加項目》


《満腹度システム》


《食べ過ぎ状態》


《飲酒・酔いシステム》


《二日酔いシステム》


《酒類年齢確認》


《酒類販売・提供規則》


「…………」


 俺は黙った。


 なんだろう。


 ものすごく嫌な予感がする。


《満腹度システム》


《従来の空腹状態に加え、食事量に応じて満腹度が変動するようになりました》


《適量の食事では従来通り料理効果を得られます》


《満腹状態では追加の食事量が制限されます》


《満腹状態を超えて過剰に食事を続けた場合、《食べ過ぎ》が発生する場合があります》


「…………」


 俺は数日前の記憶を掘り起こした。


 銀麦亭。


 厨房。


 ミナ。


 そして俺。


『空腹システムあるけど満腹システムもそのうち来そうだな』


「…………本当に来た」


 フラグだったらしい。


◇◇◇


 まだ続きがある。


《状態異常:食べ過ぎ》


《主な影響》


《すばやさ低下》


《身体反応低下》


《スタミナ消費量増加》


《激しい運動時、《気分不良》が発生する場合があります》


《料理による追加効果が低下します》


「妙なところでリアルだな……」


 食べ放題した直後に全力疾走。


 確かに現実でもやりたくない。


 問題は次。


《飲酒システムを拡張しました》


《酒類の摂取量、種類、キャラクター状態等に応じ、《ほろ酔い》《酔い》《泥酔》などの状態が発生します》


《酔い》


《技量低下》


《すばやさ低下》


《平衡感覚低下》


《武器操作精度低下》


《魔法制御精度低下》


「戦闘前に飲むなってことだな」


 さらに。


《過度の飲酒後、宿泊・ログアウト等を行った場合、次回ログイン時に《二日酔い》が残る場合があります》


「ログアウト逃げ対策まであるのか」


《状態異常:二日酔い》


《HP自然回復速度低下》


《MP自然回復速度低下》


《すばやさ低下》


《技量低下》


《気分不良》


《一部食事効果低下》


「……ゲームで二日酔い」


 AWO運営。


 生活に本気すぎないか?


◇◇◇


 そして次。


 ここから表示の雰囲気が少し変わった。


《重要:酒類に関する年齢制限について》


《AWOでは酒類アイテムを年齢制限対象として管理します》


《日本国内アカウントについては、登録された本人確認情報に基づき20歳以上であることを確認します》


《20歳未満のプレイヤーは、酒類の購入・注文・飲酒・譲受を行うことができません》


「そこは当然か」


 俺は26歳なので対象外。


 ただし、アバターの見た目は関係ないらしい。


《アバター外見・種族・ゲーム内設定年齢は判定に影響しません》


 つまり。


 屈強な髭面のドワーフでも、中身が17歳なら酒は飲めない。


 逆に小柄な種族のアバターでも、本人が20歳以上なら飲める。


 年齢制限は現実側の本人情報で判定。


「合理的だな」


 さらに読む。


《NPC経営店舗では、対象プレイヤーへの酒類販売・提供を自動的に拒否します》


《プレイヤー経営店舗についても同様の制限が適用されます》


《通常の販売システムでは、20歳未満のプレイヤーへの酒類販売処理そのものが実行できません》


 ここまではシステムで止める。


 しかし――。


《成人プレイヤーによる代理購入後の不正譲渡等、システムを迂回した提供行為についても規約違反となります》


「ちゃんと塞いでるな」


 そして。


《酒類販売・提供規則》


《違反行為が確認された場合、内容に応じ以下の措置が実施されます》


《警告》


《ゲーム内罰金》


《酒類販売資格の一時停止》


《店舗営業の一時停止》


《酒類販売資格の剥奪》


《悪質・常習的違反:アカウント利用制限および運営調査》


 ここまではゲーム内処分。


 だが最後だけ。


 赤い枠。


《重要》


《ゲーム内で確認された行為が、現実世界における犯罪その他の法令違反に関連している疑いがある場合、通常のゲーム内処分とは別に対応します》


《関連ログを保全し、運営会社の法務・安全管理部門による調査対象となります》


《必要な場合、法令および適法な手続きに従い、警察その他の関係機関への対応を行う場合があります》


「……そこはゲームじゃ済ませない、か」


 第一章でもそうだった。


 AWO運営は、普通のゲームプレイへ過剰に介入しない。


 NPC同士の問題。


 ゲーム内の犯罪組織。


 クエスト。


 プレイヤー同士の競争。


 基本的には世界の中で処理される。


 だが。


 現実世界の犯罪が絡めば話は別。


「まあ、当然だな」


 ゲームだから。


 アバターだから。


 匿名だから。


 それで現実の法律まで無視できるわけではない。


《以上の内容を確認しましたか?》


《YES/NO》


「YES」


 押す。


《年齢区分を確認しています》


 数秒。


《確認完了》


《酒類利用資格:20歳以上》


「こんな表示まで出るのか」


《AWOの世界を安全にお楽しみください》


 ようやくログイン。


◇◇◇


 光が晴れる。


 いつもの《銀麦亭》。


「おかえり、ジョウゴ」


「ただいま、マリアさん」


 そして。


「ジョウゴ!」


 来た。


 ミナだ。


 すごい勢いでこちらへ歩いてくる。


「どうした?」


「アップデート!」


「見た」


「満腹システム!」


「見た」


「食べ過ぎ!」


「それも見た」


「ジョウゴ!」


「なんだよ」


「余計なこと言うから!」


「俺は運営じゃない!」


 やっぱり言われた。


「この前言ったじゃん!」


 ミナが俺を指差す。


「『満腹システムもそのうち来そう』って!」


「言ったけど!」


「本当に来た!」


「俺に言うな!」


「フラグ立てた!」


「知らないよ!」


 銀麦亭の中に笑い声が響く。


「何の騒ぎだ?」


 カイト。


 その後ろからレントも来る。


「ジョウゴが満腹システムを実装した!」


「してない!」


「ジョウゴ、運営だったのか?」


「レントまで乗るな」


「冗談だ」


 分かりにくい。


◇◇◇


「でもさ」


 カイトが椅子へ座る。


「食べ過ぎると、そんなに酷いのか?」


「すばやさ低下、スタミナ消費増加、激しい運動で気分不良」


「うわ」


「カイトには関係ないんじゃない?」


 ミナが言う。


「俺はそんな食わねぇよ」


「お酒の方」


「…………」


「カイト?」


「…………」


 目を逸らした。


「お前、飲む気だったのか?」


「いや、酒場あるじゃん?」


「あるな」


「一回くらい飲んでみたいだろ?」


 俺は聞く。


「20歳以上?」


「当然だ!」


「ならシステム上は飲める」


「よし!」


「ただし泥酔すると――」


 説明。


「技量低下」


「うん」


「すばやさ低下」


「うん」


「平衡感覚低下」


「うん」


「武器操作精度低下」


「……うん」


「翌日、二日酔い」


「ゲームだよな!?」


「AWOだ」


「リアルすぎるだろ!」


 同感。


◇◇◇


「あら、ちょうどいいじゃない」


 マリアさんが料理を運んできた。


「何が?」


「新しい仕組み」


 テーブルへ料理。


 パン。


 スープ。


 肉料理。


 野菜。


「今までミナちゃん、食べすぎだったからねぇ」


「えっ」


 ミナが固まった。


「マリアさん?」


「食べ過ぎは身体に良くないからね」


「でもここゲーム……」


 マリアさんが笑顔になる。


「ここはAWOだよ?」


「…………」


 ミナ敗北。


「いただきます……」


 珍しく慎重に食べ始めた。


「ミナがゆっくり食べてる」


 カイトが驚く。


「食べ過ぎになりたくないもん!」


「別に一皿でならないだろ」


「分からないじゃん!」


 確かに。


 実装初日。


 どれくらいで満腹になるかは未知だ。


◇◇◇


 しばらく食べる。


 俺の視界に通知。


《満腹度:63%》


「数値も確認できるのか」


「えっ!」


 ミナが慌てて確認する。


《満腹度:91%》


「…………」


「食いすぎだ」


「まだデザート食べてない!」


「諦めろ」


「嫌!」


 その時。


 マリアさんが厨房から声をかける。


「今日は蜂蜜リンゴの焼き菓子があるよ!」


 ミナが固まった。


「…………」


 満腹度91%。


 焼き菓子。


 ミナの視線が往復する。


「食べるの?」


 俺が聞く。


「…………一個なら」


「やめとけ」


「一個だけ!」


「知らないぞ」


「大丈夫!」


 フラグにしか聞こえない。


◇◇◇


 焼き菓子到着。


「おいしい!」


 ミナは幸せそうだ。


 一口。


 二口。


 三口。


 完食。


 そして。


 ポーン。


「…………」


「どうした?」


「ジョウゴ」


「何?」


 ミナがこちらを見る。


《状態異常》


《食べ過ぎ》


「…………」


 俺は目を逸らした。


「笑っていい?」


「駄目!」


「でも」


「駄目!」


 カイトが耐えきれず吹き出した。


「ぶはっ!」


「カイト!」


「本当に食べ過ぎ付いた!」


「笑うなー!」


 レントが冷静に確認する。


「どれくらい下がった?」


「すばやさが……」


 ミナが表示を見る。


「下がってる……」


「共同依頼は?」


 俺。


「今日行く?」


「行かない」


「即答だな」


「こんな状態で護衛依頼行きたくない!」


 正しい判断。


◇◇◇


 その時。


 銀麦亭へ若いプレイヤーが入ってきた。


「すみませーん!」


「はいよ」


 マリアさん。


「エールください!」


 マリアさんが注文を受けようとして――。


 一瞬だけ動きを止める。


「あら」


「?」


「悪いけど、あんたには出せないね」


「え?」


《年齢制限対象》


 プレイヤー側にも表示されたらしい。


「俺のキャラ、二十五歳設定なんですけど!」


「現実の登録年齢で判断されるみたいだぞ」


 カイトが教える。


「マジか!」


「アバターの設定年齢は関係ない」


 俺も補足する。


「十八です……」


「じゃあ駄目だな」


「うわぁ……」


 プレイヤーは肩を落とす。


 するとマリアさん。


「代わりに葡萄ジュースならあるよ」


「……ください」


「はいよ!」


 数分後。


「これ普通に美味い!」


「ならいいじゃないか」


 本人も満足したらしい。


◇◇◇


「しかし徹底してるな」


 カイトが言う。


「ああ」


「プレイヤーの店も?」


「同じ」


 俺はアップデート内容を説明する。


「未成年相当の登録者には販売不可。代理購入して渡すのも禁止」


「やったら?」


「警告から始まって、悪質なら販売資格停止、営業停止、資格剥奪」


「結構重いな」


「さらに悪質ならアカウント制限と運営調査」


「その上は?」


 俺は少し真面目になる。


「現実の犯罪や法令違反に繋がっている疑いがあれば、ゲーム内だけで終わらない」


「……警察?」


「必要なら、そうなる可能性もあるらしい」


 カイトも表情を変える。


「そこは厳しいんだな」


「厳しいというか」


 俺は答える。


「そこまで行ったら、もうゲーム内の問題じゃないだろ」


「……確かに」


 レントも頷いた。


 AWOは自由だ。


 自由だからこそ。


 現実側まで何をしてもいい、という意味ではない。


◇◇◇


「さて」


 俺は立ち上がる。


「今日は共同依頼の相談だけにするか」


「賛成……」


 ミナも立つ。


 そして一歩。


「うっ」


 止まった。


「どうした?」


「走りたくない」


「食べ過ぎだから?」


「たぶん」


「試しに走ってみたら?」


「嫌!」


 説明には《激しい運動時に気分不良》とあった。


「明日までには治るだろ」


「絶対治す……」


「食べなきゃいい」


「それは無理」


「じゃあ適量」


「…………頑張る」


 ものすごく不安だ。


 その時。


 ポーン。


 俺の視界にCROSS LIVEから通知。


《次回スポンサー配信予定確認》


《長時間VR利用時の適切な休憩・健康管理について》


「…………」


 俺はミナを見る。


《食べ過ぎ》


 次にカイト。


「酒飲んでみたいな」


「やめとけ」


「一杯だけ!」


 そしてスポンサー案件。


 健康管理。


「……タイミング良すぎないか?」


「何が?」


「いや、なんでもない」


 次回配信。


 健康管理サービスの紹介。


 その直前にAWOでは――。


 食べ過ぎ。


 酔い。


 泥酔。


 二日酔い。


 満腹度。


 そんな生活系システムがまとめて追加された。


 俺は思う。


「……これから余計なことは口に出さない方がいいのかもしれない」


「もう遅いよ!」


 ミナから即座に返ってきた。


 こうしてAWOは。


 また一つ――。


 妙なところで現実に近い世界へ進化したのだった。

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