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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第二章 CROSS社契約編

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第14話 試作四号、初実戦

 《鉄刀・試作四号》。


 新素材《星蒼複合鋼》を使い、《魔力同調鍛造》と《魔力同調焼入れ》によって完成した新しい刀。


 品質は《希少》。


 軽量。


 重心は手元寄り。


 高い耐久性と魔力伝導性能。


 さらに、少量のMPを消費して刃部を一時的に強化する――。


《特殊効果:魔力刃補助》


 工房裏で行った試し斬りでは、十分すぎる性能を見せてくれた。


 だが。


「武器は実際に戦ってみないと分からない」


 俺――ジョウゴは、《銀麦亭》の一室で試作四号を腰へ差した。


 今日は実戦試験。


 そして――。


「配信もするか」


 視界端の《CROSS LIVE》を起動する。


 配信タイトル。


 少し考えてから入力した。


【AWO】新しい刀《試作四号》の実戦試験をします


 これでいい。


 変に大げさなタイトルを付ける必要はない。


《NPCプライバシー自動保護:ON》


《位置情報遅延:ON》


《現実身元保護:ON》


《荒らし対策:ON》


《緊急配信停止:使用可能》


「よし」


《LIVE――START》


 直後。


『きた!』


『ジョウゴだ!』


『試作四号!?』


『完成したの!?』


『星蒼複合鋼の刀!?』


『待ってました』


 コメントが一気に流れ始める。


《現在視聴者数:18,426》


「こんばんは、ジョウゴです」


 以前よりは配信開始の挨拶にも慣れてきた。


「前回の配信で研究していた《星蒼複合鋼》ですが、無事に安定化できました」


『おおおお!』


『成功したのか!』


『あの不安定だったやつ?』


『鍛冶配信の続ききた!』


「その素材を使って、バルガとミナに協力してもらって新しい刀を作りました」


 鞘ごと試作四号を外して、配信用カメラへ見せる。


「《鉄刀・試作四号》です」


『かっこいい!』


『三号より細い?』


『鍔が黒い』


『青くないの?』


「今は普通です」


『今は?』


『今はって何』


『怪しい言い方www』


「実際に見たほうが早いと思います」


 説明だけしても分かりにくい。


「今日はこれを実戦で試します」


『どこ行くの?』


『北西森林?』


『巨大な足跡のやつ?』


「北西森林には行きません」


 ここははっきり言っておく。


「追加調査の推奨Lvは12以上。俺はLv9なので、今回は東の森で試します」


『安全第一』


『ちゃんと適正レベル守るの好き』


『無茶しないジョウゴ』


『カイトなら行きそう』


「本人の前で言ってやってくれ」


「聞こえてるぞ!」


 部屋の外から声がした。


「……いるのかよ」


 扉を開ける。


「よう!」


 カイト。


 ミナ。


 レント。


 三人揃っていた。


「なんで?」


「試作四号の実戦試験だろ?」


 カイトが当然のように言う。


「見たい!」


 ミナ。


「万一があった時、一人より四人のほうが安全だ」


 レント。


「……それもそうか」


『四人組きた!』


『カイトいたwww』


『本人に聞かれてる』


『いつものパーティーだ』


「じゃあ行くか」


◇◇◇


 シズナ東門。


 街を出て東へ。


 目的地は《東の森》。


 北西森林よりシズナに近く、比較的低レベルの魔物が生息する地域だ。


「試す項目は?」


 レントが聞いてくる。


「まず通常状態での切れ味」


 歩きながら指を一本立てる。


「次に受け流し」


 二本目。


「連続使用時の耐久性」


 三本目。


「最後に《魔力刃補助》」


「ちゃんと決めてるんだね」


「新しい武器だからな」


「最初から魔力使わないの?」


 カイト。


「使わない」


「なんで?」


「通常状態の性能が分からなくなる」


「ああ……」


「比較するなら基準が必要だ」


『検証勢歓喜』


『こういうところ銀行員っぽ――』


 コメントが途中で流れていった。


「…………」


 今、危ないコメントなかったか?


《コメント要約》


《試作四号の検証方法への好意的反応》


《三号との性能比較を求めるコメント多数》


《現実職業に関する推測コメントを自動抑制》


「……優秀だな、荒らし対策」


 というか、身元保護機能まで仕事をしているらしい。


 神崎さんには後で感謝しておこう。


◇◇◇


「いた」


 森へ入って十分ほど。


 レントが足を止める。


「左前方。ゴブリン三体」


「レベルは?」


「5、5、6」


「ちょうどいい」


 試作四号を抜く。


 シャッ――。


 まだ魔力は流さない。


 銀色の刀身。


 青白い刃文は薄く見える程度。


「最初は普通に使う」


 俺たちは前進する。


「ギャッ!」


 こちらに気づいたゴブリンが棍棒を持ち上げた。


 一体目。


 正面から突っ込んでくる。


 棍棒が振り下ろされる。


《見切り》


 軌道を見る。


 半歩ずれる。


 刀を添える。


 ガッ――!


「……軽い」


《受け流しLv.1》


 棍棒の軌道が横へ流れる。


 そのまま手首を返す。


 斬る。


 ザンッ!


《ゴブリンLv.5を討伐しました》


「おお」


 自分でも声が出た。


 切り返しが速い。


 三号より軽い。


 だが重心が手元にあるため、刀身だけが勝手に走る感覚もない。


「次!」


 右。


 二体目。


 横薙ぎの棍棒。


 刀身を斜めに合わせる。


 真正面から止めない。


 力を流す。


 ガキン!


 そのまま踏み込む。


 袈裟。


《ゴブリンLv.5を討伐しました》


『速っ』


『三号より切り返し速くない?』


『受け流して即攻撃してる』


『刀が軽そう』


「俺もそう感じる」


 三体目。


 今度はレントもカイトも手を出さない。


「ギャアッ!」


 突進。


 俺は一歩。


 斬る。


 ザシュッ!


《ゴブリンLv.6を討伐しました》


 終了。


「どう?」


 ミナが駆け寄ってくる。


「かなりいい」


 刀身を確認。


 刃こぼれなし。


《耐久値:99%》


「三体で1%?」


「悪くないな」


 カイトが覗く。


「というか、普通に使っても三号より強くないか?」


「たぶん」


 でも。


「次は受け流しの耐久試験」


「さっきやってたじゃん」


「あれはゴブリンの棍棒だろ」


「じゃあ何でやる?」


 その時。


 レントが森の奥を見る。


「ちょうどいいのがいる」


「ん?」


「オーク」


◇◇◇


《フォレストオーク Lv.9》


「同レベルか」


 大柄。


 武器は太い木製棍棒。


 ゴブリンとは力が違う。


「俺が前に出ようか?」


 カイトが聞く。


「危なそうなら頼む」


「了解」


 試作四号を構える。


 オークが吠えた。


「ブオオオオッ!」


 来る。


 棍棒を振り上げる。


「ジョウゴ!」


 ミナの声。


「大丈夫!」


 見る。


 肩。


 肘。


 棍棒。


 軌道。


 真正面から受ければ、力で負ける。


 だから――。


 受けない。


「ふっ!」


 ガギィン!


 接触する瞬間だけ刀身を合わせる。


 斜め。


 棍棒の力を外側へ逃がす。


《受け流しLv.1》


 だが。


「重っ……!」


 衝撃はある。


 ステータスが見えるようになったからこそ分かる。


 俺の《力》は31。


 《防御力》は27。


 Lv9の剣士。


 技術で流せても、身体能力差が消えるわけじゃない。


「でも!」


 オークの棍棒が地面へ落ちる。


 体勢が崩れた。


《崩し》


 踏み込む。


 胴。


 斬る。


 ザンッ!


「ブオッ!」


 一撃では倒れない。


 オークが反転。


「もう一回来る!」


 カイト。


「分かってる!」


 今度は横薙ぎ。


 見切る。


 刀身を合わせる。


 ガァン!


 流す。


 足を入れ替える。


 身体を回す。


 返す。


 斬撃。


 ザシュッ!


《フォレストオークLv.9を討伐しました》


「ふぅ……」


『すげえ』


『レベル同じでも力違うな』


『真正面から受けてない』


『これがジョウゴの戦い方か』


 刀身を見る。


《耐久値:96%》


「二回強い攻撃を流して3%減少」


「問題ある?」


 ミナ。


「いや」


 むしろ優秀だと思う。


「試作三号より耐久性高い」


「星蒼複合鋼、成功だな」


 カイトが笑う。


「まだ最後がある」


「魔力か」


「ああ」


◇◇◇


 少し休憩。


 HP。


 問題なし。


 MP。


《74/74》


「じゃあ最後」


 試作四号を抜く。


「魔力を流す」


『きた!』


『青くなるやつ!?』


『待ってました』


『魔力刃!』


「そんな派手なものじゃないぞ」


 意識を柄へ。


 MPを僅かに流す。


 スゥゥゥ――。


 鍔元。


 一本の青白い光が走る。


 柄から。


 刀身。


 切っ先。


 さらに刃文が淡く青白く浮かび上がる。


『うおおおお!』


『光った!』


『かっこいい!』


『いやこれは人気出る』


「見た目は派手になったな……」


 俺としてはもっと地味な想定だった。


 ただし光量は弱い。


 暗い場所なら目立つ程度だろう。


《MP:73/74》


「消費1」


「維持は?」


 ミナが聞く。


「まだ減ってない」


 どうやら起動時に1。


 維持や攻撃時に追加消費する可能性がある。


「敵」


 レントが指差す。


《フォレストウルフ Lv.8》


 一体。


「ちょうどいい」


 ウルフがこちらへ気づく。


「グルルル……!」


 低く構えた。


 来る。


 速い。


 跳躍。


 爪。


 俺は――。


 一歩だけ前へ出た。


「え?」


 ミナの声。


 刀を振る。


 横一閃。


 スッ――。


 手応えが――。


「軽すぎる」


 ウルフが俺の横を抜ける。


 着地。


 その直後。


 身体が光へ変わった。


《フォレストウルフLv.8を討伐しました》


「…………」


『え?』


『一撃?』


『何した?』


『速すぎて分からん』


『切れ味おかしくない?』


 俺も刀を見る。


《MP:71/74》


「起動1、攻撃で2……かな」


「そこじゃないだろ!」


 カイトが叫ぶ。


「今の切れ味だよ!」


「確かに」


「冷静だな!?」


 刃を確認。


 異常なし。


 魔力経路。


《安定度:97%》


 変化なし。


「もう一匹試す」


「まだやるの!?」


「一回だけじゃ分からない」


 レントが笑った。


「ジョウゴらしい」


◇◇◇


 その後。


 ゴブリン二体。


 フォレストウルフ二体。


 計四体で追加試験。


 結果。


《魔力刃補助》


 起動時MP消費――1。


 一回の攻撃につきMP消費――おおむね2。


 魔力を切れば維持消費なし。


 切れ味――通常時より大幅上昇。


 刀身のブレ――低下。


 耐久値への悪影響――現時点では確認できず。


「常時使うものじゃないな」


 俺は結論を出した。


「なんで?」


 カイト。


「俺のMPは少ない」


 現在残量。


《MP:63/74》


「魔法職じゃないからな」


「じゃあ強敵用?」


「それがいいと思う」


 普段は通常状態。


 必要な時だけ魔力を通す。


 硬い敵。


 確実に仕留めたい一撃。


 武器同士が接触する瞬間。


「切り札みたいな使い方か」


「そうなるな」


 俺は魔力を止める。


 青白い光が消える。


 普通の刀へ戻った。


 その時。


 ポーン。


《特殊武器の実戦使用データを確認しました》


《鉄刀・試作四号》


《実戦適合判定――良好》


「お」


《特殊効果:魔力刃補助》


《使用条件を確定しました》


《使用者のMPを消費して刀身内部へ魔力を循環》


《斬撃時、追加MPを消費》


《切断性能および刀身安定性を一時上昇》


「正式に確定した」


 ミナが覗き込む。


「じゃあ試作四号は?」


「実戦でも使える」


 俺は鞘へ納める。


 カチン。


「これから主力?」


 少し考える。


 試作三号。


 高密度鉄と黒鉄。


 頑丈。


 扱いやすい。


 今まで何度も俺を助けてくれた。


 試作四号。


 軽量。


 高耐久。


 魔力経路。


 そして《魔力刃補助》。


「四号を主力にする」


「おお!」


「でも三号も持っていく」


「なんで?」


「予備」


 武器は壊れる可能性がある。


 一本だけに頼る必要はない。


『慎重www』


『でも正しい』


『三号引退じゃなくてよかった』


『試作シリーズ好き』


◇◇◇


 配信を終了する前。


 俺たちは東の森の入口まで戻った。


《現在視聴者数:143,821》


「……十四万?」


 いつの間に。


『魔力刃で一気に増えた』


『切り抜き回ってるぞ』


『新武器カテゴリ開拓者』


『鍛冶勢も戦闘勢も見てる』


「早いな……」


 正式配信者になってから、数字の伸び方が明らかに変わった。


 とはいえ。


「今日はここまでにします」


『お疲れ!』


『試作四号完成おめ!』


『次は鍛冶師ギルド?』


『また配信して!』


「ああ、そうだった」


 三日後。


 いや――。


 研究に日数を使ったから。


「鍛冶師ギルドの審査、明日か」


「忘れてたの!?」


 ミナが驚く。


「忘れてはいない。ちょっと頭から抜けてただけ」


「それを忘れてたって言うんだよ!」


 カイト。


「……明日は配信する?」


 ミナが聞く。


「まだ分からない。バルガとギルド側に確認してから」


 NPC側の事情もある。


 何でも勝手に配信するわけにはいかない。


「じゃあ、また次回」


 手を上げる。


「お疲れさまでした」


『おつ!』


『またな!』


『ジョウゴお疲れ!』


《LIVE――END》


 コメントが消える。


 森が静かになる。


「ふぅ」


 俺は腰の試作四号へ触れる。


 完成。


 実戦試験も成功。


 これで一段落――。


 そう思った、その時だった。


 ポーン。


「ん?」


 配信とは別の通知。


《シズナ鍛冶師ギルドより通知》


《特殊素材《星蒼複合鋼》に関する正式審査について》


《審査担当者がシズナへ到着しました》


「もう来たのか」


 さらに。


《審査対象》


《特殊素材:星蒼複合鋼》


《特殊工程:魔力同調鍛造》


《特殊工程:魔力同調焼入れ》


《完成武器:鉄刀・試作四号》


「…………」


「どうしたの?」


 ミナが覗き込む。


「試作四号まで審査対象になってる」


「えっ」


 カイトが笑う。


「ちょうど完成したじゃん!」


「そうなんだけどな」


 素材だけを見せるつもりだった。


 それがいつの間にか、製造工程から完成武器まで。


 ずいぶん話が大きくなっている。


 レントが静かに言った。


「地域技術として登録される可能性があるんだろ?」


「ああ」


「なら当然じゃないか?」


「……それもそうか」


 《複合鍛造刀》。


 《星蒼複合鋼》。


 《魔力同調鍛造》。


 《魔力同調焼入れ》。


 最初はただ――。


 自分が使いやすい刀を作りたかっただけだった。


 それが今では。


 シズナの鍛冶師ギルドまで動かしている。


「明日、バルガの工房へ行く」


「私も行く!」


 ミナ。


「俺たちは?」


 カイトが聞く。


「鍛冶関係ないだろ」


「見学!」


「遊びじゃないぞ」


「分かってるって!」


 俺は苦笑する。


 こうして《鉄刀・試作四号》の初実戦は、無事成功。


 そして翌日。


 俺たちが生み出した新素材と新しい鍛造技術を巡って――。


 シズナ鍛冶師ギルドによる正式審査が始まることになった。

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