第47話 古い水車小屋
翌日。
白鷺亭。
「一人で来い、か」
俺――ジョウゴは、昨日届いた手紙をもう一度開いた。
《ジョウゴへ》
《アルトを探しているなら、明日の夜、北区の古い水車小屋へ一人で来い》
《黒鎖商会には知られるな》
《ナディア》
罠。
その可能性は当然ある。
でも。
行かない理由もない。
「問題は」
どう行くか。
◇◇◇
「普通に行けば尾行されますよね」
ミナ。
「多分」
俺たち四人。
白鷺亭の部屋。
地図。
囲む。
「昨日」
黒鎖商会らしい二人に尾行された。
そして。
北区の調査をやめろ。
そう言われた。
つまり。
「向こうも」
俺たち。
見てる。
「今夜」
俺が北へ行ったら」
カイト。
「まず尾行される」
「ああ」
「じゃあ」
レント。
「撒く?」
「撒く」
でも。
「完全に」
「一人で?」
「水車小屋へ入る時は」
「ああ」
「三人は」
「近くまで来ない」
「どれくらい離れる?」
地図。
見る。
水車小屋。
北区。
端。
小川。
その周辺。
倉庫。
古い工房。
「五百メートルくらい」
「遠くないですか?」
「戦闘になったら」
「間に合わない可能性」
「でも」
「相手も」
「三人いるって分かったら」
「警戒する」
「だから」
俺。
「本当に一人で接触する」
ミナ。
不満。
少し。
顔。
「ジョウゴさん」
「何?」
「危なくなったら」
「すぐ連絡してください」
「分かってる」
「本当に?」
「本当に」
「無茶しない?」
「努力する」
「ジョウゴさん!」
「冗談」
◇◇◇
夜まで。
時間。
ある。
「今日」
「何する?」
カイト。
「普通に街」
「歩く」
「情報収集」
レント。
「ナディアとアルト」
「隠れてるなら」
「変な噂」
「出てるかも」
「あと」
俺。
「北区」
「どんな場所か」
「昼のうちに見る」
「下見」
「そう」
◇◇◇
《レイゼン北区》
昼。
昨日より。
人。
多い。
住宅。
倉庫。
小さな工房。
市場。
混ざる。
「水車小屋」
地図。
北端。
川。
その近く。
「遠い」
ミナ。
「歩いて四十分」
「夜だと」
「もっと静か」
レント。
「逃走路」
「多い?」
「川沿い」
「裏路地」
「倉庫道」
「三つ」
カイト。
「罠だった場合」
「囲まれる?」
「可能性ある」
「でも」
俺。
「水車小屋そのもの」
「入口」
一。
窓。
二。
裏。
小さな。
勝手口。
「出入り」
多い。
「じゃあ」
俺。
逃げ。
できる。
◇◇◇
水車小屋。
昼。
遠く。
見る。
古い。
使われてない。
水車。
止まってる。
「人」
「いる?」
レント。
「今は」
「見えない」
《観察Lv.1》
《建物:使用痕跡あり》
「使用痕跡?」
ミナ。
「誰か」
「最近出入り」
「してる」
「やっぱり」
ナディア。
隠れ家。
可能性。
高い。
◇◇◇
その時。
「ジョウゴさん?」
声。
後ろ。
俺たち。
振り向く。
若い。
女性プレイヤー。
《プレイヤー:リサ》
「あ」
「やっぱり!」
「ジョウゴさんだ!」
「こんにちは」
「配信止まってるから」
「レイゼン来てるって噂だけ」
「本当だったんですね!」
「まあ」
「何してるんです?」
「観光」
三人。
見る。
「何?」
リサ。
「北区で観光?」
「珍しい建物」
「見てる」
「水車小屋?」
「そう」
「地味ですよ?」
「……」
確かに。
「ジョウゴさん」
ミナ。
小声。
「説明下手」
「今それ?」
◇◇◇
リサ。
「そういえば」
「北区」
「最近」
「PKじゃないけど」
「変なプレイヤー」
「多いですよ」
「変?」
「黒い外套」
「同じ装備」
「何人か」
「プレイヤー?」
「多分」
「NPCも混じってるかも」
「ギルド?」
「知らない」
「でも」
「倉庫街から北区」
「よく行き来してる」
「なるほど」
《情報を取得しました》
《北区で黒装束の集団が活動しています》
「ありがとう」
「え?」
「何が?」
「参考になった」
「?」
本人。
気づいてない。
◇◇◇
「それじゃ!」
リサ。
「次の配信待ってます!」
「落ち着いたら」
「はい!」
走っていく。
カイト。
「観光」
「水車小屋」
「苦しい」
「咄嗟だった」
◇◇◇
昼食。
北区。
小さな。
食堂。
「ここ」
ミナ。
「美味しい」
《北区風シチュー》
「確かに」
俺。
一口。
「野菜多い」
「味」
「薄め」
「おお」
ミナ。
「食レポ」
「だいぶ上手くなってきました」
「目標そこじゃない」
◇◇◇
店主。
老人。
「旅人さん」
「はい?」
「北の水車小屋」
「行くなら」
一同。
少し。
止まる。
「なんで?」
「昼」
「そっち見てただろ」
「見られてた」
「古いぞ」
「昔は製粉所」
「今は?」
「十年以上」
「使われてない」
「でも」
「最近」
「灯り」
「つく」
「誰が?」
「知らん」
「夜」
「女」
「見た」
「女?」
ナディア。
「若い?」
「遠目」
「分からん」
「あと」
「大男」
「一緒」
「大きな剣」
アルト。
かなり。
確定。
◇◇◇
《重大情報》
《ナディアとアルトと思われる二名が水車小屋を使用している可能性が高まりました》
「これなら」
レント。
「罠の可能性」
「下がった」
「ああ」
「ゼロじゃない」
「でも」
「行く」
◇◇◇
夕方。
白鷺亭。
「装備」
俺。
確認。
《鉄刀・試作三号》
《鉄製短剣》
《軽革戦闘衣》
「刀」
見える。
「隠す?」
ミナ。
「今日は」
「隠さない」
「なんで?」
「相手」
「ジョウゴを呼んでる」
「刀」
「特徴」
「それで本人だと」
「分かる」
「なるほど」
◇◇◇
夜。
午後八時。
「行ってくる」
「俺たち」
カイト。
「二十分後」
「別ルートで」
「ああ」
「北区中央広場」
「そこまで」
「それ以上」
「近づかない」
「危なくなったら」
ミナ。
「パーティーチャット」
「すぐ」
「分かった」
「絶対」
「分かったって」
「ジョウゴさんの分かったは」
「信用が」
「酷い」
◇◇◇
《レイゼン中央区》
夜。
人。
多い。
俺。
一人。
歩く。
最初。
普通。
でも。
「尾行」
《観察Lv.1》
《複数の視線》
やっぱり。
「二人」
多分。
昨日。
同じ。
クロウ。
「想定内」
◇◇◇
市場。
入る。
人。
多い。
屋台。
左右。
「まず」
外套。
買う。
《旅人用灰外套》
着る。
刀。
中。
隠す。
「次」
果物。
買う。
《リンゴ×3》
「なんでリンゴ」
自分。
思う。
でも。
自然。
に。
歩く。
◇◇◇
市場。
抜ける。
路地。
右。
左。
階段。
下。
川沿い。
その途中。
外套。
脱ぐ。
収納。
帽子。
買う。
被る。
「変装」
簡単。
でも。
《洞察Lv.1》
後ろ。
視線。
「まだ一人」
「上手い」
完全。
撒けない。
なら。
◇◇◇
橋。
渡る。
そのまま。
酒場。
入る。
《酒場・赤角鹿》
「いらっしゃい!」
「一杯」
《果実水》
酒。
じゃない。
飲む。
「ここで」
数分。
待つ。
尾行。
外。
待つ?
《観察》
《入口付近に不審な人物》
「いる」
じゃあ。
店。
奥。
「トイレ」
じゃない。
裏。
厨房。
「店主」
「裏口」
「使える?」
「何だ急に」
「これ」
50G。
「商売?」
店主。
見る。
「裏から」
「出たい」
「……」
金。
受け取る。
「好きにしな」
「助かる」
◇◇◇
裏口。
狭い。
路地。
出る。
すぐ。
外套。
再び。
着る。
「これで」
数分。
早足。
《尾行反応が消失しました》
「撒いた」
◇◇◇
パーティーチャット。
《ジョウゴ:尾行を撒いた》
《ミナ:了解です。私たちは中央広場》
《カイト:無茶するなよ》
《ジョウゴ:そっちも》
《レント:水車周辺に不審者今のところなし》
「よし」
◇◇◇
《レイゼン北区》
夜。
昼より。
静か。
人。
少ない。
遠く。
犬。
鳴く。
川。
音。
そして。
水車小屋。
見える。
窓。
小さな。
光。
「いる」
◇◇◇
近づく。
刀。
腰。
戻す。
外套。
脱ぐ。
収納。
完全。
ジョウゴ。
姿。
コンコン。
扉。
ノック。
「……」
数秒。
音。
中。
足。
「誰?」
女。
声。
「ジョウゴ」
一拍。
鍵。
開く。
「入って」
扉。
少し。
開く。
女。
顔。
疲れてる。
肩。
包帯。
《???》
「ナディア?」
「そう」
《NPC情報更新》
《ナディア》
《元クロウ運送商会・帳簿係》
「入って」
「早く」
◇◇◇
中。
古い。
水車小屋。
でも。
寝床。
食料。
薬。
使ってる。
そして。
奥。
大きな。
影。
「……」
男。
立つ。
身長。
俺より。
高い。
肩。
広い。
背中。
巨大。
剣。
左肩。
古傷。
《???》
「あなたが」
俺。
「アルトさん?」
男。
一瞬。
俺。
見る。
そして。
「……ジョウゴ」
「はい」
「ルクを」
「助けた男か」
声。
低い。
「俺たち四人で」
「……」
アルト。
一歩。
近づく。
顔。
よく。
見る。
ルク。
似てる。
目元。
特に。
「息子は」
「生きてるんだな」
「ああ」
アルト。
止まる。
拳。
握る。
「本当に?」
「生きてる」
「エルナ村へ」
「帰った」
「……」
男。
大きい。
身体。
少し。
震える。
「セリエは?」
「生きてる」
「村にいる」
「……そうか」
◇◇◇
アルト。
顔。
手。
覆う。
「……」
長い。
沈黙。
そして。
「よかった」
一言。
それだけ。
でも。
重い。
「本当に」
「よかった……」
◇◇◇
《長期クエスト:父を追って》
《ルクの父アルトとの接触に成功しました》
《重大目標達成》
「見つけた」
ここまで。
長かった。
◇◇◇
「ジョウゴ」
アルト。
顔。
上げる。
「礼を」
「いらない」
「なぜ」
「もう」
「セリエさん」
「エディルさん」
「村の人」
「全員から」
「言われた」
「でも」
「父親として」
「言わせてくれ」
深く。
頭。
下げる。
「息子を」
「助けてくれて」
「ありがとう」
「……」
俺。
少し。
困る。
「どういたしまして」
それだけ。
◇◇◇
「でも」
俺。
「帰らないんですか?」
アルト。
表情。
戻る。
「帰りたい」
「なら」
「今」
「無理だ」
「黒鎖商会?」
「ああ」
ナディア。
机。
上。
鞄。
置く。
「これ」
開く。
分厚い。
帳簿。
複数。
《クロウ運送商会・内部帳簿》
「本物?」
ナディア。
「本物」
「私が」
「記録してた」
「内容」
「見ていい?」
「そのため」
「呼んだ」
◇◇◇
帳簿。
開く。
数字。
品目。
運送先。
名前。
偽装。
多い。
「これ」
現実。
仕事。
感覚。
出る。
「表帳簿?」
ナディア。
驚く。
「分かる?」
「こっち」
二冊。
一つ。
綺麗。
一つ。
細かい。
「数字」
「合わない」
「正解」
「表向きの帳簿と」
「裏帳簿」
やっぱり。
◇◇◇
《洞察Lv.1》
《帳簿間の不一致を確認》
「品目」
表。
《織物》
裏。
《亜人二》
「……」
ミナ。
いなくて。
良かった。
「人」
「商品コード」
ナディア。
「そう」
「子供は?」
「C」
「成人」
「A」
「エルフ」
「E」
「獣人」
「B」
「ハーフ」
一拍。
「H」
ルク。
黒鎖商会。
狙う。
理由。
記録。
ある。
◇◇◇
「エルナ村」
俺。
ページ。
探す。
十四年前。
ある?
ナディア。
「古い帳簿」
別。
出す。
「これ」
「倉庫奥」
「隠されてた」
「十四年前」
「……」
開く。
日付。
そして。
《E村》
《資源調査》
《黒鉄》
《回収対象:E種・H種》
《外部戦力:G群》
「G群?」
アルト。
低い。
声。
「ゴブリンだ」
空気。
止まる。
◇◇◇
《重大情報を獲得しました》
《十四年前のエルナ村襲撃》
《黒鎖商会がゴブリン群を誘導した可能性を示す記録を発見》
「確定?」
俺。
「まだ」
ナディア。
「この記号だけでは」
「法的証拠」
「弱い」
「でも」
「別」
帳簿。
出す。
《支払記録》
《外部誘導役》
《餌》
《魔物誘導香》
「……」
さすがに。
繋がる。
◇◇◇
《特殊クエスト:黒腕布の影》
《進行度が大幅に上昇しました》
《十四年前のエルナ村襲撃に黒鎖商会が関与した可能性:極めて高い》
「これ」
「リオス副支部長へ」
「渡せば?」
「簡単じゃない」
ナディア。
「なぜ?」
「帳簿」
「盗んだ」
「私が」
「クロウから」
「だから」
「相手は」
「偽造だと言う」
「なら」
俺。
「内部印」
「署名」
「照合」
「証言」
「必要」
ナディア。
「……」
「何?」
「本当に剣士?」
「銀行員」
「何それ」
◇◇◇
「証拠を」
「固める」
俺。
「東街道管理局」
「捕虜」
「子供」
「帳簿」
「オルド証言」
「ナディア証言」
「これ」
「全部」
「合わせる」
「さらに」
「クロウの正式帳簿」
「同じ印」
「使われてる」
「照合できれば」
「偽造主張」
「弱くなる」
アルト。
笑う。
「お前」
「剣より」
「そっちの方が怖いな」
「褒めてます?」
「褒めてる」
◇◇◇
「アルトさん」
「灰色谷」
「行った?」
「ああ」
「何がある?」
表情。
変わる。
「黒鎖商会の」
「中継拠点」
「地下」
「檻」
「倉庫」
「人」
「いた?」
「いた」
「何人?」
「十人以上」
「被害者?」
「少なくとも」
「二十」
多い。
「救出」
「できなかった?」
アルト。
拳。
握る。
「俺一人」
「ナディア」
「守りながら」
「無理だった」
「だから」
「レイゼン」
「戻った」
「証拠」
「持って」
「助け」
「求めるため」
「でも」
「誰を信用していいか」
「分からなかった」
◇◇◇
「リオス」
俺。
「信用できると思う」
ナディア。
「本当に?」
「現時点」
「でも」
「支部長」
「保留」
「理由?」
「刀」
「初めて扱うと言った」
「でも」
「持ち方」
「慣れてた」
「それだけ?」
「それだけ」
ナディア。
「弱い」
「分かってる」
「でも」
「気になる」
◇◇◇
アルト。
「支部長バルザック」
俺。
「知ってる?」
「昔」
「冒険者時代」
「一度」
「会った」
「刀」
「使ったこと?」
「ない」
「本当に?」
「ああ」
「でも」
「東方武器」
「集めてた」
「……」
なるほど。
刀。
知ってる。
可能性。
それだけ。
「じゃあ」
「疑い」
「一つ」
「減った」
《洞察情報更新》
《バルザックの刀への慣れは収集趣味による可能性があります》
「スキル」
「こういうのも更新するんだ」
◇◇◇
その時。
アルト。
突然。
顔。
上げる。
「静かに」
「?」
ナディア。
灯り。
消す。
「何か」
「外」
俺。
耳。
澄ます。
足。
複数。
「来た」
ナディア。
顔。
青い。
「黒鎖」
「何人?」
アルト。
「六」
「いや」
俺。
音。
「八」
◇◇◇
《危険を感知しました》
《水車小屋が包囲されています》
「早い」
「尾行」
撒いたはず。
「手紙」
ナディア。
「使った子」
「追われた?」
「可能性」
◇◇◇
外。
「ナディア!」
男。
声。
「帳簿を返せ!」
「……」
「ジョウゴ!」
別。
声。
「中にいるのは分かってる!」
「完全に」
「バレてる」
◇◇◇
《緊急イベント》
《水車小屋包囲》
《ナディアとアルトを守り、黒鎖商会の包囲を突破してください》
《重要物品:内部帳簿》
《帳簿喪失でクエスト進行に重大な影響があります》
「帳簿」
俺。
見る。
「絶対」
「守る」
ナディア。
鞄。
抱える。
「私は」
「戦えない」
「分かった」
「アルトさん」
巨大剣。
抜く。
ズン。
重い。
「俺は戦える」
「見れば」
「分かる」
そして。
《NPC情報更新》
《アルト》
《元Bランク冒険者》
《職業:剣士》
《Lv.24》
「……」
俺。
止まる。
「24?」
アルト。
「何だ?」
「いや」
「強いなって」
「今さらか」
◇◇◇
外。
「五つ数える!」
「出てこい!」
「アルトさん」
「何?」
「正面」
「任せても?」
「お前は?」
「裏」
「包囲」
「崩す」
「いい」
「でも」
「息子を救った腕」
「見せてもらうぞ」
「こういう時?」
「こういう時だ」
◇◇◇
パーティーチャット。
《ジョウゴ:黒鎖商会に包囲された》
即。
《ミナ:場所は!?》
《ジョウゴ:水車小屋》
《カイト:今行く!》
《ジョウゴ:中央広場から北側へ。正面から近づかないで》
《レント:人数》
《ジョウゴ:八以上》
《レント:了解》
◇◇◇
「来る」
アルト。
大剣。
肩。
「ジョウゴ」
「はい」
「ルクは」
「弓」
「使うようになった?」
「短弓」
「エディルさん」
「教えてたって」
「……そうか」
笑う。
「帰ったら」
「俺も教えないとな」
「なら」
俺。
刀。
抜く。
「帰りましょう」
「当然だ!」
◇◇◇
外。
「五!」
「四!」
「三!」
「二!」
「一!」
扉。
蹴破られる。
「行くぞ!」
《黒鎖商会・処理班 Lv.9》
一人。
突入。
そして。
アルト。
「おおおおおっ!」
大剣。
一振り。
ドゴォン!
「ぐああああ!?」
一人。
扉。
ごと。
外。
吹き飛ぶ。
「……」
俺。
「豪剣」
ガレス。
言った。
「本当に」
「力で押す」
「何か言ったか?」
「いや」
「頼もしい」
◇◇◇
次。
二人。
入る。
「俺」
一人。
取る。
「ふっ!」
刀。
相手。
剣。
カンッ!
《Parry!》
流す。
懐。
「そこ」
柄頭。
胸。
ゴッ!
《Stun!》
そのまま。
足。
払う。
《Throw!》
「一人」
アルト。
横。
見る。
「変な剣術」
「あなたも」
「十分変」
「俺は普通だ」
「それ言います?」
◇◇◇
水車小屋。
狭い。
だから。
敵。
一気。
入れない。
「有利」
俺。
「出口」
「裏!」
ナディア。
勝手口。
「そっち」
「二人いる!」
「じゃあ」
アルト。
「俺が正面」
「ジョウゴ」
「裏」
「了解!」
◇◇◇
裏。
扉。
開ける。
《黒鎖商会・弓兵 Lv.8》
《黒鎖商会・剣士 Lv.9》
「来た!」
弓。
近距離。
狙い。
「遅い」
距離。
詰める。
矢。
放つ前。
弓。
押す。
「うわっ!」
刀。
峰。
手首。
《Disarm!》
弓。
落ちる。
剣士。
横。
斬る。
「見えてる!」
刀。
側面。
《受け流しLv.1》
流す。
でも。
相手。
二撃目。
「速い」
下。
蹴り。
「!」
足。
避ける。
「ジョウゴ!」
ナディア。
中。
声。
「大丈夫!」
◇◇◇
剣士。
上手い。
Lv9。
黒鎖。
処理班。
戦闘。
専門。
「殺し慣れてる?」
動き。
無駄。
少ない。
「なら」
俺。
視線。
足。
腰。
肩。
呼吸。
《見切り》
相手。
踏み込み。
一瞬。
早い。
「突き」
予測。
半歩。
外。
刀。
平。
触れる。
《Parry!》
「なっ!?」
「ここ」
手首。
切らない。
峰打ち。
《Disarm!》
剣。
落ちる。
左。
拳。
来る。
「まだ」
俺。
腕。
絡め。
重心。
外。
崩す。
《Throw!》
ドサッ!
「終わり」
◇◇◇
弓兵。
逃げる。
「待て!」
追う。
でも。
その時。
遠く。
声。
「ジョウゴ!」
カイト。
「来た!」
ミナ。
「こっちです!」
レント。
矢。
弓兵。
足元。
刺さる。
「止まれ!」
「増援!」
黒鎖。
側。
混乱。
◇◇◇
《パーティーメンバーが戦闘エリアへ到着しました》
「遅い!」
カイト。
「五百メートル離れろって言ったのお前だろ!」
「確かに」
◇◇◇
ミナ。
「ナディアさんは?」
「中!」
「行きます!」
「護衛!」
「はい!」
レント。
「外」
「三人!」
「カイト!」
「二人取る!」
「俺一人!」
「了解!」
◇◇◇
正面。
アルト。
すごい。
「おおおおっ!」
大剣。
横。
ブォン!
敵。
二人。
まとめて。
吹き飛ぶ。
「……」
カイト。
「ジョウゴ」
「何?」
「ルクのお父さん」
「化け物?」
「元Bランク」
「納得」
◇◇◇
最後。
黒鎖。
指揮役。
後退。
「くそ!」
「撤退!」
「逃がすな!」
アルト。
追おう。
する。
「待って!」
俺。
「なぜ!」
「帳簿」
「守るの優先」
「……」
アルト。
止まる。
「それもそうか」
敵。
森。
いや。
街。
路地。
逃げる。
《黒鎖商会処理班が撤退しました》
◇◇◇
《緊急イベント》
《水車小屋包囲》
《ナディア:生存》
《アルト:生存》
《内部帳簿:確保》
《黒鎖商会処理班:撃退》
《評価:S》
「終わった」
ミナ。
「無事?」
「全員」
「大丈夫」
カイト。
HP。
少し。
減ってる。
でも。
軽い。
◇◇◇
アルト。
三人。
見る。
「こいつら?」
「仲間」
「ミナ」
「カイト」
「レント」
「ルクを」
「一緒に助けた」
アルト。
すぐ。
大剣。
背中。
戻す。
そして。
三人。
頭。
下げる。
「息子を」
「助けてくれて」
「ありがとう」
ミナ。
「そんな!」
カイト。
「頭上げてください!」
レント。
「ジョウゴだけじゃないって言ってました?」
「言った」
「だろうな」
◇◇◇
「ナディアさん」
ミナ。
「怪我」
「見せて」
「大丈夫」
「駄目です」
《ヒール》
「あ」
「……」
ナディア。
「ありがとう」
「どういたしまして」
◇◇◇
その時。
俺。
外。
見る。
「ここ」
「もう使えない」
「ああ」
アルト。
「居場所」
「完全に割れた」
「なら」
「リオス副支部長」
「連れて行く?」
ナディア。
「信用できる?」
「今のところ」
「俺はそう判断してる」
「でも」
「ギルド正面」
「危ない」
「じゃあ」
カイト。
「白鷺亭?」
「宿に連れてくのも」
「危険」
レント。
「オルド商会」
全員。
見る。
「あり」
商人。
警備。
裏口。
信用。
「そこ」
◇◇◇
《クエスト更新》
《消えた帳簿係》
《ナディアとの接触に成功しました》
《内部帳簿を確保しました》
《アルトとの接触に成功しました》
《次の目的》
《証拠を信頼できる人物へ届けてください》
「リオス」
「次」
◇◇◇
そして。
アルト。
俺。
見る。
「ジョウゴ」
「何?」
「ルク」
「元気か」
「元気」
「パン」
「好き」
「知ってる」
「剣」
「じゃなく」
「弓」
「使ってる」
「……そうか」
「あと」
「俺に」
「木の刀」
「くれた」
「何?」
アイテム欄。
《木彫りの刀》
出す。
アルト。
手。
止まる。
「これ」
「ルクが?」
「ああ」
「……下手だな」
「そこ?」
「俺の方が上手い」
「張り合う?」
でも。
アルト。
笑う。
「帰ったら」
「一緒に作る」
「その方がいい」
◇◇◇
夜。
オルド商会。
裏口。
到着。
オルド。
「……」
ナディア。
見る。
アルト。
見る。
「本当に」
「連れてきたのか」
「はい」
「一日で?」
「結果的に」
「お前」
「怖いな」
「最近よく言われる」
◇◇◇
帳簿。
机。
置く。
オルド。
見る。
「これ」
「本物なら」
「クロウ」
「終わるぞ」
「だから」
俺。
「本物だと」
「証明する」
「そこまで」
「やる?」
「やらないと」
「逃げられる」
ナディア。
頷く。
「そう」
「クロウは」
「証拠一つ」
「消すの得意」
「なら」
「一つじゃなく」
「全部」
◇◇◇
東街道管理局。
捕虜。
子供。
オルド証言。
ナディア証言。
内部帳簿。
十四年前。
エルナ。
黒鉄。
灰色谷。
「これ」
全部。
一本。
繋がる。
◇◇◇
その夜。
俺たちは。
オルド商会の。
隠し倉庫。
じゃなく。
客用。
安全室。
使う。
「アルトさん」
「ここ」
「今夜」
「休んで」
「お前は?」
「白鷺亭」
「戻る?」
「ああ」
「危険じゃないか」
「逆」
「俺が急に消えると」
「向こう」
「警戒する」
「なるほど」
アルト。
少し。
笑う。
「やっぱり」
「剣士より」
「商人向き」
「銀行員」
「分からん」
◇◇◇
帰り道。
四人。
ミナ。
「見つかりましたね」
「ああ」
「アルトさん」
「生きてた」
カイト。
「ルク」
「喜ぶだろうな」
「早く」
「伝えたい」
レント。
「でも先に」
「黒鎖」
「ああ」
アルト。
すぐ。
エルナ。
帰す。
それ。
一番。
でも。
今。
敵。
追ってる。
「帰れる道」
「作る」
先。
◇◇◇
そして。
ログアウト前。
白鷺亭。
俺。
メニュー。
開く。
《長期クエスト:父を追って》
《父アルトを発見しました》
《帰郷条件:未達》
《黒鎖商会による追跡状態を解除してください》
「やっぱり」
まだ。
終わらない。
◇◇◇
一方。
《クロウ運送商会》
「処理班」
「失敗」
「帳簿」
「奪還できず」
「アルト」
「ナディア」
「ジョウゴ」
「全員逃走」
男。
沈黙。
「どうします?」
「……」
机。
手。
置く。
「なら」
「次」
一枚。
紙。
《レイゼン冒険者ギルド》
「正式な」
「手配にする」
「ジョウゴだけ?」
「違う」
「アルト」
「ナディア」
「そして」
「オルド商会」
「全員」
「犯罪者に仕立てろ」
「そんなこと」
「できるんですか?」
男。
笑う。
「この街で」
「一番強いのは」
「剣じゃない」
「金だ」
◇◇◇
俺たちは。
まだ。
知らない。
アルトを見つけたことで。
黒鎖商会が。
とうとう。
裏側から。
表側の力を使い始めることを。
次。
必要になるのは。
戦闘力でも。
刀でもない。
黒鎖商会が作り上げる。
偽りの正義そのものを崩す証拠。
レイゼンでの戦いは。
ここから。
さらに。
深くなっていくことになる。




