第46話 二つの報告書
《Welcome Back》
《Another World Online》
目を開ける。
白鷺亭。
見慣れない天井にも、少しだけ慣れてきた。
「……今日が本番か」
俺――ジョウゴはベッドから起き上がると、昨夜整理した情報をもう一度確認した。
《交易都市レイゼン》
《現在友好度:中立》
《クロウ運送商会:敵対傾向》
《長期クエスト:父を追って》
《第一段階》
《アルトと黒鎖商会の情報を集めてください》
さらに。
《黒鎖商会の影》
《クロウ運送商会による情報操作が開始されています》
《推奨行動:副支部長リオスとの接触》
「剣を抜く前に、やることが多いな」
こういう戦いは初めてだ。
でも。
嫌いではない。
嘘。
証拠。
書類。
信用。
「……仕事みたいだ」
現実では銀行員。
ゲームの中でまで書類と睨めっこするとは思わなかった。
◇◇◇
一階。
「おはようございます」
「おはよう」
ミナ。
カイト。
レント。
三人ともすでに朝食を取っていた。
「今日どうします?」
「まずオルド商会」
「紹介状?」
「ああ」
「副支部長リオスへ直接会うため」
レント。
「正面から冒険者ギルドへ行くのは?」
「行く」
「隠れるんじゃ?」
「もう俺の似顔絵まで回ってる」
「完全に隠れるのは無理」
「なら」
「正式な入口から」
「証拠を持って入る」
カイト。
「堂々と?」
「ああ」
「やってないことまで逃げる必要ない」
「ジョウゴらしい」
◇◇◇
朝食。
《白鷺亭の朝食》
パン。
焼き魚。
豆のスープ。
「いただきます」
ミナ。
「今日は配信しないんですよね?」
「しない」
「やっぱり」
「今配信したら」
「俺たちの位置も」
「誰に会うかも」
「全部ばれる」
CROSS社にも。
昨日。
配信停止。
連絡済み。
「視聴者には悪いけど」
「ゲーム内事情優先」
「それでいいと思います」
◇◇◇
《オルド商会》
朝。
まだ。
客。
少ない。
「おお」
オルド。
「来たか」
「昨日の話」
「続きです」
「リオス副支部長へ」
「紹介状」
「書いてもらえます?」
オルド。
一瞬。
考える。
「書く」
「ただし」
「俺の名前を出せば」
「クロウにも伝わる可能性がある」
「構いません」
「本当に?」
「もう昨日ここに入ったの」
「見られてる」
「だったら今さら」
「……そうか」
オルド。
少し。
笑う。
「覚悟はあるらしい」
◇◇◇
紙。
インク。
商会印。
《オルド商会紹介状》
《宛先:レイゼン冒険者ギルド副支部長リオス》
「これ」
「それと」
オルド。
もう一枚。
「昨日の東街道の件」
「俺からも書いておいた」
「証言?」
「ああ」
《オルド商会証言書》
《東街道におけるジョウゴ一行の救援活動を証明する》
「助かります」
「命を救われた」
「これくらい当然だ」
◇◇◇
「もう一つ」
オルド。
声。
落とす。
「今朝」
「クロウが冒険者ギルドに訴状を出した」
「もう?」
「早い」
レント。
「内容」
「お前たちが荷馬車を襲い」
「商品を奪い」
「護衛を拘束した」
「……」
カイト。
「全部逆だな」
「子供」
ミナ。
「商品扱い?」
顔。
険しい。
「向こうは」
オルド。
「そういう連中だ」
◇◇◇
《地域情報更新》
《クロウ運送商会がジョウゴ一行を正式に告発しました》
「正式?」
「商会内じゃなくなった」
「そうだ」
「だから」
「ギルドへ行くなら」
「今日」
「早い方がいい」
「分かりました」
◇◇◇
外。
大通り。
今日は。
フード。
使わない。
刀。
腰。
そのまま。
「堂々としてますね」
ミナ。
「逃げてるように見られたくない」
「ただ」
レント。
「警戒はする」
「ああ」
周囲。
見る。
視線。
一つ。
二つ。
やっぱり。
見られている。
《観察Lv.1》
《複数の視線を確認》
「監視」
カイト。
「いる?」
「多分」
「どうする?」
「放置」
「攻撃されない限り」
「何もしない」
◇◇◇
レイゼン冒険者ギルド。
大きい。
シズナ支部より。
二倍以上。
「でか」
カイト。
「人も多い」
冒険者。
商人。
依頼主。
掲示板。
受付。
騒がしい。
そして。
俺たち。
入った瞬間。
「……」
何人か。
こっち。
見る。
「ジョウゴ?」
「似顔絵の?」
「クロウの荷馬車襲ったって」
「本当に?」
早い。
噂。
もう。
広がってる。
◇◇◇
「ジョウゴさん」
ミナ。
小声。
「気にする?」
「しない」
「今は」
「証拠を出す」
◇◇◇
受付。
「冒険者カードを」
女性受付。
少し。
緊張。
してる。
出す。
《ジョウゴ》
《所属:シズナ冒険者ギルド》
「……本人ですね」
「そうです」
「クロウ運送商会から」
「告発状が」
「聞いてます」
「逃げずに来た?」
「やってないので」
「……」
受付。
少し。
驚く。
「副支部長リオスさんに」
「会いたい」
「予約は?」
「ありません」
「ただ」
紹介状。
出す。
《オルド商会紹介状》
「……少々お待ちください」
◇◇◇
五分。
十分。
周囲。
視線。
感じる。
その時。
「ジョウゴ一行」
奥。
男。
出る。
四十前後。
銀髪。
片目。
鋭い。
《レイゼン冒険者ギルド副支部長 リオス》
「俺がリオスだ」
「ジョウゴです」
「知ってる」
「ですよね」
リオス。
少し。
口元。
上がる。
「面白い顔するな」
「そんなつもりないです」
「こっちへ来い」
◇◇◇
会議室。
扉。
閉まる。
中。
リオス。
俺たち四人。
そして。
机。
上。
二つ。
書類。
「これ」
リオス。
指。
「クロウ運送商会の訴状」
左。
《異邦人ジョウゴ一行による商会輸送襲撃事件》
「こっち」
右。
《東街道管理局報告書》
《誘拐被害児童二名保護》
《黒鎖商会関係者四名拘束》
《救出者:ジョウゴ一行》
「真逆」
カイト。
「だろ?」
リオス。
椅子。
座る。
「だから聞く」
「どっちが嘘だ?」
「クロウです」
「即答だな」
「事実なので」
「証拠は?」
「あります」
◇◇◇
まず。
《オルド商会証言書》
出す。
「オルド」
「本人の?」
「はい」
「昨日」
「東街道で彼の商隊を助けました」
次。
「その後」
「放棄された黒い荷馬車を発見」
「中に」
「眠らされた子供二人」
「エルフと獣人」
「黒鎖商会関係者四人が戻ってきて」
「襲われた」
「全員」
「捕縛」
「東街道管理局へ引き渡しました」
リオス。
黙る。
「管理局報告と」
「一致する」
「はい」
◇◇◇
「じゃあ」
リオス。
「クロウの訴状」
読む。
「荷馬車の商品を強奪」
「護衛四名へ暴行」
「高価な貨物を持ち逃げ」
「この貨物は?」
「子供二人以外」
「確認してない」
「持ち逃げ?」
「してない」
「捕虜四名は?」
「生きて引き渡しました」
「殺してない?」
「はい」
「……」
リオス。
少し。
目。
細める。
「面白い」
「何が?」
「普通」
「こういう奴らは」
「怒って」
「机叩く」
「剣抜く」
「自分の正義を叫ぶ」
「でも」
「お前」
「淡々としてるな」
「銀行員なので」
三人。
見る。
「今それ言う?」
カイト。
「つい」
◇◇◇
「銀行員?」
リオス。
「何だそれ」
「向こうの仕事」
「金を扱う」
「商人?」
「近いけど違う」
「まあいい」
リオス。
紙。
見る。
「書類の矛盾」
「気づいてるか?」
「どこ?」
俺。
クロウの訴状。
見る。
《襲撃時刻:午前十一時》
《護衛人数:四名》
《貨物:織物・薬草・貴金属》
東街道管理局。
《発見時刻:午後一時》
《荷馬車:放棄状態》
《保護対象:児童二名》
「貨物内容」
違う。
「そう」
リオス。
「クロウは」
「織物と薬草を積んでたと言ってる」
「管理局は」
「そんな物」
「記録してない」
「じゃあ」
「嘘」
「一つ確定?」
「まだ」
「管理局が嘘の可能性もある」
「なるほど」
「でも」
俺。
「四人の捕虜」
「子供二人」
「現物」
「いる」
「そういうこと」
◇◇◇
《特殊技能条件達成》
《複数証言・書類の矛盾を発見しました》
《《洞察Lv.1》を習得しました》
「来た」
ミナ。
「洞察!」
《洞察Lv.1》
《会話・文書・行動の矛盾を僅かに察知しやすくなります》
「今」
「一番欲しい」
リオス。
「何の話だ?」
「スキル」
「異邦人は便利だな」
「便利だけど」
「万能じゃない」
◇◇◇
「リオスさん」
レント。
「クロウ運送商会」
「黒鎖商会と同じ組織?」
リオス。
すぐ。
答えない。
俺。
《洞察Lv.1》
表情。
変化。
ごく。
僅か。
《対象は質問内容を認識しています》
「知ってる」
俺。
言う。
リオス。
目。
細める。
「そのスキル」
「嫌なやつだな」
「すみません」
「否定しないのか」
「知ってますね?」
「……ああ」
◇◇◇
「クロウ運送商会」
「正式名称」
リオス。
「表」
「裏」
黒鎖商会。
「ギルド側も」
「疑ってる」
「証拠は?」
「足りない」
「なぜ?」
「証人」
「消える」
「書類」
「なくなる」
「倉庫」
「調査前に空になる」
「内部に」
「情報流してる人」
「いる」
ミナ。
「ギルド内部?」
「可能性」
リオス。
苦い。
顔。
「かなり高い」
◇◇◇
「支部長」
俺。
「信用できない?」
リオス。
沈黙。
《洞察Lv.1》
《対象は回答を避けています》
「断言」
「できない?」
「そうだ」
「証拠がない」
「だから」
「俺は」
「信用してない」
「でも」
「敵とも言えない」
慎重。
この人。
信用。
できそう。
少なくとも。
現時点。
◇◇◇
「俺たち」
俺。
「何すれば?」
「まず」
「疑いを晴らす」
「そのため」
「東街道管理局」
「捕虜」
「子供」
「正式確認」
「俺がやる」
「次」
「クロウ側」
「嘘」
「立証」
「できる?」
「可能」
「ただし」
「お前たちは」
「表立って動くな」
「もう目立ってる」
「だからだ」
◇◇◇
リオス。
地図。
出す。
《レイゼン市街》
中央。
市場。
南。
冒険者ギルド。
東。
倉庫街。
「クロウ」
倉庫。
三つ。
「全部」
「合法?」
「表向き」
「はい」
「地下」
「ある?」
「知らん」
「ただ」
「最近」
「夜に」
「馬車」
「出入り」
「多い」
「どこへ?」
「灰色谷方面」
アルト。
追った。
同じ。
◇◇◇
《長期クエスト更新》
《父を追って》
《黒鎖商会の輸送経路とアルトの足取りが一致する可能性があります》
「やっぱり」
◇◇◇
「ただし」
リオス。
「灰色谷へ」
「今すぐ行くな」
「みんなそれ言う」
「理由」
「谷入口」
「見張り」
「さらに」
「クロウが」
「お前」
「待ってる可能性」
「知ってます」
「何?」
「俺の似顔絵」
紙。
出す。
リオス。
見る。
「……似てるな」
「そこ?」
「特徴は」
「よく取れてる」
「刀」
「目立つな」
「やっぱり」
◇◇◇
「もう一つ」
リオス。
「変な情報」
「何?」
「アルト」
全員。
顔。
変わる。
「三日前」
「レイゼン北門で」
「似た男」
「見たという証言」
「三日前?」
「灰色谷」
「三週間前」
「なのに?」
「そう」
「戻ってきた?」
「あるいは」
「別人」
「でも」
「特徴」
「一致」
「豪剣」
「左肩に古傷」
「黒髪」
「四十前後」
「名前」
「名乗らなかった」
ルク。
父。
生きてる。
可能性。
さらに。
上がる。
◇◇◇
《新規情報》
《アルトと思われる人物が三日前、レイゼン北門付近で目撃されています》
「なら」
カイト。
「街にいる?」
「可能性」
ある。
「でも」
レント。
「見つからない理由」
「追われてる?」
「黒鎖商会に」
「あり得る」
◇◇◇
「そして」
リオス。
「もう一人」
「女」
「ナディア?」
リオス。
明確。
反応。
「その名前」
「どこで?」
「オルドさん」
「アルトと一緒だった」
「……」
リオス。
椅子。
深く。
座る。
「そこまで行ってるか」
「知ってる?」
「ナディア」
一拍。
「クロウ運送商会の元帳簿係だ」
「元?」
「一ヶ月前」
「突然消えた」
「……」
俺。
少し。
鳥肌。
帳簿係。
内部。
証拠。
持てる。
立場。
◇◇◇
《NPC情報更新》
《ナディア》
《元クロウ運送商会・帳簿係》
《現在消息不明》
「アルトに」
「協力した理由」
「知らない」
リオス。
「でも」
「もし」
「ナディアが帳簿」
「持ってるなら」
「クロウ」
「終わる?」
「少なくとも」
「大打撃」
「だから」
「追われてる」
「可能性」
高い。
◇◇◇
《新規長期クエスト》
《消えた帳簿係》
《ナディアの消息を追ってください》
《ナディアは黒鎖商会の不正を示す証拠を保持している可能性があります》
「クエスト」
「また増えた」
カイト。
「ジョウゴ」
「受けてないのに増えるな」
「俺に言うな」
◇◇◇
「リオスさん」
「この件」
「正式依頼?」
「まだ」
「表に出せない」
「なら」
「どう動く?」
「裏で」
「まず」
「ナディアを探す」
「アルトも」
「同時」
「そのため」
リオス。
小さな。
札。
出す。
《リオスの私的依頼証》
「これ」
「何?」
「ギルドの正式印」
「でも」
「表の受付」
「通さない」
「信用できる衛兵」
「管理局」
「一部冒険者」
「それにだけ」
「通用する」
「便利」
「なくすな」
「はい」
◇◇◇
その時。
扉。
ノック。
「副支部長」
「何だ」
「支部長がお呼びです」
「……」
リオス。
俺たち。
見る。
「タイミング悪いな」
「何か?」
「お前たちが来ていること」
「伝わった」
「早」
「内部」
いる。
証明。
みたい。
◇◇◇
「支部長」
「会う?」
リオス。
「逃げると」
「怪しい」
「なら」
「会う」
「正解」
◇◇◇
数分後。
大きな。
執務室。
《レイゼン冒険者ギルド支部長 バルザック》
五十代。
大柄。
笑顔。
「おお!」
「君がジョウゴか!」
「はい」
「噂は聞いている!」
「良い噂?」
「色々だ!」
「便利な答え」
「ははは!」
◇◇◇
バルザック。
机。
上。
クロウ訴状。
「困ったことになったな」
「こちらも」
「そう思います」
「クロウ運送商会」
「信用ある商会だ」
俺。
《洞察Lv.1》
見る。
《対象は発言内容を強く意識しています》
信用。
してる?
それとも。
言わされてる?
「でも」
バルザック。
「東街道管理局」
「君たちを擁護」
「証言」
「割れている」
「だから」
「調査」
「公平に?」
「当然」
◇◇◇
「ただ」
支部長。
笑顔。
少し。
薄く。
「調査中」
「君たちには」
「レイゼンから出ないでほしい」
「……」
ミナ。
見る。
「軟禁?」
「違う違う」
「捜査協力」
「いつまで?」
「数日」
「具体的に?」
「調査が終わるまで」
《洞察Lv.1》
《曖昧な期間設定》
「長引く可能性」
ある。
◇◇◇
「分かりました」
俺。
答える。
三人。
少し。
驚く。
「協力するのか?」
「今」
「街出る予定ないので」
「ナディア」
「アルト」
探す。
レイゼン。
中。
中心。
「ただ」
「冒険者活動」
「禁止?」
「いや」
「市内」
「近郊」
「問題ない」
「じゃあ」
「大丈夫」
◇◇◇
「それと」
バルザック。
「カタナ」
「珍しいな」
「最近それよく言われます」
「見せてもらえるか?」
「今?」
「ああ」
「……」
理由。
何。
俺。
刀。
鞘。
ごと。
外す。
「抜かないでください」
「もちろん」
渡す。
支部長。
見る。
「重さ」
「軽いな」
「扱ったこと?」
「ない」
「……」
《洞察Lv.1》
《発言と動作に軽微な矛盾》
「ん?」
動作。
鞘。
持ち方。
刀。
知ってる?
初めて。
とは。
思えない。
「どうした?」
「何でも」
でも。
覚える。
◇◇◇
刀。
返る。
「では」
「滞在中」
「何かあれば」
「ギルドへ」
「分かりました」
「期待しているよ」
「……」
笑顔。
ずっと。
崩れない。
◇◇◇
廊下。
出る。
少し。
離れる。
カイト。
「どうだった?」
「分からない」
「信用?」
「保留」
「でも」
俺。
小声。
「刀」
「初めて扱う人の動きじゃなかった」
「え?」
レント。
「何で分かる?」
「鞘の持ち方」
「刃の向き」
「自然だった」
「つまり」
ミナ。
「刀を知ってる?」
「可能性」
◇◇◇
《洞察Lv.1の熟練度が上昇しました》
「また」
「本当に仕事みたいになってきた」
◇◇◇
ギルド。
外。
「次」
カイト。
「ナディア?」
「ああ」
「どこから?」
俺。
オルド。
情報。
リオス。
情報。
整理。
「帳簿係」
「一ヶ月前」
「消えた」
「アルトと一緒」
「三日前」
「アルトらしき人が北門」
「なら」
「北側?」
レント。
「可能性高い」
「でも」
「まず」
「ナディアの家」
「分かる?」
リオス。
教えて。
くれた。
《旧住所:北区・第三通り》
「行く」
◇◇◇
レイゼン。
北区。
中央市場。
より。
静か。
住宅。
倉庫。
混在。
「ここ」
小さい。
家。
扉。
鍵。
《ナディア旧宅》
「誰か」
住んでる?
ノック。
「……」
返事。
なし。
「勝手に入る?」
カイト。
「犯罪」
「ですよね」
「近所」
聞く。
◇◇◇
隣。
老婆。
《住民 サラ》
「ナディア?」
「ああ」
「真面目な子だったよ」
「最後に見たのは?」
「一ヶ月前」
「男と話してた」
「男?」
「大きな剣を背負った」
「強そうな人」
アルト。
可能性。
「二人で?」
「その夜」
「出ていった」
「荷物は?」
「大きな鞄」
「それと」
「紙束」
帳簿。
「どっちへ?」
「北門」
繋がる。
◇◇◇
《クエスト更新》
《消えた帳簿係》
《ナディアはアルトと思われる男とともに北門方面へ移動した》
「でも」
目撃。
一ヶ月前。
アルト。
三日前。
北門。
「戻ってるなら」
「ナディアも?」
ミナ。
「可能性」
◇◇◇
老婆。
さらに。
「そういえば」
「三日前」
全員。
止まる。
「ナディア」
「戻ってきたよ」
「!」
「見た?」
「窓から」
「夜」
「一人で?」
「男と」
「同じ?」
「多分」
「でも」
「二人とも」
「怪我してた」
「……」
アルト。
生存。
ほぼ。
確定?
「どこへ?」
「家に入らず」
「裏通り」
「そのまま」
「消えた」
◇◇◇
《重大情報》
《ナディアとアルトと思われる二名が三日前、レイゼン北区で目撃されています》
「近い」
カイト。
「今この街にいるかも」
「ああ」
◇◇◇
その時。
老婆。
「でも」
「変だった」
「何が?」
「後ろに」
「黒い服の男たち」
「何人?」
「三人」
「追ってた?」
「そんな感じ」
やっぱり。
◇◇◇
「ジョウゴさん」
ミナ。
「急いだ方が」
「ああ」
「でも」
「行き先」
分からない。
「裏通り」
「北区」
「怪我」
「身を隠す」
宿。
病院。
教会。
友人宅。
「治療」
必要。
なら。
「薬師」
「診療所」
「非正規」
目立たない。
「オルドさん」
「商人情報」
「使えるかも」
◇◇◇
戻る。
途中。
レント。
「尾行」
「また?」
「ああ」
後ろ。
二人。
《???》
「今度」
撒く?」
「いや」
俺。
立ち止まる。
三人。
「え?」
「話す」
「街中ですよ?」
「だから」
人。
多い。
広場。
衛兵。
いる。
「危ないこと」
「できない」
◇◇◇
振り返る。
二人。
止まる。
「何か用ですか?」
「……」
「ずっと後ろ」
「歩いてますけど」
一人。
笑う。
「偶然だ」
《洞察Lv.1》
《虚偽の可能性:高》
「嘘」
「何?」
「偶然じゃない」
「……」
もう一人。
顔。
険しく。
「異邦人」
「調子に乗るな」
「やっぱり」
カイト。
前。
「クロウ?」
男。
答えない。
◇◇◇
「剣」
俺。
手。
触れない。
「抜かない」
「ここ」
「街だから」
「そっちも」
「同じですよね?」
男。
舌打ち。
「……」
「伝言」
あるなら。
「聞きます」
「だったら」
一人。
「北区の調査をやめろ」
「理由」
「知らなくていい」
「ナディア?」
男。
一瞬。
顔。
変わる。
《洞察Lv.1》
《対象の動揺を確認》
「当たり」
「てめぇ!」
「ありがとう」
「何が!」
「ナディア」
「北区にいる可能性」
「高くなった」
◇◇◇
二人。
顔。
変わる。
「行くぞ」
「待て!」
カイト。
「追う?」
「追わない」
「なぜ?」
「顔」
「覚えた」
システム。
《人物情報を記録しました》
《黒鎖商会関係者と思われる二名》
「また来る」
「その時」
「使える」
◇◇◇
「洞察」
ミナ。
「強くないですか?」
「戦闘力ゼロ」
「でも今」
「すごく役立つ」
「ああ」
初めて。
ゲーム。
スキル。
戦闘。
以外。
面白い。
◇◇◇
白鷺亭。
戻る。
夕食前。
整理。
「今日」
分かったこと。
レント。
紙。
書く。
「一」
「クロウ訴状」
「虚偽の可能性高」
「二」
「リオスは協力的」
「三」
「支部長バルザック」
「信用保留」
「四」
「ナディアは元帳簿係」
「五」
「アルトと一緒」
「六」
「二人とも三日前」
「北区で目撃」
「七」
「黒鎖が北区調査を嫌がる」
「つまり」
カイト。
「北区」
「何かある」
「ああ」
◇◇◇
「明日」
ミナ。
「どうします?」
「診療所」
「薬屋」
「宿」
「怪我した二人が」
「身を隠せそうな場所」
「探す」
「地道」
「こういうの」
「大事」
◇◇◇
その時。
コンコン。
部屋。
ノック。
「誰?」
女将。
フェリア。
「ジョウゴさん」
「はい」
「あなた宛て」
「手紙」
「誰から?」
「分からない」
封筒。
差出人。
なし。
「怪しい」
カイト。
「開ける?」
「罠」
ミナ。
「手紙で?」
「毒?」
AWO。
あり得る。
「女将」
「誰が?」
「子供」
「預けてすぐ走っていった」
「特徴」
「茶色い帽子」
「十歳くらい」
「なるほど」
◇◇◇
封。
慎重。
開く。
紙。
短い。
文章。
《ジョウゴへ》
《アルトを探しているなら、明日の夜、北区の古い水車小屋へ一人で来い》
《黒鎖商会には知られるな》
《ナディア》
「……」
三人。
同時。
「「「ナディア!?」」」
俺。
もう一度。
読む。
《一人で来い》
「一人」
カイト。
「行く?」
「罠かも」
レント。
「でも」
「本人なら」
大きい。
「どうする?」
ミナ。
俺。
手紙。
見る。
答え。
決まってる。
「行く」
「一人で?」
「表向き」
三人。
「え?」
「一人で行く」
「でも」
「三人は」
「別方向から」
「近くまで」
「来て」
「ジョウゴさん」
「それ一人じゃない」
「待ち合わせ場所には」
「俺だけ」
「条件は守る」
「でも」
「何かあった時」
「助け」
「必要」
カイト。
笑う。
「慎重になったな」
「元々」
「慎重」
◇◇◇
《クエスト更新》
《消えた帳簿係》
《ナディアを名乗る人物から接触要請が届きました》
《明日夜》
《北区・古い水車小屋》
《単独接触を要求》
《危険度:不明》
「いよいよ」
レント。
「核心」
「ああ」
アルト。
ナディア。
黒鎖商会。
帳簿。
全部。
近い。
◇◇◇
その夜。
俺。
窓。
外。
レイゼン。
北。
遠く。
水車。
影。
「明日」
剣。
抜くか。
分からない。
でも。
今度の相手。
モンスター。
じゃない。
逃げてる人。
かもしれない。
敵。
かもしれない。
「見極める」
そのため。
新しく。
得た。
《洞察Lv.1》
「頼むぞ」
◇◇◇
同じ頃。
レイゼン北区。
古い。
水車小屋。
「手紙」
「届いた?」
暗闇。
女。
声。
「届いた」
男。
低い。
声。
「来るかな」
「来る」
「どうして分かる?」
「ルクを」
「エルナ村まで帰した男」
「なんでしょう?」
「……」
男。
少し。
笑う。
「そうだな」
月。
雲。
隠れる。
女。
肩。
包帯。
足元。
鞄。
中。
分厚い。
帳簿。
そして。
男。
背中。
巨大。
剣。
左肩。
古傷。
《???》
「アルト」
女。
言う。
「明日」
「あなたの息子を救った人が来る」
男。
目。
閉じる。
「……ルク」
一年。
探し続けた。
息子。
その名。
口。
出す。
「本当に」
「生きてるんだな」
「ええ」
「なら」
一拍。
「会わないとな」
俺は。
まだ。
知らない。
明日の夜。
探し続けていた。
ルクの父。
《アルト》本人と。
とうとう。
直接。
出会うことになるとは――。




