第45話 交易都市レイゼン
《Welcome Back》
《Another World Online》
視界を包んでいた淡い光が消える。
見えたのは、《第二宿場・ベルク》の宿屋の天井だった。
「……今日か」
俺――ジョウゴは身体を起こし、メニューを開いた。
《長期クエスト:父を追って》
《第一段階》
《交易都市レイゼンでアルトと黒鎖商会の情報を集めてください》
《現在地:第二宿場ベルク》
《目的地まで:馬車で約一日》
シズナを出て三日目。
ついに。
今日。
交易都市へ到着する。
「でも」
昨日。
東街道で捕らえた黒鎖商会の斥候。
あいつは。
はっきり言った。
『お前、ジョウゴだろ』
『やっぱり来たな』
『歓迎されるぞ』
つまり。
向こうは俺を知っている。
「面倒だな」
しかも。
レイゼンの街中では。
シズナみたいに。
敵だと思った相手へ。
すぐ刀を抜けるわけじゃない。
「まあ」
だからこそ。
まず情報か。
◇◇◇
宿の食堂。
「おはようございます」
「おはよう」
ミナ。
カイト。
レント。
三人。
朝食を食べている。
「今日ですね」
「ああ」
「レイゼン」
カイト。
「着いたらまず冒険者ギルド?」
「いや」
三人。
止まる。
「違うんですか?」
「昨日」
東街道管理官が言った。
『誰が黒鎖商会の関係者か分からない』
「だから」
「まずオルド商会」
「昨日助けた商人?」
レント。
「ああ」
《オルド商会紹介札》
商人オルド。
ハイウェイウルフから助けた。
少なくとも。
現時点では。
俺たちに恩を感じている。
「信用できるかは」
「会って判断」
「なるほど」
ミナ。
「次は?」
「宿」
「拠点」
「その後」
「街を見る」
カイト。
「クロウ運送商会は?」
「後回し」
「行かない?」
「いきなり行く理由ない」
相手。
俺たちを。
知っている可能性。
高い。
「こっちから」
「敵地の玄関叩く必要はない」
「珍しく慎重」
「普段も慎重!」
◇◇◇
食事。
終わり。
宿。
出る。
馬車。
すでに。
準備。
終わっていた。
「おはよう」
御者ハンス。
「今日はレイゼンまで?」
「ああ」
「夕方前には着く」
「何もなければ」
「……」
四人。
黙る。
「何だ?」
ハンス。
「その言い方」
カイト。
「昨日も途中で」
「ああ」
「荷馬車か」
ハンス。
苦笑。
「今日は何もないといいがな」
「本当に」
◇◇◇
馬車。
出発。
《第二宿場・ベルク》
遠ざかる。
今日は。
配信しない。
理由。
簡単。
「レイゼン入ってから」
情報。
どこまで。
出していいか。
分からない。
黒鎖商会。
こちら。
知られている。
なら。
俺たちの動きを。
配信経由で。
教える必要はない。
◇◇◇
二時間。
平和。
三時間。
平和。
「今日こそ」
ミナ。
「本当に何もない?」
「言うな」
「まだ言ってないです!」
街道。
幅。
広がる。
商隊。
増える。
馬車。
何台も。
すれ違う。
「近いな」
レント。
「物流量が違う」
商人。
荷車。
冒険者。
傭兵。
旅人。
東。
行くほど。
賑やか。
そして。
「見えた」
カイト。
前。
指。
遠く。
大きな。
城壁。
「でかい」
シズナ。
より。
明らか。
大きい。
《交易都市レイゼン》
都市。
東西。
広い。
城壁。
複数。
門。
街道。
繋がる。
「本当に交易都市」
ミナ。
「馬車の列」
すごい。
◇◇◇
正午過ぎ。
馬車。
レイゼン西門前。
列。
止まる。
「検問」
ハンス。
「時間かかるぞ」
「何見る?」
「身分証」
「荷物」
「危険物」
「最近」
「特に厳しい」
「理由は?」
「人さらい」
やっぱり。
◇◇◇
前。
商人。
荷車。
衛兵。
荷物。
確認。
箱。
開ける。
「かなり」
しっかり。
やってる。
カイト。
「黒鎖商会」
「これ抜けてるんだよな」
レント。
「正規書類あるんじゃない?」
「あるいは」
「衛兵側にも」
ミナ。
途中。
止める。
「今は」
俺。
「決めつけない」
三人。
頷く。
◇◇◇
「次!」
俺たち。
馬車。
前。
《レイゼン西門衛兵》
「身分証」
冒険者カード。
四人。
出す。
「シズナ所属?」
「はい」
「目的」
「観光」
カイト。
俺。
見る。
「あと冒険」
「調査」
正直。
「調査?」
「人探し」
「誰だ」
「アルトという冒険者」
衛兵。
反応。
ほぼ。
なし。
「知らんな」
「分かりました」
「武器」
俺。
刀。
見る。
「それは?」
「刀」
「カタナ?」
「ああ」
「珍しいな」
「最近」
そう言われる。
◇◇◇
「荷物確認」
問題。
なし。
「入っていい」
《交易都市レイゼンへの入場許可を取得しました》
門。
潜る。
◇◇◇
「……」
最初。
思った。
「人多い」
シズナ。
比べ物。
ならない。
大通り。
馬車。
露店。
建物。
三階。
四階。
倉庫。
看板。
商人。
冒険者。
獣人。
エルフ。
ドワーフ。
様々。
《交易都市レイゼン》
《人口:約24,000》
「二万四千」
ミナ。
「シズナよりかなり大きい」
「視聴者」
カイト。
「前回九万だから」
「街四つ分?」
「やめろ」
◇◇◇
大通り。
進む。
「まず」
地図。
中央。
《中央市場》
その周辺。
《オルド商会》
「近い」
「行こう」
◇◇◇
道。
途中。
目移り。
する。
果物。
香辛料。
武器。
布。
家具。
珍しい。
食べ物。
「ジョウゴさん」
ミナ。
「見てる」
「何を?」
「串焼き」
「見てない」
「視線動きました」
「配信してないぞ」
「普段から分かります」
「怖い」
◇◇◇
中央市場。
さらに。
人。
多い。
「すごいな」
俺。
素直。
言う。
シズナ。
暮らしやすい。
街。
レイゼン。
商売。
街。
そんな。
印象。
「宿探す前に」
「オルド商会」
レント。
「あそこ」
看板。
《オルド商会》
《雑貨・輸送・商談仲介》
「情報」
看板には。
書いてない。
◇◇◇
店。
入る。
カラン。
「いらっしゃい――」
若い。
店員。
俺たち。
見る。
「御用は?」
「オルドさんいますか?」
「会長に?」
「これ」
紹介札。
見せる。
店員。
目。
変わる。
「少々お待ちください」
奥。
走る。
「会長?」
カイト。
「商会主だったんだ」
「ただの商人じゃない」
◇◇◇
「おお!」
奥。
声。
「ジョウゴさん!」
オルド。
腕。
もう。
治ってる。
「来たか!」
「無事着きました」
「昨日は」
「本当に助かった」
「こちらも紹介札もらいましたし」
「そんなもの」
「命に比べれば安い」
オルド。
四人。
「さあ」
「奥へ」
◇◇◇
応接室。
茶。
出る。
「まず」
オルド。
笑う。
「何が欲しい?」
「商品なら」
「安くする」
「宿なら」
「紹介する」
「仕事なら」
「商人ギルド」
「情報なら」
俺。
「それ」
笑み。
少し。
消える。
「やっぱりか」
「気づいてた?」
「昨日」
「黒鎖商会の荷馬車を見つけた時」
「お前さんたち」
「ただの旅人じゃない顔してた」
「顔?」
カイト。
「そんな出てた?」
「出てた」
◇◇◇
「黒鎖商会」
俺。
「知ってます?」
オルド。
すぐ。
答えない。
「……知ってる」
「どれくらい?」
「表も」
「裏も」
空気。
変わる。
「裏」
「人身売買?」
「そうだ」
「密輸」
「ああ」
「黒鉄」
オルド。
眉。
動く。
「そこまで知ってるのか」
「少し」
「エルナ村」
言う。
か。
迷う。
でも。
「関連してます」
「……」
オルド。
長く。
黙る。
「お前さん」
「思ったより」
「深く入ってるな」
◇◇◇
「まず」
オルド。
扉。
閉める。
さらに。
窓。
確認。
「ここからの話」
「外ではするな」
「分かりました」
「黒鎖商会」
「レイゼンでは」
「別名を使う」
「クロウ運送商会?」
「!」
オルド。
完全。
表情。
変わる。
「誰に聞いた」
「シズナからの馬車で」
「旅商人ロイド」
「……あの爺さんか」
「知ってる?」
「古い商人だ」
「勘が鋭い」
◇◇◇
「その通りだ」
オルド。
「クロウ運送商会」
「表向きは」
「普通の運送屋」
「倉庫」
「荷馬車」
「護衛」
「全部」
「合法」
「でも?」
「裏で」
「黒鎖商会」
「人」
「禁制品」
「盗品」
「全部運ぶ」
「証拠」
「ある?」
オルド。
苦い。
顔。
「ない」
「正確には」
「持っていた者が」
「消える」
「……」
◇◇◇
「役人」
レント。
「関係者?」
「一部」
「買収」
オルド。
「されてる」
「冒険者ギルド?」
ミナ。
「そっちも」
「全員ではない」
「信用できる人」
「います?」
「ああ」
「レイゼン支部」
「副支部長」
「リオス」
《NPC情報を取得しました》
《レイゼン冒険者ギルド副支部長 リオス》
「支部長は?」
オルド。
沈黙。
それが。
答え。
「怪しい?」
「断言はしない」
「ただ」
「俺は信用してない」
◇◇◇
「アルト」
俺。
「知ってます?」
「アルト?」
オルド。
考える。
「姓は?」
「分からない」
「人間」
「剣士」
「四十前後?」
ルク。
十二。
父。
それくらい?
「豪剣を使う元冒険者」
オルド。
「ああ」
「知ってる」
「!」
全員。
前。
乗り出す。
「いつ?」
「一ヶ月ほど前」
「三週間より前?」
「そうだ」
「店に来た」
「何を?」
「黒鎖商会を調べていた」
「やっぱり」
◇◇◇
「アルトは」
オルド。
「俺にも」
「クロウ運送商会を聞いてきた」
「何を知ってた?」
「奴らが」
「子供を運んでる」
「それだけ」
「息子を?」
「探してるって」
「言ってた」
「……」
ルク。
ここ。
いない。
良かった。
かもしれない。
◇◇◇
「その後」
「灰色谷へ?」
「ああ」
「なぜ?」
「クロウ運送商会の荷馬車が」
「灰色谷へ向かっている」
「情報」
「手に入れたから」
「黒鎖商会の拠点?」
「可能性」
「ある」
「でも」
オルド。
俺。
見る。
「直接行くな」
「グランさんにも言われた」
「なら聞け」
「理由は?」
「谷の入口」
「見張られてる」
「正規街道」
「一つしかない」
「裏道」
「ある?」
「ある」
「知ってる?」
「俺は知らない」
◇◇◇
《長期クエスト更新》
《父を追って》
《アルトはレイゼンで黒鎖商会を調査していた》
《クロウ運送商会の荷馬車を追い、灰色谷へ向かった》
《灰色谷正面ルート:監視あり》
「重要」
レント。
「裏道探し」
「ああ」
◇◇◇
「それと」
オルド。
声。
さらに。
低く。
「アルトは」
「一人じゃなかった」
「え?」
「誰と?」
「女」
全員。
止まる。
「女性?」
「ああ」
「若い?」
「二十代くらい」
「種族?」
「人間」
「職業?」
「分からん」
「でも」
「クロウ運送商会の制服」
「着てた」
「内部協力者?」
ミナ。
「可能性ある」
◇◇◇
《新規人物情報》
《黒鎖商会内部にアルトへ協力した人物が存在する可能性》
「名前」
「分かる?」
「アルトが」
「一度」
「呼んでた」
オルド。
思い出す。
「確か」
「ナディア」
《NPC名を取得しました》
《ナディア》
《所属:不明》
「ナディア」
覚える。
◇◇◇
「ジョウゴ」
オルド。
「忠告する」
「はい」
「お前さん」
「クロウ運送商会へ行くな」
「行く気は」
「今のところない」
「今のところじゃなく」
「行くな」
「理由」
「昨日」
俺。
顔。
見る。
「もう」
「お前の似顔絵が」
「倉庫街で回ってる」
「……」
カイト。
「早っ」
ミナ。
「完全に知られてる」
レント。
「予想より」
「進んでる」
◇◇◇
「似顔絵」
「どんな?」
「これ」
オルド。
机。
引き出し。
紙。
出す。
《手配用似顔絵》
俺。
見る。
「……」
カイト。
覗く。
「似てる」
「やめろ」
ミナ。
「刀まで描いてあります」
「目立つ武器」
「失敗だった?」
レント。
「今さら」
◇◇◇
《重要情報》
《クロウ運送商会はジョウゴの外見・装備を共有しています》
「なら」
俺。
考える。
「刀」
「隠す?」
「難しい」
「収納?」
できる。
でも。
戦闘。
必要。
時。
取り出す。
「外套」
ミナ。
「上から隠せます」
「顔は?」
カイト。
「仮面?」
「怪しさ増す」
「フード」
レント。
「それくらい」
「あり」
◇◇◇
「オルドさん」
「宿」
「安全なところ」
「ある?」
「うちが使ってる」
「商人宿」
「紹介する」
「助かります」
「それと」
オルド。
小さな。
金属札。
出す。
《オルド商会客人証》
「持っとけ」
「効果?」
「中央市場で」
「俺の客だと分かる」
「信用」
「通りやすい」
「逆に」
「オルドさん狙われない?」
「今さらだ」
「クロウとは」
「昔から」
「商売敵」
「……」
ただの。
善意。
だけ。
じゃない。
でも。
利害。
合う。
「分かりました」
◇◇◇
その時。
店。
外。
カラン。
「いらっしゃいませ」
店員。
声。
そして。
「オルド会長はいらっしゃいますか?」
男。
声。
オルド。
一瞬。
顔。
硬く。
「誰?」
俺。
小声。
「声」
知ってる?
オルド。
首。
横。
「見てくる」
「俺たちは?」
「ここに」
◇◇◇
扉。
少し。
開く。
俺。
耳。
意識。
「会長」
男。
「クロウ運送商会から」
全員。
顔。
変わる。
「……」
カイト。
口。
動かす。
『来た』
俺。
頷く。
◇◇◇
「何の用だ」
オルド。
「ご挨拶です」
「最近」
「東街道で」
「当商会の荷馬車が」
「襲われたと聞きまして」
襲われた?
俺たちが?
いや。
「盗賊に?」
「そう報告されています」
嘘。
完全。
「それで?」
「犯人の中に」
「珍しいカタナを持つ異邦人が」
「いたとか」
ミナ。
眉。
寄せる。
カイト。
拳。
握る。
俺。
手。
上げる。
まだ。
◇◇◇
「知らんな」
オルド。
「そうですか」
「もし見かけましたら」
「クロウ運送商会へ」
「ご連絡を」
「報奨金」
「用意しております」
俺。
思う。
「俺」
賞金。
懸けられてる?
◇◇◇
《地域情報更新》
《クロウ運送商会》
《ジョウゴを東街道荷馬車襲撃事件の容疑者として捜索中》
「……」
ゲームシステム。
まで。
認識。
した。
カイト。
口。
動かす。
『冤罪』
俺。
小さく。
頷く。
◇◇◇
「では」
男。
「失礼します」
店。
出る。
しばらく。
待つ。
オルド。
戻る。
「……聞いたか」
「ああ」
「最悪だな」
「向こう」
「先手」
打ってきた。
俺。
悪者。
扱い。
「衛兵」
「捕まる?」
ミナ。
「今は」
オルド。
「正式な手配じゃない」
「商会内」
「捜索」
「だけ」
「でも」
「この噂が広がれば」
「正式」
される。
可能性。
ある。
◇◇◇
「証拠」
俺。
「東街道管理所」
「捕虜」
「子供」
「荷馬車」
「ある」
「なら」
レント。
「向こうより」
「強い証拠」
「出せる」
「ただし」
オルド。
「どこに持っていくか」
「間違えるな」
「買収されてる人」
「いる」
「副支部長」
「リオス」
「信用できる?」
「ああ」
「なら」
「次」
「そこ」
◇◇◇
《クエスト更新》
《黒鎖商会の影》
《クロウ運送商会による情報操作が開始されました》
《ジョウゴへの疑惑を晴らす証拠を確保してください》
《信頼できる人物へ情報を届けてください》
《推奨行動:レイゼン冒険者ギルド副支部長リオスとの接触》
「剣」
カイト。
「抜かなくても」
「戦い始まったな」
「ああ」
まさに。
それ。
◇◇◇
「宿」
オルド。
「裏口から」
「案内させる」
「表」
「見張られてる?」
「可能性」
「高い」
「もう?」
「クロウ」
「こういう時」
「仕事が早い」
「嫌な意味で」
◇◇◇
オルド商会。
裏。
路地。
フード付き。
外套。
借りる。
刀。
布。
隠す。
「ジョウゴさん」
ミナ。
「怪しいです」
「言うな」
「でも」
カイト。
「刀見えないだけ」
「だいぶ違う」
レント。
「顔」
「フード」
「深く」
「了解」
◇◇◇
《中央市場・裏通り》
人。
少ない。
でも。
完全。
無人。
じゃない。
「視線」
感じる?
いや。
意識。
しすぎ。
「ジョウゴ」
レント。
小声。
「後ろ」
「何人?」
「一」
「ずっと?」
「市場出てから」
尾行。
か。
◇◇◇
「ミナ」
「はい」
「次の角」
「右」
「カイト」
「その後」
「左」
「撒く?」
「試す」
角。
曲がる。
右。
次。
左。
屋台。
間。
人。
流れ。
「レント」
「まだいる」
「上手いな」
◇◇◇
なら。
「撒かない」
三人。
「え?」
「逆に」
「どこまで来るか見る」
「危なくない?」
ミナ。
「宿までは連れていかない」
「その前」
「人の多いところ」
「そこで」
「確認」
◇◇◇
大通り。
出る。
広場。
「レント」
「右後方」
「灰色外套」
俺。
直接。
見ない。
露店。
鏡。
金属板。
反射。
「……いた」
《???》
「観察」
《不審な人物》
《視線対象:ジョウゴ一行》
「確定」
◇◇◇
「どうする?」
カイト。
「捕まえる?」
「街中」
「犯罪行為」
「してない」
「尾行だけ」
「なら」
俺。
露店。
入る。
「買い物?」
ミナ。
「そう」
《帽子屋》
「いらっしゃい」
「帽子」
「四つ」
「え?」
カイト。
「なんで?」
「目印変える」
フード。
外。
帽子。
被る。
俺。
刀。
収納。
「外套」
カイト。
「俺と交換」
「体格違う」
「多少」
「ミナ」
「レント」
「上着」
「逆」
「変装?」
「簡単だけど」
「人混みなら」
店。
裏。
別出口。
ある。
「店主」
「裏から出ていい?」
「買ってくれるなら」
「いいよ」
「商売人強い」
◇◇◇
裏。
出る。
別。
路地。
数分。
「レント」
「いない」
「撒けた」
カイト。
「銀行員の技?」
「違う」
「普通に考えただけ」
三人。
「「「普通」」」
「もういい」
◇◇◇
そして。
ようやく。
《白鷺亭》
オルド。
紹介。
商人宿。
受付。
《女将 フェリア》
「オルドさんの?」
客人証。
「はい」
「聞いてるよ」
「二階」
「奥二部屋」
「それと」
声。
落とす。
「余計な客」
「入れないから安心しな」
「助かります」
◇◇◇
部屋。
四人。
集合。
「ようやく」
カイト。
「落ち着いた」
「到着初日」
ミナ。
「何もしてないのに」
「もう尾行」
「冤罪」
レント。
「敵地感ある」
「本当に」
俺。
椅子。
座る。
メニュー。
《交易都市レイゼン》
《現在友好度:中立》
《クロウ運送商会:敵対傾向》
「街全体は」
「まだ敵じゃない」
そこ。
大事。
「だから」
「味方」
「作る」
「最初」
「副支部長リオス」
◇◇◇
「配信」
ミナ。
「どうします?」
「しない」
「レイゼン到着配信」
「楽しみにしてる人」
「多いと思う」
「ああ」
「でも」
「今やると」
「宿」
「行動」
「全部」
「バレる」
「ですね」
「CROSSには?」
「連絡」
◇◇◇
《CROSS社へメッセージ》
《レイゼン到着済み》
《ゲーム内安全上の理由により当面LIVE配信を停止》
《位置・行動情報の公開を控えます》
送信。
数秒。
《CROSS社》
《承知しました》
《配信予定は停止扱いとします》
《ゲーム内状況を最優先してください》
「早い」
「本当に助かる」
◇◇◇
その夜。
白鷺亭。
夕食。
「今日は」
ミナ。
「何食べます?」
「レイゼン名物」
「ある?」
女将。
「香辛料煮込み」
「それ」
「結局食うんだ」
カイト。
「緊張してても腹は減る」
◇◇◇
《レイゼン風香辛料煮込み》
一口。
「辛っ」
初めて。
ちゃんと。
食レポ。
出た。
ミナ。
「どうです?」
「辛い」
「それだけ?」
「後から甘い」
「おお!」
カイト。
「成長してる!」
「何の?」
◇◇◇
食事。
笑う。
でも。
頭。
動く。
明日。
冒険者ギルド。
副支部長。
リオス。
どう。
会う。
正面。
受付。
行けば。
こちら。
バレる。
可能性。
でも。
隠れ。
続ける。
必要。
ない。
「証拠」
東街道管理所。
あそこ。
正式。
記録。
ある。
「オルドさんから」
「紹介状」
「もらえるかも」
レント。
「副支部長宛て?」
「そう」
「明朝」
「頼む」
◇◇◇
その時。
ポーン。
《特殊技能条件を一部達成しました》
「?」
《複数の情報源を比較し、虚偽情報の可能性を判定》
《NPCの態度・証言・行動を総合分析》
《技能候補》
《洞察》
「洞察?」
ミナ。
「銀行員っぽい」
「なんで?」
「人を見るから」
「そういう仕事じゃないけど」
でも。
《洞察》
欲しい。
今。
戦闘スキル。
より。
役立つかもしれない。
◇◇◇
夜。
部屋。
一人。
窓。
外。
レイゼン。
灯り。
多い。
シズナ。
より。
都会。
商人。
笑う。
酒場。
賑やか。
でも。
その裏。
黒鎖商会。
潜む。
「剣を抜けない戦い」
正確。
には。
剣を。
抜かなくていい。
段階。
「証拠」
「味方」
「情報」
「それを集める」
現実。
銀行員。
仕事。
契約書。
数字。
話。
矛盾。
確認。
「……こっちの方が」
「仕事に近いかも」
嫌だな。
ゲーム。
なのに。
◇◇◇
同じ頃。
《クロウ運送商会》
「尾行」
「撒かれました」
「……」
「すみません」
「構わん」
男。
グラス。
置く。
「宿は?」
「不明」
「オルド商会へ入ったのは確認」
「なら」
「十分」
「オルド」
「奴も」
「敵側ですか?」
「敵?」
男。
笑う。
「商人に」
「敵も味方もない」
「利益がある方へ」
「動く」
「なら」
「ジョウゴより」
「大きな利益を」
「見せればいい」
「買収?」
「違う」
一枚。
書類。
「明日」
「冒険者ギルドへ」
「これを出せ」
「内容は?」
「ジョウゴが」
「東街道で」
「クロウ運送商会の荷馬車を襲撃」
「商品を強奪」
「護衛四人を拘束」
「……虚偽では?」
「だからどうした」
印。
押す。
《クロウ運送商会正式印》
「正式な書類になれば」
「信じる者はいる」
◇◇◇
そして。
翌朝。
レイゼン冒険者ギルド。
一通。
訴状。
届く。
《異邦人ジョウゴ一行による商会襲撃事件》
同時。
東街道管理局から。
別。
報告書。
《黒鎖商会関連者四名の拘束》
《誘拐被害児童二名の保護》
《救出者:ジョウゴ一行》
正反対。
二つ。
書類。
机。
並ぶ。
「……」
一人。
男。
見る。
《レイゼン冒険者ギルド副支部長 リオス》
「面白いことになったな」
こうして。
俺たちが。
まだ眠っている間に。
次の戦場は。
すでに。
整えられていた。
剣ではなく。
証言と証拠と信用がぶつかる戦場が――。




