第41話 鍛冶配信と試作三号
数日後。
「上塚主任」
「はい」
「ジョウゴの次の配信、鍛冶らしいですよ」
「……そうらしいな」
俺――上塚賢吾は、手元の書類から顔を上げずに答えた。
目の前。
後輩。
妙に楽しそうだ。
「刀の新型作るらしいです」
「へえ」
「興味ないんですか?」
「あるよ」
「反応薄くないです?」
「仕事中だから」
「あ」
「仕事しようか」
「はい」
後輩が自席へ戻っていく。
「……危ないな」
今度の配信。
その《ジョウゴ》本人が俺だ。
しかも。
配信内容。
刀の試作三号。
知らないふりをするにも。
だんだん情報が増えすぎている。
◇◇◇
仕事終了。
帰宅。
夕食。
風呂。
家事。
全部。
終わらせる。
「今日は配信か」
VR機器。
装着。
《Another World Onlineを起動します》
「ログイン」
◇◇◇
《Welcome Back》
《Another World Online》
銀麦亭。
七号室。
《CROSS LIVE》
《配信開始予定まで:32分》
「ちょっと早かったな」
装備。
《軽革戦闘衣》
《鉄刀・試作二号》
試作二号。
これ。
今日。
比較にも使う予定だ。
「壊れてない」
《耐久値:207/210》
「バルガに見られたら怒られそう」
修理。
してから。
配信。
でも。
その前に。
「ルクから連絡……はないか」
当然。
エルナ村とシズナ。
直接。
メッセージ。
飛ばせるわけではない。
プレイヤー同士なら簡単なのに。
NPC相手では。
そうはいかない。
「世界が広いと不便も増えるな」
でも。
その不便。
俺は嫌いじゃない。
◇◇◇
一階。
「ジョウゴさん!」
ミナ。
カイト。
レント。
すでにいる。
「今日は三人も出る?」
「どうします?」
ミナ。
「鍛冶見たい?」
「見たいです!」
即答。
「じゃあ一緒」
「やった!」
カイト。
「俺も刀の作り方見たい」
「レントは?」
「興味ある」
「決まり」
◇◇◇
「ジョウゴ!」
今度。
厨房。
マリアさん。
「配信前だろ!」
「まだ二十五分あります」
「なら飯!」
「今?」
「腹減ってないのかい?」
「現実で食べてきました」
「こっちは?」
「……」
三人。
俺を見る。
「何?」
「食べるな」
カイト。
「絶対食べる顔してる」
「軽く」
「やっぱり!」
◇◇◇
《銀麦亭の小さなスープセット》
「小さくした」
「成長した」
ミナ。
「食べること自体は止めないんですね」
「ゲーム内だから太らない」
「また言ってる」
そして。
食事。
終了。
《配信開始まで:11分》
「そろそろ行くか」
◇◇◇
鍛冶工房。
《鍛冶工房・バルガ》
カラン。
「来たか!」
バルガ。
すでに。
完全準備。
炉。
火。
作業台。
鉱石。
《高密度鉄》
《黒鉄》
並ぶ。
「やる気満々」
「当たり前だ!」
「配信」
「いいんだよな?」
「何度聞く!」
「一応」
「好きに見せろ!」
「ただし!」
「?」
「俺の邪魔はするな!」
「それはしない」
◇◇◇
《NPC:バルガ》
《配信出演同意:確認済み》
《工房内配信許可:有効》
《職人技術保護設定:一部有効》
「技術保護?」
ミナ。
「何それ?」
説明。
《NPCが秘匿を希望する工程は自動的に映像処理されます》
「なるほど」
AWO。
こういうところ。
ちゃんとしている。
「バルガ」
「何だ?」
「見せたくないところある?」
「ねぇ!」
「全部?」
「ああ!」
「俺の技を見て真似できるなら」
ニヤッ。
「やってみろ!」
「職人気質」
カイト。
「かっこいい」
◇◇◇
《配信開始まで:00:30》
設定。
《一人称視点:ON》
《三人称補助カメラ:ON》
《視線トラッキング:ON》
《コメント抽出:ON》
《工房内環境補正:ON》
《00:10》
「今日は」
俺。
少し。
息。
《5》
《4》
《3》
《2》
《1》
《LIVE》
「どうも」
『きたあああ!』
『鍛冶回!』
『バルガいる!』
『刀!』
『試作三号!』
『ジョウゴ今日も最初の挨拶短いw』
「ジョウゴです」
『知ってる』
『恒例』
バルガ。
「兄ちゃん」
「何?」
「こいつらが見てる連中か?」
「そう」
「何人だ?」
「今は見ない」
『草』
『逃げた』
《現在視聴者数:52,184》
「……」
『見たw』
「表示位置変えたい」
『五万おめ』
◇◇◇
「今日は」
俺。
作業台。
見る。
「《鉄刀・試作三号》を作ります」
『待ってた!』
『二号との違いは?』
『黒鉄使うの?』
「そう」
俺。
黒鉄。
持つ。
《黒鉄》
「こっちが」
「エルナ村周辺で見つかった素材」
詳しい。
村の。
場所。
黒鎖商会。
そこまでは。
話さない。
「鉄より粘りが高い」
「ただ」
「単体だと刃には少し柔らかいらしい」
「で」
高密度鉄。
「こっちは硬い」
「なら」
「性質を組み合わせたらどうか」
バルガ。
「それを試す!」
『複合材!』
『日本刀っぽい考え方?』
「近い発想はある」
「ただ」
「現実の日本刀の製法を完全再現してるわけじゃないです」
「俺も刀鍛冶ではないので」
『そこ大事』
『剣道家だもんな』
『でも詳しい』
「趣味と知識の範囲」
◇◇◇
「兄ちゃん!」
「はい」
「説明終わったなら手伝え!」
「配信者扱いしてくれない」
「職人の前じゃ弟子だ!」
「弟子になった覚えは……」
バルガ。
見る。
「……手伝います」
『圧w』
『完全に師匠』
『ジョウゴ弱い相手発見』
「この人には勝てない」
◇◇◇
まず。
高密度鉄。
加熱。
炉。
赤。
橙。
そして。
白に近い。
「温度」
「色を見る?」
「色と」
バルガ。
「音」
「音?」
「叩いた時の」
「金属の返し」
試し。
槌。
カン。
「まだ」
再加熱。
『音で分かるの?』
「俺も分からない」
「バルガは分かるらしい」
『職人すげえ』
◇◇◇
黒鉄。
別。
加熱。
「同じ温度?」
「違う!」
「黒鉄は」
「熱が入りやすい」
「上げすぎるな!」
「了解」
俺。
火。
見る。
ここでも。
《観察Lv.1》
《素材温度:高》
《状態:加工可能》
「表示出る」
「兄ちゃん!」
「何?」
「数字に頼るな!」
「数字じゃないけど!」
「色を見ろ!」
「はい!」
『バルガ厳しいw』
『ゲームUIを否定するNPC職人』
◇◇◇
そして。
二つ。
重ねる。
「ここから」
バルガ。
「接合」
「どうやって?」
「叩く!」
「やっぱり」
「鍛冶だからな!」
カン!
カン!
カン!
火花。
飛ぶ。
「兄ちゃん!」
「はい」
「槌!」
俺。
受け取る。
「俺も?」
「共同考案だろ!」
「製作も?」
「やれ!」
「分かった!」
◇◇◇
槌。
重い。
現実。
鍛冶。
少し。
経験。
でも。
専門。
ではない。
「ここ?」
「中心!」
「力入れすぎるな!」
カン!
「違う!」
「難しい!」
「当たり前だ!」
『ジョウゴが普通に怒られてるw』
『新鮮』
『戦闘では無双なのに』
「鍛冶は専門外なんで!」
◇◇◇
《鍛冶補助技能を確認》
《《槌打ちLv.1》を獲得しました》
「スキル取った」
「おお!」
ミナ。
「鍛冶師になる?」
「ならない」
『また職業増えるw』
『剣士とは』
「刀を使うために刀作ってるだけ」
『普通の剣士は刀作らない』
「そう?」
『そう』
◇◇◇
金属。
一つ。
まとまる。
《複合鉄塊》
「できた?」
「まだ入口だ!」
「長い」
「刀一本作るんだぞ!」
「そうでした」
◇◇◇
伸ばす。
叩く。
折り返し。
また。
接合。
バルガ。
今回は。
黒鉄。
芯。
高密度鉄。
外側。
完全。
現実の日本刀。
同じではない。
でも。
考え方。
似ている。
「これなら」
俺。
「中心が粘って」
「外側が硬い?」
「狙いはそうだ」
「ただ」
「実際どうなるかは」
「完成しねぇと分からん」
「実験」
「そうだ!」
◇◇◇
配信。
二時間。
経過。
『鍛冶ずっと見てられる』
『火花きれい』
『職人番組になってる』
『ジョウゴ配信またジャンル変わった』
『旅行番組→武術講座→鍛冶番組』
「俺の配信」
「何なんですかね」
レント。
「AWO生活配信」
「結局そこ」
◇◇◇
刀身。
形。
できる。
「試作二号より」
俺。
横。
見る。
「少し細い?」
「ああ」
「重心」
「手元寄りにした」
「俺が言ったやつ」
「前に言ってただろ!」
「覚えてたんだ」
「職人を馬鹿にするな!」
◇◇◇
焼入れ。
バルガ。
真剣。
「ここ」
「重要?」
「失敗したら」
「全部終わる」
「喋らない方がいい?」
「黙れ」
「はい」
コメント。
『緊張』
『静かになった』
『職人の顔だ』
炉。
刀身。
熱。
色。
バルガ。
見る。
水。
いや。
「水じゃない?」
「油?」
「特殊焼入れ液」
《焼入れ液》
詳細。
《職人調合》
「秘匿?」
《映像保護処理:一部適用》
『モザイク入ったw』
『企業秘密』
「バルガ」
「全部見せるんじゃ?」
「これは親父から教わった配合だ!」
「そこは駄目なんだ」
「当たり前だ!」
世界側。
ちゃんと。
秘密。
ある。
◇◇◇
「行くぞ」
ジュウウウウウウッ!!
白い。
蒸気。
刀身。
冷える。
バルガ。
持ち上げる。
「……」
見る。
曲がり。
刃。
ヒビ。
「どう?」
「待て」
コン。
音。
「……」
さらに。
見る。
「成功」
「おお」
『きた!』
『成功!』
「まだ研ぎだ!」
「まだある」
◇◇◇
研ぎ。
長い。
俺。
座る。
「これ」
「配信的に大丈夫?」
『大丈夫』
『むしろ見たい』
『職人ASMR』
「ASMR?」
『気にするな』
シャッ。
シャッ。
砥石。
刃。
少しずつ。
光。
◇◇◇
三時間半。
そして。
「できた」
バルガ。
刀。
鞘。
まだ。
簡素。
でも。
試作二号より。
明らか。
完成度。
高い。
「持て」
「はい」
受け取る。
《鉄刀・試作三号》
《品質:希少》
《製作者:鍛冶師バルガ》
《共同考案:ジョウゴ》
《素材:高密度鉄/黒鉄》
《構造:複合鍛造》
《耐久値:320/320》
《斬撃補正:中》
《受け流し補正:微》
《破損耐性:上昇》
《重量:中》
《重心:手元寄り》
「品質」
「希少?」
ミナ。
「上質から上がった!」
バルガ。
目。
大きい。
「本当か!?」
「自分で作ったのに知らないの?」
「職人は表示見ねぇ!」
「そこ?」
◇◇◇
「抜く」
鯉口。
切る。
スッ――。
刀身。
前。
二号。
より。
少し。
細い。
でも。
頼りない。
感じ。
ない。
「……いい」
握る。
重心。
手元。
「振っていい?」
「工房壊すなよ!」
「壊さない」
軽く。
素振り。
ヒュッ。
「……」
もう一度。
ヒュンッ。
「軽い」
「重量は大きく変えてねぇ」
バルガ。
「重心」
「ああ」
「手元に戻した」
「だから」
「切り返し」
早い。
「試作二号より使いやすい」
バルガ。
ニヤ。
「だろ?」
◇◇◇
コメント。
『試し斬り!』
『戦闘見たい』
『二号比較!』
「試し斬り」
俺。
バルガ。
見る。
「訓練場」
「行け!」
「いいの?」
「完成品は使ってこそだ!」
「分かった」
◇◇◇
《シズナ冒険者ギルド・訓練場》
配信。
継続。
バルガも。
来た。
「わざわざ?」
「見るに決まってる!」
試し。
藁束。
木柱。
《試し斬り用標的》
「まず二号」
《鉄刀・試作二号》
構える。
一閃。
ザンッ!
《斬撃評価:A》
「次」
三号。
抜く。
違う。
手。
馴染む。
「ふっ!」
ザンッ!
《斬撃評価:S》
「……おお」
『S!』
『一段上がった』
『刀すげえ』
バルガ。
「どうだ!」
「いい」
「もっと言え!」
「かなりいい」
「よし!」
◇◇◇
「次」
動く標的。
《訓練用木偶》
木剣。
持つ。
攻撃。
「受け流し」
試作三号。
刃。
ではなく。
側面。
角度。
カンッ!
《Parry!》
《受け流し補正発動》
いつもより。
抵抗。
小さい。
「お」
流れる。
「これ」
「かなり良い」
次。
反撃。
胴。
止める。
「危ないので斬らない」
『木偶にも優しいw』
◇◇◇
「耐久」
《320/320》
「減ってない」
バルガ。
「当然!」
「これなら」
俺。
一瞬。
防衛戦。
巨大。
斧。
思い出す。
「斧受けても」
「兄ちゃん!」
怒鳴られた。
『草』
『言うと思った』
『バルガ激怒』
「冗談!」
「絶対やるな!」
「はい!」
◇◇◇
その時。
ポーン。
《新武器開発実績を確認》
《既存カテゴリ《刀》の発展条件を達成しました》
「何?」
《プレイヤー:ジョウゴ》
《NPC鍛冶師:バルガ》
《共同開発により複合鍛造刀を製作》
《新規製作レシピが地域技術として登録されました》
《複合鍛造刀》
「地域技術?」
ミナ。
「他の鍛冶師も?」
説明。
《一定条件を満たした鍛冶師NPC・プレイヤーが研究可能になります》
「広がる」
レント。
「刀が」
「ああ」
「俺だけの武器じゃなくなる」
俺。
少し。
嬉しい。
「いいな」
『独占しないんだ』
『普通は自分だけの強み残したくない?』
「別に」
「刀が増える方が面白い」
「使う人が増えれば」
「もっと改良されるだろうし」
『職人思考w』
「俺剣士」
◇◇◇
さらに。
《称号条件達成》
《新規称号》
《刀の先駆者》
「また称号」
《効果》
《刀系武器への習熟補正:微》
《刀関連NPCとの会話選択肢増加》
「これは嬉しい」
カイト。
「指南役より?」
「同じくらい」
「先生と刀マニア」
「言い方」
◇◇◇
配信。
四時間。
《現在視聴者数:104,283》
「……」
『見た』
『十万突破!』
『初十万!』
「十万?」
俺。
固まる。
「なんで鍛冶で?」
『鍛冶だからだよ』
『刀完成の瞬間見たかった』
『バルガ人気』
「俺じゃなくバルガ?」
『両方』
バルガ。
「十万ってどれくらいだ?」
「シズナに入りきらないくらい」
「前も聞いたな」
「今度はもっと」
「じゃあ」
バルガ。
胸。
張る。
「十万人!」
「俺のカタナ見ろ!」
『wwwww』
『最高』
『バルガ配信者適性ある』
「俺より向いてるかも」
◇◇◇
少し。
笑う。
そして。
「今日は」
俺。
試作三号。
納刀。
「ここで終わります」
『お疲れ!』
『神回』
『試作三号完成おめ』
『次は戦闘で見たい』
「次」
「戦闘依頼受ける予定なので」
『お?』
『レベル上げ?』
「現在レベル6」
「次の目的地」
「推奨7以上なので」
「そこまで」
「普通に依頼を受けながら上げます」
『ついに攻略勢っぽいことを』
「攻略じゃなくて準備」
『ジョウゴらしい』
◇◇◇
「あと」
一拍。
「エルナ村」
話せる。
範囲。
「ルクは」
「無事」
「故郷へ帰れました」
コメント。
一気。
『よかったあああ!』
『おめでとう!』
『ルク帰れた!』
『母親は?』
フィルター。
一部。
消える。
「詳しい話は」
「本人と家族のことなので」
「ここではしません」
「ただ」
「帰る場所は残ってました」
「それだけ」
コメント。
『それで十分』
『よかった』
『安心した』
「ありがとうございます」
◇◇◇
「じゃあ」
「またAWOで会いましょう」
《LIVE END》
◇◇◇
配信。
終了。
「終わった」
ミナ。
「十万人ですよ」
「見なかったことに」
「今回はもう無理です」
カイト。
「バルガが叫んだからな」
「俺のせいか!?」
「半分」
◇◇◇
バルガ。
試作二号。
俺。
渡す。
「これどうする?」
「預かる」
「三号あるし」
「直して」
「資料にする」
「二号」
「残すんだ」
「当然」
バルガ。
「一号もある」
「試作全部?」
「ああ」
「兄ちゃん」
一号。
二号。
三号。
「この変化」
「全部」
「次につながる」
「……」
職人。
だな。
「任せる」
◇◇◇
その夜。
冒険者ギルド。
「戦闘依頼」
掲示板。
見る。
《依頼:街道沿いのオーク討伐》
《推奨Lv:6~》
《討伐数:5》
《報酬:450G》
「これ」
カイト。
「ちょうどよくない?」
「ああ」
オーク。
まだ。
AWOでは。
本格的に。
戦ってない。
「次これ」
ミナ。
「配信?」
「しない」
「また?」
「今日はしたし」
「次は普通に遊ぶ」
レント。
「そして配信してない時に何か起きる」
「やめて」
◇◇◇
《依頼を受注しました》
《街道沿いのオーク討伐》
「次」
レベル7。
目標。
でも。
その先。
《灰色谷》
父。
アルト。
黒鎖商会。
そして。
俺たちより。
ずっと。
危険な敵。
「試作三号」
腰。
触る。
「ちょうどいい」
新しい刀。
新しい敵。
新しい地域。
最初の街。
シズナで。
始まった。
俺のAWO生活。
少しずつ。
次へ。
進んでいる。
◇◇◇
同じ頃。
CROSS社。
「配信終了」
「最大同接」
「十一万二千六百四十四」
「十万突破」
「アーカイブ予約」
「急増中」
「バルガさん」
「人気ですね」
「職人枠です」
神崎。
映像。
完成した。
《鉄刀・試作三号》
見る。
「戦闘配信」
「次」
「ありそうですね」
「本人は?」
「通常プレイ予定」
「なら」
「放っておきましょう」
「はい」
「どうせ」
一拍。
「また何か起きます」
◇◇◇
そして。
AWO。
シズナから東へ伸びる街道。
夜。
月。
その下。
大きな。
影。
「ブモォ……」
一。
二。
三。
五。
いや。
もっと。
《オーク》
その奥。
ひときわ。
大きな。
個体。
肩。
大斧。
《???》
通常。
オーク討伐依頼。
そのはずだった。
だが。
明日。
俺たちは。
ただの五体討伐では終わらない。
《灰色谷》へ向かうための。
最初の本格的な。
戦闘試練へ。
足を踏み入れることになる。




