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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第一章 AWO開始編

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第39話 父を知る旅人

 エルナ村の夜。


 焚き火の光が静かに揺れている中。


「アルトを知ってる」


 ぼろぼろの旅装をまとった男が、確かにそう言った。


 俺――ジョウゴたちは、一斉にその男へ視線を向ける。


「お父さん!?」


 真っ先に反応したのはルクだった。


 男もルクを見る。


 驚いたように目を見開き。


「……君」


 一拍。


「まさか」


「アルトの息子か?」


 ルクの身体が固まった。


「俺」


「ルク」


「ルク……」


 男が。


 ゆっくり。


 その名前を繰り返す。


「そうか」


「生きていたのか……」


「お父さんを知ってるの!?」


「ああ」


 即答だった。


「知っている」


 ルクが一歩。


 前へ。


「どこ!?」


「今どこにいるの!?」


「ルク」


 俺は肩へ手を置いた。


「まず落ち着け」


「でも!」


「この人もボロボロだ」


「……」


 言われて。


 ようやく気づいたらしい。


 男の顔色。


 悪い。


 服も泥だらけ。


 左腕には応急処置らしい布が巻かれている。


「まず治療」


 俺。


 ミナを見る。


「お願いします」


「はい!」


         ◇◇◇


「こちらへ」


 セリエ。


 すぐに男を村の中央へ招く。


「水を!」


「薬草も!」


 村人たちが動く。


 ミナは男の腕へ手をかざした。


「《ヒール》」


 淡い光。


《旅人の負傷が回復しました》


 ただし。


「完全じゃないですね」


「疲労がかなりあります」


「数日まともに休めていない感じです」


「そうか」


 男。


 水。


 飲む。


「助かる」


「ありがとう」


「名前」


 俺。


「聞いていいですか?」


「ああ」


 男。


 息。


 整える。


「ダリオだ」


《NPC情報が更新されました》


《旅人 ダリオ》


《種族:人間》


《職業:行商人》


「行商人?」


 カイト。


「その格好で?」


「商売帰りだった」


 ダリオ。


 苦笑。


「正確には」


「逃げ帰りだ」


「逃げ?」


 レント。


「何かあったんですか」


「それも」


 ダリオ。


 俺たち。


 見る。


「アルトの話と繋がっている」


         ◇◇◇


 ルク。


 膝。


 握っている。


「お父さん」


「生きてる?」


 ダリオ。


 すぐには。


 答えなかった。


 ルクの表情。


 見る。


 それから。


「少なくとも」


 一拍。


「三週間前までは」


「生きていた」


「!」


 ルク。


 立ち上がる。


「本当!?」


「ああ」


「俺が最後に会ったのが三週間前だ」


「どこ!?」


「東の交易都市」


「名前は」


 男。


 言う。


「《レイゼン》」


《地名情報を取得しました》


《交易都市レイゼン》


《シズナから東方》


《馬車で約三日》


「三日」


 俺。


 小さく。


 呟く。


 また。


 遠い。


         ◇◇◇


「なんでお父さんが?」


 ルク。


「俺を探して?」


「ああ」


 ダリオ。


「アルトは一年以上」


「各地を回っていた」


「最初は」


「ゴブリンの巣」


「奴隷商人」


「盗賊」


「冒険者ギルド」


「どこへでも」


「ルクって少年を知らないかって」


「……」


 セリエ。


 目。


 閉じる。


「やっぱり」


「諦めてなかったのね」


「諦める?」


 ダリオ。


「そんな男じゃない」


 少し。


 笑う。


「俺が止めても」


「聞かなかった」


「『息子を見つけるまで帰れない』」


「そればかりだった」


 ルク。


 下。


 向く。


「お父さん……」


         ◇◇◇


 俺。


「ダリオさん」


「はい」


「アルトさんと一緒だった?」


「途中から」


「半年ほど」


「商売?」


「最初は護衛を頼んだ」


「アルトに?」


「ああ」


「剣が使える?」


「かなり強い」


 ルク。


「お父さん」


「剣士?」


「知らなかった?」


「木こりだと思ってた」


「昔は冒険者だったらしい」


 ダリオ。


 言う。


《ルクの父・アルト》


《元冒険者》


「なるほど」


 だから。


 ガレスとも。


 面識。


 ある。


         ◇◇◇


「それで」


 レント。


「三週間前」


「何があった?」


 ダリオ。


 表情。


 曇る。


「黒い腕布の連中を追った」


 俺たち。


 全員。


 反応。


「やっぱり」


 ミナ。


 小さく。


「繋がってる」


「アルトさんも?」


 俺。


「黒腕布を追ってた?」


「そうだ」


 ダリオ。


「奴らの荷車に」


「子供用の檻があった」


 空気。


 冷える。


「アルトは」


「ルクがそこにいるかもしれないと」


「後を追った」


「俺も一緒に?」


「途中までは」


「でも」


「東の《灰色谷》で」


「襲われた」


「誰に?」


「黒腕布」


「何人?」


「十人以上」


「多いな」


 カイト。


 盾。


 思い出すように。


 眉を寄せる。


「俺たちが会ったのも八人だった」


「同じ集団でしょうか」


 ミナ。


「可能性高い」


         ◇◇◇


 ダリオ。


 続ける。


「そこで」


「俺とアルトは別れた」


「別れた?」


「俺が負傷した」


「アルトが」


「囮になった」


 セリエ。


「……」


「それで?」


 俺。


「アルトさんは」


「谷の奥へ」


「黒腕布を追っていった」


「一人で?」


「ああ」


「俺は」


「近くの村まで逃げた」


「治療を受けて」


「追おうとしたが」


「谷は封鎖されていた」


「封鎖?」


「黒腕布の連中に」


         ◇◇◇


《クエスト情報更新》


《父を追って》


《アルトの最終確認地点:灰色谷》


《三週間前》


《黒腕布集団との接触後、消息不明》


「消息不明」


 ルク。


 文字。


 見えない。


 でも。


 俺。


 言葉。


 選ぶ。


「ルク」


「……うん」


「三週間前」


「お父さんは生きてた」


「うん」


「その後は」


「まだ分からない」


「うん」


 以前。


 言った。


 悪い方にも。


 良い方にも。


 決めつけない。


「だから」


「調べる」


 ルク。


 顔。


 上げる。


「行く?」


「すぐには行かない」


「……」


「場所も」


「敵の数も」


「分からない」


「でも」


「行くための情報は集める」


「うん」


         ◇◇◇


「ダリオさん」


 俺。


「どうしてエルナ村へ?」


「アルトから」


 ダリオ。


 懐。


 手。


「預かっていた」


 小さな。


 革袋。


「何?」


「もし」


「自分が戻れなくなったら」


「エルナ村へ届けてくれって」


 セリエ。


 息。


 止まる。


「アルトが?」


「ええ」


 革袋。


 開く。


 中。


 小さな。


 木彫り。


「……」


 ルク。


「これ」


 手。


 伸ばす。


 木。


 小さな。


 鳥。


《木彫りの小鳥》


《製作者:アルト》


「俺の」


「覚えてる」


「小さい時」


「お父さんが作ってくれた」


 ルク。


 両手。


 包む。


「同じ……」


         ◇◇◇


 さらに。


 手紙。


 ある。


 封。


 されている。


 宛名。


《セリエへ》


 俺。


 見る。


「これは」


「家族だけで読んだ方がいい」


 ダリオ。


 頷く。


「そうしてほしい」


 セリエ。


 手紙。


 受け取る。


 でも。


 すぐには。


 開かない。


「ルク」


「一緒に読む?」


「……うん」


 二人。


 家。


 奥。


 向かう。


 俺たち。


 残る。


「配信してなくて」


 ミナ。


 小さく。


「よかったですね」


「ああ」


         ◇◇◇


 しばらく。


 俺たちは。


 ダリオから。


 詳しく。


 話を聞く。


「黒腕布」


「名前は?」


「連中は」


「自分たちを」


 一拍。


「《黒鎖商会》と呼んでいた」


《勢力情報を取得しました》


《黒鎖商会》


《非合法奴隷取引・密輸への関与が疑われる組織》


「商会」


 カイト。


「ただの山賊じゃない」


「拠点」


「あります?」


 レント。


「レイゼン周辺に複数」


「表向きは」


「運送屋」


「商人」


「傭兵」


「裏では」


「人を売る」


 ミナ。


 表情。


 険しい。


「エルフを狙う理由は?」


「高値で売れる」


 ダリオ。


 苦い。


 言葉。


「ハーフエルフは」


「さらに珍しい」


「……」


 俺。


 無意識。


 刀。


 柄。


 触れる。


 ルク。


 狙われる。


 理由。


 それ。


         ◇◇◇


「黒鉄も?」


 俺。


「関係ある?」


「黒鉄?」


「エルナ村にある」


「人攫いが盗もうとした」


 ダリオ。


「……それなら」


「?」


「黒鎖商会は」


「武器の密輸もやってる」


「黒鉄は」


「加工先次第で高く売れる」


「人も」


「資源も」


「全部?」


「金になるなら」


「何でも」


 分かりやすい。


 最低。


         ◇◇◇


《特殊クエスト更新》


《黒腕布の影》


《組織名:黒鎖商会》


《目的候補》


《人身売買》


《黒鉄資源》


《旧西街道の掌握》


《十四年前のエルナ村襲撃との関連を調査してください》


「十四年前」


 俺。


「ダリオさん」


「さすがに知りませんよね?」


「俺は」


「知らない」


「ただ」


「黒鎖商会は」


「少なくとも二十年以上前から存在する」


「可能性はある」


 それだけ。


 でも。


 十分。


         ◇◇◇


 その時。


 ルク。


 戻る。


 目。


 赤い。


 セリエも。


「ジョウゴ」


「ん?」


 ルク。


 手紙。


 握る。


「お父さん」


「なんて?」


「俺に」


「会いたいって」


「……」


「もし」


「見つけられなくても」


「俺を探したこと」


「後悔してないって」


 声。


 震える。


「でも」


「絶対」


「生きてる」


 断定。


 したい。


 気持ち。


 分かる。


「見つけよう」


 俺。


 それだけ。


 言う。


 ルク。


 頷く。


         ◇◇◇


 セリエ。


 俺たち。


 見る。


「お願いがあります」


「何です?」


「アルトを」


 言葉。


 止まる。


「探してほしい」


 俺。


 すぐには。


 返事。


 しない。


「危険」


「あります」


「分かってます」


「ルクは?」


「連れていかないで」


 即答。


「お母さん!」


「駄目」


「俺も行く!」


「駄目!」


「でも!」


 セリエ。


 初めて。


 強く。


「あなたをまた失うなんて」


「私は耐えられない!」


「……」


 ルク。


 黙る。


         ◇◇◇


 俺。


「今回は」


「セリエさんに賛成」


「ジョウゴ!」


「灰色谷」


「黒鎖商会」


「十人以上」


「危険度」


「分かってない」


「ルクを連れてく条件じゃない」


「でも」


「俺の父さん!」


「ああ」


「だから」


「俺たちが先に調べる」


「また?」


「前と同じ」


「安全確認」


「情報収集」


「それから」


「ルクにできることがあれば」


「考える」


 ルク。


 悔しそう。


 でも。


 前回。


 学んだ。


「……約束?」


「ああ」


「置いていくためじゃない」


「戻るため」


「……うん」


         ◇◇◇


《長期クエスト》


《父を追って》


《第一段階:灰色谷の情報収集》


《アルトの消息を調査してください》


《ルクの同行:非推奨》


《推奨Lv:7~》


「レベル7」


 カイト。


「俺たち」


 5前後。


「すぐ行くには」


 レント。


「少し足りない」


「ああ」


「準備期間」


 必要。


「ちょうどいい」


 俺。


「シズナ戻って」


「情報」


「装備」


「レベル」


「全部」


 整える。


         ◇◇◇


 その時。


 村の入口。


「ジョウゴ!」


 ゼル。


 走ってくる。


「どうした?」


「エディルが戻った!」


「本当?」


「ケイルも!」


 そして。


「捕虜も」


 前日。


 捕まえた。


 黒腕布。


 斥候。


「話した?」


「少し」


「何を?」


「奴ら」


「村の場所」


「すでに」


 一拍。


「黒鎖商会へ伝えている」


 空気。


 変わる。


「どうやって?」


「伝書鳥」


「……」


 つまり。


 今。


 村の場所。


 敵。


 知ってる。


         ◇◇◇


《エリア情報更新》


《エルナ村》


《黒鎖商会に位置情報が漏洩しました》


《将来的な襲撃可能性:高》


「最悪」


 ミナ。


「防衛」


 カイト。


「必要になる?」


「多分」


 エルナ村。


 二十七人。


 戦える。


 人。


 限られる。


「シズナ」


 俺。


「協力頼めるか?」


 ゼル。


「人間の街に?」


 表情。


 渋い。


「昔」


 色々。


 あった。


 でも。


「今」


「選べる状況じゃない」


 リーファ。


 言う。


「私はシズナの冒険者に助けられた」


「ルクも」


「ケイルも」


「エディルも」


「……」


 村人たち。


 静か。


         ◇◇◇


 セリエ。


「ジョウゴさん」


「はい」


「シズナの人たちは」


「エルナを助けてくれますか?」


「俺が決めることじゃない」


「でも」


「相談はできる」


「冒険者ギルド」


「衛兵」


「ガレス」


「バルガ」


「マリアさんも?」


 ルク。


 急。


「マリアさんは」


「飯」


「作ってくれるかも」


 ルク。


「それ大事」


「そこは重要なんだ」


         ◇◇◇


《新規地域クエスト》


《エルナ村防衛準備》


《黒鎖商会による襲撃に備えてください》


《開始条件:シズナへ状況を報告》


「防衛準備」


 また。


 シズナ。


 防衛戦。


 思い出す。


「今度は」


 カイト。


「ゴブリンじゃなく人間」


「ああ」


「厄介そう」


 しかも。


 組織。


 知能。


 戦術。


「だから」


「まず戻る」


         ◇◇◇


 そして。


 夜。


 エルナ村。


 小さな歓迎。


 から。


 一転。


 作戦会議。


 村人。


 俺たち。


 ダリオ。


 エディル。


「柵」


「北が弱い」


「見張り台」


「二ヶ所」


「食料」


「一週間」


「黒鉄倉庫」


「移動」


「子供」


「避難場所」


 次々。


 話。


 出る。


 俺。


 地図。


 見る。


「村」


「正面で守るだけじゃ危ない」


「森」


「侵入路多い」


「なら」


 エディル。


「罠」


「増やす」


「でも」


「味方が踏まないよう」


「位置」


「共有」


「……」


 なんで。


 また。


 防衛計画。


 考えてるんだ。


「ジョウゴ」


 カイト。


「銀行員」


「関係ない」


「主任」


「もっと関係ない」


         ◇◇◇


 ルク。


 俺の横。


「ジョウゴ」


「何?」


「帰ってきて」


「うん」


「お父さん探して」


「うん」


「村も守って」


「……注文多いな」


「駄目?」


「駄目じゃない」


 ただ。


「一個ずつ」


「うん」


「まず」


「シズナへ戻る」


「うん」


「次」


「助けを頼む」


「うん」


「それから」


「父さん」


「黒鎖商会」


「順番」


「うん」


 ルク。


 少し。


 笑う。


「ジョウゴ」


「何?」


「忙しいね」


「誰のせいだと思う?」


「俺?」


「半分冗談」


「半分!?」


         ◇◇◇


 ポーン。


《NPC:ルクとの信頼度が上昇しました》


《称号条件を達成》


「ん?」


《新規称号を獲得しました》


《帰る場所を守る者》


「……大げさ」


 ミナ。


「似合ってます」


「そう?」


「はい」


         ◇◇◇


 翌日。


 俺たちは。


 エルナ村を出ることになる。


 ルクは。


 母セリエと。


 村に残る。


 ようやく。


 帰れた。


 だから。


 今度は。


 俺たちが。


 帰る番。


 シズナへ。


 そして。


 持ち帰るものは。


 黒鉄だけではない。


 黒鎖商会。


 人攫い。


 十四年前の襲撃。


 父アルト。


 灰色谷。


 エルナ村襲撃の可能性。


 一気に。


 増えた。


「第一章」


 もし。


 物語。


 誰かが。


 区切るなら。


 きっと。


 ここまでが。


 ただの。


 AWO初心者編だったのかもしれない。


 俺。


 ジョウゴ。


 始まりの街。


 シズナ。


 刀。


 仲間。


 配信。


 ルク。


 そして。


 初めて。


 守りたい場所。


 増えた。


 《Another World Online》。


 この世界が。


 ただのゲームではなく。


 俺にとって。


 本当に。


 もう一つの生活になり始めている。


 そんな実感だけが。


 静かに。


 胸の中へ。


 残っていた。

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