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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第一章 AWO開始編

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36/131

第36話 旧街道に残された新しい痕跡

《Welcome Back》


《Another World Online》


 柔らかな光が消える。


 次に聞こえてきたのは、川の流れる音と、朝の森を渡る風の音だった。


「……戻ってきたな」


 俺――ジョウゴは、簡易テントの中で身体を起こした。


《現在地:旧西街道・古石橋休憩所》


 昨日。


 俺たちはルクを連れ、《シズナ》から再び旧西街道へ入った。


 目的はもちろん。


《重要NPC同行クエスト》


《ルクの帰郷》


《目的:ルクをエルナ村まで護衛してください》


《護衛対象:ルク》


《状態:正常》


 目標地点である《エルナ村》までは、まだ遠い。


 今日は古石橋から《双子岩》を目指す予定だ。


「さて」


 テントの外へ――。


「ジョウゴ!」


「うおっ?」


 出た瞬間。


 目の前。


 ルク。


「近い近い」


「遅い!」


「集合時間前だぞ」


「みんな起きてる!」


 見る。


 確かに。


 ミナ。


 カイト。


 レント。


 全員。


 焚き火の近くにいる。


「何で今日だけみんな早いんだ」


「ジョウゴが遅いんです」


 ミナ。


「昨日九時間近く配信してたからなぁ」


 カイト。


 背伸び。


「九時間はしてない」


「八時間半」


「ほぼ九時間じゃねぇか」


「……確かに」


         ◇◇◇


 朝食。


 旅パン。


 乾燥果実。


 携帯スープ。


 ルク。


 パン。


 食べる。


「今日」


「ん?」


「双子岩まで?」


「ああ」


「その次は?」


「精霊迷いの先」


「その次」


「エディルさんの小屋」


「その次!」


「村」


「……」


 ルク。


 止まる。


「近い?」


「昨日よりは」


「今日だけで村まで行けない?」


「行かない」


「即答!」


「前にも言っただろ」


 俺はパンをちぎる。


「早く着くことより、無事に着くこと」


「……うん」


「それに」


 ルク。


 足。


「昨日ちょっと赤くなってた」


「今日は平気!」


「ならなおさら無理しない」


「ジョウゴ」


「何?」


「心配しすぎ」


「護衛だからな」


 ミナ。


「保護者だからじゃなく?」


「違う」


 即答。


         ◇◇◇


 食後。


 荷物。


 確認。


 テント。


 撤収。


「じゃあ出発」


《ルクの帰郷》


《第二行程を開始しました》


 古石橋。


 渡る。


 今回はルクも慣れたものだ。


「昨日より怖くない」


「そう?」


「うん」


 足元。


 慎重。


 でも。


 止まらない。


「成長したな」


「子供扱い!」


「褒めただけだろ」


         ◇◇◇


 橋の先。


 旧街道。


 前回。


 俺たちだけで通った道だ。


「ここから先」


 レント。


 地図。


「熊が出た区域に近い」


 カイト。


 表情。


 固まる。


「言うな」


「事実」


「今日はルクいるから余計嫌なんだよ」


「そこは同意」


 俺。


 周囲。


 見る。


「大型獣の痕跡見つけたら迂回する」


「了解」


「獣避け香もすぐ使えるように」


「もう手に持ってる」


 カイト。


 袋。


「準備良すぎ」


「熊はもう嫌だ!」


         ◇◇◇


 一時間ほど。


 問題なし。


 時々。


 森ウサギ。


 小型の鹿。


 非敵対。


 ルク。


 興味津々。


「あれ食べられる?」


「お前もミナ化してない?」


「何ですかそれ!」


 ミナ。


「ミナ、前に鹿見て食材って」


「言ってません!」


「顔には出てた」


「出てません!」


 ルク。


 笑う。


 こういう。


 普通の旅なら。


 悪くない。


         ◇◇◇


 だが。


「止まって」


 一瞬。


 空気。


 変わる。


 四人。


 いや。


 ルクも。


 すぐ。


 立ち止まった。


「何?」


 カイト。


「地面」


 俺。


 指。


 旧街道。


 泥。


「足跡?」


 ミナ。


 しゃがむ。


 それだけなら。


 珍しくない。


 森狼。


 鹿。


 猪。


 いくらでも。


 ある。


 でも。


「これ」


 靴。


 人型。


 しかも。


「新しい」


《観察Lv.1》


《人型種の足跡》


《経過時間:数時間以内》


「数時間?」


 レント。


「俺たちより先に誰か通ってる」


「エディルさん?」


 ルク。


「可能性はある」


 でも。


「一人じゃない」


 地面。


 見る。


 一。


 二。


 三。


「……五?」


 カイト。


「いや」


 レント。


「もっとある」


 俺。


 足跡。


 数える。


「七から十」


「そんなに?」


 ミナ。


 表情。


 変わる。


「村の人たち?」


「分からない」


 ただ。


 前回。


 ここ。


 来た時。


 こんな痕跡。


 なかった。


「新しい異変ってこれ?」


 いや。


 誰にも聞こえないよう。


 心の中。


 思う。


         ◇◇◇


「ルク」


「何?」


「俺たちの真ん中」


「……うん」


 カイト。


 前。


 俺。


 少し斜め前。


 ミナ。


 中央。


 ルク。


 その横。


 レント。


 後方。


「追う?」


 レント。


「街道と同じ方向」


「だから」


「無理に追わなくても会う可能性高い」


 むしろ。


 先に。


 警戒。


 する。


         ◇◇◇


 十分。


 二十分。


 足跡。


 続く。


「……これ」


 今度は。


 カイト。


 気づく。


「何か落ちてる」


 草。


 銀色。


「金属?」


 拾う。


《折れた矢尻》


「矢」


 ルク。


「エルナの?」


「分かる?」


 ルク。


 手。


 見る。


「違う」


「どうして?」


「エディルおじさんたち」


「こういう形じゃない」


 矢尻。


 幅。


 広い。


 武骨。


「じゃあ外部の人間?」


「可能性上がった」


 さらに。


 少し先。


「血」


 ミナ。


 地面。


 暗い赤。


《新しい血痕》


「人?」


「判別できない」


《観察技能不足》


「戦闘があった?」


 レント。


 弓。


 少し。


 構える。


「気をつける」


         ◇◇◇


 そこから。


 森の雰囲気が変わった。


 枝。


 折れている。


 草。


 踏まれている。


 木。


 一部。


 刃物傷。


「人がかなり通った」


 俺。


「街道を知らない動きじゃない」


「どういう意味?」


 ミナ。


「ちゃんと旧街道上を進んでる」


「つまり」


 カイト。


「道を知ってる奴ら?」


「ああ」


 十四年。


 使われていないはず。


 なのに。


「最近」


 誰かが。


 通っている。


         ◇◇◇


 その時。


「止まって!」


 今度はレント。


 声。


 低い。


「前」


 木々。


 向こう。


 人影。


「いる」


 三。


 いや。


 四。


「人?」


 ルク。


 俺。


 すぐ。


「しゃがんで」


「うん」


 全員。


 茂み。


 影。


 使う。


 距離。


 五十メートルくらい。


《???》


 男。


 四人。


 装備。


 革鎧。


 剣。


 弓。


 荷物。


「冒険者?」


 ミナ。


 小声。


「……違うかも」


 俺。


 見る。


 装備。


 統一感。


 ない。


 でも。


 共通。


 腕。


 布。


 黒。


「印?」


 そして。


 地面。


 何か。


 引きずっている。


「何あれ」


 カイト。


 俺。


 目。


 細める。


 縄。


 その先。


「檻?」


 小型。


 木。


 いや。


 鉄格子。


「……」


 中。


 何か。


 動いた。


「人?」


 ミナ。


 息。


 飲む。


 その時。


 ルク。


「……エルフ」


「え?」


「中」


「耳」


 ルク。


 見えてる?


 子供。


 目。


 いい。


「エルフが捕まってる?」


 空気。


 一気。


 変わる。


         ◇◇◇


《特殊情報を発見しました》


《旧西街道を移動する不審な武装集団》


《捕虜と思われる人物を確認》


「イベント」


 ミナ。


「どうする?」


 カイト。


 盾。


 握る。


「まだ攻撃しない」


 俺。


 即答。


「まず確認」


「でも捕まってる」


「分かってる」


「だからこそ」


 数。


 相手。


 四人。


 いや。


「待って」


 後ろ。


 さらに。


 二人。


 木々。


 出る。


「六」


 レント。


「まだいるかも」


「不用意に出る方が危ない」


 それに。


 ルク。


 いる。


「護衛対象優先」


 俺。


「戦うなら」


「ルクを安全な場所へ」


         ◇◇◇


 その時。


 前。


 武装集団。


 一人。


「止まれ」


 声。


 聞こえる。


「またか?」


「車輪が木に噛んだ!」


 檻。


 車輪。


 古い街道。


 根。


 引っかかる。


「チッ」


 男。


 蹴る。


 ガンッ!


 檻。


 中。


「うっ……」


 声。


 女性?


 ルク。


 身体。


 震える。


「……やめろ」


「ルク」


「……」


「今は」


「分かってる」


 でも。


 拳。


 握ってる。


「昔の俺みたい」


「…………」


 ゴブリン。


 檻。


 捕虜。


 思い出したか。


「助ける」


 俺。


 静かに。


 言う。


「ただし」


「勝手に飛び出すな」


 ルク。


 俺。


 見る。


「約束」


「……約束」


         ◇◇◇


「作戦」


 俺。


 小声。


「まず人数確認」


「レント」


「高い位置取れる?」


「あの木」


「行ける」


「ミナ」


「ルクとここ」


「結界とか防御魔法」


「《ウインドシールド》なら」


「それで」


「カイト」


「俺と前」


「了解」


「もし」


「増援が多い」


「相手が強すぎる」


「その時は?」


 カイト。


「撤退」


「そう」


 捕虜。


 助けたい。


 でも。


 ルクまで。


 失うわけにはいかない。


         ◇◇◇


 レント。


 静か。


 移動。


 木。


 登る。


 数十秒。


《パーティーチャット》


《レント:見えた。前方六。さらに後方に二》


「八」


《レント:檻は一つ。捕虜二人》


「二人」


《レント:両方エルフっぽい》


 ルク。


 息。


 詰まる。


《レント:武装集団のレベル見える》


「どれくらい」


《レント:Lv6~8》


 俺たち。


 5前後。


「人数差」


 大きい。


「正面からはきつい」


 ミナ。


「奇襲?」


「できるけど」


 俺。


 少し。


 考える。


「目的は倒すことじゃない」


「捕虜解放」


 なら。


「檻を奪う」


「どうやって?」


 カイト。


「混乱させる」


         ◇◇◇


 地形。


 見る。


 旧街道。


 片側。


 斜面。


 もう片方。


 森。


 檻。


 中央。


「ミナ」


「はい」


「煙作れる?」


「火は?」


「森で火は使いたくない」


「じゃあ」


「《ウインド》で土埃」


「できる?」


「やってみます」


「レント」


「弓」


「檻の車輪狙える?」


《レント:できる》


「壊す?」


「逆」


「噛んでる木の根」


「ああ」


 矢。


 衝撃。


 根元。


 崩す。


 檻。


 動く。


「カイト」


「俺は?」


「正面で目立って」


「囮!?」


「盾役」


「便利な言葉!」


「俺も一緒に出る」


「ならいい!」


         ◇◇◇


 ルク。


「俺は?」


「ミナの横」


「弓」


「構えていい」


「撃つ?」


「俺が言った時だけ」


「……分かった」


 顔。


 悔しい。


 でも。


 守る。


 それも。


 戦い。


         ◇◇◇


「行く」


 俺。


 茂み。


 出る。


「すみません」


 武装集団。


 振り向く。


「誰だ!」


「旅の者です」


「止まれ!」


 剣。


 抜く。


《人攫い Lv.7》


「……名前出た」


 最悪。


 でも。


 分かりやすい。


《人攫い Lv.6》


《人攫い Lv.8》


 全部。


 赤。


「人攫い」


 カイト。


 低い。


 声。


「話し合い無理そうだな」


「一応」


 俺。


「その檻の人たち」


「どうしたんです?」


「てめぇに関係あるか」


「あります」


「何?」


「助けたいので」


 一拍。


「……馬鹿か?」


「よく言われます」


「言われてませんよ!」


 遠く。


 ミナ。


 小声。


 聞こえた。


         ◇◇◇


「やれ」


 人攫い。


 剣。


 二人。


 前。


「来た」


「カイト」


「おう!」


 盾。


 構える。


「《シールドガード》!」


 ガンッ!


 一人。


 剣。


 受ける。


 俺。


 二人目。


 剣。


 横薙ぎ。


「大きい」


 半歩。


 外。


 刀。


 抜く。


 スッ――。


「ふっ!」


 柄。


 手首。


 ゴッ!


《Disarm!》


「なっ!?」


「ミナ!」


「今です!」


《ウインドブラスト!》


 風。


 地面。


 砂。


 土。


 舞う。


「目が!」


「何だ!?」


「レント!」


 ヒュン!


 矢。


 檻。


 横。


 木の根。


 バキッ!


 車輪。


 自由。


「カイト!」


「行くぞ!」


 盾。


 押す。


 ドンッ!


 人攫い。


 一人。


 横。


 飛ぶ。


「檻!」


 俺。


 走る。


         ◇◇◇


「止めろ!」


 後方。


 三人。


 来る。


「多い」


 でも。


「目的は鍵」


 檻。


 扉。


 錠。


「鍵持ってる奴!」


 見る。


 腰。


 一人。


 金属。


「いた」


 人攫い。


 Lv8。


 短剣。


「そこどけ!」


 突き。


 俺。


 刀。


 側面。


 カンッ!


《Parry!》


 踏み込み。


「悪い」


 左手。


 相手の肘。


 崩す。


「何っ!?」


 腰。


 鍵束。


 取る。


《鍵束を奪取しました》


「取った!」


「ジョウゴさん!」


 ミナ。


「後ろ!」


「分かってる!」


 別。


 剣。


 振り下ろし。


 刀。


 受けない。


 横。


 回る。


 足。


 相手。


 膝。


 軽く。


 蹴る。


《崩し成功》


「ぐっ!」


「グランさんいないから蹴った!」


 カイト。


「今それ言う!?」


         ◇◇◇


 檻。


 鍵。


「どれだ」


 多い。


「ジョウゴ!」


 中。


 女性エルフ。


「銀色の長い鍵!」


「これ?」


「そう!」


 ガチャ。


《捕虜用檻を解錠しました》


「出て!」


 二人。


 エルフ。


 女性。


 男性。


 疲労。


 怪我。


「走れる?」


「少しなら!」


「ミナ!」


「こちらへ!」


 ミナ。


 位置。


 森側。


「ルク!」


 捕虜。


 女性。


 見た。


「……子供?」


「後!」


 俺。


 言う。


「今は逃げる!」


         ◇◇◇


「逃がすな!」


 人攫い。


 まだ。


 八人。


 倒してはいない。


 ほぼ。


 無傷。


「レント!」


「煙の向こう!」


 矢。


 連射。


 足元。


 牽制。


「カイト!」


「撤退!」


「分かった!」


 盾。


 後ろ向き。


 下がる。


「ミナ」


「《ウインドシールド》!」


 風。


 矢。


 逸らす。


「ルク!」


「いる!」


 短弓。


 構える。


「撃つな!」


「まだ?」


「まだ!」


 全員。


 森。


 入る。


         ◇◇◇


 後ろ。


 追跡。


「来る!」


 カイト。


「六人!」


「二人は檻?」


「多分!」


「ルク!」


「何!」


「前!」


「分かった!」


 ルク。


 先。


 ミナ。


 捕虜。


 二人。


 レント。


 中間。


 俺とカイト。


 最後尾。


「ジョウゴ」


「何?」


「これ追いつかれるぞ」


「ああ」


 速度。


 こちら。


 負傷者。


 いる。


「場所」


 知ってる。


 前。


 岩場。


 狭い。


「五分」


「そこまで」


         ◇◇◇


 追手。


「止まれ!」


「逃げられると思うな!」


「思ってます!」


 カイト。


「返事するな!」


「つい」


         ◇◇◇


 岩場。


「ここ!」


 狭い。


 一人。


 二人。


 通れる。


「ミナ!」


「先へ!」


 全員。


 通る。


 俺。


 最後。


「ジョウゴ!」


 カイト。


「早く!」


「少し」


 ロープ。


 取り出す。


「何する?」


 岩。


 横。


 前回。


 見た。


 倒木。


 引っかかってる。


「これ」


 ロープ。


 結ぶ。


「カイト!」


「まさか」


「引く!」


 二人。


「せーの!」


 ゴロッ。


 倒木。


 落ちる。


 ガガガッ!


 狭い通路。


 塞ぐ。


《簡易障害物を作成しました》


「これで」


 追手。


 止まる。


「回り道必要」


「走るぞ!」


         ◇◇◇


 十分。


 さらに。


 移動。


 ようやく。


 追跡音。


 消える。


「止まる」


 俺。


 息。


 整える。


「全員?」


 ミナ。


「います!」


 カイト。


「いる」


 レント。


「大丈夫」


「ルク」


「いる!」


 捕虜。


 二人。


「……います」


「助かった……」


 合計。


 七人。


「よし」


         ◇◇◇


《特殊イベント達成》


《人攫いの捕虜を救出しました》


《救出人数:2》


《人攫い集団:未討伐》


《追跡状態:一時解除》


「未討伐」


 レント。


「また来る可能性」


「ああ」


 しかも。


 旧西街道。


 使ってる。


「エルナ村」


 危ない。


         ◇◇◇


「あなたたち」


 俺。


 捕虜。


「名前は?」


 女性。


「リーファ」


《エルフ リーファ》


 男性。


「ケイル」


《エルフ ケイル》


「どこから?」


 二人。


 顔。


 見合わせる。


「……エルナ村」


 ルク。


「!」


 時間。


 止まった。


「エルナ?」


 リーファ。


 ルク。


 見る。


「あなた……」


 耳。


 顔。


「まさか」


 近づく。


「ルク?」


「……え?」


「ルクなの!?」


 女性。


 目。


 大きく。


「知ってる?」


 俺。


 ルク。


 固まる。


「リーファ……姉ちゃん?」


「!」


 リーファ。


 その場。


 膝。


 つく。


「生きてた……!」


 ルク。


 抱き締める。


「ルク!」


「うわっ」


「本当に!」


「本当に生きてた!」


「リーファ姉ちゃん!」


 声。


 震える。


 今度。


 ルク。


 逃げない。


「村のみんな」


「ずっと」


「あなたを探してた!」


「俺」


「ゴブリンに……」


「知ってる」


「ずっと分からなかった」


「……」


 俺たち。


 少し。


 離れる。


         ◇◇◇


 数分後。


「リーファさん」


「はい」


「エルナ村の人?」


「ええ」


「人攫いに捕まったのは?」


「昨日です」


 新しい。


 足跡。


 一致。


「村の近く?」


「違います」


「双子岩の東」


「薬草採取の帰り」


 ケイル。


「突然襲われた」


「奴らは」


「エルナ村知ってる?」


 俺。


 聞く。


 二人。


 表情。


 曇る。


「……おそらく」


「なぜ?」


「村の場所を」


「何度も聞かれた」


 最悪。


「答えた?」


 リーファ。


 首。


 横。


「いいえ」


「でも」


 ケイル。


「奴らは」


「旧街道をかなり把握している」


「先に村を見つけられる可能性がある」


 俺。


「急ぐ必要出たな」


 でも。


 ルク。


 いる。


 負傷者。


 二人。


「無理な強行軍はできない」


         ◇◇◇


《クエスト情報更新》


《ルクの帰郷》


《緊急情報》


《人攫い集団がエルナ村周辺を探索している可能性があります》


《エルナ村の危険度が上昇しました》


「……」


 ミナ。


「これ」


「帰郷だけじゃなくなってきましたね」


「ああ」


 ルク。


 俺を見る。


「ジョウゴ」


「何?」


「村」


「うん」


「守れる?」


 簡単に。


 言えない。


 でも。


「まず知らせる」


「エディルさんに」


「それから」


「できることをやる」


 ルク。


 頷く。


         ◇◇◇


「問題」


 レント。


「今日の目的地」


「双子岩」


「でも」


 負傷者。


 二人。


「そこまで行ける?」


 リーファ。


「私は歩けます」


 ケイル。


「俺も」


「無理は?」


「……少し」


 俺。


 見る。


 腕。


 打撲。


 足。


 軽い傷。


「ミナ」


「回復します」


《ヒール》


 淡い。


 光。


 傷。


 塞がる。


「完全?」


「疲労は残ります」


「じゃあ」


「ゆっくり双子岩」


「そこで野営」


「明日」


「エディルさんの小屋」


「了解」


         ◇◇◇


 ルク。


 リーファ。


 並んで歩く。


「リーファ姉ちゃん」


「何?」


「エディルおじさん生きてた」


「知ってるわよ」


「あ」


「私は村から来たの」


「……そうだった」


 久しぶり。


 なのか。


 ルク。


 少し。


 調子。


 狂ってる。


「みんな」


「俺のこと」


「覚えてる?」


「もちろん」


「……」


「セリエさんも」


 ルク。


 止まる。


「お母さん?」


 リーファ。


「……」


 表情。


 変わる。


 俺。


 すぐ。


 気づく。


「リーファさん」


「その話」


「村に着いてからでも」


「……ええ」


 ルク。


 見る。


「何?」


「今は」


 俺。


「歩こう」


「……分かった」


 でも。


 何か。


 知ってる。


 多分。


 両親。


 どちらか。


 あるいは。


 二人とも。


         ◇◇◇


 その後。


 大きな戦闘。


 なし。


 ただ。


 警戒。


 最大。


 人攫い。


 追跡。


 なし。


 そして。


 夕方。


「双子岩!」


 ルク。


 指。


 二つ。


 巨大。


 岩。


《双子岩》


「着いた」


 俺。


 息。


 吐く。


         ◇◇◇


 前回。


 使った。


 野営地。


「ここ」


「安全?」


 リーファ。


「前に使った」


「周囲確認してから」


 カイト。


「行ってくる」


「一人は駄目」


「レントと」


「了解」


 周囲。


 問題なし。


《簡易野営地点を確保しました》


         ◇◇◇


 テント。


 増える。


 七人。


「足りない」


 ミナ。


「俺とカイト、レント」


「一張りに三人?」


「狭い」


「今日は仕方ない」


 女性。


 ミナとリーファ。


 一張り。


 ルク。


 俺。


 ケイル。


「俺は外でも」


「駄目」


 即答。


「交代で見張り」


「テント使う」


         ◇◇◇


 夕食。


 旅パン。


 スープ。


 干し肉。


 リーファ。


「シズナの食べ物?」


「銀麦亭」


 ルク。


「美味しいんだよ!」


「そう」


 リーファ。


 少し。


 笑う。


「ルクが元気なのは」


「あなたたちのおかげ?」


「みんなのおかげ」


 俺。


「銀麦亭」


「診療所」


「冒険者ギルド」


「色々」


「……ありがとう」


「礼は」


「村に着いてから」


「それ」


「エディルにも言った」


「ふふっ」


         ◇◇◇


 その時。


 ポーン。


《CROSS社からメッセージ》


「配信?」


 今日は。


 配信。


 していない。


《旧街道周辺におけるクエスト進行を確認》


《次回配信時、人攫い関連情報についてはNPC保護の観点から自動フィルターを適用します》


「ありがたい」


 ミナ。


「視聴者」


「今日のこと知らないんですよね」


「ああ」


「次回」


「驚きそう」


「でも」


 俺。


「先にエルナ村」


「情報共有」


 前と。


 同じ。


 当事者。


 優先。


         ◇◇◇


 夜。


 見張り。


 最初。


 俺。


 焚き火。


 刀。


 膝。


 置く。


 ルク。


 テント。


 寝た。


 はず。


「ジョウゴ」


「起きてたの?」


 布。


 入口。


 顔。


 出る。


「寝れない」


「怖い?」


「少し」


「人攫い?」


「それも」


「村も」


「……」


「リーファ姉ちゃん」


「お母さんの名前聞いた時」


「変だった」


 気づいたか。


「俺もそう思った」


「ジョウゴ」


「何?」


「お母さん」


「死んでると思う?」


 重い。


 質問。


「分からない」


「……」


「でも」


「分からないことを」


「悪い方に決めつけても仕方ない」


「いい方にも?」


「決めつけない」


「……そっか」


「明日」


「聞けばいい」


「怖い」


「うん」


「でも」


「一緒に聞く?」


 ルク。


 少し。


 頷く。


「うん」


「じゃあ寝ろ」


「ジョウゴは?」


「見張り」


「寝ない?」


「交代したら寝る」


「分かった」


 ルク。


 テント。


 戻る。


 少しして。


 寝息。


         ◇◇◇


 焚き火。


 パチ。


 パチ。


 森。


 夜。


「人攫いか」


 ゴブリン。


 終わった。


 と思った。


 でも。


 別の。


 脅威。


 しかも。


 今度。


 人間。


 あるいは。


 人型。


 AWO。


 単純。


 モンスターを倒せば。


 全部終わる世界ではない。


「……面倒だな」


 でも。


 嫌いじゃない。


 守る理由。


 はっきりしてる。


 エルナ村。


 二十七人。


 ルク。


 帰る場所。


「先には行かせない」


 刀。


 柄。


 触れる。


 そして。


 視界。


 通知。


《長期クエスト:ルクの帰郷》


《エルナ村まで推定残り:1日以内》


 あと少し。


 明日。


 俺たちは。


 エディルの小屋を経由して。


 ついに。


 エルナ村へ入る。


 そこで。


 ルクは。


 故郷の現在を。


 そして。


 父《アルト》。


 母《セリエ》。


 二人の安否を。


 知ることになる。


 だが同時に。


 旧西街道へ現れた《人攫い》たちも。


 確実に。


 エルナ村へ。


 近づき始めていた。

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