第35話 五人で歩き出す帰郷の道
土曜日。
午前七時。
「……今日は早いな」
俺――上塚賢吾は、目覚ましが鳴る少し前に目を覚ました。
今日は仕事ではない。
《Another World Online》。
ルクを故郷《エルナ村》へ送り届ける日だ。
すでに旧西街道の一次調査は終えている。
古石橋。
精霊迷い。
双子岩。
さらに、その先でエルナ村の狩人エディルとも接触した。
道があることも。
村が残っていることも。
確認済み。
それでも。
「今日は前回とは違う」
護衛対象がいる。
しかも十二歳の少年だ。
クエストにもはっきり書かれている。
《重要NPC同行クエスト》
《ルクの帰郷》
《失敗条件:ルクの戦闘不能》
「失敗する気はないけどな」
ベッドから起きる。
朝食。
洗濯。
軽く掃除。
ゲームのために現実を疎かにはしない。
午前八時半。
「よし」
VR機器を装着した。
《Another World Onlineを起動します》
「ログイン」
◇◇◇
《Welcome Back》
《Another World Online》
銀麦亭。
七号室。
装備を確認。
《鉄刀・試作二号》
《鉄製短剣》
《軽革戦闘衣》
《簡易旅装》
荷物。
食料。
水。
回復薬。
解毒薬。
雨具。
ロープ。
獣避け香。
熊避け鈴。
「問題なし」
そして。
《CROSS LIVE》
《ルク帰郷遠征》
《配信開始まで:18分》
「……もう十八分か」
一階へ降りる。
◇◇◇
「ジョウゴ!」
「おはよう」
最初に駆け寄ってきたのはルクだった。
以前の布服ではない。
《軽革の旅装》
《森歩きの革靴》
背中には。
《狩人見習いの短弓》
腰には小型ナイフ。
「準備できてる?」
「できてる!」
「荷物は?」
「これ」
小さな背負い袋。
水。
保存食。
最低限。
「重くない?」
「重くない!」
「本当に?」
「持ってみる?」
「いや」
そこまで疑うのも失礼か。
「途中で重くなったら言えよ」
「分かってる」
「我慢は禁止」
「……分かってる」
「今ちょっと間があったな」
「ない!」
◇◇◇
「おはようございます!」
ミナ。
「今日は早いですね」
「配信九時だから」
カイトとレントも。
すでに完全な遠征装備。
「熊避け香」
カイト。
確認。
「持った」
「鈴」
「持った」
「足元」
「見る!」
「枝」
「踏まない!」
完全にトラウマだ。
「カイト」
「何?」
「熊がいなくても前見ろよ」
「お前ら俺を何だと思ってるんだ!」
「熊に追われた盾役」
「そのままじゃねぇか!」
ルク。
「熊?」
「ああ」
「大きい?」
「すごく大きい」
「カイト逃げた?」
「みんな逃げた!」
「カイトだけじゃないぞ」
「……ほんと?」
「本当」
「じゃあいい」
「何が!?」
◇◇◇
「ジョウゴ!」
厨房。
マリアさん。
「朝飯!」
「お願いします」
「旅の前なんだからしっかり食べな!」
「はい」
五人。
テーブル。
《銀麦亭の朝食》
パン。
卵。
ベーコン。
スープ。
「いただきます」
「いただきます!」
ルク。
食べる。
速い。
「ゆっくり」
「分かってる」
「口いっぱいだぞ」
「んぐ」
「ほら」
水。
「……ありがとう」
「急いで食べても出発時間は変わらないぞ」
「だって楽しみ」
その言葉。
少しだけ。
胸に引っかかる。
「楽しみ?」
「……怖いけど」
ルク。
パン。
見る。
「帰れるから」
「そっか」
◇◇◇
《配信開始まで:05:00》
「そろそろ」
設定。
《一人称視点:ON》
《視線トラッキング:ON》
《コメント抽出:ON》
《NPCルク:配信同意確認済み》
《センシティブ情報保護:最大》
《長時間配信モード:ON》
「ジョウゴ」
ルク。
「始まる?」
「ああ」
「いっぱいの人?」
「多分」
「……緊張する」
「俺も」
「ジョウゴも?」
「するよ」
三人。
「「「え?」」」
「何?」
「配信で緊張するんですね」
ミナ。
「俺を何だと思ってる」
「六万人の前で普通に朝飯食べる人」
「それは緊張が途中で消えただけ」
◇◇◇
《10》
俺たちは銀麦亭の入口へ。
《9》
ルク。
隣。
《8》
ミナ。
カイト。
レント。
《7》
「いつも通りでいい」
俺。
小さく。
《6》
「うん」
ルク。
《5》
《4》
《3》
《2》
《1》
《LIVE》
「どうも」
『きたあああああ!』
『おはよう!』
『帰郷回!』
『ルクいる!』
『旅装似合ってる』
『ジョウゴ今日も刀あるな』
『カイト枝踏むなよ』
「開始一秒でカイトがいじられてる」
「何でだよ!」
『本人反応したw』
『熊回の功績』
「功績じゃねぇ!」
ルク。
コメントは見えない。
俺たちを見る。
「カイト、人気?」
「違う」
「ある意味人気」
「ジョウゴ!」
◇◇◇
「今日は」
俺。
少し。
真面目に。
「ルクをエルナ村へ送り届けます」
コメント。
流れ。
少し。
落ち着く。
『よろしく頼む』
『無理しないで』
『ルク頑張れ』
『村まで安全に』
「前にも話した通り」
「ルク本人が嫌がる話題は拾いません」
「家族関連も」
「必要な時以外は俺から触れません」
『了解』
『それでいい』
『見守る』
ルク。
「なんて言ってる?」
「頑張れって」
「俺に?」
「ああ」
「……ありがとう」
一瞬。
コメント。
『かわいい』
『頑張れ!』
『無事帰ろう』
俺。
「じゃあ」
西。
「出発します」
◇◇◇
《シズナ西門》
ガレス。
ローディ。
そして。
「エリナさん?」
冒険者ギルドの受付嬢まで来ている。
「お見送りです」
「わざわざ?」
「重要依頼ですから」
グラン支部長からの。
伝言。
「絶対に無茶をするな、と」
「……俺宛て?」
「はい」
「やっぱり」
カイト。
笑う。
「ジョウゴさんだけです」
「信用ないなぁ」
「信用しているからこそです」
エリナさん。
少し。
微笑む。
「無事に連れて帰ってきてください」
「はい」
ルク。
「帰ってくる?」
エリナ。
「もちろん」
「エルナへ行って」
「またシズナにも?」
「うん」
「銀麦亭のパン食べたい」
「それ理由なの?」
◇◇◇
ガレス。
ルク。
見る。
「お前がルクか」
「……うん」
「覚えてないだろうが」
「お前が小さい頃」
「一度会ってる」
「ほんと?」
「ああ」
「まだ歩き始めたくらいだった」
ガレス。
少し。
笑う。
「父親によく似てきた」
ルク。
「お父さん?」
「ああ」
一瞬。
空気。
止まる。
「アルトを知ってる?」
俺。
聞く。
「知っている」
「生きてるかは?」
「十四年前が最後だ」
「そうか」
ルク。
少し。
俯く。
ガレス。
「坊主」
「何?」
「今は」
「自分の目で見てこい」
「……うん」
◇◇◇
西門。
開く。
《長期クエスト》
《ルクの帰郷》
《開始》
《護衛対象:ルク》
《現在状態:正常》
《同行者》
《ジョウゴ》
《ミナ》
《カイト》
《レント》
「行くぞ」
「うん!」
五人。
歩き出した。
◇◇◇
旧西街道。
前回。
草に埋もれていた道。
「ここ」
ルク。
地面。
見る。
「街道?」
「ああ」
「昔はもっと綺麗だったらしい」
「覚えてない」
「小さかったからな」
「ジョウゴは知ってる?」
「俺、地球出身」
「ちきゅう?」
「あ」
説明。
難しい。
「遠いところ」
「シズナより?」
「ものすごく」
「歩いて何日?」
「歩いては行けない」
「すごい」
『説明ざっくりw』
『宇宙の概念から必要になる』
「今はそれでいい」
◇◇◇
一時間。
最初。
問題なし。
でも。
「ルク」
「何?」
「歩幅」
「?」
「少し小さくしよう」
「なんで?」
「俺たちに合わせようとしてる」
ルク。
足。
止まる。
「分かる?」
「ああ」
「無理してる?」
「……少し」
「だから言えって」
「まだ大丈夫」
「大丈夫でも」
俺たち四人。
大人。
脚。
長い。
「今日はルクの速度で歩く」
「でも遅い」
「目的は早く着くことじゃない」
「無事に着くこと」
「……うん」
歩行速度。
少し。
落とす。
『こういうの大事』
『護衛って感じする』
『急がないの正解』
◇◇◇
森。
木々。
進む。
「ジョウゴ」
「ん?」
「前の旅」
「熊出た?」
ルク。
カイトを見る。
「出た」
「カイトが枝踏んだ?」
「そう」
「ジョウゴ!」
俺じゃない。
視聴者情報だ。
「今度は踏まない!」
「本当に?」
「ルクまで疑うな!」
その瞬間。
パキッ。
「…………」
「…………」
全員。
カイト。
見る。
「俺じゃない!」
確かに。
音。
右。
茂み。
「武器」
俺。
小声。
カイト。
盾。
レント。
弓。
ミナ。
杖。
「ルク」
「後ろ」
「うん」
茂み。
ガサッ。
《フォレストウルフ Lv.6》
一体。
「一体」
「倒す?」
「向こう次第」
狼。
こちら。
唸る。
「グルル……」
でも。
人数。
見る。
後退。
「戦わない?」
ルク。
「向こうも命惜しいんじゃない?」
「魔物も?」
「多分」
狼。
森へ。
消える。
『戦闘なし』
『こういうのもあるんだ』
『必ず襲ってくるわけじゃないの面白い』
◇◇◇
昼前。
「休憩」
「まだ歩ける!」
ルク。
「休む」
「でも」
「俺も休みたい」
「ジョウゴが?」
「ああ」
嘘ではない。
長距離。
定期的。
休んだ方がいい。
「じゃあ仕方ない」
ルク。
座る。
ミナ。
俺を見る。
小さく。
笑う。
何だ。
◇◇◇
昼食。
《銀麦亭の旅パン》
「これ」
ルク。
「マリアのパン」
「ああ」
「うまい」
「旅だと余計に美味いな」
水。
乾燥果実。
そして。
「森蜜パンは?」
「それ保存向けじゃない」
「残念」
『ルク完全にパン好きキャラ』
「本人に聞こえないからって好き勝手言うな」
ルク。
「何?」
「なんでもない」
◇◇◇
再出発。
やがて。
以前作った。
倒木。
「これ?」
ルク。
「俺たちが作った渡河路」
「ジョウゴが?」
「四人で」
《簡易渡河路》
《耐久度:62%》
「減ってる」
「川で削られた?」
レント。
「一人ずつ」
「ルク先?」
「いや」
俺。
「俺が先」
今回は。
ミナではない。
「前はミナでしたよね?」
「今回はルクいるから」
「向こう側の安全確認」
「なるほど」
渡る。
問題なし。
「ルク」
「うん」
「ゆっくり」
倒木。
細い。
川。
下。
流れ。
「怖い?」
「……ちょっと」
「下見なくていい」
「前」
ルク。
一歩。
ふら。
「!」
俺。
すぐ。
腕。
支える。
「大丈夫」
「……うん」
「もう一歩」
渡る。
無事。
《ルク:状態正常》
カイト。
「次俺」
「最後にして」
「なんで!?」
「一番重い」
「前も同じこと言われた!」
◇◇◇
午後。
森。
少し。
雰囲気。
変わる。
「……」
鳥。
虫。
いる。
前回ほど。
静かではない。
でも。
「ジョウゴさん」
「ん?」
ミナ。
「ルク君」
少し。
歩幅。
乱れている。
俺。
見る。
「ルク」
「大丈夫」
「まだ聞いてない」
「……」
「足」
「痛い?」
「ちょっとだけ」
「休憩」
「でも」
「靴脱いで確認」
「……うん」
◇◇◇
靴。
外す。
足。
「マメ?」
少し。
赤い。
「できる前」
ミナ。
回復。
ではなく。
布。
「保護しましょう」
止血布。
少し。
加工。
「回復魔法じゃ駄目?」
ルク。
「怪我じゃないから」
「あと」
俺。
「原因そのままだと」
「治してもまた痛くなる」
靴。
紐。
「少しきつい」
「緩める」
「これくらい」
「歩いてみて」
ルク。
数歩。
「さっきよりいい」
「よし」
『足装備マジ大事』
『冒険配信で靴擦れ対策見るとは』
『生活感すごい』
◇◇◇
《身体管理行動を確認》
《護衛対象への適切な休息措置》
《クエスト評価が上昇しました》
「こんなの評価されるの?」
ミナ。
「戦闘だけじゃないんですね」
「護衛だからな」
◇◇◇
再び。
歩く。
そして。
夕方。
「見えた」
古石橋。
《旧西街道・古石橋》
「今日はここまで」
ルク。
「もう?」
「もう」
「まだ歩ける」
「明日もある」
「……」
「嫌?」
「早く帰りたい」
「分かってる」
俺。
橋。
向こう。
見る。
「でも」
「急いで怪我したら」
「もっと遅くなる」
「……分かった」
「偉い」
「子供扱い」
「十二歳」
「また!」
◇◇◇
《旧街道休憩所》
野営。
「テント!」
ルク。
「俺やる」
「手伝う?」
「うん」
俺とルク。
二人用。
「まず広げる」
「これ?」
「逆」
「……」
「笑ってない」
「顔笑ってる」
「少し」
「ジョウゴ!」
◇◇◇
カイト。
レント。
もう一張り。
ミナ。
一人用。
「女子一人寂しいです」
「今さら?」
「今さらです!」
「じゃあ」
ルク。
「ミナ、俺と?」
「駄目」
俺。
即答。
「なんでジョウゴが決める!」
「男女」
「十二歳だよ?」
「だからこそ」
「……ジョウゴ」
ミナ。
「やっぱり保護者です」
「違う」
◇◇◇
夕食。
携帯スープ。
パン。
干し肉。
「肉」
ミナ。
「あるじゃん」
「干し肉じゃなくて」
「贅沢言うな」
ルク。
「猪肉美味しい?」
「美味しかったですよ」
「食べたい」
「帰りに出たら?」
俺。
「狩る?」
「食料目的で戦うの?」
ルク。
「冒険者すごい」
「そこ感心するところ?」
◇◇◇
焚き火。
夜。
《LIVE配信時間:8時間31分》
「長いな」
『ずっと見てる』
『旅配信好き』
『今日は戦闘ほぼなしなのに』
『ルクと歩くだけで見てられる』
俺。
「今日はここまでにします」
『お疲れ!』
『ルクもお疲れ』
「ルク」
「何?」
「みんなお疲れって」
「俺?」
「ああ」
ルク。
少し。
焚き火。
見る。
「ありがとう」
『こちらこそ』
『明日も無理するな』
『ちゃんと休んで』
「明日は」
俺。
「古石橋から双子岩」
「そこまで行ければ十分」
「エルナ村は」
「さらにその先」
「急がず進みます」
『了解』
『安全第一』
「じゃあ」
「またAWOで会いましょう」
《LIVE END》
◇◇◇
コメント。
消える。
「終わった?」
ルク。
「ああ」
「いっぱい見てた?」
「最後」
《最大同時視聴者数:96,304》
「…………」
「ジョウゴ?」
「見なかったことにする」
「また?」
ミナ。
「九万?」
「言うな!」
ルク。
「九万って多い?」
「とても多い」
「シズナより?」
「多分」
「すごい」
「実感ない」
◇◇◇
そして。
夜。
少し。
静かになる。
ルク。
焚き火。
見つめたまま。
「ジョウゴ」
「何?」
「明日」
「うん」
「エルナ近くなる?」
「ああ」
「明後日は?」
「順調なら双子岩」
「その次」
「エディルさんの小屋」
「その次」
「村」
ルク。
膝。
抱える。
「怖い」
「うん」
「帰りたいのに」
「怖い」
「両方でいいだろ」
「?」
「帰りたい」
「怖い」
「別にどっちか一つにしなくていい」
「……そうなの?」
「ああ」
「俺も」
「村へ着いて」
「嫌な結果だったらどうしようって思ってる」
「ジョウゴも怖い?」
「少し」
「強いのに?」
「強いのと怖くないのは別」
ルク。
考える。
「そっか」
「うん」
「じゃあ」
一拍。
「明日も一緒?」
「当然」
「約束?」
「ああ」
「約束」
◇◇◇
ポーン。
《ルクとの信頼度が大幅に上昇しました》
《護衛対象ルクの精神状態:安定》
「……精神状態まであるのか」
AWO。
本当に。
細かい。
でも。
悪くない。
◇◇◇
テント。
入る前。
「ジョウゴ」
「ん?」
ルク。
自分の。
短弓。
見る。
「明日」
「もし魔物出たら」
「俺も戦う?」
「基本は戦わない」
「でも」
「自分に来たら」
「逃げる」
「逃げられなかったら?」
「その時だけ弓」
「狙うのは倒すことじゃない」
「怯ませて」
「俺たちのところへ来る」
「……分かった」
「勝とうとするな」
「生き残る」
「うん」
「それが一番大事」
◇◇◇
《セーフログアウト可能》
「じゃあ」
俺。
「今日は終わり」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
「また明日」
ルク。
「ジョウゴ」
「何?」
「ちゃんと戻ってきて」
「ログイン?」
「うん」
「戻るよ」
「絶対?」
「ああ」
それを聞き。
ルク。
少し。
安心した顔。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
《Logout》
◇◇◇
現実世界。
VR機器を外す。
「……九万か」
見てしまった数字。
初回。
六万七千。
旧街道。
八万。
今回。
九万六千。
「なんで増えてるんだ?」
ほとんど。
歩いて。
休んで。
足を確認して。
飯食って。
テント張っただけ。
でも。
CROSS社から。
メッセージ。
《本日の配信は非常に良好でした》
《護衛対象を優先した進行について視聴者評価が高くなっています》
「……そういうものか」
なら。
これからも。
変える必要はない。
◇◇◇
同時刻。
CROSS社。
「最大同接九万六千」
「十万目前ですね」
「次回は越える可能性があります」
神崎。
視聴データを見る。
「一番視聴維持率が上がった場面は?」
「ルク君の足を止めて休憩させた場面です」
「戦闘ではなく?」
「はい」
「次点が夜の会話」
「……なるほど」
スタッフ。
「視聴者は」
「エルナ村へ着くことだけを見てるんじゃないんですね」
「ええ」
神崎。
映像。
ルクの歩幅に合わせて。
歩調を落とすジョウゴ。
「着くまでの時間」
「そこを見ているんでしょう」
◇◇◇
そして。
AWO。
夜の古石橋休憩所。
焚き火。
少しずつ。
小さくなる。
五人分のテント。
その中で。
ルクは。
久しぶりに。
故郷の夢を見ていた。
父。
アルト。
母。
セリエ。
エディル。
村。
森蜜。
燃える前の。
エルナ村。
夢の中。
家の前で。
二人が。
笑っていた。
――あと少し。
でも。
その「あと少し」が。
ルクにとって。
一番長い道になる。
そして。
俺たち五人は。
まだ知らない。
明日。
古石橋のさらに先で。
前回の探索時には存在しなかった。
新しい異変の痕跡を。
発見することになるとは――。




