↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第一章 AWO開始編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/131

第32話 双子岩の先で見つけたもの

《Welcome Back》


《Another World Online》


 視界を包んでいた淡い光が消える。


 次に聞こえてきたのは、鳥の鳴き声と風に揺れる木々の音だった。


「……朝か」


 俺――ジョウゴは、簡易テントの中で身体を起こした。


《現在地:双子岩野営地点》


 昨日。


 俺たちは古石橋の先へ進み、《精霊迷い》と呼ばれる特殊エリアを突破。


 謎の小さな森精霊に導かれ、第二の中継地点である《双子岩》まで到達した。


 そして――。


《長期クエスト》


《ルクの故郷》


《現在目標:旧西街道の安全確認》


《エルナ村推定位置:双子岩より北西方向》


《推定距離:徒歩半日程度》


「あと半日」


 距離だけなら。


 もう遠くない。


 ただし。


「地図がここからほとんど役に立たないんだよな」


 ガレスからもらった古い地図。


 双子岩より先は、線も曖昧。


 地形の記載も少ない。


 十四年。


 森が変化するには十分な時間だ。


「今日は周辺調査だけ」


 現実では平日。


 仕事を終えてからログインしている。


 深夜まで無理に進むつもりはない。


 エルナ村へ向かう本格的な探索は、次の休日。


「その前に」


 安全確認。


 道。


 魔物。


 野営場所。


 そして。


「本当に村があるのか」


 それを確かめたい。


         ◇◇◇


 テントの外へ出る。


「おはようございます」


「おはよう」


 ミナ。


 すでに焚き火のそば。


「カイトとレントは?」


「まだです」


「珍しい」


 前回は俺より早かったのに。


 その瞬間。


「うおおお……」


 隣のテント。


 カイト。


 出てくる。


「ゲームの中で朝起きる感覚、妙にリアルなんだけど」


「実際は夜だけどな」


「言うな!」


 レントも。


「揃ったな」


「ああ」


         ◇◇◇


 まず。


 朝食。


 簡単なスープ。


 パン。


 干し肉。


「ミナ」


「はい?」


「肉」


「……何です?」


「今日も肉がないって言うかと思って」


「私はそこまで肉好きじゃありません!」


「昨日言ってたじゃん」


「フォレストボアが美味しかっただけです!」


 カイト。


「つまり今日も猪が出たら」


「倒しましょう!」


「目的変わってる!」


 朝から元気だな。


         ◇◇◇


 食事を終え。


 野営道具は一部だけ残す。


「テントは?」


 レント。


「今日は戻る予定だから」


「一張りだけ残す?」


「ああ」


 もし。


 予想外に時間が掛かった場合。


 戻れない可能性もある。


《簡易テント×1》


 野営地点維持。


 残りは収納。


「よし」


         ◇◇◇


《旧西街道・双子岩西方》


 俺たちは四人で森へ入った。


「本当に道ないですね」


 ミナ。


「地図だとこっち」


 レント。


 簡易コンパス。


 北西。


 でも。


 目の前。


 木。


 低木。


 苔。


 岩。


 完全な森だ。


「昔は街道だった?」


 カイト。


「荷車が通れる幅じゃないぞ」


「十四年あればこうなるんじゃない?」


 俺は木を見る。


 比較的若い。


「昔の道の上に木が生えてる」


「それ分かるんですか?」


「幹が細い」


「周りの木より若そう」


「なるほど」


 ミナ。


「じゃあこの列?」


「ああ」


 若い木が。


 妙に一直線。


 そこ。


 昔。


 道だったのかもしれない。


《観察Lv.1の熟練度が上昇しました》


「観察スキルが完全に探索用になってる」


 レント。


「便利だからいい」


         ◇◇◇


 三十分。


 進む。


 すると。


「止まって」


 三人。


 止まる。


「今度は何?」


 カイト。


「足跡」


 地面。


 泥。


「大きい?」


 ミナ。


「いや」


 俺の手のひら。


 それより。


 少し大きい。


《人型種の足跡》


「人型?」


「ゴブリン?」


 レント。


「形が違う」


 ゴブリン。


 以前。


 何度も見た。


 これは。


 靴。


「靴履いてる」


「人?」


「あるいはエルフ」


 ミナ。


 目。


 少し輝く。


「最近の?」


 俺。


 触る。


《観察》


《人型種の足跡》


《経過時間:推定1~3日》


「新しい」


 三人。


 顔。


 変わる。


「エルナ村の人?」


「可能性ある」


 もし。


 そうなら。


「村が残ってる?」


 ルク。


 故郷。


「でも決めつけない」


 この森。


 人型。


 他にもいるかもしれない。


 盗賊。


 別の集落。


 冒険者。


「追う?」


「ああ」


         ◇◇◇


 足跡。


 一つだけではない。


「二人?」


 レント。


「いや」


 俺。


 地面。


「三人」


「分かる?」


「サイズ違う」


 一つ。


 大きい。


 一つ。


 中くらい。


 一つ。


 小さい。


「家族?」


 ミナ。


「かもしれない」


「荷物運んでる?」


 地面。


 深い。


 大型の足跡。


「一人は重い物持ってた可能性ある」


 歩幅。


 一定。


 逃げてはいない。


「普通に移動してた」


《クエスト情報が更新されました》


《旧西街道周辺で最近の人型種の痕跡を確認》


「当たりっぽい」


         ◇◇◇


 一時間。


 足跡。


 森。


 そして。


「木」


 カイト。


「切られてる」


 幹。


 新しい。


 斧。


「切り株」


 複数。


「薪?」


「材木?」


 近く。


 枝。


 まとめられている。


《最近採取された薪材》


「誰か生活してる」


 ミナ。


 嬉しそう。


「この近く?」


「多分」


 さらに。


 少し先。


「煙」


 レント。


 木々。


 間。


 薄い。


 白。


「焚き火?」


「家?」


 俺たち。


 動き。


 慎重になる。


「武器は?」


 カイト。


「抜かない」


「でも準備」


「了解」


 俺。


 刀。


 柄へ手。


 ミナ。


 杖。


 レント。


 弓。


 ただし。


 攻撃するつもりはない。


         ◇◇◇


 茂み。


 抜ける。


「……」


 小さな。


 空間。


 そして。


「小屋?」


 木造。


 一軒。


 古い。


 でも。


 煙突。


 煙。


 出ている。


 横。


 薪。


 積んである。


《森の小屋》


《所属:???》


「誰かいる」


 その時。


「止まれ」


「!」


 声。


 背後。


 いつの間に?


 俺。


 振り向く。


 弓。


 こちらへ。


 向いている。


 男。


 いや。


 耳。


 長い。


《???》


 エルフ。


 年齢。


 三十代くらいに見える。


 緑色の外套。


「何者だ」


 弓。


 引いたまま。


「武器から手を離せ」


 俺。


 すぐ。


 刀から手を離す。


「分かった」


 カイト。


 盾。


 下げる。


 レント。


 弓。


 持っているが。


 構えない。


 ミナ。


 杖。


 下ろす。


「冒険者です」


「どこから」


「シズナ」


 男。


 眉。


 動く。


「シズナ?」


「ああ」


「なぜこんなところへ」


 どう答える?


 正直に。


「エルナ村を探してます」


「!」


 男。


 明確に。


 反応。


「誰に聞いた」


「ルク」


 弓。


 一瞬。


 揺れる。


「……ルク?」


「十二歳のハーフエルフ」


「ゴブリンに捕まってた」


「シズナ近くで保護した」


 男。


 目。


 大きく。


「生きているのか!?」


 弓。


 下がる。


「無事です」


「今はシズナの診療所」


「……」


 男。


 息。


 吐く。


「よかった……」


 それだけで。


 分かった。


「ルクを知ってる?」


「ああ」


「村の人?」


「……そうだ」


 そして。


《NPC情報が更新されました》


《エルフの狩人 エディル》


《所属:エルナ村》


「……見つけた」


 ミナ。


 小さく。


「村、生きてる」


         ◇◇◇


《長期クエスト》


《ルクの故郷》


《重大情報を獲得しました》


《エルナ村の生存者と接触しました》


「エディルさん」


 俺。


「エルナ村は」


「まだある?」


「……ある」


 即答。


「ただ」


 表情。


 暗い。


「昔のエルナではない」


「どういう意味?」


「村は襲われた」


「ゴブリンに?」


「ああ」


「大勢が」


 言葉。


 止まる。


「死んだ」


 ミナ。


 視線。


 下。


「でも生存者は?」


「いる」


「何人?」


「二十七人」


 少ない。


「元々は?」


「百人ほど」


「……」


 ルク。


 十二歳。


 村。


 燃えた。


 捕らわれた。


「ルクの両親」


 聞くか。


 でも。


 ここ。


 重要。


「エディルさん」


「何だ」


「ルクの父親と母親」


「知ってますか」


 エディル。


 俺を見る。


 長い。


 沈黙。


「名前は?」


 そうだ。


 俺。


 知らない。


「聞いてない」


「なら」


 エディル。


「直接ルクから聞け」


「……分かった」


 無理に聞くべきではない。


         ◇◇◇


「村はここから近い?」


「歩いて二時間」


「二時間」


「かなり近い」


「案内してもらえる?」


 エディル。


 首。


 横。


「今日は駄目だ」


「なぜ?」


「村は今」


 森。


 奥。


 見る。


「外部の者を入れない」


「襲撃後だから?」


「それもある」


「人間を警戒している者が多い」


「……」


 俺。


 人間種。


 カイト。


 人間。


 レント。


 種族。


 人間系。


 ミナ。


 エルフ。


「ハーフエルフへの扱いも?」


 ルク。


 耳。


 隠す。


 エディル。


 少し。


 目を細める。


「シズナではどうだ」


「今のところ普通」


「そうか」


 それだけ。


         ◇◇◇


「じゃあ」


 俺。


「どうすれば村へ行ける?」


「ルクを連れて来い」


「!」


「生存者なら」


「村へ戻る権利がある」


「ただし」


「まずルク本人に」


「帰りたいか聞け」


 当然。


 だ。


 俺たちが。


 勝手に。


 決める話じゃない。


「分かった」


「それと」


 エディル。


 俺を見る。


「村へ来るなら」


「人数は少なく」


「武器は必要以上に抜くな」


「了解」


「異邦人」


「?」


「お前」


「ジョウゴと言ったな」


「言ってないけど」


「……仲間が呼んでいた」


「ああ」


「ルクを助けたのは」


「お前たちか?」


「四人で」


 エディル。


 深く。


 頭。


 下げた。


「ありがとう」


「やめてください」


「礼を言うのは当然だ」


「でも」


 俺。


「まだ故郷に帰せたわけじゃない」


「……そうだな」


         ◇◇◇


《クエスト情報更新》


《ルクの故郷》


《エルナ村への経路情報を獲得》


《条件を満たすことでエルナ村へ入村可能》


《条件:ルク本人の意思確認》


「ここまで」


 レント。


「かなり進んだな」


「ああ」


 今日は。


 十分。


「戻ろう」


「村行かないんですか?」


 ミナ。


「ルクなしで行かない」


「ですね」


「それに」


 エディル。


「夕方から魔物が増える」


「何が出る?」


「森狼」


「熊」


 カイト。


 顔。


 引きつる。


「熊……」


「昨日の?」


 俺。


《グレートフォレストベア Lv.12》


「もっと大きいのもいる」


 エディル。


「帰ろう」


 カイト。


「今すぐ帰ろう!」


「お前熊に弱くなったな」


「レベル12に追われてみろ!」


         ◇◇◇


 エディル。


 小屋。


 入る。


 少し。


 待つ。


「これを」


 木製。


 小さな。


 札。


《エディルの木札》


《エルナ村狩人の身分証》


「ルクへ見せろ」


「俺が生きている証になる」


「ありがとう」


「それと」


 袋。


《森蜜》


「ルクはこれが好きだった」


「……」


 渡される。


「生きてると知ったら」


「持っていけ」


「分かった」


         ◇◇◇


 帰路。


「よかったですね」


 ミナ。


「村」


「残ってた」


「ああ」


「でも」


 カイト。


「二十七人」


「かなり減ってる」


「百人から」


「七割以上」


 レント。


「襲撃」


「相当大きかった」


 そして。


 ルクの両親。


「生きてるか」


 分からない。


「本人に名前聞くしかない」


 でも。


 聞けば。


 期待。


 する。


 そして。


 もし。


 亡くなっていたら。


「難しいな」


「何が?」


 ミナ。


「情報を伝えること」


 ゲーム。


 なら。


 クエスト。


 達成。


 報酬。


 でも。


 今。


 俺。


 完全に。


 ルクへ何と話すか。


 考えている。


「ジョウゴさん」


「ん?」


「そのままでいいと思います」


「何が?」


「分かったことだけ」


「分からないことは」


「分からないって」


「……そうだな」


         ◇◇◇


 双子岩。


 戻る頃。


 空。


 暗くなり始める。


「間に合った」


 カイト。


「熊来なかった」


「そこ一番?」


「一番!」


         ◇◇◇


 焚き火。


 夕食。


「今日は」


 ミナ。


 袋。


 見る。


「肉ないですね」


「まだ言うの?」


「ちょっとだけ期待してました」


「明日シズナ帰ったら銀麦亭」


「じゃあ我慢します」


「マリアさんの料理強い」


         ◇◇◇


 食後。


「明日」


 レント。


「シズナまで戻る?」


「一日では?」


 双子岩。


 古石橋。


 西門。


 距離。


「前回」


 二日近く。


「途中」


 古石橋休憩所。


「一泊」


「じゃあ」


 明日。


 古石橋。


 次。


 西門。


 その後。


「ルク」


 待っている。


         ◇◇◇


 俺。


 木札。


 見る。


《エディルの木札》


「喜ぶかな」


 森蜜。


「少なくとも」


 故郷。


 ある。


 生きている人。


 いる。


 それは。


 伝えられる。


「ジョウゴ」


 カイト。


「何?」


「今日配信しなくてよかったのか?」


「いい」


「かなり重要回だったぞ」


「重要だからこそ」


「?」


「ルクに先に話したい」


 三人。


 少し。


 驚く。


「視聴者より?」


「当たり前だろ」


「ルクの話だから」


 配信。


 面白い。


 でも。


 全部。


 配信する必要はない。


「次回」


「話せる範囲で話す」


「それでいい」


 レント。


 頷く。


         ◇◇◇


《CROSS社からメッセージが届きました》


「?」


《旧街道探索の進行を確認しました》


《配信予定の催促ではありません》


《必要な際のみご利用ください》


「……」


 ちゃんと。


 分かってる。


「CROSS」


 悪くないな。


         ◇◇◇


《セーフログアウト》


《双子岩野営地点》


「じゃあ」


「今日は終わり」


「お疲れ」


「おやすみなさい」


「また」


 テント。


 入る。


「ログアウト」


         ◇◇◇


 現実。


 俺――上塚賢吾はVR機器を外す。


 時計。


 午後十一時前。


「結構遅い」


 明日も仕事。


「寝よう」


 でも。


 その前に。


 連携アプリ。


 クエスト。


《ルクの故郷》


《エルナ村:現存確認》


《生存者:最低27名》


《ルク本人の帰郷意思を確認してください》


「……」


 明日。


 帰れない。


 明後日。


 たぶん。


 シズナ。


「待たせるな」


 急ぎたい。


 でも。


 無理。


 現実。


 仕事。


「一つずつ」


 ルクに言った。


 自分。


 守る。


         ◇◇◇


 そして。


 シズナ。


 診療所。


「まだ?」


 ルク。


 窓。


 外。


「ジョウゴ帰ってこない」


 セレナ。


「遠い旅なのでしょう?」


「うん」


「なら」


「待つことも旅の一部ですよ」


「……」


 ルク。


 不満そう。


 でも。


 手元。


 木。


 削る。


 ジョウゴ。


 自分。


 そして。


 三本目。


「これは?」


 セレナ。


「お父さん」


「……そう」


 四本目。


「お母さん」


 小さな。


 木の刀。


 四本。


 並ぶ。


「帰れるかな」


 誰にも。


 まだ。


 答えは出せない。


 ただ。


 確かなことが。


 一つだけある。


 エルナ村は。


 今も。


 存在していた。


 そして。


 ルクのことを覚えている者も。


 確かに。


 生きていた。


 その事実を持って。


 俺たちは。


 今度こそ。


 シズナへ。


 帰ることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。