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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第一章 AWO開始編

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27/131

第27話 ジョウゴ式・初心者向け講座

《LIVE》


《現在視聴者数:48,216》


「……増えてない?」


 俺――ジョウゴは、視界の端に表示された数字を見てしまった。


『気づいたw』


『四万八千おめ』


『もうすぐ五万』


『戦闘講座始まるから増えたぞ』


『待機してた』


『視線トラッキング楽しみ』


「だから人数を言わないでください」


『自分で見たんだろw』


「それはそうなんですけど」


 現在地は《シズナ冒険者ギルド》の訓練場。


 つい先ほどまで。


 銀麦亭で朝食。


 ベルさんの露店でリンゴ。


 診療所でルクのお見舞い。


 さらに銀麦亭へ戻ってパン。


 初配信らしいことを、ほぼ何もしていない。


 それなのに。


 なぜか視聴者は増え続けていた。


「で」


 俺は木剣を一本手に取る。


「せっかく一人称視点と視線トラッキングがあるので」


『きた』


『待ってた』


『ジョウゴの目線!』


「戦闘で俺が何を見てるのか、少し説明してみようと思います」


 隣ではミナが大きく頷いている。


「やっとですね!」


「何が?」


「今までジョウゴさん、『見れば分かる』しか言わなかったじゃないですか!」


「そんな雑だった?」


「雑でした!」


 カイトも頷く。


「俺も何度『そこ』って言われたことか」


 レントまで。


「『肩を見る』『足を見る』って言われても、いつ見るのか分からなかったからな」


「……今日はちゃんと説明します」


『できるのか?』


『不安』


『本人の感覚派説明だぞ』


「コメント欄、俺への信頼低くない?」


『戦闘力への信頼は高い』


『説明力への信頼は低い』


「ひどい」


         ◇◇◇


「俺も見る」


「ルク?」


 訓練場の端。


 椅子へ座ったルクが手を上げる。


 治療師セレナさんから、外出は短時間。


 走らない。


 無理をしない。


 という条件付きで許可をもらっている。


「疲れたらすぐ言えよ」


「分かってる」


「本当に?」


「ジョウゴより言うこと聞く」


「なんで俺が比較対象なんだ?」


 ミナが小さく笑った。


『ルク元気そう』


『ちゃんと座ってる』


『保護者ジョウゴ』


「保護者ではないです」


「ジョウゴ」


「何?」


「俺、パン食べたい」


「さっき食べただろ」


「…………」


「その顔しても駄目」


『完全に保護者w』


「違うから」


         ◇◇◇


「さて」


 俺は訓練場の中央へ。


「カイト」


「おう」


「まず普通に攻撃して」


「普通に?」


「ああ。アーツなし」


「了解」


 カイトが木剣を持つ。


 盾は置いてある。


「じゃあ行くぞ」


「どうぞ」


《視線トラッキング表示:ON》


 俺の視界。


 そして配信映像上には。


 俺が現在注目している箇所が、小さなマーカーとして表示される。


「まず」


 カイト。


 全体。


「相手全体を見ます」


『普通だ』


『今回は分かる』


「でも、剣だけは見ません」


『え?』


『剣見ないの?』


 コメント。


 早い。


「正確には、剣だけを凝視しない」


 カイト。


 構え。


「武器だけ見てると身体の動きが見えなくなるから」


「じゃあどこを見るんです?」


 ミナ。


「全体」


「だからそれが難しいんです!」


「いや、本当に全体なんだけど……」


『説明力w』


『開始一分で破綻』


「待ってください」


 俺も考える。


 どう説明する?


 現実では。


 無意識にやっている。


「じゃあ」


 カイトへ。


「一回ゆっくり攻撃して」


「了解」


 踏み込み。


 右足。


 視線マーカー。


 まず足。


「ここ」


『右足』


 次。


 腰。


「ここ」


『腰』


 肩。


「ここ」


『右肩』


 最後。


 剣。


「で、武器」


 カイトがゆっくり振り下ろす。


「この順番?」


 ミナ。


「絶対ではないけど」


 俺は頷く。


「足が動く」


「腰が動く」


「肩が動く」


「最後に武器が動く」


 レント。


「ああ」


「剣自体が最初に攻撃してくるわけじゃない」


「そう」


「人間が動かすから」


「そういうこと」


『おお』


『これは分かりやすい』


『初めてまともな説明』


「初めては余計です」


         ◇◇◇


「じゃあ実際に」


 俺。


 木剣。


 構えない。


「来て」


「今度は普通の速さで?」


「ああ」


 カイト。


 構える。


「行くぞ!」


 踏み込み。


 視線。


 右足。


 腰。


 肩。


「来る」


 この時点。


 俺はもう動き始める。


 半歩。


 右へ。


 次の瞬間。


 ブンッ!


 木剣。


 俺の左肩があった場所。


 通過。


『うおおお』


『本当に剣動く前に避けてる』


『視線表示あると分かる!』


『右足→腰→肩だ』


『剣見た時にはもう避けてる』


「こうです」


 ミナ。


「いや」


「何?」


「こうです、じゃないですよ!」


「今説明しただろ」


「説明は分かりました!」


「じゃあ何?」


「できません!」


「練習すれば」


「何年!?」


「人による」


『初心者向けとは』


『理屈は初心者向け』


『実技難易度が初心者向けじゃない』


         ◇◇◇


「ただ」


 俺は木剣を下げる。


「全部を見る必要はないです」


『?』


「初心者なら」


 カイトへ向き直る。


「一つだけ決めてもいい」


「一つ?」


「例えば肩」


 視線。


 カイトの右肩。


「相手が右手で剣を振るなら、右肩が動く」


「こう?」


 カイト。


 少し振る。


「ああ」


「そこを見て」


「動いたら避ける?」


「最初はそれでいい」


『これはできそう』


『肩だけなら』


『練習してみる』


「ただし」


 俺。


「相手によって違うから」


『急に難しくするな』


『ですよねー』


「人間の身体だから」


「完全に同じ動きにはならない」


「だから」


「最終的には色々見た方がいい」


 ミナ。


「結局そこに戻るんですね」


「うん」


         ◇◇◇


「次はアーツ」


 カイト。


「《スラッシュ》?」


「ああ」


「じゃあ行くぞ」


 距離。


 取る。


「《スラッシュ》!」


 淡い光。


 発動。


『エフェクト!』


「これはむしろ分かりやすい」


「え?」


 カイト。


 発動動作。


 身体がシステムアシストに従う。


「アーツって」


 俺。


 一歩。


「ある程度、動きが決まってる」


 カイトの肩。


 腰。


 足。


「だから一回覚えると」


 踏み込む。


 振り始める前。


 間合いの内側。


「こう」


 木剣。


 柄元。


 俺の木剣を添える。


 ガッ!


《Parry!》


《《崩しLv.1》発動》


「うおっ!」


 カイト。


 体勢。


 崩れる。


『は???』


『近づいた!?』


『避けるんじゃないの!?』


『初心者向けどこ行った』


「攻撃が完成する前なら」


 俺。


「逆に入った方が安全な場合もあります」


「ジョウゴさん!」


「何?」


「今の初心者に勧めたら駄目です!」


「なんで?」


「失敗したら斬られます!」


「ゲームだから多少は――」


「HP減ります!」


『ミナ正論』


『これは上級編』


『真似するな危険』


 俺。


「……じゃあ今のなしで」


『なしにするなw』


         ◇◇◇


《現在視聴者数:56,907》


「…………」


 数字。


 見ない。


 見てない。


「ジョウゴさん」


「何?」


「今、視聴者数見て固まりかけましたよね?」


「見てない」


『見てた』


『視線マーカーが人数に行ったぞ』


「視線トラッキング、こういう欠点あるの?」


『嘘つけないw』


「OFFにしたくなってきた」


         ◇◇◇


「次」


 レント。


「俺がやろうか」


「弓?」


「ああ」


「遠距離攻撃も?」


 ミナ。


 興味。


「見切れるんですか?」


「矢を見て避けるのは難しい」


『まともだ』


『ついに無理って言った』


「でも」


『でも?』


「射手を見ればいい」


『あっ』


『嫌な予感』


 レント。


 弓。


 構える。


「行くぞ」


「ああ」


 俺の視線。


 矢。


 ではない。


 レント。


 腕。


 指。


 肩。


「弓の場合」


「引いて」


「止めて」


「放す」


 レント。


 弦。


 引く。


「この」


 指。


「離れる瞬間」


 ヒュッ!


 俺。


 半歩。


 矢。


 横を通過。


『…………』


『待って』


『矢避けたぞ』


『今何した?』


『視線指にあった』


「だから」


 俺。


「矢を見て避けたわけじゃない」


「撃つ瞬間を見て動いた」


 ミナ。


「それでも普通の人には無理です!」


「距離あればいけるだろ」


「距離何メートルありました?」


「十くらい?」


「近い!」


 レントが苦笑。


「俺も撃つ場所分かってるからな」


「実戦だともっと難しい」


「ほら!」


「だから練習」


「またそれ!」


         ◇◇◇


 コメント。


『剣道ってここまでやるの?』


『合気道要素は?』


『古流剣術見たい』


『パリィ教えて』


『崩しって何?』


 抽出。


「崩し?」


 ちょうどいいか。


「じゃあ次」


 俺。


 カイトを見る。


「剣を構えて」


「嫌な予感するんだけど」


「大丈夫」


「ジョウゴの大丈夫、信用できない」


「ひどい」


 カイト。


 木剣。


 構える。


「崩しっていうのは」


 俺。


 近づく。


「簡単に言えば」


 肩。


 押す。


「相手が踏ん張れない状態を作る」


 カイト。


「これ?」


「今は立ってるだろ」


「ああ」


「じゃあ」


 右足。


 少し前。


「この状態で」


 肩。


 斜め。


 押す。


「うおっ」


 カイト。


 一歩。


「ほら」


「え?」


「同じくらいの力でも」


「方向で違う」


『おお』


『これは分かる』


『重心か』


「人間って」


 俺。


「どの方向でも同じように踏ん張れるわけじゃない」


「だから」


 武器。


 手。


 肘。


 肩。


 腰。


 足。


「相手の重心と身体の向きを見て」


「弱い方向へ力を流す」


 ミナ。


「言ってることは分かります」


「よかった」


「できるとは言ってません」


「…………」


『草』


『ミナちゃん代弁者』


         ◇◇◇


「じゃあ」


 カイト。


 急に笑う。


「実際にやってみよう」


「何を?」


「崩し」


「俺に?」


「ああ」


「いいよ」


 カイト。


 木剣。


「今度こそ一本取る!」


「目的変わってない?」


「行くぞ!」


 踏み込み。


 剣。


 横。


 俺。


 見る。


 足。


 腰。


 肩。


「右」


 半歩。


 回避。


 カイト。


 追う。


「まだ!」


 二撃目。


「お」


 さっきより。


 動きが小さい。


「学習した」


「そりゃな!」


 俺。


 木剣。


 合わせる。


 カンッ。


 流す。


 でも。


 カイト。


 耐える。


「崩れない!」


「じゃあ」


 俺。


 一歩。


 距離。


 詰める。


「え?」


 左手。


 カイトの右肘。


 軽く。


 方向。


 変える。


 同時。


 足。


 一歩。


 カイトの外側。


「よっ」


「うおっ!?」


 ぐるん。


 ドサッ。


《Throw!》


「…………」


 静寂。


 訓練場。


 コメント。


 数秒。


『投げたwww』


『剣術講座どこ行った』


『合気道出た』


『結局これだよ!』


『変な剣士復活』


「ジョウゴ!」


 地面。


 カイト。


「剣の講座じゃなかったのか!?」


「崩しの説明」


「最後投げたじゃねぇか!」


「崩れたから」


「初心者向け!?」


「これは真似しないでください」


『遅いw』


         ◇◇◇


「俺もやる」


「ルク?」


 椅子。


 立とうとしている。


「駄目」


「なんで!」


「安静」


「元気!」


「セレナさんとの約束」


「…………」


 座る。


「素直」


「約束だから」


「偉い」


「子供扱いするな」


「十二歳」


「子供じゃない」


 コメント。


『かわいい』


『ルクえらい』


『ジョウゴより約束守る』


「俺も守りますけど?」


『防衛戦で刀を壊しかけた人』


「それとこれとは別」


         ◇◇◇


「ジョウゴさん」


 ミナ。


「魔法は?」


「魔法?」


「魔法相手の避け方」


「俺、魔法使えないけど」


「私が撃ちます」


「…………」


「怖いんですか?」


「訓練場で火魔法撃つの?」


「訓練用設定あります」


「ああ」


 ダメージ軽減。


 安全制御。


「なら」


 距離。


 十数メートル。


 ミナ。


 杖。


「行きます!」


「どうぞ」


「《ファイアアロー》!」


 杖。


 魔法陣。


 炎。


「これは」


 俺。


 すぐ。


 横。


 一歩。


 ヒュンッ!


 炎の矢。


 通過。


「簡単」


「は?」


 ミナ。


「魔法陣出ますよね」


「はい」


「杖向けますよね」


「はい」


「それ見れば」


「いやいやいや!」


 ミナ。


 杖。


 下ろす。


「速いですよ!?」


「でも弓より分かりやすい」


『ジョウゴ基準』


『魔法が簡単扱い』


『魔術師泣いてるぞ』


「次!」


 ミナ。


 少しムキになる。


「《ファイアボール》!」


 大きい。


「それは」


 着弾。


 範囲。


「距離取る」


 走る。


 ドォン!


 爆発。


 範囲外。


「避けた」


「普通!」


 ミナ。


「それは普通!」


「よかった」


『初めて普通認定』


         ◇◇◇


 講座。


 続く。


 基本回避。


 パリィ。


 アーツへの対処。


 弓。


 魔法。


 崩し。


 気づけば。


《配信時間:02:47:16》


「二時間以上やってた?」


「講座だけで一時間半くらいですね」


 レント。


「そんなに?」


 コメント。


『一瞬だった』


『めっちゃ面白かった』


『視線トラッキング神』


『参考になった』


『参考にはなった。できるとは言ってない』


『初心者講座(経験十年以上推奨)』


「十年以上はいらない」


『本人が言うな』


         ◇◇◇


 ポーン。


《配信内行動を解析》


「ん?」


《複数プレイヤーへの戦闘技術指導を確認》


《視線情報・実演・反復説明による技能共有》


《特殊称号条件を一部達成しました》


「また何か出た」


「何です?」


《称号候補》


《指南役》


「指南役?」


 カイト。


「似合ってるじゃん」


「まだ候補」


「取るんじゃないですか?」


 ミナ。


「要らないとは言わないけど」


『先生!』


『ジョウゴ先生』


『師範!』


「先生はやめてください」


『師範代?』


「……なんで知ってる?」


 コメント。


 一瞬。


『え?』


『マジ?』


『本当に師範代なの?』


「…………」


 しまった。


 現実の話。


 別に個人特定に繋がるほどではない。


 でも。


「剣道は長くやってます」


 これくらい。


「その関係で人に教えることもある」


『やっぱりガチ勢!』


『普通じゃない理由判明』


『合気道は?』


「それも長いです」


『古流は?』


「それも」


『全部長いじゃねえか!』


「だから」


 俺。


「ゲーム始めて突然こうなったわけじゃないです」


 少し。


 真面目に。


「今日の講座も」


「すぐ真似できなくて普通です」


「できなかったからって」


「自分は下手だとか思わなくていいです」


 現実の稽古。


 最初。


 誰だって。


 できない。


「できないことを」


「何回もやって」


「少しずつできるようになる」


「それでいいと思います」


 コメント。


 少し。


 流れ。


 変わる。


『いいこと言う』


『これは先生』


『練習してみる』


『パリィ失敗しまくってたからちょっと安心した』


『ゲームでも積み重ねか』


「ただ」


 一拍。


「死に戻りはほどほどに」


『草』


『急にゲーム』


『大事』


         ◇◇◇


「そろそろ」


 俺。


「ルクも疲れてきた?」


「疲れてない」


 欠伸。


「…………」


「帰ろう」


「疲れてない」


「銀麦亭」


「行く」


「即答」


『パンで釣られたw』


「釣ってない」


         ◇◇◇


 訓練場を出る。


 街。


 昼。


 配信。


 まだ続いている。


《現在視聴者数:63,104》


「…………」


 見ない。


『また人数見たw』


「視線表示、本当に余計なところまでバレるな」


 ミナ。


「今さらですね」


         ◇◇◇


 歩いていると。


「あの!」


 一人のプレイヤー。


「ジョウゴさん!」


「はい?」


「配信見てました!」


「今も配信中ですけど」


「あっ」


 プレイヤー。


 一瞬。


 固まる。


『映ったw』


『野生の視聴者』


「さっきの肩を見る方法」


「はい」


「試したらホーンラビット避けられました!」


「ホーンラビット?」


「はい!」


「あいつ肩……」


 四足。


「前脚の付け根?」


「その辺見ました!」


「なるほど」


 人型向け。


 応用したのか。


「よかったです」


「ありがとうございます!」


「ただ」


「?」


「角あるから気をつけて」


「はい!」


 走っていく。


 俺。


「…………」


 少し。


 嬉しい。


『教えたこと使ってもらえるの嬉しいよな』


『顔ちょっと笑ってる』


「視線だけじゃなく表情まで見ないでください」


『配信だからw』


         ◇◇◇


 銀麦亭。


「ただいま」


「お帰り!」


 マリアさん。


「ずいぶん長かったねぇ!」


「講座してた」


「何の?」


「戦い方」


「ジョウゴが?」


「そんなに意外?」


「普段説明下手じゃないかい?」


「マリアさんまで!?」


『NPCにも言われたw』


         ◇◇◇


 ルク。


 パン。


 食べる。


 ミナたちも昼食。


 俺。


 シチュー。


「また食ってる」


 カイト。


「昼だから普通」


「今日三回目くらいじゃない?」


「ゲームだから太らない」


「出た」


『ジョウゴ式健康法』


『現実では真似するな』


         ◇◇◇


 食事の途中。


 ポーン。


《CROSS社から配信者向けメッセージ》


「何?」


《初回配信時間が3時間を超えました》


《適度な休憩を推奨します》


「あ」


 確かに。


「そろそろ終わりますか」


『えー』


『もう三時間!?』


『早い』


『次回いつ?』


「次回?」


 何も決めてない。


「仕事次第です」


『平日夜?』


「ログインは多分しますけど」


「毎回配信するかは分からない」


『了解』


『無理しないで』


『生活優先で』


「ありがとうございます」


 意外。


 もっと。


 毎日やれ。


 と言われるかと思った。


         ◇◇◇


「じゃあ」


 俺。


 少し姿勢。


 正す。


「初配信」


「そろそろ終わります」


『お疲れ!』


『めっちゃ面白かった』


『また見たい』


『次回待ってる』


「最初」


 俺。


 思い出す。


「何するか決めてませんって言いましたけど」


『言ったw』


「結局」


 指。


 数える。


「朝飯」


「リンゴ」


「ルクのお見舞い」


「また飯」


「戦闘講座」


「また飯」


 ミナ。


 吹き出す。


「食事多くないですか?」


「俺も今思った」


『飯配信w』


『AWO生活だからヨシ』


『戦闘講座より飯回数多い』


「次も」


 一拍。


「多分、こんな感じです」


『それでいい!』


『むしろそれがいい』


『ノープラン歓迎』


『AWO生活見せてくれ』


「じゃあ」


「今日はありがとうございました」


 少し。


 頭。


 下げる。


「また」


 考える。


「AWOで会いましょう」


 ポーン。


《LIVE配信を終了しますか?》


「終了」


《YES》


《LIVE END》


         ◇◇◇


 静か。


「…………」


 視界。


 コメント。


 消えた。


「終わった」


「どうでした?」


 ミナ。


「思ったより楽しかった」


「おお」


「でも」


「?」


「疲れた」


「三万人どころじゃなかったですもんね」


「最後六万超えてた」


「見たんですね」


「見えた」


 カイト。


「最大何人?」


「知らない」


 ポーン。


《配信結果》


《配信時間:3時間18分》


《最大同時視聴者数:67,428》


《累計視聴者数:184,503》


「…………」


「どうでした?」


「見なかったことにする」


「無理ですよ!」


         ◇◇◇


 現実世界。


 CROSS社。


「終了しました」


「最大同接六万七千」


「初配信としては?」


「想定を大幅に上回っています」


「視聴維持率も高い」


「戦闘開始で伸びた?」


「いえ」


「?」


「朝食からほとんど落ちていません」


「……本当に?」


「むしろルクとの交流で上昇」


「講座開始でさらに上昇」


 神崎。


 データ。


 見る。


「コメント評価は?」


「非常に良好」


「配信終了時点で次回希望多数」


「切り抜き候補は?」


「大量です」


「特に?」


「『剣を見ずに肩を見る』」


「『矢ではなく射手を見る』」


「『簡単』発言」


「カイトさんを投げた場面」


「それから」


「?」


「昼食三回目です」


「そこ?」


「かなり人気です」


 神崎。


 笑う。


「やっぱり」


「この人は」


「配信を作らない方がいいですね」


         ◇◇◇


 その数時間後。


 AWO公式掲示板。


---


【祝】ジョウゴ初配信感想スレ


1:名無しの冒険者

初配信終了。


2:名無しの冒険者

感想。


3:名無しの冒険者

飯。


4:名無しの冒険者

飯。


5:名無しの冒険者

飯。


6:名無しの冒険者

お前らw


7:名無しの冒険者

戦闘講座すごかっただろ!


8:名無しの冒険者

初心者向けとは。


9:名無しの冒険者

「肩見ればいい」


10:名無しの冒険者

できねえよ!


11:名無しの冒険者

「矢じゃなくて射手見ればいい」


12:名無しの冒険者

できねえよ!!


13:名無しの冒険者

アーツ発動前に懐入る。


14:名無しの冒険者

絶対真似するな。


15:名無しの冒険者

でも肩見るのは普通に参考になった。


16:名無しの冒険者

俺も回避率上がった。


17:名無しの冒険者

理論は初心者向け。


18:名無しの冒険者

実演者がおかしい。


19:名無しの冒険者

結論。


20:名無しの冒険者

《ジョウゴ式・初心者向け講座》


21:名無しの冒険者

※初心者ができるとは言っていない。


22:名無しの冒険者

草。


23:名無しの冒険者

次回まだ?


24:名無しの冒険者

本人「仕事次第」。


25:名無しの冒険者

社会人配信者だから仕方ない。


26:名無しの冒険者

むしろ無理せず続けてほしい。


27:名無しの冒険者

次はバルガの刀開発見たい。


28:名無しの冒険者

ルクの故郷クエストも。


29:名無しの冒険者

猫も。


30:名無しの冒険者

長い棒も。


31:名無しの冒険者

長い棒はもう忘れろw


---


 こうして。


 俺の初配信は。


 無事――たぶん無事に。


 終了した。


 俺としては。


 朝飯を食べて。


 街を歩いて。


 ルクに会って。


 少し戦い方を説明した。


 ただそれだけ。


 けれど。


 それから間もなく。


 AWOの訓練場では。


「肩を見るんだ!」


「肩!」


「いや腰じゃね!?」


「ジョウゴは足も見てたぞ!」


「全部見ろってこと!?」


「無理だ!」


 俺の配信を見た初心者たちが。


 一斉に。


 回避やパリィの練習を始めることになる。


 そして。


 その光景を見たNPC冒険者たちが。


「最近の異邦人は、なぜ急に足元ばかり見ているんだ?」


 と首を傾げることになるのだが。


 それを俺が知るのは。


 もう少し先の話だった。

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