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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第一章 AWO開始編

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23/132

第23話 小さな足跡の先に

《Welcome Back》


《Another World Online》


「さて」


 俺――ジョウゴは《銀麦亭》七号室で装備を確認した。


《鉄刀・試作二号》


《耐久値:210/210》


《軽革戦闘衣》


 問題なし。


 今日の目的はレベル上げでも、素材集めでもない。


《クエスト》


《消えた捕虜》


《ゴブリン集落跡地から続く小さな足跡の主を捜索してください》


《推奨Lv:4~》


《制限時間:なし》


 昨日見つけた地下牢。


 子供ほどの大きさしかない足跡。


「無事だといいけど」


 NPC。


 データ。


 そう言ってしまえばそれまでだ。


 でも。


 この世界で話して。


 笑って。


 生活している姿を見ていると。


 どうにも、ただのデータとは思えない。


「行くか」


         ◇◇◇


「おはようございます!」


「おはよう」


 銀麦亭の前。


 いつもの三人。


 ミナ。


 カイト。


 レント。


「今日は人探しですね」


「ああ」


「回復薬持った?」


 ミナが聞く。


「三本」


「食料は?」


「少し」


「水」


「ある」


「今日はちゃんとしてますね」


「いつもしてるだろ」


「防衛戦直前に武器を預けた人が?」


「いつまで言うんだよ!」


 カイトが笑う。


「伝説になるまで」


「やめろ」


 レントが地図を開く。


「まず集落跡地まで行って、そこから足跡を追う」


「途中で消えてなければいいけどな」


「昨日のクエスト情報だと追跡可能みたいです」


「なら行こう」


         ◇◇◇


《シズナ南西林》


 昨日と同じ森。


 ゴブリン勢力が壊滅した影響で、やはり静かだ。


 時々。


《フォレストウルフ Lv.4》


 などが見えるものの。


「避けていく?」


「今日は人探しだしな」


 必要のない戦闘はしない。


 少し遠回り。


「ジョウゴって、敵見つけても全部倒そうとはしないよな」


 カイトが言う。


「倒す必要ないだろ?」


「経験値」


「また来ればいい」


「素材」


「必要になったら狩る」


「攻略」


「急いでない」


「徹底してるな」


「だって」


 俺は森を見る。


「散歩してるだけでも結構面白いぞ」


「VRMMOを散歩ゲームにする人」


 ミナが笑う。


「運営が聞いたら喜ぶんじゃない?」


 AWO。


 もう一つの世界で生きる。


 なら。


 何もしない時間があってもいい。


         ◇◇◇


《ゴブリン集落跡地》


「着いた」


 昨日の集落。


 さらに静かになっている。


 俺たちは迷わずチーフの小屋へ。


 地下。


 牢屋。


 そして。


「ここですね」


 壁際。


 小さな抜け穴。


《小さな足跡》


 地面。


 薄い。


「外へ続いてる」


 レントがしゃがむ。


「追える?」


「俺、追跡技能ないぞ」


「俺も」


「私も」


「俺も」


 四人。


「…………」


「また全員専門外」


「でも」


 俺は足跡を見る。


「見えるなら追えばいい」


「昨日の長い棒と同じ発想!」


「使えるものを使って何が悪い」


         ◇◇◇


 穴は。


 小柄な者なら通れる。


 俺たちには無理。


「出口探そう」


 地上へ。


 小屋の裏側。


 周辺を調べる。


「ジョウゴ!」


 カイト。


「ここ!」


 草。


 不自然に倒れている。


 その先。


 土。


「足跡」


《痕跡を発見しました》


《クエスト進行度:10%》


「当たり」


「南西方向ですね」


 森の奥。


 街とは逆。


「逃げるならシズナへ向かいそうだけど」


 ミナ。


「場所を知らなかったのかも」


 レント。


「それか」


 俺は足跡を見る。


「追われてた」


 三人。


 表情が変わる。


「急ごう」


         ◇◇◇


 小さな足跡。


 途中。


 走った跡。


 滑った跡。


 枝。


 折れている。


「かなり慌ててるな」


《痕跡を発見しました》


《クエスト進行度:20%》


 さらに。


「これ」


 ミナが拾う。


 布。


 薄い。


 青色。


《破れた布》


《小さな衣服の一部と思われます》


「やっぱり人型」


「子供かな」


「可能性高いですね」


 その時。


「止まって」


 レント。


 弓。


 構える。


「何?」


「前」


 茂み。


 ガサッ。


《フォレストウルフ Lv.5》


 一体。


 口元。


「……血?」


 ミナの声。


 俺。


 地面。


 足跡。


 小さい。


 狼の方向。


「まずい」


 刀。


 抜く。


「倒す」


「了解!」


         ◇◇◇


「ガウッ!」


 フォレストウルフ。


 速い。


 こちらへ。


「カイト!」


「来い!」


 盾。


 狼。


 直前。


 横。


「避けた!」


「狙いは俺か」


 身体。


 捻る。


 牙。


 俺の腕。


「遅い」


 半歩。


 外す。


 刀。


「ふっ!」


 斬り上げ。


 ザンッ!


《Critical Hit!》


「ギャン!」


 狼。


 地面。


「レント!」


「《パワーショット》!」


 ドスッ!


《Critical Hit!》


「ミナ!」


「《ファイアアロー》!」


 炎。


《フォレストウルフを討伐しました》


「早かった」


 カイト。


「ジョウゴ」


「何?」


「盾役の俺を無視された」


「ドンマイ」


「悲しい!」


         ◇◇◇


 狼がいた場所。


「血」


 確認。


「でも」


 レント。


「量少ない」


「この足跡」


 俺。


 見る。


 狼。


 別方向から来ている。


「捕虜を襲ったとは限らない」


「よかった……」


 ミナ。


 少し安心。


 さらに。


 近く。


「これ」


 木の実。


 食べた跡。


《採取された森の木の実》


「食料にした?」


「多分」


《クエスト進行度:35%》


「まだ進んでる」


         ◇◇◇


 森。


 奥。


 地形。


 少しずつ険しくなる。


「この辺、マップ埋まってない」


 カイト。


「未探索?」


「俺は初めて」


 ミナたちも。


 同じ。


《未踏区域へ入りました》


《シズナ南西林・深部》


「推奨レベルは?」


《推奨Lv:5~8》


「ちょっと上がった」


「俺たちギリギリ?」


「無理なら戻る」


「ジョウゴさんがちゃんと撤退を考えてる……」


「俺を何だと思ってる」


「変な剣士」


「掲示板の呼び方やめろ」


         ◇◇◇


「足跡」


 まだある。


 ただ。


「歩幅が狭くなってる」


「疲れてる?」


「多分」


 逃走。


 森。


 食料もほとんどない。


「早く見つけたいな」


 その時。


 ポーン。


《《観察Lv.1》の熟練度が上昇しました》


「観察?」


「また技能増えました?」


「前から少し使ってた」


 地面。


 見る。


 足跡。


 以前より。


 少し情報が増えた。


《小型人型種の足跡》


《歩行状態:不安定》


《経過時間:推定半日以内》


「半日以内」


「近い!」


 走ろう。


 いや。


「待って」


「?」


「魔物に気を付けながら」


「そうですね」


 急ぐ。


 でも。


 周囲を見る。


         ◇◇◇


 しばらく。


 小川。


「足跡消えた」


 水。


 向こう岸。


「渡った?」


「多分」


 探す。


「ない」


「こっちも」


「上流?」


「下流?」


 困った。


 その時。


「…………」


 俺はしゃがむ。


「何かあります?」


 川辺。


 泥。


 細い跡。


「手?」


 人が。


 ここへ手をついたような。


「向こう岸じゃない」


「え?」


「川沿いに進んだ」


 少し。


 下流。


「ほら」


 泥。


 また。


 小さな足跡。


《痕跡を発見しました》


《クエスト進行度:50%》


「正解!」


 カイト。


「ジョウゴ、お前探偵になれるぞ」


「ただ見てるだけ」


「それが普通じゃないって昨日言われたんでしょう?」


 ミナ。


「CROSS社の話を蒸し返すな」


         ◇◇◇


 川沿い。


 進む。


 そして。


「……煙?」


 レント。


 遠く。


 薄い。


 煙。


「焚き火?」


「誰かいる」


 俺たち。


 慎重に。


 近づく。


 岩。


 その陰。


 小さな。


 焚き火。


「火を起こせたのか?」


 そして。


 その隣。


「…………」


 誰か。


 いる。


 小さい。


 フード。


 青い布。


 膝を抱えて。


 眠っている。


《???》


「見つけた」


 ミナ。


 声。


 小さい。


《クエスト進行度:75%》


「まだ終わってない」


「生存確認かな」


 近づく。


 俺は。


 刀から手を離す。


「おーい」


 反応。


 ない。


「大丈夫か?」


 もう一歩。


「……っ!」


 突然。


 人影。


 起きる。


「来るな!」


「!」


 声。


 子供。


 そして。


 手。


 小さな。


 ナイフ。


「来るな!」


 震えている。


「分かった」


 俺。


 止まる。


「近づかない」


「…………」


 フードの奥。


 目。


 こちらを見る。


「ゴブリン……?」


「違う」


「人間……?」


「俺は人間」


 ミナ。


「私はエルフです」


「なんでそこ細かく言うの?」


「だって私エルフですから!」


 子供。


「…………」


 少し。


 困惑。


 よかった。


 恐怖一色ではなくなった。


         ◇◇◇


「名前は?」


「…………」


「言いたくなければいい」


 俺は地面へ座る。


「ジョウゴさん?」


「立ってると怖いだろ」


 武器。


 刀。


 鞘ごと。


 腰から外す。


 横。


 置く。


「ほら」


「…………」


「何もしない」


 子供。


 まだナイフ。


 でも。


 少し下がった。


「俺はジョウゴ」


 自分。


 指。


「あっちはミナ」


「こんにちは」


「盾持ってるのがカイト」


「よろしく」


「弓がレント」


「どうも」


「お前は?」


 沈黙。


 長い。


 やがて。


「……ルク」


「ルク?」


 小さく。


 頷く。


《NPC情報が更新されました》


《ルク》


《種族:???》


「種族?」


 表示。


 隠れている。


「ジョウゴさん」


「今はいい」


 聞かない。


         ◇◇◇


「ゴブリンに捕まってた?」


 ルク。


 身体。


 震える。


「…………」


 頷く。


「逃げた?」


「鐘が……」


「鐘?」


「遠くで、大きい音」


 シズナ。


 防衛戦。


「あいつら、みんな出ていった」


 ゴブリン軍勢。


「だから逃げた」


「地下の穴から?」


「うん」


「一人?」


 沈黙。


 そして。


「……うん」


 ミナ。


 少し悲しそうな顔。


「家は?」


「…………」


「分からない?」


 ルク。


 首。


 横。


「ない」


「ない?」


「村」


 小さな声。


「なくなった」


 空気。


 変わる。


「ゴブリンに?」


 頷く。


 そういうことか。


         ◇◇◇


《クエスト情報が更新されました》


《消えた捕虜》


《対象NPC:ルク》


《ルクを安全な場所まで護衛してください》


《推奨目的地:シズナ》


「シズナまで連れて帰ればいい」


「ジョウゴさん」


 ミナ。


「でも」


 ルク。


 俺たちを警戒している。


「ルク」


「……何」


「シズナって街知ってる?」


「知らない」


「安全な街」


「…………」


「宿もある」


「…………」


「飯もある」


 ピクッ。


「お腹空いてる?」


「空いてない」


 ぐぅぅぅぅ。


「…………」


「…………」


 カイト。


 顔。


 逸らす。


 レント。


 口元。


 押さえる。


 ミナ。


 笑わないように耐えている。


 俺。


「空いてるな」


「空いてない!」


「分かった」


 アイテム。


 パン。


「食べる?」


「…………」


「置くぞ」


 地面。


 パン。


 少し離れる。


 ルク。


 見る。


 俺。


 見る。


 パン。


 見る。


「毒ない?」


「ない」


「本当に?」


「俺も食べる」


 別のパン。


 一口。


「ほら」


 もぐ。


「…………」


 ルク。


 ゆっくり。


 近づく。


 パン。


 取る。


 匂い。


 嗅ぐ。


 一口。


「…………!」


 食べる。


 速い。


「ゆっくり食え」


「……うん」


 ミナ。


 小さく。


「よかった」


         ◇◇◇


 食事。


 水。


 少し。


 落ち着く。


「歩ける?」


「歩ける」


 立つ。


 ふらっ。


「危なっ」


 俺。


 反射。


 支える。


「!」


 ルク。


 びくっ。


「ごめん」


 すぐ。


 離す。


「…………」


「無理そうだな」


「歩ける!」


「意地張るな」


「歩ける!」


 一歩。


 ふら。


「…………」


「背負う?」


「嫌」


「カイト」


「なんで俺!?」


「盾役」


「関係ない!」


 ルク。


 少し。


 笑った。


「…………」


「あ」


 ミナ。


「笑った」


「笑ってない!」


 子供らしい。


 少し。


 安心した。


         ◇◇◇


「じゃあ」


 俺。


 しゃがむ。


「疲れたら言え」


「……うん」


「シズナへ帰ろう」


 その時。


 レント。


「待て」


「?」


 弓。


 森。


「囲まれてる」


 ガサ。


 ガサガサ。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


《フォレストウルフ Lv.6》


《フォレストウルフ Lv.6》


《フォレストウルフ Lv.7》


《フォレストウルフ Lv.7》


「四体」


「深部個体ですね」


 ミナ。


 杖。


「ルク」


「……!」


「俺たちの後ろ」


 刀。


 拾う。


 腰。


「カイト」


「任せろ」


 盾。


 前。


「ミナ」


「準備できてます」


「レント」


「右二体見る」


「俺は左」


 抜刀。


 スッ――。


 ルク。


 後ろ。


「……戦うの?」


「ああ」


「勝てる?」


「勝つ」


「なんで?」


 なんで。


 と言われても。


「お前を街まで連れて帰るって決めたから」


「…………」


「だから」


 構える。


「ここは通す」


         ◇◇◇


「ガウッ!」


 一体目。


 突進。


「速い!」


 カイト。


 盾。


 ガンッ!


 二体目。


 横。


「ジョウゴさん!」


「見えてる!」


 牙。


 半歩。


 避ける。


 刀。


「ふっ!」


 ザンッ!


《Critical Hit!》


 だが。


 Lv.6。


 一撃では落ちない。


「硬い」


 三体目。


 レントへ。


「《パワーショット》!」


 矢。


 肩。


「ミナ!」


「《ファイアボール》!」


 ドンッ!


 一体。


 吹き飛ぶ。


「ガウ!」


 四体目。


 カイトを避け。


「ルク!」


「!」


 狙い。


 子供。


「させるか!」


 踏み込む。


 間。


 狼。


 跳躍。


 牙。


「ジョウゴ!」


 刀。


 正面。


 受けない。


 身体。


 外。


 左手。


 狼の前脚。


 触れる。


「こっち」


 勢い。


 利用。


 方向。


 変える。


「なっ!?」


 カイト。


 狼。


 地面。


 転がる。


《体勢崩し成功》


《《崩しLv.1》発動》


「今!」


 刀。


 首元。


 ザンッ!


《Critical Hit!》


《Weak Point!》


《フォレストウルフを討伐しました》


「一体!」


         ◇◇◇


 残り三。


「ジョウゴさん!」


「大丈夫!」


 次。


 一体。


 カイト。


「《シールドバッシュ》!」


 ドンッ!


「レント!」


「任せろ!」


 矢。


 ドスッ!


《フォレストウルフを討伐しました》


 残り二。


 ミナ。


「《ファイアアロー》!」


 一体。


 炎。


 俺。


 追う。


「ふっ!」


 一閃。


《Critical Hit!》


《フォレストウルフを討伐しました》


 最後。


 Lv.7。


「ガルルル……」


 低い。


 姿勢。


「来る」


 俺。


 見る。


 肩。


 脚。


 目。


《見切りLv.1》


「右」


 狼。


 右へ。


「やっぱり」


「なんで分かるんです!?」


「前脚」


「説明は後!」


 カイト。


 盾。


 進路。


 塞ぐ。


「うおっ!」


 ガン!


 狼。


 跳ね返る。


「ジョウゴ!」


「ああ!」


 刀。


 下段。


 踏み込む。


 斬り上げ。


 ザンッ!


《Critical Hit!》


 ミナ。


「《ファイアアロー》!」


 ドンッ!


 レント。


「《パワーショット》!」


 ドスッ!


《フォレストウルフを討伐しました》


「終わり」


 納刀。


 カチン。


         ◇◇◇


「…………」


 ルク。


 俺を見る。


「どうした?」


「強い」


「そう?」


 三人。


「「「強い」」」


「お前らまで」


「自覚してください!」


「でも四人で倒しただろ」


「そういうところですよ」


「何が?」


「もういいです」


 ルク。


「ジョウゴ」


「ん?」


「剣士?」


「ああ」


「その剣」


 刀。


「変」


「…………」


 カイト。


 吹き出す。


「ハハハハ!」


「おい!」


「子供にも言われてる!」


「変じゃない。刀だ」


「カタナ?」


「そう」


 ルク。


「変な剣」


「刀!」


「変なカタナ」


「悪化した!」


 ミナ。


 笑う。


 レントも。


「…………」


 でも。


 ルク。


 さっきより。


 ずっと。


 普通の顔。


 それなら。


「まあいいか」


         ◇◇◇


 帰り道。


 ルク。


 最初。


 歩いた。


 十分。


 二十分。


「…………」


 遅くなる。


「ルク」


「歩ける」


「聞いてない」


「歩ける」


「分かった」


 五分。


 ふら。


「はい終了」


「え?」


 俺。


 しゃがむ。


「乗れ」


「嫌」


「じゃあ置いていく」


「!」


「ジョウゴさん!」


 ミナ。


「冗談」


「冗談に聞こえません!」


 ルク。


「…………」


 しばらく。


 俺の背中を見る。


「本当に?」


「何が?」


「乗っていい?」


「ああ」


「重いよ?」


「子供一人くらい大丈夫」


「子供じゃない」


「じゃあ何歳?」


「十二」


「子供だな」


「子供じゃない!」


「はいはい」


「はいは一回!」


「はい」


「…………」


 背中。


 ルク。


 乗る。


「軽い」


「重いって言った」


「飯食え」


「食べてる」


「もっと」


「……うん」


 腕。


 首。


 回る。


         ◇◇◇


「ジョウゴさん」


「何?」


 ミナ。


 隣。


「似合ってます」


「何が?」


「子供背負って刀」


「どういう組み合わせだよ」


「旅人っぽい」


「銀行員だけど」


「今は剣士です」


「ああ」


 そうだった。


 AWO。


 ここでは。


 俺はジョウゴ。


 剣士。


「…………」


 背中。


 静か。


「ルク?」


 返事。


 ない。


「寝てます」


 ミナ。


「早いな」


「安心したんじゃないですか?」


「そうならいいけど」


         ◇◇◇


《シズナ》


「帰ってきた」


 南門。


 衛兵。


「ジョウゴ?」


「保護した」


「その子か!」


 ギルドへ。


         ◇◇◇


「ルク!」


 受付嬢エリナさん。


「名前は?」


「ルク」


 俺の背中。


 起きた。


「ここ……?」


「シズナ」


「人いっぱい」


「大丈夫」


 降ろす。


 でも。


 ルク。


 俺の服。


 掴んだ。


「…………」


 怖いか。


「エリナさん」


「はい」


「この子」


「こちらで保護します」


「宿は?」


「まず診療所で状態確認。その後、身元調査を行います」


「分かった」


 ルク。


「ジョウゴ」


「ん?」


「どこ行くの?」


「今日は宿」


「……また来る?」


 その質問。


「もちろん」


 即答。


「明日も来る」


「本当?」


「ああ」


「約束?」


「約束」


 ルク。


 ようやく。


 服から手を離した。


《クエスト達成》


《消えた捕虜》


《NPC:ルクをシズナへ護送しました》


《報酬:500G》


《パーティー友好度上昇》


《シズナ冒険者ギルド評価上昇》


 そして。


《特殊条件達成》


《NPC:ルクとの友好関係が形成されました》


「友好関係?」


 ミナ。


「出ました?」


「ああ」


「私には出てません」


「え」


 カイト。


「俺も」


 レント。


「俺もだ」


 三人。


 俺を見る。


「何?」


「またジョウゴだけ」


「なんで?」


「背負ったからじゃない?」


「そんな理由?」


         ◇◇◇


 その時。


 エリナさん。


「ジョウゴさん」


「はい」


「一つ気になることが」


「?」


 ルク。


 見る。


「この子」


「はい」


「人間ではありません」


「え?」


 ミナ。


 ルクを見る。


「じゃあ……」


 エリナさん。


「耳を」


 ルク。


 フード。


「……嫌」


「無理に見せなくていい」


 俺。


 言う。


「でも」


 ルク。


 俺を見る。


「ジョウゴなら」


「?」


 ゆっくり。


 フード。


 外す。


 現れたのは。


 髪。


 そして。


 人間より。


 僅かに長い。


 耳。


「エルフ?」


 ミナ。


 しかし。


「違います」


 エリナさん。


「エルフにしては耳が短い」


「じゃあ」


《NPC情報が更新されました》


《ルク》


《種族:ハーフエルフ》


「ハーフエルフ」


 人間。


 エルフ。


 その間。


「だから隠してた?」


 ルク。


 小さく。


 頷く。


「村では」


「?」


「耳、隠せって」


「なんで?」


「…………」


 言わない。


「分かった」


 今は。


 聞かない。


「話したくなったら教えて」


「……うん」


 でも。


 俺は知らなかった。


 この世界。


 人間。


 エルフ。


 獣人。


 ドワーフ。


 様々な種族が存在するAWO。


 その中で。


 ハーフエルフという存在が。


 決して。


 単純な立場ではないことを。


         ◇◇◇


 ログアウト前。


 銀麦亭。


「マリアさん」


「あいよ!」


「腹減った」


「今日もかい!」


「森歩いたから」


「おすすめでいい?」


「お願いします」


 ミナ。


 カイト。


 レント。


 いつもの席。


「明日」


 ミナ。


「ルクに会いに行きます?」


「ああ」


「それから?」


「分からない」


 クエスト。


 今。


 なし。


「適当に街歩く?」


「配信は?」


「契約」


「どうするんです?」


 俺。


 少し。


 考える。


「受けようと思う」


 三人。


 止まる。


「え?」


「CROSS社」


「正式に?」


「ああ」


「配信する!?」


 カイト。


 声。


 大きい。


「多分」


「多分!?」


「まだ最終手続きあるから」


 ミナ。


 嬉しそう。


「じゃあ、もうすぐですね」


「そうなるな」


「初配信何する?」


 レント。


「普通に遊ぶ」


「企画は?」


「しない」


「ボス攻略?」


「しない」


「ダンジョン?」


「予定なし」


「じゃあ何するんだ?」


「その時やりたいこと」


 三人。


 顔。


 見合わせる。


「それでいいんですか?」


「CROSS社がそれでいいって言った」


「……本当にジョウゴさん専用契約みたい」


「知らん」


         ◇◇◇


 現実。


 ログアウト。


 俺――上塚賢吾は。


 CROSS社。


 契約資料。


 最後。


 確認。


「副業扱いにならない範囲で収益化は保留」


 個人情報。


 問題なし。


 配信頻度。


 自由。


 ゲーム内行動。


 自由。


 契約解除。


 条件。


 確認。


「よし」


《契約内容に同意》


 一瞬。


 指。


 止まる。


「…………」


 配信者。


 俺が?


 銀行員。


 剣道。


 合気道。


 古流剣術。


 それだけだった生活に。


 AWO。


 そして。


 配信。


「人生分からないな」


 タップ。


《同意》


《CROSS社へ送信しました》


 数秒。


《受付完了》


《正式確認後、配信システムを開放します》


「送っちゃった」


 まあ。


 いいか。


         ◇◇◇


 CROSS社。


「来ました!」


「ジョウゴさん、同意確認!」


 神崎。


 画面。


「収益化は?」


「保留です」


「想定通り」


「配信頻度」


「本人判断」


「企画」


「任意」


「配信スタイル」


「完全自由」


「では」


 神崎。


 笑う。


「準備を始めましょう」


《プレイヤー:ジョウゴ》


《CROSS配信支援システム》


《利用許可処理》


「初回配信日は?」


「本人へ選んでもらいます」


「告知は?」


「許可を取ってから」


「分かりました」


 そして。


 担当スタッフの一人が。


 何気なく言った。


「初配信、何するんでしょうね」


 神崎。


 少し考え。


「多分」


「はい」


「私たちにも分かりません」


「ですよね」


「だから」


 モニター。


 映る。


 刀を腰に差し。


 ハーフエルフの少年を背負って森を歩くジョウゴ。


「面白いんでしょうね」


         ◇◇◇


 翌朝。


 AWO。


 シズナ。


 冒険者ギルド診療所。


 ルクは。


 窓から街を見ていた。


「ジョウゴ……」


 昨日。


 約束した。


 また来る。


 その言葉。


 少年は。


 まだ。


 完全には信じられていなかった。


 これまで。


 何度も。


 置いていかれたから。


 だから。


 知らなかった。


 数時間後。


「ルク」


 約束通り。


 あの変な刀を持った剣士が。


 本当に。


 診療所の扉を開けることを――。

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