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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第一章 AWO開始編

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22/130

第22話 ゴブリン集落跡地

《Welcome Back》


《Another World Online》


 視界を包んでいた光が消える。


 次に見えたのは、すっかり見慣れてきた木造の天井だった。


「さて」


 俺――ジョウゴは、《銀麦亭》七号室のベッドから起き上がった。


 昨日はCROSS社との面談。


 配信については、かなり前向きに考えている。


 ただし。


「契約内容をちゃんと確認してからだな」


 企業との契約を勢いで決めるほど、俺も子供ではない。


 それに今日は別の予定がある。


《エリア情報》


《新規探索区域:ゴブリン集落跡地》


《推奨Lv:4~》


 シズナ防衛戦。


 その原因となったゴブリンたちの集落。


 防衛戦で主力を失ったことで、ようやく本格的に探索できるようになったらしい。


「何が残ってるんだろうな」


 宝箱?


 素材?


 それとも何か別のものか。


 AWOの場合、単純に宝箱だけ置いてあるとは思えない。


「行ってみれば分かるか」


 装備を確認する。


《軽革戦闘衣》


《鉄刀・試作二号》


 試作二号はバルガによる応急調整済み。


 ゴブリンチーフの斧を受けた際の歪みも直されている。


《耐久値:210/210》


「今度は斧を受けるなって怒られたけど」


 なるべく守ろう。


 なるべく。


         ◇◇◇


「ジョウゴさん!」


 銀麦亭を出ると。


 やっぱりいた。


 ミナ。


 カイト。


 レント。


「おはよう」


「今日はちゃんと刀ありますね!」


「俺の確認より先に武器を見るな」


「前回、防衛戦直前に預けてましたから」


「もう忘れてくれ」


「無理!」


 カイトが笑う。


「今日は集落跡地だろ?」


「ああ」


「準備は?」


「できてる」


 ミナは杖。


 カイトは新しい盾。


 レントも新調した弓。


「みんな装備変わったな」


「防衛戦の報酬使いましたからね」


「カイト、その盾は?」


《鉄縁のラウンドシールド》


「防御力上がったぜ!」


「重くない?」


「前より重い」


「ちゃんと扱える?」


「練習した!」


「なら大丈夫か」


「なんでジョウゴに装備チェックされてるんだ、俺」


「盾役だからじゃない?」


 ミナが笑う。


「じゃあ行こう」


「おー!」


         ◇◇◇


《シズナ南西林》


 防衛戦前。


 何度も来た森。


 だが。


「静かですね」


「ああ」


 以前より魔物が少ない。


 防衛戦でゴブリン勢力が大きく減少した影響らしい。


《周辺危険度:低下》


「こういうところまで変わるんだな」


 レントが周囲を見る。


「イベント終わったら元通り、じゃないんですね」


「AWOの売りなんだろうな」


 プレイヤーの行動。


 NPCの行動。


 モンスターの動き。


 それによって世界そのものが変化する。


「だから防衛戦で街が壊れてたら……」


 ミナが呟く。


「壊れたままだったかもしれないな」


「怖っ」


「でも」


 俺は木々の向こうを見る。


「その方が世界っぽい」


 成功しても。


 失敗しても。


 結果が残る。


 ゲームとしては面倒かもしれない。


 でも。


 俺は嫌いじゃない。


         ◇◇◇


「いた」


 レントが小声で言う。


 前方。


《ゴブリン残党 Lv.4》


 二体。


 木陰。


 こちらには気づいていない。


「どうする?」


 カイトが聞く。


「普通に行こう」


「普通って?」


「カイト前」


「了解」


「レント、一体」


「ああ」


「ミナは待機」


「はい」


「俺がもう一体」


「……本当に普通だ」


「いつも何だと思ってる?」


 三人が黙った。


「なんで黙るんだよ」


         ◇◇◇


 レント。


 弓。


「行くぞ」


 ヒュッ!


 矢。


 ドスッ!


「ギャ!?」


 一体。


 肩。


 もう一体。


「ギャア!」


 こちらへ。


「カイト!」


「任せろ!」


 盾。


 ガンッ!


 ゴブリンの棍棒を受ける。


「前より安定してるな」


「盾変えたからな!」


「じゃあ」


 俺も。


 抜刀。


 スッ――。


 試作二号。


 やっぱり。


 いい。


「ふっ!」


 一歩。


 斬る。


 ザンッ!


《Critical Hit!》


《斬撃適正判定:Perfect》


 ゴブリン。


 光。


「一撃?」


「うわ」


 カイトが俺を見る。


「何?」


「試作二号強くない?」


「武器性能も上がってるからな」


「それだけですかねぇ」


 ミナ。


「なんだよ」


「なんでもありません」


 もう一体。


 カイトが止め。


 レント。


 矢。


 ミナ。


「《ファイアアロー》!」


 撃破。


《ゴブリン残党を討伐しました》


「連携も慣れてきたな」


「防衛戦のおかげですね」


「人数多い戦闘の後だと二体が少なく感じる」


「油断はするなよ」


「ジョウゴが言う?」


「俺が言う」


         ◇◇◇


 さらに森を進む。


 やがて。


 木々が途切れた。


「ここか」


《ゴブリン集落跡地》


 以前。


 偵察した場所。


 だが。


「……ひどいな」


 防衛戦前とは全く違う。


 柵。


 壊れている。


 粗末な小屋。


 半分崩壊。


 中央。


 大きな焚き火跡。


 武器。


 盾。


 食器。


 生活用品。


 あちこちに散乱している。


「本当に集落だったんですね」


 ミナが静かに言う。


「ああ」


 モンスターのスポーン地点。


 そんな雰囲気ではない。


「ここで生活してた」


 カイト。


「ゴブリンが?」


「多分」


 俺は地面を見る。


 足跡。


 大量。


 南東方向。


 シズナへ。


「ここから防衛戦へ向かったんだな」


「それで帰ってこなかった」


 少し。


 妙な気分になる。


 敵だった。


 街を襲った。


 倒さなければシズナが危なかった。


 それでも。


「ゲームなのに変な感じだな」


 俺が呟くと。


「分かります」


 ミナも頷いた。


         ◇◇◇


《探索クエストが発生しました》


《ゴブリン集落跡地の調査》


《集落に残された手掛かりを探索してください》


「やっぱり何かある」


「宝探し!」


 カイト。


「手掛かりって書いてあるだろ」


「宝もあるかもしれない!」


「否定はしない」


 四人。


 分かれる。


 ただし。


「見える範囲な」


「了解!」


 小屋。


 倉庫。


 焚き火。


 武器置き場。


 調べる。


         ◇◇◇


「ジョウゴさん!」


「何かあった?」


 ミナ。


 小さな小屋。


「これ」


 木箱。


《粗末な薬草箱》


「薬?」


「回復草ですね」


「ゴブリンも使うのか」


「みたいです」


 箱の横。


 布。


 器。


「生活感すごいな」


「ですよね」


 その時。


「こっちも!」


 レント。


 倉庫。


 中。


「鉱石?」


 鉄鉱石。


 銅鉱石。


 そして。


「高密度鉄鉱石」


 北西鉱山で見つけたものと同じ。


「なんでゴブリン集落に?」


「鉱山のコボルトと関係ある?」


「分からない」


 だが。


《探索進行度:25%》


「当たりらしい」


         ◇◇◇


「おーい!」


 今度はカイト。


「宝箱!」


「本当にあったのか」


「ほら!」


 小屋の奥。


 木箱。


《ゴブリンチーフの戦利品箱》


「開けるぞ!」


「待て」


「なんで!?」


「罠」


「…………」


「ありそうだろ」


 四人。


 箱を見る。


「レント」


「俺?」


「罠解除技能ある?」


「ない」


「ミナ」


「ないです」


「カイト」


「あるように見える?」


「ないな」


「ジョウゴさんは?」


「ない」


「全員駄目じゃないですか!」


 さて。


 どうする。


「棒で開ける?」


「原始的!」


「でも安全」


 周囲。


 長い棒。


 拾う。


「離れて」


 蓋。


 棒を引っ掛ける。


「行くぞ」


 ぐっ。


 パカッ。


 カチッ。


「カチ?」


 ヒュン!


 箱の横。


 小さな矢。


 壁。


 カンッ!


「「「…………」」」


「罠あった」


「ジョウゴぉ!」


 カイト。


「なんで分かった!?」


「ゲームの宝箱って罠あるだろ」


「それだけ!?」


「それだけ」


 ミナが頭を抱える。


「また変なことしてる……」


「今回は普通だろ!」


「棒で宝箱開けるプレイヤー、初めて見ましたよ!」


         ◇◇◇


《簡易罠を回避しました》


《罠解除技能を所持していないため技能経験値は獲得できません》


「ですよね」


 箱。


 中。


《ゴブリンチーフの大銀貨》


《魔石×3》


《粗製鉄インゴット×4》


《獣皮×6》


《古びた地図》


「地図?」


 俺は取り出す。


「何の地図だ?」


 広げる。


 シズナ。


 南西林。


 北西鉱山。


 そして。


 もっと西。


「ここ」


 印。


 赤。


《未登録地点》


「また増えた」


「絶対何かありますね!」


 ミナ。


《探索進行度:50%》


         ◇◇◇


 さらに。


 中央。


 ゴブリンチーフが使っていたらしい大きな小屋。


「ここが最後かな」


 中。


 椅子。


 机。


 武器。


「王様みたい」


「チーフの家だからな」


 壁。


「ん?」


 俺は止まる。


「どうした?」


「これ」


 壁に。


 模様。


 いや。


「文字?」


 読めない。


《未知文字》


「AWOの文字?」


「俺たち普段は自動翻訳されてますよね」


 ミナ。


「じゃあ翻訳できない?」


「特殊な文字か」


 その下。


 絵。


 ゴブリン。


 森。


 街。


 そして。


 大きな。


 黒い何か。


「……何だこれ」


 人型。


 なのか?


 黒い。


 その前に。


 ゴブリンたちが跪いている。


「チーフより大きい」


 レント。


「ボス?」


「分からない」


 触れる。


 ポーン。


《特殊情報を発見しました》


《ゴブリン集落の壁画》


《現在の言語技能では解読できません》


《シズナ冒険者ギルドへ報告可能です》


《探索進行度:75%》


「まだ75」


「あと一個ですね」


         ◇◇◇


 小屋。


 探す。


「机?」


 引き出し。


 空。


 床。


「何もないな」


 その時。


 カイト。


「ジョウゴ」


「ん?」


「この床、変じゃね?」


 見る。


 一枚。


 色が違う。


「地下?」


「ありそう」


 四人で動かす。


 ゴゴッ。


「重っ!」


 下。


 階段。


「…………」


「ありますね」


「あるな」


《隠し地下室を発見しました》


《探索進行度:100%》


《ゴブリン集落跡地の調査を達成しました》


「終わった」


「でも」


 ミナ。


 階段を見る。


「下があります」


「行く?」


 カイト。


 俺。


「もちろん」


         ◇◇◇


 ランタン。


 地下。


 狭い。


「気を付けて」


「はい」


 階段。


 下。


 部屋。


「これは……」


 牢屋?


 木製の檻。


 三つ。


「何か閉じ込めてた?」


 中。


 空。


 でも。


 一つ。


「布」


 小さい。


 人間用?


 いや。


「子供?」


 ミナ。


 表情。


 変わる。


 床。


 木の器。


 水。


 古い。


「ゴブリンが誰か捕まえてたのか」


「可能性高いな」


 その時。


「ジョウゴ」


 レント。


 奥。


「足跡」


 小さい。


 地下から。


 別の通路。


「外へ続いてる?」


 壁。


 穴。


 小柄な存在なら通れそう。


《新たな痕跡を発見しました》


《小さな足跡》


《ゴブリン集落壊滅前後に何者かが脱出した可能性があります》


「生きてる?」


「かもしれない」


 ミナ。


「探しません?」


「ああ」


 即答。


「でも」


 俺は時刻を見る。


 現実。


 もう遅い。


「今日は時間が足りない」


「ジョウゴさん仕事ですもんね」


「うん」


「じゃあ」


 カイト。


「ギルドへ報告」


「明日続き」


「それで行こう」


         ◇◇◇


《冒険者ギルド》


「これは……」


 受付嬢エリナさん。


 古びた地図。


 壁画情報。


 そして。


 地下牢。


「ゴブリンが捕虜を?」


「多分」


「足跡もありました」


「大きさは?」


「子供くらい」


 エリナさん。


 表情が真剣になる。


「分かりました」


《ゴブリン集落跡地の調査》


《クエスト達成》


《報酬:350G》


《シズナ周辺情報が更新されました》


 さらに。


《新規クエスト》


《消えた捕虜》


《小さな足跡の主を捜索してください》


《推奨Lv:4~》


《制限時間:なし》


「明日ですね」


 ミナ。


「ああ」


「寄り道増えたな」


 カイト。


「AWOってこういうゲームなんだろ」


 一つ終わる。


 すると。


 また一つ。


 何かが見つかる。


「悪くない」


         ◇◇◇


 ログアウト前。


 銀麦亭。


「マリアさん」


「あいよ」


「明日、また森行く」


「またかい?」


「人を探す」


「人?」


「多分子供」


 マリアさん。


 手が止まる。


「……見つけておやり」


「ああ」


「こういう時だけ頼もしいねぇ」


「こういう時だけ?」


「普段は変なことばっかりしてるからね!」


「ひどい」


 周囲。


 笑い。


 ミナ。


 カイト。


 レント。


「否定できない」


「お前らまで!」


         ◇◇◇


 七号室。


「さて」


 ログアウト。


 その前。


 メニュー。


《CROSS社》


《契約関連資料》


「…………」


 確認。


 条件。


 配信の自由。


 仕事優先。


 収益化は保留可能。


 個人情報保護。


 ゲーム内名を基本として活動。


「問題なさそうだな」


 あとは。


 細かい部分を確認して。


 正式に返事。


「配信か」


 明日。


 森。


 消えた捕虜。


 もし配信開始が間に合えば。


 初配信が人探しになる可能性もある。


「……ボス戦とかじゃなくて?」


 まあ。


 俺らしいか。


《Logout》


         ◇◇◇


 同じ頃。


 AWO公式掲示板。



---


【シズナ鯖】防衛戦後の情報交換スレ Part8


184:名無しの冒険者

ゴブリン集落跡地解放されたぞ。


185:名無しの冒険者

行った。


186:名無しの冒険者

なんかあった?


187:名無しの冒険者

素材と残党。


188:名無しの冒険者

宝箱あったけど罠食らったw


189:名無しの冒険者

俺もw


190:名無しの冒険者

毒矢だった。


191:名無しの冒険者

解除技能取れってことか。


192:名無しの冒険者

ジョウゴどうした?


193:名無しの冒険者

なんでジョウゴ基準なんだよ。


194:名無しの冒険者

あいつなら変な開け方してそう。


195:名無しの冒険者

現地いたけど棒で開けてたぞ。


196:名無しの冒険者

草。


197:名無しの冒険者

原始人かな?


198:名無しの冒険者

しかも罠回避成功。


199:名無しの冒険者

草。


200:名無しの冒険者

罠解除スキル「長い棒」。


201:名無しの冒険者

実装されてねぇよwww


202:名無しの冒険者

ところでジョウゴ配信まだ?


203:名無しの冒険者

待ってる。


204:名無しの冒険者

一人称視点で見たい。


205:名無しの冒険者

刀の戦闘見たい。


206:名無しの冒険者

NPCとの会話も見たい。


207:名無しの冒険者

棒で宝箱開けるところも見たい。


208:名無しの冒険者

そこ需要あるのかよ。



---


         ◇◇◇


 そして。


 CROSS社。


「ジョウゴさんの契約資料閲覧を確認」


「返答は?」


「まだです」


「急かさないでください」


「もちろん」


 神崎はモニターを見る。


 そこには。


 今日のジョウゴの行動記録。


 集落探索。


 壁画。


 地下牢。


 小さな足跡。


「次は救出クエストですか」


「配信開始まで待ってもらいます?」


「駄目です」


 即答。


「彼のプレイへ介入しない」


「でしたね」


「配信のために冒険を止めさせたら」


 神崎は笑う。


「最初に約束したことを、こちらから破ることになります」


「確かに」


「それに」


 画面。


 集落跡地で立ち止まるジョウゴ。


『ゲームなのに変な感じだな』


 その言葉。


「こういうところを見てもらいたいんです」


「戦闘だけじゃなく?」


「ええ」


 Another World Online。


 もう一つの世界。


 そこで。


 ジョウゴは戦うだけではない。


 歩き。


 食べ。


 人と話し。


 時には寄り道し。


 誰かを助ける。


「彼が配信者になるんじゃない」


 神崎は呟く。


「彼の第二の生活に」


 一拍。


「視聴者が遊びに来るんです」


 そして翌日。


 ジョウゴたちはまだ知らない。


 ゴブリン集落から逃げ出した。


 小さな足跡。


 その先で待つ出会いが。


 シズナで始まった彼の冒険を。


 さらに広いAWOの世界へ繋げていくことを――。

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― 新着の感想 ―
AWoのコンセプトを考えれば、何をするにも自由なんだから、ジョウゴのプレイスタイルはごく普通に思えます。 逆に、カイト、ミナ、レント達の方が非常識ではないでしょうか? 例えば、宝箱の罠! 普通あるでし…
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