↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第一章 AWO開始編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/133

第20話 CROSS社からの公式メッセージ

「……ん?」


 《銀麦亭》で夕食を終えた後。


 俺――ジョウゴは、ふとメニュー画面の端に点滅している表示へ気づいた。


《公式メッセージが届いています》


《送信元:CROSS社》


「CROSS社?」


 聞き覚えがある。


 確か。


「ジョウゴさん?」


「ん?」


 向かいに座っていたミナが首を傾げる。


「どうしました?」


「なんか公式メッセージ来てる」


「公式?」


 カイトとレントも反応する。


「運営から?」


「いや」


 表示を見せる。


《送信元:CROSS社》


「「「えっ」」」


 三人の声が重なった。


「何?」


 なんでそんな反応なんだ。


「来た……」


 ミナが小さく呟く。


「何が?」


「CROSS社ですよ!」


「それは見れば分かる」


「そうじゃなくて!」


 カイトが身を乗り出す。


「前に言っただろ!」


「何を?」


「VR配信とかイベント関係で有名な会社!」


「ああ」


 北西鉱山へ行く途中。


 そんな話をされた気がする。


「で?」


「『で?』じゃない!」


 また怒られた。


「とりあえず読んでみたら?」


 レントが冷静だ。


「それもそうだな」


 メッセージを開く。


---


《CROSS社 AWO配信事業部》


プレイヤー名:ジョウゴ様


突然のご連絡、失礼いたします。


弊社では現在、《Another World Online》における公式配信支援企画を進めております。


その中で、ジョウゴ様のプレイスタイルについて複数の映像・ゲーム内記録を拝見し、ぜひ一度お話を伺いたく、ご連絡いたしました。


本メッセージは契約を強制するものではありません。


まずは配信活動や映像企画へのご興味について、オンライン面談という形でお話しできればと考えております。


ご興味がございましたら、下記の《面談希望》よりご返信ください。


《面談希望》


《今回は辞退》


---


「…………」


「どうでした?」


 ミナ。


「面談してほしいって」


「やっぱり!」


 カイトが笑う。


「スカウトじゃん!」


「スカウトってほど大げさじゃないだろ」


「企業から公式メッセージ来てる時点で十分大げさだ!」


「配信かぁ」


 俺は少し考える。


         ◇◇◇


 正直。


 今まで配信をしようと思ったことはなかった。


 AWOを始めた理由も。


 有名になるためじゃない。


 金を稼ぐためでもない。


 剣と魔法の世界で。


 自分なりに生活してみたい。


 それだけだった。


「ジョウゴさん、興味ないんですか?」


「全くないわけじゃない」


「お?」


「ただ」


 俺は指を折る。


「仕事あるだろ」


「銀行」


「そう」


「配信って時間取られそうだろ」


「それはそうですね」


「それに」


「?」


「普通に遊びたい」


 三人。


 黙る。


「今まで通り?」


「今まで通り」


 街を歩く。


 依頼を受ける。


 NPCと話す。


 刀を作る。


 ゴブリンと戦う。


 猫を探す。


 そういうのを。


「配信のために変えたくない」


 レントが少し笑う。


「それ、逆にCROSS社が評価してるところかもな」


「どういう意味?」


「ジョウゴって」


 レントが言う。


「配信向けに何かしようとしてないだろ」


「ああ」


「でも動画が伸びてる」


「らしいな」


「それって珍しい」


 なるほど。


 意識していない行動が。


 勝手に面白がられている。


「面談だけならしてみたら?」


 ミナが言う。


「嫌なら断ればいいですし」


「それもそうか」


 カイトも頷く。


「話聞くだけ聞いてみろよ」


「うん」


 少し考えて。


《面談希望》


 押した。


《CROSS社へ返信しました》


「送った」


「おお!」


「なんでお前らが嬉しそうなんだ」


「だって面白くなりそうだから!」


「他人事だと思って」


 まあ。


 俺も少しだけ。


 興味が出てきた。


         ◇◇◇


 翌日。


 現実世界。


「上塚主任」


「何?」


「昨日のシズナ防衛戦、見ました?」


「参加してた」


「え?」


「いや」


 危ない。


 思わず言ってしまった。


「参加してた人の動画を見た」


「あー」


 後輩。


「ジョウゴって人、やばくないですか?」


「そうかな」


「チーフの攻撃読んでたじゃないですか!」


「動き見れば分かるんじゃない?」


「主任?」


「何?」


「ジョウゴと同じこと言ってますよ」


「…………」


 しまった。


「武術やってる人ってそういう感覚なんですか?」


「人による」


「主任もできそう」


「仕事しろ」


「はーい」


 後輩が去る。


 俺は心の中でため息。


「危ないな」


 ゲーム内名。


 現実名。


 今はまだ繋がっていない。


 わざわざ自分から言う必要もない。


         ◇◇◇


 昼休み。


 スマートフォン。


 AWO連携アプリ。


 通知。


《CROSS社より返信があります》


「早いな」


 開く。


《面談候補日時》


 複数。


 平日夜。


 休日。


「仕事終わりでいいか」


 明後日。


 午後八時三十分。


 選択。


《面談日時を確定しました》


《現実側オンライン面談》


「現実側なんだ」


 当然か。


 企業との話。


 ゲーム内だけで完結するわけではない。


「まあいい」


 昼休み終了。


 仕事へ戻る。


         ◇◇◇


 その夜。


《Welcome Back》


《Another World Online》


「さて」


 今日の目的。


 まず。


《シズナ防衛戦》


 報酬確認。


《基本参加報酬:300G》


《高貢献度報酬:500G》


《防衛評価Sボーナス:200G》


《称号獲得ボーナス:100G》


《合計:1100G》


「結構ある」


 今までで一番大きい。


「これなら装備色々買えるな」


 ただ。


「先にバルガ」


 試作二号。


 防衛戦中にチーフの巨大斧を受けた。


 耐久値。


《196/210》


 数字以上に。


 刀身へ負荷が掛かった可能性がある。


「見てもらおう」


         ◇◇◇


《鍛冶工房・バルガ》


 カラン。


「バルガ」


「おう!」


「刀」


「出せ!」


「はい」


 完全に診察みたいだ。


 バルガ。


 試作二号。


 見る。


 触る。


 叩く。


「…………」


「どう?」


「曲がってねぇ」


「よかった」


「刃も大きな欠けなし」


「おお」


「ただし」


「?」


「ここ」


 指。


 刀身。


「微妙に歪んでる」


「分かるの?」


「俺を誰だと思ってる」


「鍛冶師」


「そうだ!」


 バルガ。


 嬉しそう。


「でも」


「?」


「データは取れた」


「斧受けたから?」


「ああ」


「怒ってたくせに」


「怒るのと参考になるのは別だ!」


「職人だなぁ」


 バルガが火床を見る。


「高密度鉄だけじゃ足りねぇ」


「何が?」


「粘り」


「粘り?」


「硬いだけじゃ駄目だ」


 刀。


 説明。


「折れにくく」


「曲がりにくく」


「それでも斬れる」


「難しいな」


「だから面白ぇ」


 笑う。


「次の課題だ」


《特殊連続イベント》


《鍛冶師バルガと刀》


《第五段階:強さと粘り》


「もう第五段階」


《異なる性質を持つ素材について情報を集めてください》


「また採掘?」


「今度は決めてねぇ」


 バルガ。


「鉱石でもいい」


「魔物素材でもいい」


「他の職人に聞いてもいい」


「自分で探せと」


「そういうことだ」


「なるほど」


 自由だ。


 AWOらしい。


         ◇◇◇


「ジョウゴさん!」


 工房を出たところ。


 ミナたち。


「また待ってた?」


「今日は違います!」


「じゃあ何?」


「防衛戦の報酬!」


 カイトが嬉しそう。


「俺、新しい盾買う!」


「いいじゃん」


「ミナは?」


「杖を更新します!」


「レント」


「弓」


「みんな装備更新か」


「ジョウゴさんは?」


「刀あるしなぁ」


 買うもの。


「防具かな」


「やっと初心者防具卒業!?」


「そういえばずっとこれだな」


《初心者の革鎧》


 防衛戦。


 刀だけ目立って。


 防具は初心者。


「動画コメントでも言われてましたよ」


「何を?」


「刀と防具が合ってないって」


「知らん」


「見た目も大事ですよ!」


「性能優先」


「銀行員っぽい!」


「意味分からない」


         ◇◇◇


 防具屋。


《武具店・ガルド》


 初日に来た店。


「お」


 店主。


「兄ちゃん」


「覚えてた?」


「忘れるわけねぇだろ」


 腰。


「それがカタナか」


「知ってるの?」


「バルガが町中で自慢してる」


「…………」


 また。


「見せてもらったぞ」


「え?」


「試作一号の方」


「持ってきたのか」


「あいつ『見ろ!』って」


「元気だな」


「でも」


 店主。


 真面目。


「いい武器だ」


「そう?」


「ああ」


「まだ試作品だけど」


「だからこそ面白い」


 この街の職人たち。


 刀に興味持ち始めてる?


「防具見たい」


「予算は?」


「1100Gくらい」


「全部使うなよ?」


「……現実でも聞く台詞みたい」


「何?」


「いや」


         ◇◇◇


 候補。


《鉄板補強革鎧》


《価格:700G》


《防御力:中》


《重量:中》


《機動性:低下小》


「重い」


 試着。


「動きづらい?」


「少し」


 肩。


 腰。


 回転。


「刀には合わないな」


「じゃあこれ」


《軽革戦闘衣》


《価格:650G》


《防御力:低~中》


《重量:軽》


《機動性:上昇》


「これは」


 動く。


「いい」


「防御低いぞ」


「当たらなければ」


「言うと思った」


 店主が笑う。


「でも」


「?」


「最低限は守れ」


 胸。


 腹。


 肩。


 薄い補強。


「布だけよりマシ」


「ならこれ」


《軽革戦闘衣を購入しました》


《650Gを支払いました》


「やっと初心者装備卒業!」


 ミナ。


 拍手。


「そんなに?」


「見た目かなり変わりましたよ」


 鏡。


 黒寄りの革装備。


 軽装。


 腰。


 刀。


「確かに」


 前より。


 剣士らしい。


 いや。


「侍っぽい?」


 カイト。


「まだ西洋寄りだな」


「刀だけ和風」


「混ざってる」


「AWOだからいいだろ」


「それもそうだ」


         ◇◇◇


 街を歩く。


 視線。


 前より。


 多い。


「ジョウゴだ」


「防衛戦の」


「刀持ってる」


「動画の人」


「…………」


「慣れました?」


 ミナ。


「慣れない」


「有名人ですね」


「困る」


「配信始めたらもっと増えますよ」


「まだ始めるって決めてない」


「面談でしたね」


「ああ」


 その時。


 プレイヤー。


 一人。


「あの!」


「はい?」


「ジョウゴさんですよね?」


「そうです」


「防衛戦見てました!」


「どうも」


「あの」


 緊張。


「剣の避け方」


「?」


「教えてもらえませんか?」


 また。


「別にいいけど」


「本当ですか!?」


「ただ」


「?」


「言葉で説明難しい」


「ですよね!」


 横。


 ミナ。


「ほら!」


「何が?」


「自覚出てきた!」


「少しな」


 訓練場。


 行く?


「今日は時間あるし」


 少し。


 教える。


         ◇◇◇


 冒険者ギルド訓練場。


「まず」


 相手。


 剣。


「大きく避けなくていい」


「はい」


「攻撃が通る場所から身体を外す」


「こう?」


「動きすぎ」


「え?」


「それだと次に攻撃できない」


 足。


 見せる。


「半歩」


「これだけ?」


「十分」


「怖くないですか?」


「慣れるまでは怖い」


「ジョウゴさんも?」


「最初はな」


 現実。


 剣道。


 古流。


 何年。


 何千回。


 何万回。


 そういう積み重ね。


「すぐできなくて普通」


 俺は言う。


「俺がやってるのも」


 少し考える。


「ゲーム始めて急にできるようになったわけじゃない」


 相手。


 静か。


「現実でずっとやってたから」


「……なるほど」


「だから」


「?」


「焦らなくていい」


 ミナたち。


 少し離れて見ている。


「ジョウゴさん」


「何?」


「今の説明」


「?」


「すごくまともでした」


「いつもまともだろ!」


         ◇◇◇


 その日のログアウト前。


 公式メッセージ。


《CROSS社オンライン面談》


《明後日 20:30》


「…………」


 見る。


 配信。


 今まで。


 興味なし。


 でも。


 今日。


 知らないプレイヤー。


 教えて。


 喜んだ。


「一人称視点」


 もし。


 自分の見てるもの。


 自分の動き。


 それを。


 見せられるなら。


「武術の説明とかには便利かもな」


 少しだけ。


 考えが変わった。


 ただ。


「仕事にはしたくない」


 少なくとも。


 今は。


 AWO。


 遊び。


 第二の生活。


 そこは。


 守りたい。


         ◇◇◇


 現実世界。


 《CROSS社》。


「面談確定です」


「本人から?」


「はい」


「反応は?」


「希望日時を選んだだけ」


「らしいですね」


 担当者。


 苦笑。


「資料は?」


「まとめています」


 画面。


《ジョウゴ》


《主な注目点》


《現実武術技能》


《独自戦闘》


《NPCとの自然な交流》


《ゲーム世界への知識伝達》


《新武器カテゴリ《刀》》


《シズナ防衛戦》


《視聴者からの配信希望多数》


「提案内容」


「第一案」


「CROSS公式配信支援」


「収益化必須?」


「なし」


「配信頻度?」


「本人任せ」


「企画参加?」


「任意」


「拘束時間?」


「最低限」


「いい」


 担当者。


「この人」


「はい」


「条件厳しくしたら絶対断る」


「でしょうね」


「多分」


 映像。


 街を歩く。


 NPCへ挨拶。


 訓練場。


 初心者に半歩の避け方を教える。


「配信者を作るんじゃない」


「?」


「この人の生活を」


 一拍。


「そのまま見せてもらう」


 それが。


 CROSS社の方針になった。


 そして。


 第一章。


 《Another World Online》へ入った一人の銀行員。


 上塚賢吾。


 ゲーム内名。


 ジョウゴ。


 彼の第二の生活は。


 次第に。


 AWOの中だけではなく。


 現実世界へも。


 繋がり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。