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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第一章 AWO開始編

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18/131

第18話 シズナ防衛戦、開幕

 ゴォン――。


 ゴォン――。


 ゴォン――。


 《シズナ》の街に、重い鐘の音が響いていた。


 普段なら酒場や宿屋から笑い声が聞こえる時間。


 だが今夜は違う。


「南門へ急げ!」


「矢を見張り台へ!」


「負傷者用の場所を確保しろ!」


「冒険者はギルド前に集合!」


 NPCの衛兵たちが走る。


 商人たちは露店を畳み。


 住民たちは家の中へ。


 そして俺――ジョウゴは。


「……まず剣」


「そこからですか!?」


 ミナに突っ込まれながら、《銀麦亭》へ向かって全力で走っていた。


「だって丸腰なんだぞ!」


「だから防衛戦直前に刀を預ける人が悪いんです!」


「防衛戦が始まるなんて知らなかったんだよ!」


「タイミング良すぎだろ!」


 カイトが笑いながら走る。


「笑うな!」


「だってさ!」


「ジョウゴ、今この街で一番刀が似合うのに、開始直前で初心者の剣に戻るんだぞ!」


「俺だって好きで戻るわけじゃない!」


 レントまで笑っている。


 ひどい仲間だ。


         ◇◇◇


 銀麦亭へ飛び込む。


「マリアさん!」


「ジョウゴ!?」


 食堂はすでに片づけが始まっていた。


「ずいぶん騒がしいねぇ!」


「ゴブリンが来るらしい」


「やっぱりかい」


 マリアさんの表情が少し曇る。


「前にもこういうことは?」


「小さな襲撃ならね」


「今回ほど大きいのは?」


「私は知らないよ」


「そうか」


 階段へ。


「ジョウゴ!」


「はい?」


「死ぬんじゃないよ!」


「ゲームだから――」


 そこまで言って。


 止めた。


 マリアさんにとっては、そういう話ではない。


「……分かりました」


「必ず帰ってきな!」


「ああ」


 七号室。


 扉を開ける。


「どこだ」


 アイテム収納。


《初心者の剣》


《耐久値:43/100》


「あった」


 装備。


 腰へ。


「よし」


 初心者の革鎧。


 初心者の剣。


 レベル4。


「……見た目だけなら完全に初心者だな」


 まあいい。


 刀がなくても戦える。


         ◇◇◇


 銀麦亭の前。


「取ってきた?」


 ミナ。


「ああ」


「耐久値は?」


「43」


「低っ!」


「使い切らなきゃいい」


「防衛戦でその発想怖いんですけど!」


 カイトが盾を叩く。


「壊れたら?」


「その時は」


 俺は両手を見る。


「体術」


「やめろ!」


「剣士でいてくれ!」


「冗談だよ」


「絶対半分本気だった!」


 否定はしない。


「とにかくギルドへ行こう」


         ◇◇◇


 冒険者ギルド前。


「……多いな」


 大量のプレイヤー。


 NPC冒険者。


 衛兵。


 ざっと見ただけでも百人以上。


 おそらく街の別地点にも配置されている。


《エリアクエスト》


《シズナ防衛戦》


《参加受付中》


《推奨Lv:3以上》


《街への被害状況により結果が変化します》


《NPCの死亡・施設破壊・防衛設備損傷などが結果へ影響します》


「NPCの死亡……」


 ミナが静かに読む。


「本当に守らないといけないんですね」


「ああ」


 ただモンスターを倒してポイントを稼ぐイベントではない。


 失敗すれば。


 この街が変わる。


 それが表示だけでも分かる。


「ジョウゴ!」


 ギルド前。


 グラン支部長。


「来たか」


「参加します」


「四人ともだな?」


「はい」


《シズナ防衛戦へ参加登録しました》


 グランさんが地図を広げる。


「状況を説明する!」


 周囲の冒険者たちが静かになる。


「斥候の報告では、南西林から多数のゴブリンが出ている!」


「推定数は?」


 誰かが聞く。


「最低でも百五十!」


「百五十!?」


 ざわめき。


「多いな」


 カイトが呟く。


「さらに」


 グランさんが続ける。


「上位個体を複数確認!」


 俺たちが調査で見た。


 一回り大きい個体。


 そして。


 巨大な斧を持つ個体。


「目的は南門と推測される」


「街道に沿って来るのか」


「その可能性が高い」


 グランさんが配置を示す。


「衛兵隊が門前で主力を受ける」


「冒険者は?」


「左右へ展開」


「弓兵と魔術師は防壁・見張り台」


「近接職は門前及び側面」


「回復役は後方」


 合理的だ。


「無理に突出するな!」


 グランさんの声。


「単独行動は禁止!」


 そこで。


 こっちを見る。


「特にジョウゴ!」


「だからなんで俺だけ!?」


 周囲から笑い。


「例の人だ!」


「変な剣士!」


「動画の!」


「有名人じゃん!」


「…………」


 俺は頭を抱えた。


「笑ってる場合ではない!」


 グランさんが怒鳴る。


 周囲が静かになる。


「死に戻りできる異邦人と違い、我々にはやり直しはない!」


 その言葉。


 空気が変わった。


「防壁の内側には住民がいる!」


「ここを抜かせるな!」


 NPC。


 その言葉に。


 プレイヤーたちも少し表情を変える。


「……行こう」


 俺は言った。


「ですね」


         ◇◇◇


 南門。


「すごい」


 昨日まで作っていた防壁。


 完成している。


 木製の柵。


 土嚢。


 見張り台。


 矢。


 魔法使い用の足場。


「俺たちが運んだ木材も入ってるんだよな」


 カイトが防壁を叩く。


「多分」


 自分たちが作ったものが。


 これから街を守る。


「悪くないな」


 少し嬉しい。


「ジョウゴさん」


「ん?」


 ミナが真面目な顔。


「今日は絶対無茶しないでください」


「ああ」


「本当に」


「分かってる」


 レントが弓を確認。


「今回はいつもと違う」


「そうだな」


 周囲にはプレイヤーが多い。


 だから。


 自分一人が好き勝手に動けば、逆に邪魔になる。


「カイト」


「おう」


「基本お前を中心に動く」


「え?」


「盾役だろ」


「ああ」


「俺が前に出すぎたら止めてくれ」


「お、おう」


「ミナ」


「はい」


「火力は任せる」


「任せてください」


「レント」


「ああ」


「弓で漏れた奴頼む」


「了解」


 パーティー。


 今までより少しだけ。


 役割がはっきりしてきた。


         ◇◇◇


 時間。


 夜。


 遠くの森。


「……来た」


 誰かが呟いた。


 暗闇。


 赤い光。


 一つ。


 二つ。


 十。


 数十。


 松明。


「ギャギャギャ!」


「ギャアアア!」


 声。


 地面。


 ドドドドドド――。


「本当に百体以上いるな」


「多すぎません?」


 ミナが杖を握る。


 ゴブリンの群れ。


 武器。


 棍棒。


 短剣。


 槍。


 粗末な盾。


 弓を持つ個体までいる。


 そして中央。


《ゴブリンウォリアー Lv.8》


「名前見えた」


 以前《???》だった個体。


「レベル8」


 さらに奥。


《ゴブリンチーフ Lv.10》


 巨大な斧。


「チーフ……」


 明らかにボス。


 その瞬間。


 ポーン。


《エリアクエスト開始》


《シズナ防衛戦》


《第一波》


《ゴブリン軍勢を迎撃してください》


 次の瞬間。


「グギャアアアアアア!」


 ゴブリンチーフが斧を振り上げる。


「ギャアアアアッ!」


 軍勢が走り出した。


「来るぞ!」


 衛兵隊。


「弓隊!」


「構え!」


 弓。


 何十本。


「撃てぇ!」


 ヒュヒュヒュヒュヒュッ!


 矢の雨。


「ギャッ!」


「ギギャ!」


 ゴブリンが倒れる。


 だが止まらない。


「魔術師!」


「詠唱開始!」


 プレイヤー。


 NPC。


「《ファイアボール》!」


「《ウインドカッター》!」


「《ロックバレット》!」


 魔法。


 炎。


 風。


 岩。


 夜の草原が明るくなる。


 ドドドドンッ!


「すご……」


 MMOだ。


 初めて。


 本当に大人数の戦闘を見た。


「ジョウゴ!」


「分かってる!」


 感心している場合ではない。


 前衛へ到達。


「ギャア!」


 一体。


 二体。


 三体。


「カイト!」


「任せろ!」


 ガンッ!


 盾。


 一体を止める。


「ジョウゴ!」


「ああ!」


 初心者の剣。


 抜く。


 スッ。


「行くぞ!」


         ◇◇◇


 一体目。


 棍棒。


 振り下ろし。


 半歩。


 避ける。


 斬る。


 ザンッ!


《Critical Hit!》


「硬い」


 刀と違う。


 斬り味。


 重心。


 動き。


「やっぱり使いにくい」


「文句言ってる場合か!」


「分かってる!」


 二撃目。


 首。


《Critical Hit!》


 消滅。


「次!」


 二体目。


 短剣。


「《スラッシュ》!」


 俺ではない。


 横のプレイヤー。


 剣士。


 ゴブリンを斬る。


「うおお!」


「前出すぎ!」


 別のゴブリンが横から。


「危ない!」


 俺が入る。


 剣。


 短剣を叩く。


 カンッ!


《Parry!》


《《崩しLv.1》発動》


「今!」


「助かる!」


 プレイヤー剣士。


「《スラッシュ》!」


 ザンッ!


 ゴブリン消滅。


「ありがとう!」


「周り見て!」


「了解!」


 戦闘。


 人が多い。


 いつもと違う。


 敵だけ見ていればいいわけではない。


 味方。


 射線。


 立ち位置。


「右!」


 レントの声。


 矢。


 ヒュッ!


 俺の横を通る。


 ゴブリンへ。


 ドスッ!


「ナイス!」


「前!」


 カイト。


 二体。


 盾。


「《シールドバッシュ》!」


 ドンッ!


 崩れる。


「ミナ!」


「《ファイアボール》!」


 爆炎。


「ジョウゴ!」


「ああ!」


 一体。


 斬る。


 二体目。


 剣の柄。


 手首。


 ゴッ!


《Disarm!》


「ギャ!?」


「まだできる」


 武器を落とした。


 そのまま。


 蹴――。


「……いや」


 グランさん。


 投げるなって言ってたな。


 普通に斬る。


 ザンッ!


《Critical Hit!》


「ジョウゴさん!」


「何?」


「今一瞬蹴ろうとしましたよね!?」


「気のせい!」


「絶対嘘!」


         ◇◇◇


《第一波進行度:38%》


「まだ半分いかない!」


 カイトが叫ぶ。


「長いな!」


 敵が多い。


 だが。


 こちらも多い。


「回復!」


「前衛下がれ!」


「交代!」


 NPC衛兵たち。


 ちゃんと戦列を入れ替えている。


「疲労まであるのか」


 プレイヤーもHPだけではない。


 身体感覚として疲れる。


 俺たちも少しずつ後ろへ。


「水!」


 NPCの補給兵。


「どうぞ!」


「ありがとう」


 水を飲む。


「戦場で給水」


 カイトが笑う。


「妙にリアル」


「でも助かる」


 ミナも息を整えている。


「MPポーションもあります」


「使いすぎるなよ」


「はい」


 その時。


「左翼!」


 叫び。


「抜かれたぞ!」


「え?」


 左側。


 ゴブリン十数体。


 防壁の端。


 薄い。


「まずい」


 NPC衛兵が少ない。


 プレイヤーも。


「ジョウゴ!」


 カイトを見る。


「行く?」


「ああ」


 ただし。


「四人で」


「了解!」


 走る。


         ◇◇◇


 左翼。


「ギャア!」


 ゴブリン。


 六。


 八。


 十。


「多い!」


「カイト、中央!」


「おう!」


 盾。


「ミナ、範囲!」


「はい!」


 杖。


「《ファイアウォール》!」


「そんな魔法あったの?」


「さっき覚えました!」


 地面。


 炎。


 ゴオオッ!


「ギャア!」


 ゴブリンの進路が狭くなる。


「いい!」


「レント!」


「分かってる!」


 矢。


 先頭。


 ドスッ!


「ジョウゴさん!」


「ああ!」


 狭くなった進路。


 一度に来られる数。


 二体。


「これなら」


 剣。


 一体目。


 棍棒。


 パリィ。


 カンッ!


 二体目。


 槍。


「槍?」


 初めて。


 長い。


「面倒だな」


 間合いが違う。


 突き。


 避ける。


 もう一度。


「先に槍」


 刃ではなく。


 柄。


 剣で横へ。


 ガンッ!


《Parry!》


「ギャ!?」


 踏み込む。


 槍の内側。


「長物は入れば」


 斬る。


 ザンッ!


《Critical Hit!》


「次!」


 棍棒。


 振り上げ。


「遅い」


 懐。


 柄頭。


 顎。


 ゴッ!


《Stun!》


「お」


 初めて見る。


「気絶するのか」


「ジョウゴ!」


「あ」


 カイト。


「観察してないで倒せ!」


「はい!」


 斬る。


         ◇◇◇


 数分。


 左翼を押し戻す。


《左翼防衛ライン:安定》


《防衛貢献度が上昇しました》


「戻した!」


「よし!」


 だが。


 その直後。


 ドガァンッ!


「!?」


 中央。


 巨大な音。


 見る。


《ゴブリンウォリアー Lv.8》


 大剣。


 防壁を。


 一撃。


「壊してる!」


《南門前防壁耐久度:82%》


「まずいですね」


 ミナ。


 さらに。


《ゴブリンチーフ Lv.10》


 まだ後ろ。


 動いていない。


「ボスは最後か」


 レントが呟く。


「多分」


 今出てるウォリアーだけでも。


 一般ゴブリンとは段違い。


「どうする?」


 カイト。


「戻る」


「中央へ?」


「ああ」


「でも俺たちレベル4前後ですよ!」


「倒しに行かない」


 俺は言う。


「防壁を壊されるのを止めるだけ」


「……分かった」


 走る。


         ◇◇◇


「グギャア!」


 ウォリアー。


 大剣。


 また振り上げる。


「止めろ!」


 衛兵。


 二人。


 盾。


 ガァン!


「ぐっ!」


 吹き飛ぶ。


「強い!」


「レベル8だぞ!」


 プレイヤーたちも攻撃。


《スラッシュ!》


《ファイアボール!》


 HP。


 減る。


 でも遅い。


「大剣来る!」


 振り。


 横薙ぎ。


「下がれ!」


 俺は。


 動きを見る。


 肩。


 腰。


 大剣。


「……大きすぎる」


 だから。


 予備動作も大きい。


「カイト!」


「何!」


「一撃受けられる?」


「真正面は無理!」


「流せる?」


「やる!」


 ウォリアー。


「グギャア!」


 上段。


「来る!」


 大剣。


 振り下ろし。


 カイト。


 盾を斜め。


「うおおお!」


 ガァァン!


「ぐっ!」


 完全には止めない。


 大剣。


 横へ流れる。


「今!」


 俺。


 懐。


 腕。


「武器は落とせない」


 なら。


 手。


 指。


 そこへ。


 剣の柄頭。


 ゴッ!


「グギャ!?」


《《崩しLv.1》発動》


 大剣の握りが緩む。


「やっぱり効く!」


「ジョウゴさん!」


「ミナ!」


「《ファイアボール》!」


 顔面。


 ドンッ!


「グギャア!」


 仰け反る。


「レント!」


「《パワーショット》!」


 矢。


 膝。


 ドスッ!


「グッ!?」


 片膝。


「みんな!」


 周囲のプレイヤー。


「今!」


「「「おおおお!」」」


 剣。


 槍。


 魔法。


 一斉。


《Critical Hit!》


《Critical Hit!》


《Weak Point!》


 HP。


 一気に減る。


「グギャアア!」


 ウォリアーが暴れる。


「下がれ!」


 俺たちも退く。


「あと少し!」


「もう一回!」


 カイト。


 盾。


 俺。


 横。


 ミナ。


 後ろ。


 レント。


 遠距離。


 今まで。


 何となく一緒に遊んでいた四人。


 でも今は。


「カイト!」


「おう!」


「右へ流せ!」


「任せろ!」


「ミナ、顔!」


「はい!」


「レント、脚!」


「了解!」


 自然に。


 連携している。


「俺は――」


 空いた場所。


 入る。


「グギャア!」


 大剣。


 横。


 しゃがむ。


 頭上。


「今」


 初心者の剣。


 胴。


 斬る。


 ザンッ!


《Critical Hit!》


《Weak Point!》


 HP。


 ゼロ。


「グギャアアアア――!」


 巨大な身体。


 光。


《ゴブリンウォリアー Lv.8を討伐しました》


「倒した!」


 周囲から歓声。


「うおおおお!」


「ナイス!」


「やった!」


 俺たちだけではない。


 みんなで倒した。


「こういうのもいいな」


「MMOですからね!」


 ミナが笑う。


         ◇◇◇


 そして。


《第一波進行度:100%》


《第一波を撃退しました》


「終わった?」


 違う。


 次。


《第二波準備中》


《残り時間:03:00》


「三分休憩?」


「来るぞ!」


 NPC。


「矢を補充!」


「負傷者を後ろへ!」


「防壁修理班!」


 すぐに動く。


 プレイヤーたちも。


「ポーション!」


「MP回復!」


「装備耐久確認!」


「耐久」


 俺も。


《初心者の剣》


《耐久値:21/100》


「…………」


「ジョウゴさん?」


「半分以下」


「え?」


「21」


「次壊れません!?」


「壊れるかも」


「どうするんですか!」


 その時。


 カン。


 カン。


 いや。


 違う。


 街側。


「ジョウゴォォォォ!」


「?」


 聞き覚えのある。


 野太い声。


 南門。


 走ってくる。


「バルガ?」


 鍛冶師バルガ。


 手には。


 一本の刀。


「兄ちゃん!」


「何してるんだ!?」


「何してるじゃねぇ!」


 バルガが刀を投げる。


「受け取れ!」


「おっと!」


 掴む。


 鞘。


 黒。


 試作一号とは違う。


《鉄刀・試作二号》


《品質:上質》


《製作者:鍛冶師バルガ》


《共同考案:ジョウゴ》


《素材:高密度鉄》


《耐久値:210/210》


「完成したのか!?」


「まだ調整途中だ!」


「じゃあなんで持ってきた!」


「お前が戦ってるって聞いたからだ!」


 バルガが叫ぶ。


「剣士がボロ剣で戦ってどうする!」


「…………」


 ちょっと。


 嬉しい。


「返したらちゃんと調整するからな!」


「ああ!」


「壊すなよ!」


「努力する!」


「絶対壊すな!」


 腰。


 初心者の剣を外す。


 代わりに。


《鉄刀・試作二号》


 装備。


 柄。


 握る。


「……いい」


 まだ抜いていない。


 それでも分かる。


 握り。


 細くなった。


 重心。


 少し手元。


「バルガ!」


「なんだ!」


「ありがとう!」


「生きて帰ってから言え!」


 その瞬間。


 ポーン。


《第二波開始まで》


《10》


《9》


「来ます!」


 ミナ。


《8》


 俺は刀へ手。


《7》


 鯉口。


《6》


 カイト。


 盾。


《5》


 レント。


 弓。


《4》


 ミナ。


 杖。


《3》


 森。


 新たな松明。


《2》


 さらに多い。


《1》


 そして。


《第二波開始》


《ゴブリンアーチャー部隊を確認》


《ゴブリンメイジを確認》


《ゴブリンチーフが前進を開始しました》


「……魔法使いまでいるのか」


 遠く。


 杖を持つゴブリン。


 弓。


 そして中央。


 巨大な斧を肩に担ぎ。


《ゴブリンチーフ Lv.10》


 ついに歩き始める。


「グオオオオオオオオ――!」


 咆哮。


 俺は。


 新しい刀を抜いた。


 スッ――。


「…………」


 試作一号より。


 いい。


 明らかに。


「ジョウゴさん?」


「何?」


「その顔」


「?」


「嬉しそうです」


「……まあな」


 刀を構える。


「初陣が防衛戦になるとは思わなかったけど」


 ゴブリン軍。


 前進。


「使わせてもらう」


 《鉄刀・試作二号》。


 そして。


 《シズナ防衛戦》。


 本当の山場は。


 ここからだった。

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