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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第二章 CROSS社契約編

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120/133

第67話 最大断裂部へ架ける橋

 青晶鉄鉱の主鉱脈に存在していた二つの断裂地点。


 そのうち、幼竜に近い《第二断裂部》への《蒼月安定導路》設置は無事に成功した。


 伝達損失率は三十一%から四%まで低下し、それまで横になっていることが多かった幼竜が、ほんの僅かな時間とはいえ自分の脚で立つことができた。


 蒼月晶の安定波長は、確かに届いている。


 だが、最大の問題はまだ残っていた。


 約四・一メートルにわたって主鉱脈が断裂し、流れてきた魔力の七十八%を失わせている《第一断裂部》。


 そこを修復しない限り、蒼月泉から幼竜まで続いていた本来の魔力循環は取り戻せない。


 ただし、第二断裂部をつないだ直後に続けて作業することはしなかった。


 天然の魔力循環経路へ直接手を加えた以上、時間を置いて異常が起きないことを確認する必要がある。


 そして翌日。


 その結果が届いた。


◇◇◇


 現実世界。


 銀行での仕事を終えた俺――上塚賢吾は帰宅すると、いつも通り夕食と風呂、家事、翌日の準備まで済ませた。


 AWOへログインする前にCROSSから届いている通知も確認する。


 契約関連の連絡が一件あったが、急ぎではない。配信回数についても今月分は問題なく、今日の青晶洞調査を配信へ切り替える必要はなかった。


 むしろ今回は配信しない方がいい。


 蒼晶竜と幼竜のことは、必要以上に公開したくない。


 特に幼竜は弱っている。


 視聴者を集めるための材料にするつもりはなかった。


 VR機器を装着する。


《リアルコンディションチェックを開始します》


《睡眠状態:良好》


《栄養状態:問題なし》


《水分状態:問題なし》


《体温:正常範囲》


《フルダイブ可能》


ジョウゴ「ログイン」


 視界が切り替わる。


 銀麦亭の客室へ降り立ち、一階へ向かうと、ミナ、カイト、レントがすでに待っていた。


ミナ「ジョウゴ、おかえり!」


ジョウゴ「ただいま。観測結果は?」


レント「問題なしだ」


 レントが冒険者ギルドから共有されたデータを表示する。


《第二断裂部・継続観測結果》


《観測時間:24時間》


《蒼月安定導路:正常》


《魔力伝達損失率:3~5%》


《青月石中継核:正常》


《異常発熱:なし》


《魔力逆流:なし》


《周辺魔力濃度:安定》


《岩盤変動:なし》


《総合判定:安定》


カイト「一晩どころか、丸一日問題なしだ」


ジョウゴ「なら、次へ進めるな」


ミナ「第一断裂部?」


ジョウゴ「ああ」


 ついに最大の断裂地点へ手を入れる。


 ただし、第二断裂部と同じつもりで作業することはできない。


 距離は約五倍。


 中継核も三つ。


 しかも崩落した岩盤の向こう側へ導路を通さなければならない。


 今日が、この一連の調査で最も難しい施工になるはずだった。


◇◇◇


 冒険者ギルドへ到着すると、グレイス副支部長だけでなく、記録管理官のエドガーさんも待っていた。


 机の上には第一断裂部周辺の古い坑道図と、俺たちが前回測定した現在の地形図が重ねられている。


グレイス「第二断裂部は安定している。第一断裂部への施工を許可する」


ジョウゴ「ありがとうございます」


エドガー「ただし、施工方法について一つ確認しておきたい」


 エドガーさんが図面の一点を指した。


 第一断裂部。


 そして、そのすぐ横。


エドガー「前回の調査後、古い図面をさらに照合した。ここに小規模な作業用通路が存在していた可能性が高い」


ジョウゴ「作業用通路?」


エドガー「主坑道から鉱脈の状態を確認するための横道だ。当時の表記では《第三坑道・側路二》となっている」


レント「今も残っているんですか?」


エドガー「分からん。ただし完全に崩れていなければ、使えるかもしれない」


 現在の第一断裂部は大量の岩で塞がれている。


 その中を真っ直ぐ掘り進むのは危険だ。


 しかし側路が残っているなら、崩落部分を迂回して断裂面AとBの近くまで導路を通せる可能性がある。


ジョウゴ「無理に崩落部分を掘らなくて済む?」


グレイス「そのために調べる価値はある」


 ギルドから追加の探査器具も借りる。


 今日の目的は導路設置だが、側路が危険なら無理には進めない。


 その場合は施工そのものを延期する。


 そこも全員で確認した。


◇◇◇


 最後にバルガの工房へ立ち寄る。


 第一断裂部用の《蒼月安定導路》は、すでに運搬できる状態へまとめられていた。


 四つの導路ユニット。


 三つの青月石中継核。


 接続固定材。


 仮設魔力遮断具。


 さらに今回は、現地で角度を調整するための可動接続部品も追加されている。


バルガ「第二断裂部の結果は見た」


ジョウゴ「問題なし」


バルガ「ああ。だから基本的な接続方法は前回と同じでいい」


 バルガは中央に使う青月石中継核を持ち上げる。


 月影渓谷でミナが見つけた、最も適性の高かった青月石だ。


バルガ「ただし第一断裂部は長い。三つの中継核を全部同じように開くな」


ジョウゴ「順番に?」


バルガ「そうだ。泉側から少しずつ流せ。一号まで確認。次に二号。最後に三号。その後で断裂面Bへ流す」


ミナ「一気に幼竜側まで流さないんだね」


バルガ「途中で問題が起きた時、どこが悪いのか分からなくなるからな」


 確かに合理的だ。


 四メートル全部を一度に開放して異常が起きれば、原因の特定に時間がかかる。


 区間ごとに確認した方がいい。


ジョウゴ「了解。段階開放で行く」


バルガ「あと、中央の二号中継核は特に見ろ。距離的にも一番負担がかかる」


ミナ「私が見つけた石だから大丈夫です」


カイト「そこに根拠はあるのか?」


ミナ「運の良さ十九」


ジョウゴ「そこは否定できないのが困る」


 少しだけ緊張が和らいだ。


◇◇◇


 青晶洞へ入る。


 すでに何度も通った道だが、今日は今まで以上に荷物が多い。


 導路ユニットは分割されているとはいえ、四本ある。


 俺とカイトが主に導路材を運び、ミナとレントが中継核や測定器を担当する。


 第一分岐を越え、蒼晶竜のいる場所へ到着した。


 昨日より、周囲の青晶鉄鉱が僅かに明るい。


 第二断裂部を修復した影響だろう。


 幼竜も起きていた。


幼竜「キュ!」


ミナ「あ、昨日より元気」


 幼竜はまだ走り回れるような状態ではない。


 それでも昨日より頭の位置が高く、こちらを見る目にも少し力がある。


 鑑定する。


《蒼晶竜の幼竜》


《Lv:1》


《状態:重度魔力欠乏》


《生命力低下》


《蒼月晶安定波長:微弱受容》


《魔力核安定度:緩やかに上昇中》


 状態異常そのものは残っている。


 しかし《魔力核安定度》は上昇を続けている。


蒼晶竜「……泉の声が……昨日より……続いている……」


ジョウゴ「第二断裂部は丸一日、問題なく動いています」


蒼晶竜「……そうか……」


ジョウゴ「今日は大きい方を直します」


 俺が導路ユニットを見せると、蒼晶竜は静かにそれを見つめた。


蒼晶竜「……あの傷は……深い……」


ジョウゴ「分かっています。危険なら途中で止めます」


蒼晶竜「……それでよい……」


 蒼晶竜がゆっくりと頭を下げた。


蒼晶竜「……命を急ぐために……命を捨てるな……」


ジョウゴ「はい」


 最初に会った時とは随分印象が変わった。


 巨大な古竜。


 正体不明の高レベル存在。


 初めはそれだけだった。


 今は、弱っている自分の仔を必死に守り続けている親として見えている。


 だからこそ、失敗したくない。


◇◇◇


 旧採掘坑道へ入り、第一断裂部へ向かう。


 途中の魔力伝達率を測定すると、第二断裂部を修復した影響はここにも出ていた。


 ただし、第一断裂部より泉側では当然ながら大きな変化はない。


 問題の崩落地点へ到着する。


《青晶鉄鉱主鉱脈・第一断裂部》


《断裂距離:約4.1メートル》


《伝達損失率:約78%》


《物理接続:断絶》


《魔力接続:微弱》


 以前と同じだ。


レント「側路を探す」


 古い図面と現在地を照合する。


 崩落地点から少し戻り、右側の岩壁を調べる。


 一見するとただの壁だ。


 しかし探査器を使うと、その奥に空間反応が出た。


レント「ある」


カイト「埋まってる?」


レント「入口だけだと思う」


 周囲を調べる。


 積み重なっているのは比較的小さな岩だ。


 主坑道の崩落部分とは違い、天井まで完全に潰れているわけではない。


ジョウゴ「岩盤状態は?」


レント「安定。少なくとも今すぐ崩れる反応はない」


 慎重に入口付近の岩だけを取り除く。


 カイトが大きな石を動かし、俺が細かな瓦礫を外へ出す。


 十分ほどで、人一人が通れる隙間が現れた。


《旧採掘坑道・第三坑道側路二》


《状態:一部崩落》


《岩盤安定度:注意》


《進入可能》


カイト「残ってたな」


ジョウゴ「ああ。でも慎重に行こう」


 中へ入る。


 通路は狭い。


 カイトが盾を背負ったままだと、場所によっては横向きにならないと通れないほどだ。


カイト「俺だけ難易度高くないか?」


ミナ「大きいから」


カイト「装備がな?」


レント「身体もだ」


カイト「どっちだよ」


 こんな場所でも、いつものやり取りができる程度には余裕がある。


 数十メートル進むと、側路が二つに分かれていた。


 片方は完全に崩れている。


 もう片方は、第一断裂部の裏側へ回り込むように続いている。


 そして、その壁に青い光が見えた。


ジョウゴ「青晶鉄鉱……」


 探査器を向ける。


《主鉱脈断裂面Bを検出》


《距離:1.2メートル》


レント「当たりだ」


 さらに調べると、側路から断裂面Aの近くへも接近できることが分かった。


 つまり、崩落した四メートルを真っ直ぐ掘る必要はない。


 側路を使って迂回し、その壁沿いへ蒼月安定導路を設置すればいい。


《《蒼月安定導路》推奨設置経路を検出》


《直線接続:約4.1メートル》


《側路迂回接続:約4.6メートル》


《岩盤掘削量:大幅低減》


《安全性:上昇》


ミナ「少し長くなるね」


ジョウゴ「でも、崩落部分を掘るよりずっといい」


レント「導路は四・二メートルだ」


ジョウゴ「可動接続部で足りる?」


 確認する。


《第一断裂部用《蒼月安定導路》》


《基本全長:約4.2メートル》


《可動接続部調整可能範囲:+0.5メートル》


《最大設置長:約4.7メートル》


カイト「ギリギリ入るな」


ジョウゴ「ああ」


 バルガが可動部を追加してくれていなければ、作り直しだったかもしれない。


◇◇◇


 設置作業を始める。


 まず断裂面A側へ定点魔力観測器を置く。


《観測器A》


《基準流量:100》


《蒼月晶安定波長:強》


 次に断裂面B側。


《観測器B》


《基準流量:22》


《蒼月晶安定波長:弱》


 七十八%の損失。


 ほぼ計算通りだ。


ジョウゴ「まず一号導路」


 第二断裂部で経験した手順を繰り返す。


 天然鉱脈を傷つけないよう表面だけを整え、内部の魔力脈に合わせて導路の角度を調整する。


ミナ「魔力流します」


 弱い魔力が一号導路へ入る。


《現地同調率:38%》


 少し右。


《現地同調率:51%》


 下へ。


《現地同調率:66%》


 導路全体を僅かに回転。


《現地同調率:82%》


レント「天然鉱脈側の流れが少し左へ寄っている」


ジョウゴ「了解」


 数ミリ調整する。


《現地同調率:95%》


《断裂面Aとの接続が可能です》


ジョウゴ「固定」


 一号導路を固定する。


 次に一号中継核。


 さらに二号導路。


 側路の壁へ沿わせながら、少しずつ角度を変えて設置していく。


 そして中央。


 ミナが見つけた、最も性能の高い青月石を使った二号中継核。


《青月石中継核・二号》


《導路接続適性:96%》


《状態:正常》


ミナ「お願いします」


ジョウゴ「何でミナが緊張してるんだ」


ミナ「私の石だから」


カイト「もう所有物みたいになってるな」


 少し笑いながらも、作業は慎重に進める。


 二号中継核を固定。


 三号導路。


 三号中継核。


 最後に四号導路。


 ここで断裂面Bへ届く。


《現地同調率:44%》


 低い。


ジョウゴ「やっぱり最後が難しいな」


レント「断裂面Bは地震でかなり位置がずれている」


 探査結果を見る。


 天然鉱脈は途中で斜め上へ折れている。


 導路をそのままつなぐと、魔力脈同士が正面からぶつからない。


ジョウゴ「可動部を少し伸ばす」


 接続部を調整。


《現地同調率:58%》


 角度を上へ。


《現地同調率:71%》


 左へ。


《現地同調率:84%》


ミナ「もう少し」


ジョウゴ「ああ」


 最後に導路先端を僅かに回転させる。


《現地同調率:93%》


《断裂面Bとの接続が可能です》


ジョウゴ「固定する」


 カチリ、と接続具が噛み合う。


《《蒼月安定導路・第一断裂部用》》


《物理設置:完了》


《総設置長:約4.6メートル》


《中継核:3/3正常》


《断裂面A同調率:95%》


《断裂面B同調率:93%》


《仮設魔力遮断具:全閉》


《魔力流入:停止中》


 設置できた。


 ここからが本番だ。


◇◇◇


ジョウゴ「バルガの指示通り、区間ごとに開ける」


 最初は断裂面Aから一号中継核まで。


《第一遮断具:10%開放》


 青い光が導路へ入る。


《一号導路:正常》


《一号中継核:魔力流入》


《異常発熱:なし》


ジョウゴ「二十五%」


《第一遮断具:25%開放》


《一号中継核:正常》


 五十%。


 七十五%。


 そして百%。


《第一区間:正常稼働》


 問題なし。


ジョウゴ「次、第二区間」


 中央へ進める。


 魔力が二号導路を通り、中央の青月石へ入った。


《二号中継核:魔力流入》


《蓄積量:12%》


《放出安定性:正常》


 徐々に開放する。


《魔力流入率:25%》


《魔力流入率:50%》


《魔力流入率:75%》


 その時。


《二号中継核温度:微上昇》


ミナ「温度上がった」


ジョウゴ「止める?」


レント「警告域ではない。上昇も止まりつつある」


 数秒待つ。


《二号中継核温度:安定》


《状態:正常範囲》


ジョウゴ「……続ける」


 百%。


《第二区間:正常稼働》


ミナ「大丈夫」


 次に第三区間。


 三号中継核。


 こちらも問題なく通る。


《第三区間:正常稼働》


 残るのは最後。


 断裂面Bへの接続だけ。


ジョウゴ「ここを開ければ、向こう側につながる」


カイト「いつでも止められるぞ」


ミナ「こっちも大丈夫」


レント「観測器、正常」


 俺は最後の遮断具へ手をかけた。


 十%。


《断裂面Bへの魔力伝達開始》


《観測器B:基準流量28》


 二十二から二十八。


 二十五%。


《基準流量:41》


 五十%。


《基準流量:59》


 七十五%。


《基準流量:76》


 導路全体が淡い青色に輝いている。


 三つの青月石が順番に光り、流れてきた魔力を受け止め、整え、次へ送る。


 異常発熱なし。


 逆流なし。


 波長乱れも許容範囲。


ジョウゴ「全開にする」


 最後の遮断具を開いた。


《魔力流入率:100%》


 一瞬。


 洞窟が静かになったように感じた。


 そして。


 ドクン――。


 地面の奥から、巨大な鼓動のような響きが伝わった。


ミナ「……!」


 青晶鉄鉱の主鉱脈が光る。


 断裂面A。


 蒼月安定導路。


 三つの中継核。


 断裂面B。


 さらに、その先。


 青い光が洞窟の壁の中を走っていった。


《大規模魔力循環を検出》


《蒼月晶安定波長:流入》


《第一断裂部《蒼月安定導路》:正常稼働》


《一号中継核:正常》


《二号中継核:正常》


《三号中継核:正常》


《異常発熱:なし》


《魔力逆流:なし》


《断裂面A:正常》


《断裂面B:正常》


レント「観測器B!」


 数値を見る。


《基準流量:94》


《波長保持率:88%》


《第一断裂部伝達損失率:6%》


カイト「七十八から六?」


ジョウゴ「ああ……」


 大幅に改善した。


 だが、まだ喜ぶのは早い。


ジョウゴ「十五分見る」


 誰も反対しなかった。


◇◇◇


 五分。


 問題なし。


 十分。


 二号中継核の温度が僅かに高いが、正常範囲。


 十五分。


《連続稼働時間:15分》


《第一断裂部魔力流量:安定》


《伝達損失率:5~7%》


《安定波長保持率:87~90%》


《中継核:全基正常》


《岩盤異常:なし》


《魔力逆流:なし》


《総合判定:安定》


 そして。


《青晶鉄鉱主鉱脈・第一断裂部》


《魔力循環経路の再接続に成功しました》


《第一断裂部修復:完了》


《第二断裂部修復:完了》


《主要魔力伝達障害:解消》


《特殊クエスト《途切れた蒼月の流れ》が進行しました》


《第三段階進行度:97%→100%》


《第三段階《途切れた蒼月の流れ》達成》


 続けて、新しい表示が現れた。


《蒼月泉から蒼晶竜の幼竜までの魔力循環経路が再形成されました》


《安定波長伝達率を再計測しています》


ジョウゴ「幼竜のところへ戻ろう」


 俺たちは急いだ。


 ただし走りすぎない。


 洞窟内で転ぶようなことだけは避ける。


◇◇◇


 蒼晶竜のいる空間が近づいた時点で、変化が分かった。


 明るい。


 周囲の青晶鉄鉱が、今までとは比べものにならないほど強く、それでいて柔らかな青い光を放っている。


 そして洞窟全体を、一定のリズムで魔力が流れていた。


 トクン。


 トクン。


 まるで山そのものに心臓があるような感覚だった。


《青晶洞・魔力循環状態》


《蒼月泉》


《↓》


《青晶鉄鉱主鉱脈》


《↓》


《第一断裂部《蒼月安定導路》》


《↓》


《第二断裂部《蒼月安定導路》》


《↓》


《蒼晶竜生息域》


《魔力循環:再形成》


《安定波長伝達:大幅改善》


 蒼晶竜は立ち上がっていた。


 巨大な身体を起こし、洞窟の奥を見つめている。


蒼晶竜「……聞こえる……」


 その声が震えていた。


蒼晶竜「……泉の声が……」


 九十年以上。


 途切れていた声。


蒼晶竜「……あの日より……失われていた……蒼月の声が……」


 その足元。


 幼竜の身体を淡い青白い光が包んでいた。


《蒼晶竜の幼竜》


《Lv:1》


《蒼月晶安定波長:受容中》


《魔力核安定度:上昇》


《重度魔力欠乏:改善中》


《生命力:回復傾向》


ミナ「……届いた」


ジョウゴ「ああ」


 幼竜が目を開ける。


 ゆっくりと前脚を床へつけた。


 昨日のように震えながらではない。


 身体を起こす。


 立ち上がる。


 そして。


幼竜「キュッ!」


 一歩。


 小さな脚が前へ出た。


 もう一歩。


 さらに一歩。


 ミナのところまで歩いてくる。


ミナ「来た……!」


 ミナがしゃがみ込む。


 幼竜はその目の前まで来ると、小さな頭をミナの手へ押しつけた。


幼竜「キュゥ」


ミナ「よかった……」


 まだ完全回復ではない。


 状態表示にも《改善中》とある。


 だから、これで全部終わったとは言えない。


 それでも、昨日まで自分の身体を支えるだけで精一杯だった幼竜が、自分の意思で歩いた。


 蒼月泉の力は確かに届いている。


 俺たちが架けた橋を通って。


 九十年以上途切れていた、蒼月の流れが戻ってきたのだった。

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