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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第二章 CROSS社契約編

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105/133

第52話 蒼き息吹の主と小さな生命反応

 《大型知性体周辺に別の魔力反応を検出》


 《小型生命反応:1》


 銀麦亭の食堂で、その表示を見た俺たちは言葉を失っていた。


 青晶洞の深部にいた《蒼き息吹の主》。


 昨日までは第一分岐よりかなり奥に留まっていた巨大な存在が、今はゆっくりと第一分岐方向へ移動している。


 しかも、その近くには新しく小型の生命反応まで確認された。


ミナ「子供……なのかな?」


ジョウゴ「まだ分からない」


 俺――ジョウゴは表示を見ながら答えた。


 小型だから子供とは限らない。


 別種の魔物かもしれないし、小さな精霊のような存在かもしれない。


 それどころか、観測器の誤認という可能性だって完全には否定できない。


 今分かっているのは、小さな生命反応が一つ増えたということだけだ。


レント「大型反応との距離は?」


 詳細情報を開く。


《大型知性体との推定距離:約4.2メートル》


《両反応は同方向へ低速移動中》


カイト「一緒に動いてる?」


ジョウゴ「その可能性は高そうだな」


ミナ「だったらやっぱり……」


 ミナが言いかける。


 しかし、その時。


 ポーン。


 新しい通知が届いた。


《シズナ冒険者ギルドより緊急連絡》


《青晶洞第一次探索参加者は、可能であれば冒険者ギルドへお越しください》


《強制依頼ではありません》


《現在、青晶洞への立入禁止措置は継続中です》


カイト「呼ばれたな」


レント「向こうも観測しているはずだ」


ジョウゴ「行こう」


 今日はもう探索へ出るつもりはなかった。


 ただ、状況が変わった。


 それなら話くらいは聞いておいた方がいい。


◇◇◇


 シズナ冒険者ギルドへ到着すると、すぐに奥の会議室へ通された。


 待っていたのは昨日と同じ副支部長のグレイス。


 そして数名のギルド職員だった。


 机の上には《青晶洞》の地図。


 さらに、俺たちが第一分岐へ設置した《定点魔力観測器》から送られてきた情報が表示されている。


グレイス「来てくれて助かる」


ジョウゴ「状況は?」


グレイス「まず大型知性体についてだが、移動は停止した」


 地図。


 第一分岐。


 右側。


 そこから約百八十メートル。


 赤い印。


 止まっている。


ジョウゴ「第一分岐までは来てない?」


グレイス「ああ。今のところはな」


ミナ「小さい反応は?」


グレイス「こちらも大型反応の近くで停止している」


レント「別行動はしていない?」


グレイス「確認されていない」


 なら。


 少なくとも。


 巨大な存在に追われている何か、という可能性は低そうだ。


グレイス「もう一つ分かったことがある」


 副支部長が観測記録を切り替える。


《大型知性体・魔力放出周期》


《小型生命反応確認後、平均放出量低下》


ジョウゴ「下がった?」


グレイス「約二割だ」


カイト「なんで?」


グレイス「それが分かれば苦労せん」


カイト「ですよね」


 でも。


 悪い。


 変化。


 ではない。


 魔力濃度。


 上がり続ける。


 より。


 放出。


 減った。


 方。


 周辺。


 影響。


 小さい。


 はず。


グレイス「さらに洞窟入口の魔力濃度も、わずかだが低下し始めている」


ミナ「落ち着いてきた?」


グレイス「可能性はある」


 ただし。


 理由。


 分からない。


◇◇◇


 グレイス副支部長が椅子へ深く腰掛ける。


グレイス「本来なら今日はこれ以上動かず、観測を続ける予定だった」


ジョウゴ「予定だった?」


グレイス「状況が変わった」


 嫌な。


 言い方。


グレイス「定点魔力観測器が音声を拾った」


「……音声?」


 昨日。


 あいつ。


 話した。


 なら。


 あり得る。


グレイス「完全ではない。洞窟内の反響が強く、一部しか解析できていない」


 記録。


 再生。


 される。


 ザーッ。


 雑音。


 岩。


 擦れる。


 音。


 そして。


 低い。


 声。


???『……まだ……眠れ……』


 途切れる。


 次。


???『……外は……危うい……』


 また。


 雑音。


 最後。


???『……我が……守る……』


 音声。


 終わる。


「……」


 会議室。


 静か。


ミナ「守る……?」


カイト「誰を?」


 答え。


 候補。


 一つ。


 ある。


 大型反応。


 近く。


 いる。


 小型。


 生命反応。


レント「小型生命体に話しかけている可能性が高い」


グレイス「我々もそう考えている」


ジョウゴ「敵対関係じゃない」


グレイス「少なくとも現在の観測結果からは、その可能性は低い」


 むしろ。


 守ってる。


 可能性。


 ある。


◇◇◇


ミナ「外が危ないって、どういう意味でしょう?」


 そこ。


 俺も。


 気になる。


 青晶洞。


 外。


 今。


 大きな。


 異変。


 ない。


 北東草原。


 普通。


 魔物。


 いる。


 だけ。


 でも。


 あの存在。


 何を。


 外。


 危険。


 判断。


 している?


グレイス「二つの可能性を考えている」


 副支部長。


 指。


 一つ。


 立てる。


グレイス「現在の北東草原そのものを危険だと判断している」


 そして。


 二つ目。


グレイス「あるいは、あの存在にとっての『外』が、我々の考える洞窟の外とは違う」


レント「もっと広い意味?」


グレイス「そうだ」


ジョウゴ「青晶洞のさらに深部に、別の場所がある?」


グレイス「可能性の話だ」


 洞窟。


 内部。


 まだ。


 二十七%。


 程度。


 しか。


 調査。


 できてない。


 深部。


 何。


 ある。


 分からない。


◇◇◇


 その時。


 ギルド職員。


 一人。


 部屋。


 入る。


ギルド職員「副支部長」


グレイス「どうした」


ギルド職員「観測器に変化です」


 全員。


 表示。


 見る。


《大型知性体:移動再開》


《移動方向:第一分岐》


《小型生命反応:随伴》


カイト「また動いた」


 距離。


 百八十。


 百七十。


 百六十。


 ゆっくり。


 近づく。


 でも。


《敵対反応:なし》


 変わらない。


グレイス「速度は?」


ギルド職員「極めて低速です」


グレイス「……」


 副支部長。


 考える。


 そして。


 俺たち。


 見る。


グレイス「ジョウゴ」


ジョウゴ「はい」


グレイス「君ならどうする?」


「俺?」


 まさか。


 聞かれる。


 思ってなかった。


ジョウゴ「俺なら……」


 考える。


 こちら。


 敵意。


 ない。


 相手。


 敵意。


 ない。


 しかも。


 一度。


 会話。


 成立。


 している。


 なら。


ジョウゴ「まず待ちます」


グレイス「待つ?」


ジョウゴ「向こうから第一分岐まで来るなら、こっちから深部へ入る必要はありません」


 相手。


 領域。


 奥。


 勝手。


 入る。


 より。


 向こう。


 来る。


 待つ。


 方。


 いい。


ジョウゴ「第一分岐より手前の安全が確認されている場所で待って、向こうが止まったら話しかける。ただし武器は抜かない」


レント「俺も賛成だ」


ミナ「私も」


カイト「盾も背負ったまま?」


ジョウゴ「ああ」


 戦う。


 姿勢。


 見せない。


 それ。


 大事。


グレイス「……なるほど」


 副支部長。


 少し。


 考える。


 そして。


 頷く。


グレイス「ギルドとしても同じ判断だ」


◇◇◇


《特殊依頼が発生しました》


《《蒼き息吹の主》接触調査》


《依頼区分:特殊》


《目的:大型知性体との意思疎通》


《副目的:小型生命反応の確認》


《戦闘:原則禁止》


《対象への攻撃:禁止》


《深部への進行:禁止》


《第一分岐周辺で接触してください》


 普通。


 討伐。


 依頼。


 全然。


 違う。


 でも。


 AWO。


 らしい。


 依頼。


 だと思う。


グレイス「無理に受ける必要はない」


ジョウゴ「みんなは?」


ミナ「行く」


カイト「ここまで来たらな」


レント「一度接触している俺たちの方が適任だろう」


 なら。


ジョウゴ「受けます」


《《蒼き息吹の主》接触調査を受注しました》


◇◇◇


 今回は。


 ギルド。


 用意。


 する。


 もの。


 ある。


 まず。


 通信。


 魔道具。


《遠隔音声記録石》


 俺。


 持つ。


 会話。


 ギルド。


 リアルタイム。


 聞ける。


 でも。


 向こう。


 ギルド。


 声。


 聞こえない。


 俺たち。


 会話。


 邪魔。


 しない。


 ため。


 らしい。


 さらに。


《緊急帰還石》


 四人。


 一個。


 ずつ。


 ただし。


 青晶洞。


 転移設備。


 ない。


 から。


 通常。


 帰還。


 ではない。


 緊急。


 専用。


 使用。


 十秒。


 静止。


 必要。


 戦闘中。


 使いにくい。


 それでも。


 保険。


 ある。


 方。


 いい。


グレイス「そして最後に」


 副支部長。


 俺。


 見る。


グレイス「相手が会話を拒絶した場合、すぐ帰れ」


ジョウゴ「分かりました」


グレイス「小型生命体を無理に確認する必要もない」


ジョウゴ「はい」


 目的。


 情報。


 でも。


 優先。


 安全。


 それ。


 忘れない。


◇◇◇


 青晶洞。


 入口。


 到着。


 今日は。


 ギルド調査員。


 四人。


 外。


 待機。


 でも。


 中。


 入る。


 俺たち。


 四人。


 だけ。


 武器。


 装備。


 してる。


 でも。


 抜かない。


 星月。


 外部魔力流入。


 手動遮断。


 維持。


《周辺魔力濃度:通常値比162%》


ジョウゴ「下がってる」


ミナ「昨日より全然低い」


 まだ。


 高い。


 でも。


 昨日。


 入口。


 百七十六。


 第一分岐。


 二百以上。


 だった。


 それ。


 考える。


 確実。


 落ち着いてる。


◇◇◇


 ブルーケイブバット。


 二体。


 見つける。


 でも。


 向こう。


 襲ってこない。


 天井。


 止まってる。


 クリスタルスライム。


 一体。


 いる。


 でも。


 通路。


 端。


 移動。


 だけ。


カイト「魔物も落ち着いてる?」


レント「魔力濃度の低下と関係している可能性はある」


 戦闘。


 なし。


 第一分岐。


 到着。


《周辺魔力濃度:通常値比184%》


 昨日。


 二百四十八。


 まで。


 上がった。


 場所。


 かなり。


 下がってる。


 そして。


 右。


 通路。


 見る。


 暗い。


 でも。


 何か。


 いる。


 分かる。


 ズ……。


 ズズ……。


 ゆっくり。


 近づく。


ミナ「来る……」


ジョウゴ「武器はそのまま」


カイト「分かってる」


 俺たち。


 待つ。


 やがて。


 暗闇。


 二つ。


 黄色。


 目。


 現れる。


 そして。


 前回。


 より。


 近い。


 から。


 姿。


 少しずつ。


 見える。


 巨大。


 頭。


 蒼黒い。


 鱗。


 そこ。


 青い。


 結晶。


 混じる。


 角。


 後ろ。


 伸びる。


 首。


 太い。


 地面。


 近く。


 下げている。


 やっぱり。


 どう見ても。


 竜。


 近い。


 姿。


《???》


《Lv:??》


《関係:中立》


 でも。


 俺。


 そっち。


 より。


 別。


 見る。


 巨大。


 頭。


 少し。


 後ろ。


 何か。


 動く。


「……」


 小さい。


 影。


 青白い。


 光。


 纏ってる。


 四本。


 足。


 小さな。


 翼。


 そして。


 大きな。


 瞳。


ミナ「小さい……ドラゴン?」


《???》


《Lv:1》


《状態:衰弱》


「……衰弱?」


 俺。


 表情。


 変わる。


 巨大。


 存在。


 黄色。


 目。


 俺たち。


 見る。


???「……また……来たか……人よ……」


ジョウゴ「はい」


 俺。


 一歩。


 だけ。


 前。


 出る。


 でも。


 距離。


 十分。


 残す。


ジョウゴ「あなたと話すために来ました」


 沈黙。


 そして。


 巨大。


 存在。


 小さな。


 竜。


 見る。


???「……話……か……」


ジョウゴ「はい。あなたたちと戦うつもりはありません」


 俺。


 星月。


 触らない。


 両手。


 見える。


 位置。


 置く。


 敵意。


 ない。


 示す。


 巨大。


 黄色。


 目。


 細く。


 なる。


 そして。


???「……ならば……聞こう……」


《特殊イベント《蒼き息吹の主》》


《対話段階へ移行しました》


 進んだ。


 でも。


 俺。


 システム。


 より。


 小さな。


 竜。


 見る。


 Lv1。


 衰弱。


 それ。


 気になる。


ジョウゴ「その子は?」


 巨大。


 存在。


 動かない。


 でも。


 空気。


 少し。


 変わる。


???「……我が……最後の仔だ……」


「……」


 最後。


 仔。


 ミナ。


 息。


 飲む。


???「……この仔を……外へは……出せぬ……」


ジョウゴ「なぜ?」


 低い。


 呼吸。


 洞窟。


 響く。


 でも。


 前。


 ほど。


 魔力。


 溢れない。


???「……この地の……魔力が……枯れ始めている……」


「え?」


 俺たち。


 顔。


 見合わせる。


 枯れてる?


 逆。


 だ。


 今。


 青晶洞。


 魔力。


 増えた。


 それ。


 問題。


 なってる。


ジョウゴ「でも、洞窟の魔力濃度はここ数日で上がっています」


 黄色。


 目。


 俺。


 見る。


???「……それは……我が……与えている……」


 やっぱり。


 あの。


 魔力。


 この。


 存在。


 出してる。


???「……この仔を……生かすために……」


 小さな。


 竜。


 弱く。


 鳴く。


幼竜「……キュゥ……」


 ミナ。


 明らか。


 顔。


 変わる。


ミナ「……助けられないの?」


 巨大。


 存在。


 ミナ。


 見る。


 しばらく。


 沈黙。


 そして。


???「……人の癒やしでは……足りぬ……」


 その言葉。


 同時。


 システム。


 動く。


《対象情報の一部が開示されました》


《種族情報を確認》


《蒼晶竜》


《個体名:未確認》


《古竜種》


《関係:中立》


 やっぱり。


 竜。


 しかも。


 古竜種。


 そして。


 小さい。


 方。


《蒼晶竜の幼竜》


《Lv:1》


《状態:重度魔力欠乏》


《生命力低下》


 ミナ。


 口。


 押さえる。


カイト「魔力欠乏……」


レント「だから親が魔力を放出している?」


 古竜。


 ゆっくり。


 目。


 閉じる。


蒼晶竜「……そうだ……」


 初めて。


 明確。


 肯定。


 した。


蒼晶竜「……我が力を……洞へ満たし……鉱脈を通し……この仔へ……戻している……」


 青晶鉄鉱。


 魔力。


 吸う。


 伝える。


 鉱脈。


 全体。


 魔力経路。


 なる。


 バルガ。


 予想。


 合ってた。


 でも。


 目的。


 違った。


 あれ。


 自然。


 異常。


 じゃない。


 この。


 親。


 子供。


 生かす。


 ため。


 必死。


 魔力。


 流してた。


 だから。


 青晶洞。


 魔力濃度。


 急上昇。


 した。


 そして。


 川。


 下流。


 まで。


 影響。


 出た。


ジョウゴ「いつから、その状態なんですか?」


蒼晶竜「……三日前……」


 最初。


 異常。


 確認。


 された。


 時期。


 一致。


 する。


蒼晶竜「……仔の……魔力核が……弱った……」


 魔力核。


 聞いた。


 こと。


 ない。


 でも。


 重要。


 器官。


 らしい。


蒼晶竜「……我では……もう……支えきれぬ……」


 その言葉。


 聞いた。


 瞬間。


 巨大。


 身体。


 少し。


 揺れる。


 そして。


 初めて。


 状態。


 表示。


 出る。


《蒼晶竜》


《Lv:??》


《状態:魔力大量消耗》


「……」


 こっち。


 も。


 弱ってる。


 子供。


 助ける。


 ため。


 自分。


 魔力。


 大量。


 使ってる。


 このまま。


 続ければ。


 どうなる。


 考える。


 までも。


 ない。


 俺。


 聞く。


ジョウゴ「助ける方法はありますか?」


 古竜。


 目。


 開く。


 俺。


 見る。


 長い。


 沈黙。


 そして。


蒼晶竜「……ある……」


 システム。


 鳴る。


《特殊イベント《蒼き息吹の主》が進行しました》


《新規クエスト条件を確認》


 でも。


 まだ。


 依頼。


 表示。


 されない。


 古竜。


 ゆっくり。


 頭。


 上げる。


蒼晶竜「……人よ……もし……真に……我らと争う意思がないのなら……」


 黄色。


 目。


 俺たち。


 見る。


蒼晶竜「……一つ……頼みがある……」


 その瞬間。


《特殊クエストが発生しました》


《蒼晶竜の願い》


《詳細条件:未開示》


《受注選択:保留》


 俺たちが調べていた。


 青鉄砂。


 蒼色鉱脈。


 青晶鉄鉱。


 青晶洞。


 異常。


 魔力。


 全部。


 一つ。


 繋がった。


 でも。


 その先。


 待っていた。


 もの。


 討伐。


 する。


 ボス。


 ではなかった。


 子供を生かすために。


 自分の力を削り続けていた。


 一頭の。


 親だった。

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