間話 ナイショの水着選び
間話です。今回は、海に行くことが決まってから出発するまでの間が一日空いていた理由が明かされます。時系列的には三十話頃にあたります。それでは、どうぞ。
海旅行が決まった、次の日。
「しろさん!」
「はい、ひまりさま」
「水着、買いに行こう!」
突然の誘いに、しろは目を瞬かせる。
「水着ですか?」
「うん。 ほら、海行くって決まったじゃん。 でも私、去年のやつもう小さくなっちゃってて」
「なるほど」
「だから新しいの選びたいの!」
「分かりました」
こうして二人は、駅前のショッピングモールへ向かった。店内には夏らしい水着がずらりと並んでいる。
「うわー、いっぱいある!」
ひまりの目が輝く。
「こっちも可愛い! あ、こっちはシンプル!」
「本当に種類が多いですね」
しろは少し離れたところから眺めている。
「しろさんは?」
「私は動きやすいものがいいですね」
「せっかく海行くんだから、ちゃんと選ぼうよ」
「私は海で泳ぐ予定はありませんので」
「いーや絶対に泳がせる」
「ひまりさま」
「私は泳ぎませんよ」
「……はい」
少々の圧力に、ひまりは素直に引き下がった。しばらく店内を見て回り、それぞれ気になったものを手に取っていく。
「これどうかな?」
「似合うと思いますよ」
「じゃあ、こっちは?」
「そちらも」
「しろさん、何でも似合うって言ってない?」
「そういうつもりはありませんが……」
「絶対そうだ!」
ひまりが笑う。その後、試着室へ。しばらくして。
「しろさん、どう?」
「よく似合っています」
「ほんと?」
「はい。 ひまりさまらしいと思います」
「ありがと!」
ひまりは鏡の前でくるりと回る。そして、しろが選んだものを見て少し驚いた。
「……しろさん、そっちにしたんだ」
「はい」
「思ったより大人っぽい」
「そうでしょうか?」
「うん」
しろは鏡の前でサイズを確認する。ひまりはその隣に立って、自分の水着と見比べた。
「……なんか、私と雰囲気が全然違うね」
「ひまりさまのほうが明るくて可愛らしいですよ」
「そういう意味じゃなくて!」
ひまりは少し悔しそうに笑う。
「なんていうか……しろさんって、こういう服を着ると妙に様になるんだよね」
「ありがとうございます……?」
「私、ちょっと負けた気がする」
「勝負だったのですか?」
「今決まった」
「勝手に勝負にしないでください」
「だって悔しいんだもん!」
しろはくすっと笑った。
「ひまりさまはひまりさまで、とてもお似合いですよ」
「……ほんと?」
「はい」
「じゃあ、いいや」
ひまりはすぐに笑顔へ戻った。
「よし、これ買お!」
「はい」
二人は水着を選び終え、店を出る。そのままフードコートで休憩することになった。
「海、楽しみだね」
「そうですね」
「湊、どんな反応するかな」
「……ご主人がどうかされましたか?」
「なんでもない!」
ひまりは意味ありげに笑った。しろは首を傾げる。
「そういえば、優斗も来るんだよね」
「はい」
「じゃあ四人で海かぁ」
「楽しみですね」
「うん!」
二人は顔を見合わせる。
「じゃあ、海の日まで秘密ね」
「何をでしょう?」
「水着」
「……なるほど」
しろは小さく笑った。
「では、秘密にしておきましょう」
「決まり!」
こうして二人だけの水着選びは終わった。このとき二人が交わした秘密が、数日後。湊と優斗を大いに動揺させることになるとは――
もちろん、この時点では誰も知らない。
今回は久しぶりの間話でした。本編では描かれなかった、海旅行前のひまりとしろの水着選び。たびたび描かれていますが、この二人、文化祭をきっかけにいつの間にかかなり仲良くなってるんですよね。あえて湊が知らないところで仲良くなっているというのも、個人的には結構お気に入りです。そして今回、ひまりがちょっとだけ「負けた気がする」と思う場面も入れてみました。まあ……しろさんですからね。何とは言いません。とりあえず、海編で男性陣が撃沈した理由の一端は、この日にすでに完成していたということで。次回からはまた本編に戻ります。夏休み、そしてお盆編はもう少し続きます。感想、ブックマーク等いただけると幸いです。次回、第四十二話もお楽しみに。




