眩い神の街
読者の方には申し訳ないのですがストーリーの大改変を行う意向を固めたので、エピソード7(このエピソード)からストーリーに変更が加わります。
混乱するとは思いますが、頑張って食いついてきてください。ファイト❤︎
対汚染域特別国家────ヘイルフェン。
日々拡大する汚染の進行阻止および、汚染域奪還を目的に世界調律機関によって特別設置された国。
汚染域をぐるりと囲うような国土を持ち、そこには異なる八つの都が配置されている。
そして各都には神が住んでおり、都はそれら八柱の神の名をそれぞれ冠することで守護下に置かれている。
第一都市クレイア。第二都市ゲリエ。第三都市ブルーメン。第四都市クーパス。第五都市ファブラン。第六都市オーリエ。第七都市フツヌシ。第八都市フーリ。
これら都ごとには、綺麗好きな冒険者の本拠地であるギルドが存在し、その長であるギルドマスターたちが国の将来を決定している。
────と、ここまでがヒーニアの説明だ。
やけに誇らしげだったのが印象に残っている。
灰色の大地に山羊を置いていき、境界線の近くに存在する簡易拠点で馬を借りて走ること数十キロ。
僕たち三人は、巨大な城壁の門をくぐって八番目の都フーリに繰り出した。ちなみにフーリはヘイルフェンの北西に位置しているらしい。
視界に広がるのは橙色の瓦屋根と白塗りのレンガで形作られた街並み。
整然と舗装された道の路肩には、露店がいくつも連なっている。そこに並ぶのは果実や宝石、トカゲのような動物の干し肉など千差万別だ。
「しかし、色んな奴がいるな」
エルフやドワーフ、獣人。他にもファンタジーで見たままの姿の奴らが、通行人として平然とすれ違っていく。
「ヘイルフェンには各国から浄化要員が集まりますからね!そりゃあもう種族の見本市ですよ!まあ……うちは希望者すら来ない零細ギルドなので、ここにいる方全員移住者か他のギルドの方なんですけどね……ははは」
ヒーニアの口から乾いた笑いがスーッと漏れる。
「今から行くのはフーリギルド。フーリに所属してる綺麗好きな冒険者の拠点だ」
横を歩くヴィルが説明口調で言った。
「ギルド……」
「成果報告のついでに、加護のねぇ異世界人が汚染域をうろついてたって話を伝えなきゃいけねぇからな。一緒に来てもらうぞ」
皮肉っぽい笑み。僕はため息をついた。
僕だって好きでこの世界に来たわけじゃないんだけど。
「それにしても、どうしてジンは蒼き月の月光の影響を受けないんでしょうか?加護もないというのに……」
ヒーニアが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「そんなに加護が大事なのか?」
「大事も大事!入域する上での必須項目ですよ!!」
食い気味にヒーニアが言ってくる。
「生身で汚染域に入れば蒼き月や夢幻世界の影響を受けて一瞬でお陀仏だぜ」
首もとを掻っ切るジェスチャーでヴィルが脅してくる。
だが、僕はまだイマイチピンときていなかった。それは、汚染域の中で死ななかった異世界人を一人知っていたからだと思う。
「ちょっと大袈裟じゃないか?」
「大げさなんかじゃないですよ」
僕が呆れ半分に笑うと、ヒーニアに真面目な顔で否定されてしまった。
だがヒーニアはすぐに顔を崩し、ニコッと笑って続ける。
「ではそんなジンに驚くことを教えてあげましょ~う!第一層、墓場全体を蒼く染める月────蒼き月ですが……。何と!あれも幻血獣なのですっ!」
人差し指をヒョイと立てて言い放ったヒーニアの言葉に、僕は耳を疑った。
「嘘だろ?月だぞ????」
「一つの星すら生み出すんですよ〜あの世界は」
幻血獣。汚染域だけに生息するモンスターの総称。
どうやらヒーニアは、あの蒼い月が蝙蝠やら動く彫刻やらと同類だと言いたいらしい。
にわかに信じがたい。だけど……。
汚染域の蒼い月とは違う、ヘイルフェンを照らす白い陽光。僕はそれを見上げてため息をついた。
汚染域だけに生息……か。
「蒼き月の月光には、有機物を灰にする放射能が含まれています。第一層の灰、ジンも見たでしょう?あは全て蒼き月の仕業です。なので入域の際は、放射能から身を守ってくれる神の加護が必須というわけ……なんですが」
ヒーニアは目を細めて訝しげに。
その圧にたじろぎながらも、僕は頷く。
「僕は、なぜかそれが無くても平気……?」
「そういうことです!あーあまったく、神様いらずなんて罰当たりですね~!!あ~あ~!!」
「……?いいことじゃないか」
「断じてそんなことはありません!!」
なぜかヒーニアがすぐに否定してくる。
神に依存しない存在は悪だとでも言いたいのだろうか。
「ヒーニアは神様大好きだからな。加護のいらねぇお前に、神様を否定された気分にでもなってんだろうよ。真面目に取り合ってるだけ無駄だ無駄」
「なるほど……」
つまらなそうに耳をほじるヴィルが、ヒーニアの不機嫌の理由を教えてくれた。
途端、ヒーニアの顔がみるみる真っ赤になっていく。
「て、適当言わないでください!まったくもう!私先行ってますから!!」
そう言ってヒーニアは、ツカツカと足早に前に進んでいく。
本当に先へ行ってしまった。
「いいのか?」
「ほっとけ。どうせすぐそこだ」
ヴィルが顎でクイッと前を示す。通りを抜けた先には、開けた場所が見えた。
そこは円形の広場だった。
街にあるいくつもの道が、この場所に集約していて人通りもかなりある。
キョロキョロとしていると、キラリと何かに反射した光が僕の眼を射た。
光の方向を見ると、白いタイルが敷き詰められた広場の中心に、大きな建物が主張強く鎮座していた。
行き交う人々を見守るように静かに佇むその外観は、まるで大聖堂のよう。
「あれが、汚染域の浄化を目指す俺ら綺麗好きな冒険者の拠点────フーリギルドだ」
「大きいな……」
その建物に向かって真っすぐ向かっていくヴィルに、僕もついていく。
純白に光る二柱の鐘楼。クジャクの構造色のように輝くステンドグラス。黄金の装飾がなされた大門。それらはまるで神を祀る神殿のように見えた。
「ジン!ヴィル!遅いです!」
大扉の前でヒーニアが頬を膨らませて、腰に手を当てていた。
その姿を見て、ヴィルが舌打ち一つ。
「なんでテメーに合わせなきゃいけねぇんだボケ」
「女子に合わせるのが紳士ってものですよヴィル。知らないんですか?やはりお子ちゃまですね。ププッ」
「本当の男は女に左右されねぇんだよ!」
「やーいヴィルの亭主関白〜!ジンはこういうのになっちゃダメですよ〜?」
「僕は尻に敷かれたいタイプだからな。平気だ」
「「……」」
僕がそう何気なく答えると、急に静かになった。見ると、二人とも目をパチクリさせている。
「なんだよ冗談だぞ」
「いや……何というかジンの場合、奥さんの尻に敷かれてる絵が想像できすぎて、ちょっと冗談に聞こえないんですよね。大丈夫ですか……?」
本気で心配するような目で、ヒーニアは僕の手を取る。
「過去になんかあったのか?俺でいいなら相談のるぞ……?」
ヴィルにも、なぜか怖いほど気を遣われてしまっている。
あのトゲトゲしていたヴィルにここまで心配されるなんて、僕には一体どんなイメージがついているってんだ……。
自分のユーモアへの信頼度がグンッと下がり、もうこの手の冗談は控えようと僕は心に決めた。
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<幻血種クリムゾア個体識別ファイル>
【No.001 蒼き月】等級S
第一層に生息する灰青色の月型幻血獣。
その月光は、生物の細胞や人工物を灰に変える力を持ち、加護がなければ対抗は不可能。そのため汚染域への立ち入りは、綺麗好きな冒険者のみに制限される。
自我は現在まで確認できず、ただ無差別に月光を振りまいている可能性が高い。
また、放射能効果範囲内では精霊は存在できず、精霊術式の行使は不可能。このことから汚染区内では魔力を媒介にした魔術および魔法の行使、またはスキルによる戦闘を推奨。
物体、生物の存在を許さない強力無比な放射能。そして地域一帯に影響を与える夢幻世界や大いなる巨壁と並ぶ階層支配者であることから、この個体を等級Sとし、汚染浄化の重要課題に設定する。




