【クラウス邸・書斎での会話、続き】 【クラウス邸・書斎 静謐なる対峙】
【クラウス邸・書斎での会話、続き】
ゼイランの言葉に、部屋の空気が一瞬凍りついた。
「……実は、以前リュシェルと共に士官学校内で活動していた時――とある“女性”の姿を見かけました」
レオンが目を細める。「女性?」
「はい。その姿は……貴方の、母親……レオナ様のものに酷似していました」
クラウスの眉がわずかに動き、ユリウスが息を呑む。
「記憶違いかもしれません。しかし、その気配、佇まい――ただの幻覚とは思えませんでした。教団が“何か”を隠しているのは確かです」
レオンは一瞬、感情を押し殺すように目を伏せたが、すぐに真っ直ぐゼイランを見据える。
「……母さんのことも、調べてくれるか?」
「はい」
ゼイランは深く頭を下げる。
「それともう一つ。妹が囚われている場所についても、ある情報を得ています。教団が活動の拠点としている、スラム街の娼館――その地下に監禁されている可能性が高いと」
重たい沈黙の中で、ゼイランは拳を握りしめた。
「……士官学校に戻った後、妹とレオナ様の居場所を探り出し、情報を必ず届けます。どんな犠牲を払ってでも」
---
【クラウス邸・書斎 静謐なる対峙】
クラウスが重く口を開いた。
「――私の妻が教団に囚われているなど、貴様に一言も漏らしておらん。何故そのことを知っている?」
その声音には、歴戦の騎士としての威圧が宿っていた。クラウスの鋭い眼光がゼイランを射抜く。
「……もしや貴様、やはり教団の手の者なのか?」
重苦しい空気が張りつめる。だが、ゼイランは一歩も引かなかった。
「レオナという名前を、リュシェルが一度だけ口にしました。それが“何”であるかを考えていた時、私は――この屋敷で、貴婦人の自画像を見たのです」
ゼイランの目が静かに燃えている。
「一瞬見ただけですが、その姿はあまりにも似ていた。だから、記憶に焼きついて離れなかったのです。そして……」
彼はクラウスをまっすぐ見据える。
「騎士団が、貴方が、これほどまでに教団に対して動こうとしない理由。おおよそ見当がつきます」
言葉が部屋を満たしたあと、長い沈黙が落ちた。
クラウスが目を伏せ、口元を歪めた。
「……相当、頭がキレるようだな」
レオンもわずかに息を吐く。
クラウスは再びゼイランとユリウスに視線を向けた。
「よし……わかった。頼むぞ、ゼイラン。ユリウス。お前たちにこの件を託す」
---




