【欺瞞の鐘】塔に集う影
【欺瞞の鐘】塔に集う影
王都の士官学校に異変が起き始めたのは、レオンたちが地下迷宮で修行を積んでいる最中だった。
新たに赴任した教官たちは、どこか冷徹で、人の心を読んだような言動を繰り返していた。
旧来の温かな空気は影を潜め、士官学校全体が“何か”に取り込まれたような沈黙を纏い始めた。
「……お前、最近の訓練、やり方が違うって思わないか?」
「違う、違う……今の教えこそ正しき道……」
少しでも疑問を口にした生徒たちは、翌日には“おとなしく”なって戻ってきた。
笑顔は張りつめた仮面のようで、目は焦点を失い、どこか虚ろだった。
■ リュシェルの思惑
リュシェル――あの“かつての先生”は、もはや完全に別人だった。
彼女は士官学校の校長と手を組み、独自の教育法という名の「洗脳術」を導入。
生徒たちを王都の私兵として調整し、さらなる“器”候補を育てるための実験場と化していた。
その背後には、魔神教団の影がちらつく。
器を目覚めさせるための素体の確保。
忠誠心を植えつけることで、躊躇なく命を差し出す兵士の量産。
彼女は笑った。
「英雄なんて要らない……私の理想は、完全なる秩序。命すら道具として扱える“美しき世界”だ」
その歪んだ理想の果てに、リュシェルは自らを“創造者”と定義していた。
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■ 塔に逃れた生徒たち
だが、全ての生徒が洗脳に屈したわけではなかった。
一部の生徒――特に意志の強かった者、精霊の加護を受ける者、感応力の高い者たちは、“違和感”を感じて脱出を試みた。
彼らは王都近くにそびえる放棄された魔法塔――《静寂の塔》に身を潜めていた。
かつて研究者たちが魔法理論を研鑽していたその塔は、今や亡命者たちの避難所となった。
「レオン先輩たちに……連絡を取らないと……!」
その中の一人、名をユリウスという若者が、レジスタンスの古い術式を用いて地下にいる3人へ向けて救助信号を発信した。
──だが、それすらもリュシェルの“掌の上”であった。
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