個室ってけっこう緊張するよね
依頼主の女は喫茶の個室で待っているらしく。私達はその喫茶へ向かった。
「ここです!喫茶『オジサンの傘』!依頼の話するときなんかでよく使われるから覚えておいて損はないですね!」
喫茶は大通りから一本入った路地に合って、落ち着いた雰囲気だけれども綺麗すぎるということもなく、適度に汚い感じの親しみの持てる店構えだった。
私達は重そうな木製の扉を開けて店の中に入る。
「ヴィオレさんと待ち合わせをしているチェルヴォニです!」
「チェルヴォニ様ですね…こちらへ。」
扉を空けるといつの間にか店員が近くに来ていて案内してくれた。背筋がビシっと伸びていてスッと歩いている。この世界の人ってみんな体幹強そう。
「じゃ、さっきの香水を付けてください…今…」
チェルヴォニさんに言われるままに私とシアは香水を付ける。チェルヴォニさんも何やら自前のものをつけていた。
そして依頼主の個室に入る。チェルヴォニさんの背筋が若干伸びた気がした。あと口角がニッと上がった。ガチャりと扉を空ける。
「ヴィオレさん!お待たせしました!今日は会えて嬉しいです!!」
私達も続いて部屋に入る。
「遅かったわね、ワタシを待たせんじゃないわよ。あと5分遅かったら帰ってたわよ?」
部屋の中には女性が座っていた。綺麗な紫色のロングヘアーにキリっと釣り上がった目、それでいても顔のパーツは上品に整っておりかなりの美人だった。わあい美人。でも雰囲気コワイ。
「で、その後ろの娘達は?」
「フフフ、紹介します!アヤちゃんとシアちゃんです!二人共ですね!私調べで今最も勢いのある冒険者です!!」
「へえ、、、ふうん。」
ヴィオレと呼ばれた女性は私達を頭の上から下まで値踏みするように見た。突き刺すような視線で若干ゾクゾクした。
「どうも、Dランクの冒険者のアレシアです。シアでいいですよ。よろしくお願いします。」
「シアとパーティ組んでます…Fランク冒険者のアヤ=クリバヤシです…あっアヤって呼んでください…よろしくお願いします…」
私達も挨拶をする、流石シアは全く物怖じしない。私はちょっとだけ緊張した。
「ふうん、Fランクね…ま、いいわ、チェルヴォニが連れて来たんでしょ。私はヴァイオレッド。ヴァイオレッド=プレヴェーユよ、ヴィオレでいいわ。とりあえず座りなさいよ。」
「はい!では失礼して!」
そう返事したチェルヴォニさんはもう座ってた。失礼してましたの間違いじゃないだろうか。私達も座る。
「………!へえ…」
私達が座った瞬間、ヴィオレさんは少し驚いた顔をしてニヤっと笑った。
「では!今回の依頼の説明からお願いしますね!」
「ええ、まあ、そんな大して説明することなんて無いけど。護衛の依頼よ、エリスの街までね。」
「エリスの街……10日くらいの旅程ですか?」
「ええ、そのくらいよ。それで、エリスの街に2週間滞在して、その後またここオジサニアへ戻ってくるわ。特に他に気をつけることもない、普通の護衛よ。」
「なるほど…わかりました。ですが何故私達、というより女性限定なんですか?」
「何故って、そんなのワタシの周りが美しくないことなんて耐えられないでしょう?きったない冒険者と行くくらいなら行かないほうがマシよ。」
なんというか、綺麗な人だとは思ったけどものすごい美意識の高い人みたいだ…でも確かにヴィオレさんは肌がめちゃめちゃ綺麗だしその美意識に裏打ちされた美があると思う。この世界にはたぶんスキンケアもクソもないからここまできめ細やかなハリのある肌はなかなか見ない。
「報酬はそうね…金貨15枚でどう?もちろん一人頭の片道ね。」
「15枚??いいんですか…?ずいぶんと弾んでいただけるんですね…」
シアが驚いて聞く。こういった依頼の報酬はピンキリらしいけど、普通はこの半分以下でも全然おかしくないらしい。
「金で美と命が買えるならそんなに安いことはないわよ。」
「はい!それで受けます!では追加報酬の話をしましょう!脅威一つに対して金貨3枚!いかがでしょう!あ、これは一人頭1枚ということでいいですよ!」
「あらチェルヴォニ、アナタ今日は随分気合入ってるわね。」
ヴィオレさんの目が少し鋭くなる。空気が一瞬尖って冷や汗が出てきた。そしてヴィオレさんは一瞬私達の方を見る。フッと笑って言った。
「わかったわ、それでいいわよ。契約成立ね。」
「はい!よろしくお願いしますね!このチェルヴォニ!命に代えても貴女をお守りします!」
「そうじゃなきゃ困るわよ、アナタ達二人もよろしくね。」
「よろしくお願いします!」
「よっよろしくお願いします!護衛依頼は初めてですけども頑張ります!」
「あら、チェルヴォニ、聞いてないわよ?」
「あっはっは!言ってませんから!でももう契約しちゃいましたね!握手握手!」
「ふふっ…チェルヴォニ、虐められたいみたいね。」
「ええ!その通りです!ヴィオレさんのような美人なら大歓迎ですね!」
ヴィオレさんは少し怒ったふうだけれど、本気で怒っている様子は無く、チェルヴォニさんとの信頼感が見て取れた。
それにしても、あまりにもあっさり決まってしまってなんだか拍子抜けだった。
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