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第97話 情事

ここはハスターの牧場の敷地内にある古代遺跡の発掘現場。

元々は牧草が生えていたその辺り一帯は大勢の農奴達によって掘り起こされ至る所に発掘された遺跡の瓦礫が散乱していた。

そんな発掘現場を見渡す事の出来る位置にある質素な小屋の中では、眉間に皺を寄せたハイエンが目の前に広げられた古びた地図を見ていた。

「必ずここに古代マヨ文明のチャップ王の墓があるはずだ。そして、この忌々しい呪いを解く方法も…。」

そう呟いたハイエンの左腕からは完全に体毛が抜け落ち赤黒く変色した皮膚には目玉のようなイボがいくつも出来ていた。

そんな腕を隠すようにハイエンが捲り上げた服の袖を直していると、扉の向こうから女の声がした。

「ハイエン、アタシだ。」

「少し待ってくれ。…入っていいぞ。」

袖を直し終えたハイエンが返事をすると、肩ほどの銀色の髪を靡かせながら目つきの鋭いダークエルフの女が入ってきた。

「ハイエン、まだ墓の入口らしいものは見つからないよ。農奴達もずっと働き続けてるせいでぶっ倒れる奴も出てきてる。少し休ませたらどうだい?」

この女は、カーサ・ララニッチ・ダイアン。タツタの自警団長である。

「農奴なんかどうなっても構わん。手は休ませるな。」

「そうは言ったって、これだけ掘り進めても出てくるのは瓦礫ばかりじゃないか?本当にそんな胡散臭い地図が当てになるのかい?」

「ああ、これは召喚魔法研究の為ならどんな私財だって借金のカタによこしたあのフライヤーが最後までよこそうとしなかった地図だ。ガセネタのはずはないだろう。それにこの地図に描かれているポテット山のネーズ王の墓が実在している事を考えれば信憑性は高い。ここに間違いなくチャップ王の墓はあるはずだ。」

「まぁアタシは宝が手に入って悠々自適にアンタと暮らせれば、それでいいんだけどね。そういえば、ここに来る途中で団員を1人フレイに向かわせてたけど、あれは何なんだい?」

「ああ、あれは調子に乗ってるクソ領主様へのプレゼントだ。そのうちフレイに流れたバカな住民どももタツタへ戻ってくるだろう。」

「なんでそんなにあの領主を毛嫌いするんだい?別に城塞都市の特許権を取り上げられた訳でも無いんだし、適当にゴマでもすってりゃあ名主の座だって安泰じゃないか?」

「ゴマを擦る?冗談じゃない。私はああいう偉大な父親や兄貴の七光だけで偉そうにふんぞりかえってるクソガキを見てるとヘドが出るんだ。」

「だけど、噂じゃあ火の神オグニイーナを倒したり、こないだのフライヤー争乱だって1人で鎮圧したほどの化け物だって言うじゃないか?そんなのにちょっかいなんか出して大丈夫なのかい?」

「化け物?あんな凡人顔のガキが?アハハハハハ!そんなのは尾鰭のついた眉唾に決まってんだろ?どうせ裏じゃ父親や兄貴に泣きついて上手い事、自分の手柄にしてるだけだろうよ!まぁ、今にフレイで面白い事が起こるから楽しみにしてろ。」

「フフッ、悪い顔してるねぇ。でもアタシはそんなアンタが好きなんだけどね。」

カーサはそう言いながら身に付けていた軽装の鎧を脱ぎ捨てて裸になると、椅子に座るハイエンの上に跨った。

「夜まで我慢出来ないのか?」

「なんで我慢しなきゃならないのよ?アンタは座ってるだけでいいんだから楽でしょ。」

「フッ、仕方ない奴だな。」

それからしばらく2人が小屋の中で交わっていると、扉をノックする音がした。

『コンコン!』

「ハイエン様、ハリーです。」

しかし、その呼びかけなど気にする事なくカーサが乱れていると、ハイエンは不適な笑みを浮かべ返事をした。

「フッ、入って良いぞ。」

「えっ!?」

まさかハイエンが中に入れるとは思わずカーサが驚いていると、扉が開き1人のマッシュルームのような髪型をした若い男が入ってきた。

「ハイエン…様!?し、し、し、失礼しましたー!!!」

この男は、ハリー・ハミルトン・ハインリッヒ。今年、自警団に入団したばかりの新米である。

思いもしない濡場にハリーが慌てふためき小屋から出ようとすると、ハイエンはそんな反応を愉快そうに見ながら呼び止めた。

「ハリー、気にするな。用はなんだ?」

「ちょっと!?アンタ、なんで中に入れてんのよ!?」

「いいから、用はなんだ?早く言え。」

怒るカーサを無視してハイエンが話をするよう促すと、ハリーはあられもない姿のカーサから目を逸らし答えた。

「は、はい!は、発掘現場で墓の入口と思われる穴が見つかりました!」

「何っ!?それは本当か!?」

「はい!人工的に作られた長方形の穴で中には階段もありますので、間違いないかと…。」

「そうか、わかった。すぐ向かうから団員達に探索の準備をするよう伝えろ。」

「は、はい!それでは失礼します!」

顔を真っ赤にしたハリーが逃げるように出て行くと、カーサは満足そうな笑みを浮かべるハイエンを睨み付けた。

「なんでハリーを中に入れたのさ!?別に終わった後に呼んだって良かっただろ!アタシは人前でする趣味はないんだよ!」

怒りのおさまらないカーサが右手を振り上げるとハイエンはその手首を掴んで睨み返した。

「あ?私が何も知らないとでも思っているのか?お前がハリーに色目を使っているのはわかっているんだ!どうせハリー男爵家を継いだ長男が危篤なのを知って、次男坊のあの小僧が爵位を継ぐ可能性が出てきたから乗り換えようとしてるんだろうが、こんな所を見られちゃお終いだな!?アハハハハハ!」

高笑いしながらハイエンが掴んでいた手首を払い除けると、バランスを崩したカーサは床に身体を打ちつけた。

「痛っ!」

「何をしている?早く鎧を着ろ。すぐに墓の探索に向かうぞ。」

「チッ!クソ野郎が…。」

「フッ、それはお互い様だろう?アハハハハハ!」

痛みと恥辱に震えるカーサを嘲笑いながらハイエンは服を整えると小屋を後にしたのだった。


「あー、ビックリしたなぁ。まさかあんなモノを見せてくるなんて犬人族って変わった性癖があるのかなぁ?いや、それともダークエルフの性癖なのかなぁ?それにしても…カーサ団長、やっぱりハイエン様と出来てたのかぁー…。」

前屈みになりながらハリーが発掘現場に向かって歩いていると、自警団の鎧を身に付けた褐色の肌をしたスキンヘッドの大男と、ツンツンと無造作に跳ねた緑色の髪を後ろで束ねた男が近寄って来た。

そして、ハリーの前まで来ると大男が口を開いた。

「ハリー、ハイエン様に入口が見つかった事は伝えたか?」

この男は、モーガン・ザイツ・フリーソン。自警団の副団長である。

「あっ、はい。すぐに探索に向かうから準備しろとの事です。」

「んっ?お前、そんなに前屈みになってどうしたんだ?それに顔が真っ赤だぞ。大丈夫か?」

「は、はい。実は小屋に入ったら、そのなんというか…ハイエン様とカーサ団長が、その…。」

「ヤッてたのか?」

「…はい。あっ、で、でもちゃんと中に入っていいか確認したんですよ!」

慌てて自分の正当性を主張するハリーを見て、モーガンは笑い出した。

「わっはっはっはっ!そりゃあ、お前がカーサに気に入られてるもんだから、ハイエン様がワザと見せつけたんだろう。」

「えっ!?何でそんな事をするんですか!?」

「あの人はいつもそうやってカーサのお気に入りが誘惑されないように釘を刺すんだ。オレはカーサのお気に入りになった事はないから見せられた事はないが、お前みたいな貴族上がりは一度は通る道だ。まぁー、良いモノ見たと思って気にするな。」

「はぁー、僕には刺激が強すぎますよぉー。」

「なんだ?お前、もしかして童貞なのか!?」

「そ、そうですけど、悪いですか?」

「わっはっはっはっ!そりゃあ、前屈みにもなるよな!よしっ、それなら墓の探索が終わったらオレがとっておきの店に連れて行って童貞からおさらばさせてやろう!」

「結構です!僕は初めての人は愛する人とするって決めてるんです!」

「せっかくオレがオゴってやろうって言ってるのにつまらん奴だな。それじゃあ、グリ坊、お前行くか?自警団の入段祝いにオゴってやるぞ。」

そう言いながらモーガンが振り返ると、そこでは気怠そうにあくびをするグリドールが立っていた。



カーサ・ララニッチ・ダイアン

女性 34歳

タツタ自警団長。

妖艶な雰囲気を漂わせる銀髪のダークエルフ族の女。

ハイエンの女だが隙を見ては貴族上がりの団員を誘惑している。

玉の輿に乗るのが夢。

出身はハーディス神教国。

ちなみにダークエルフ族の寿命は人間の倍である為、人間の年齢に換算すると17歳。


ハリー・ハミルトン・ハインリッヒ

男性 17歳

タツタ自警団員でハリー男爵家の次男坊。

マッシュルームカットの純朴少年。

実はカーサの事が気になっている。

童貞。


モーガン・ザイツ・フリーソン

男性 36歳

タツタ自警団副団長。

褐色の肌をしたスキンヘッドの大男。

豪快で心優しく団員達からの人望も厚い。

数年前までは団長だったがカーサが現れた事により副団長に降格になった。

仕事をしないカーサに代わり自警団を取りまとめている。

幼い頃は農奴だったがハスターの目に止まり自警団に入団した。






いつも読んで下さる皆様、今回初めて読んで下さった皆様、そしてブクマしてくれた皆様、ありがとうございます!

もう少しで累計40000PVです!

このお話で突破するかどうかは皆さま次第です!

今一度お時間がある方は読み返してみるのはいかがでしょうか!?

もしかすると初めて読んだ時から設定が変わってる部分があるかも(笑)!?


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