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第86話 おっぱい爆弾

ウィルが夢から覚めるとぼんやりとした視界に、見慣れない煌びやかな装飾の施された天井が映った。

「ここは…?俺は…また気を失ってたのか…。」

横になったまま視線を下ろすとウィルは自分の寝ているベッドの横で椅子に座りながら居眠りをしているカルデに気付いた。

その手はウィルの右手にそっと添えられている。

「結菜…?」

ウィルはつい先程まで見ていた夢の中に出てきた結菜の寝顔と、すぐ側で眠るカルデの寝顔を無意識のうちに重ね合わせていた。

「ははっ、そんな訳…ないか…。」

ウィルは一瞬結菜がカルデに生まれ変わったのでは?と思いながらも、そんな都合の良い事がある筈が無いとすぐに思い直し首を横に振った。

「んん…。んっ?…ウ、ウィル!?お、起きていたのか!?」

カルデは目を覚ますと慌てて手を離した。

「はい。今、起きたばかりです。カルデが看病してくれてたんですね。」

「ま、まあな。今回の魔力切れは酷かったからな。我の魔力を補充していた所だ。とはいっても属性が違うから大して足しにはならなかったがな。」

「そうだったんですね。迷惑かけてすみませんでした。」

「気にするな。今回もおぬし1人だけに大きな負担を掛けてしまったからな。」

ここはマクグラン城の来賓用の客室。

ポテパでの戦いの後、ウィルが魔力切れで気を失ってから1週間が経っていた。

結局、ポテパの街には1匹も魔物は生き残っておらず、ポテット山とその周辺の森に潜んでいた魔物は国王軍によって全て討伐されていた。

そして、今回その舞台となったポテパの街は取り壊しになる事が決定していた。


ウィルは自分が気を失ってからの話を聞き終えると上半身を起こした。

「…そうですか。ポテパの街は取り壊しになるんですね。」

「ああ、あの土地は魔物が死に過ぎた。このまま復興しても魔物の障気の影響で疫病が流行るのが目に見えているからな。一度更地にして浄化する必要がある。」

「俺のせいですね…。」

「それは違うな。おぬしが魔物を討伐しなくとも、どのみち我やグリドールが街を封鎖して魔物を討伐していただろう。あの街に魔物の大群が攻め込んだ時点であの街の行く末は決まっていた。おぬしが気に病む必要はない。」

「でも…。」

「ウィル、この際だから言っておくがおぬしは全てを抱え込みすぎる。それはよく言えば責任感から来るものなのだろうが、悪く言えば単なる奢りでしかない。」

「奢り…ですか?」

「そうだ。確かに我はおぬしに戯言を言う権利もその戯言を突き通すだけの力もあると言った。そして、それを行使すればその結果がどうであれ責任を感じるのは当然だろう。

だがな、それと同時にそれをおぬしに行使させた者やそれによって守られた者も多かれ少なかれ責任を感じているものなのだ。それをわかろうともせず1人で抱え込もうとする事を奢りと言わずに何と言う?」

「それは…。」

「それでも尚1人で抱え込もうと言うのであれば、おぬしの隣には我がいる事を忘れないでほしい。我はその責を負ったおぬしと共に生きていこう。」

ウィルはその言葉に心がスッと軽くなる気がした。

そして何より自分を大事に想ってくれているカルデの気持ちが伝わってきて嬉しかった。

「カルデ…。ありがとうございます。なんかプロポーズされてるみたいですね。ははは、なんちゃって。」

「プ、ププ、プ、プロポーズ!?バ、バカな事を言うではない!!!わ、我はただおぬしが心配で…。まあ、そのなんだ…おぬしがそう受け取ったのであれば、そ、それはやぶさかではないというか…。何というか…。」

カルデの声は徐々に小さくなっていきウィルには聞き取る事が出来ない。

「えっ?今なんて?」

「だ、だから、その……。」

顔を真っ赤にしたカルデが両手の人差し指をツンツンしながらモジモジしていると、突然扉が開きアリスが飛び込んで来た。


「ウィル様!」

「アリス?どうしてここに…うぷっ!?」

ウィルが話し終わる前にその顔面にアリスのおっぱい爆弾が炸裂した。

「ウィル様!心配したんですよ!無事で良かったぁー!」

「もがっ!もごっ!息が…出来な…い…。」

「こ、こらっ!?アリス、ウィルから離れろ!そもそも、サウストン領に戻ったはずのお前が何故ここにいる!?」

カルデは必死にアリスをウィルから引き剥そうとするがしがみついて離れない。

「ワタシはもうウィル様から離れません!トーマス様にはお暇をもらいました!ワタシはウィル様のモノになりますぅー!」

「もがっ!?」

アリスはトーマスからウィルの事を聞くと居ても立っても居られず、サウストン伯爵家のメイドを辞めてウィルの元へと来ていた。

「な、な、な、何を!?ウィルのモノになるだと!?こ、この離れんか!」

「イヤですー!離れません!」

カルデとアリスが騒いでいるとウィルの様子を見に来たミツハとマッカランが部屋に入ってきた。

「ウィル様、目覚められたのですね!?でも、これは一体何事ですか!?」

「もがっ!助け…て…。もががが!」

「ミツハ!突っ立っていないでアリスを剥がすのを手伝え!」

「は、はい!アリスさん、離れて下さい!」

ミツハはカルデに言われるがままアリスを引き剥そうとするが、余計にウィルの顔面はおっぱい爆弾にめり込んでいく。

「ミツハ様は関係ないじゃないですか!?ワタシはもうウィル様のモノなんです!邪魔しないで下さい!」

「ウィル様のモノ!?」

「ややっ!?それは聞き捨てならないのだ!ウィル殿はミツハと結婚するのだ!」

火に油を注ぐようなマッカランの余計な一言にアリスのおっぱい爆弾は更に締め付けを強くする。

「もがっ!?もがががっ!?」

「マッカラン様!それは先日ミツハ様が勝手に決められた事だって言ってたじゃないですか!?」

「そうだ!マッカラン、往生際が悪いぞミツハも嫌がっていたでは…んっ?ミツハ、何故顔を赤らめている!?ま、まさか!?」

カルデはミツハから駄々漏れる恋する乙女オーラに気付き言葉を失った。

ミツハはチョコパ村の宿屋で踏みつけたウィルの顔面の踏み心地が忘れられず、またその顔面を踏みつけたいという想いを募らせるうちに、ウィルに恋心を抱くようになっていた。

「わっはっはっはっ!ミツハも今は合意済みなのだ!」

「カルデ様…。申し訳ありません…。」

「もがっ!?」

「チッ!アリスとテスカだけでも厄介なのにまた厄介な奴が!?」

「そんなの関係ありません!ウィル様はワタシと結婚するんですー!」

「もががっ!もがっ!もがっ!い、息が…。」

その後もウィルの呼吸を無視した女達の押し問答は続き、更には騒ぎを聞きつけてやって来たカサンドラの、トーマスからウィルへの乗り換え発言もあり、その場はカオスと化しウィルはアリスのおっぱい爆弾にめり込んだまま気を失ったのだった。


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