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第81話 エルフとオカマ

ここはポテパ。街は昼間にも関わらずまるで夕陽を浴びたように真っ赤に染まっている。

建物は魔物の放った火により燃え上がり、道端には抵抗虚しく魔物によって殺された住民達の血が流れていた。

そんな地獄のような光景が広がる中、群がる魔物に囲まれた1人の女エルフがいた。

その美しい顔は劣勢を物語るように険しく、破れたローブから露出した白い肌からは血が滴っている。

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、3分の1くらいは倒したかしら?…でも流石にキツいわね。」

この女エルフは、マクグラン王国王宮魔道士団長のラム・クロロッソ・マッカランであり、マッカランの妻にしてミツハの母である。

ラムはカサンドラと部下達に生き残った住民の避難誘導を命じると、自分は囮になる為に魔物の大群の中心部で1人戦っていた。

「そろそろ魔力も尽きそうだわ。カサンドラ、うまく住民を避難出来てるかしら…。」

ラムの等級は1つの国に数人しかいない超級だったが、いくら超級とはいえ魔物の大群が街に攻め込んで来てから既に半日が経ち、休む間もなく戦い続けていたラムの魔力は尽きかけていた。

そんなラムの状態を見透かすように、ジリジリと周囲にいた数匹のレッサーデーモンが間合いを詰めていた。

レッサーデーモンとは祟りや呪いが具現化した悪霊の一種で知能が高く個体によっては魔法を使う事もある上級の魔物である。

「ここに来てレッサーデーモンなんて参ったわね…。

我らが風の神カルデよ、全てを…」

ラムが魔法の詠唱を開始すると同時にレッサーデーモンが一斉に襲いかかった。

鋭い爪で切り裂こうとしてくるレッサーデーモンの攻撃を空に飛んでかわすとラムは叫んだ。

聖風乱竜炸セイントトラビアンツ!」

ラムを中心に突風が吹き荒ぶとレッサーデーモン達を巻き上げながら切り裂いた。

しかし、突風はレッサーデーモンに致命傷を与える事なく徐々に威力を弱めていく。

「くっ!?魔力が!?」

すると、突風から逃れた数匹のレッサーデーモンが奇声と共に一斉にラムに向かって火の玉を吐いた。

「くっ!?」

『ドガァァァァン!!!』

ラムは防御障壁が展開出来ず火の玉が直撃し、地面に群がる魔物の中へと落下した。


「うっ…。ううっ…生きてる…えっ!?きゃあああああっっ!」

ラムは火の玉が直撃した瞬間、意識を失ったものの、地上にいた魔物がクッションとなり地面に叩きつけられずに済んでいたが意識を取り戻すと自分の置かれている状況に思わず悲鳴を上げた。

それは今まで着ていたはずのローブが剥ぎ取られ一矢纏わぬ姿となった自分にヨダレを垂らしながら覆い被さろうとしているレッサーデーモンの姿だった。

「な、何を!?くっ、?や、やめなさい!このっ!離しなさい!いゃあああああっっっ!」

必死に逃れようとするラムだったが、その両手は別のレッサーデーモンに押さえ付けられ身動きを取る事が出来ない。

レッサーデーモンはそんなラムの反応を楽しむかのように無理やりその両足を押し広げると覆い被さった。

「ハルク、ミツハ…。」

きつく閉じた瞳の中にマッカランとミツハの笑顔が浮かびラムが自分の舌を噛み切ろうとした、その時。

突如、空から薄紫色の逆毛の男が現れ行為に及ぼうとしていたレッサーデーモンの頭を切り飛ばした。

「ラムちゃんに汚いチ◯ポぶち込もうとしてんじゃないわよ!チ◯ポってのはね!よぉーく洗ってから愛する人にぶち込むもんなのよ!そんな汚いチ◯ポはワタシが切り落としてやるわっ!」

このチ◯ポを連呼するおネエ言葉の男は、マクグラン王国王宮騎士団副団長のカサンドラ・ルナール・ヒソカテスである。

カサンドラはそう言いながら周囲にいたレッサーデーモン達の首を切り飛ばすと、マントを外しラムの身体を優しく覆った。

「カ、カサンドラ…。」

「遅くなっちゃってごめんなさい。ラムちゃんが魔物を惹きつけてくれたお陰で生き残った住民の避難は終わったわよ。大丈夫?チ◯ポぶち込まれてない?」

「ええ、大丈夫よ。ありがとう。それで団員達は?」

「避難先の護衛と街にいる魔物の討伐に当たってるわ。でもこの数じゃ正直厳しいわね。」

「でもやるしかないわ。この魔物達が近隣の街に広がれば大変な事になるもの。」

ラムは立ち上がるとカサンドラに掛けてもらったマントを数箇所結びローブのようにすると周囲を見渡した。

周囲には距離を取りながらも未だに数百匹以上の魔物がラム達を取り囲んでいた。

「そうね。でも悪い知らせが2つあるの。1つ目は例の特殊な聖属性魔力の正体についてグリちゃんから連絡があってね。どうやらフライヤーは聖の神ククルカンの作った賢者の石を使って魔物を召喚している可能性が高いそうよ。グリちゃんがカルデちゃんから聞いた話だとフライヤーの手元には少なくても2、3個は渡ってるって考えた方が良いみたい。」

ラムは自分が囮になる直前にカサンドラに特殊な聖属性魔力の事を話した上で、グリドールと連絡の出来る念話石のブレスレットを託していた。

「賢者の石!?そう、それなら確かにこの大量の魔物を召喚する事も可能でしょうね。まさか聖の神ククルカンが関わっていたなんて…。それで2つ目は?」

「それがここに向かって来る時に巨大なゴーレムがポテット山の方からこっちに向かって歩いて来るのが見えちゃったの。アレは多分、ポテット山の古代遺跡に放置してあったアダマンタイトで出来たゴーレムね。」

「確かあのゴーレムの動力源は賢者の石…。フライヤーが賢者の石を使って動かしたのね。この魔物の大群だけでも手に余るのにアダマンタイトのゴーレムなんてマズイわね…。それで援軍は?」

「グリちゃんとハニエルちゃんが兵を率いて向かってるけど到着は明日の朝になるみたい。あとはミツハちゃんが例の英雄くんを連れてこっちに向かってるわ。」

「英雄くんね…。期待しましょう。とにかく今は持ち堪えるしかないわね。」

「ええ、そうね。これ、エーテルよ。飲めば少しは魔力が回復するわ。」

「ありがとう。」

ラムとカサンドラが話をしていると周囲で様子を見ていた魔物達が騒めき始め、それと共に地響きのような足音が聞こえてきた。

「噂をすればゴーレムちゃんのお出ましね。」

カサンドラが音のする方を見ると、燃え盛る建物の向こう側に体長30メートルはあろうかというゴーレムの上半身が見えた。

そして、その肩には酒瓶を片手に笑い声を上げるフライヤーの姿があった。

「フェッフェッフェッ!!!燃えろ!燃えろ!燃えろー!オレ様の物ではない街など燃えてしまえー!グビッ、グビッ、グビッ!ぷはぁーっ!」

酒を浴びるように飲むフライヤーを肩に乗せたゴーレムは燃え盛る建物を壊しながらラムとカサンドラのいる方へと向かって来る。

「ラムちゃんは魔物の相手をお願い!ワタシはあのデカくてカタそうなのをやるわ!」

「わかったわ。」

そう言うと2人は二手に分かれた。

カサンドラはフライヤーが気付く間も無くゴーレムとの間合いを詰めると空高く跳躍してその頭部目掛けて剣を振り下ろした。

「はあああああっっっ!!!」

『ギィィィィィン!!!』

しかし、カサンドラの気合と共に振り下ろされた一撃はゴーレムに傷を付ける事なく弾き返された。

「うわあっ!な、何だ!?カサンドラか!?」

フライヤーは突然現れたカサンドラに驚き思わずゴーレムから落ちそうになりながらも必死にしがみ付いた。

そんなフライヤーを無視してカサンドラは休む間もなく斬撃を繰り出すがゴーレムにはかすり傷1つ付ける事が出来ない。

「チッ!カタいのは好きだけどここまでカタいと厄介ね!」

「フェッフェッフェッ!無駄だ!無駄だ!このエレメンタルゴーレムはアダマンタイトで出来ているんだ!そんななまくらなんかでは傷1つつかんわー!」

「肩に乗っかってるだけのクセに、なーにエラそうにしてんのよ!それならこれはどうかしら?」

そう言うとカサンドラは高速詠唱しながら再び空高く跳躍した。

聖風五月雨斬セイントウィンスコール!!!」

カサンドラの身体が光り輝く旋風に包まれると、次の瞬間無数の針のように細い斬撃がゴーレムの腕や足の関節部目掛けて降り注いだ。

『ズドドドドドドドドッッッ!!!』

「ヒィィィィィッッ!?」

凄まじい衝撃音と共に激しい突風が吹き荒びフライヤーはゴーレムの肩から近くの建物の屋根へと吹き飛んだ。

「どうよ?いくらカタいからって関節まではカタく出来てないでしょ?これで動けない…!?」

未だ砂埃が巻き上がる中、カサンドラが勝ち誇ったように話をしていると、それを遮るように砂埃の中からゴーレムの巨大な拳が飛んで来た。

『ドゴォォォォン!』

カサンドラは咄嗟に後ろへ飛んでその拳をかわすがゴーレムはそれを読んでいたかのように雄叫びを上げながら目から一筋の赤い光線を放った。

「なっ!?」

「ウゴォォォォォッッッ!!!」

『ズドドドドドドドドッッッ!!!』

カサンドラは咄嗟に横へ飛んでかわすが、連続して放たれる光線は辺りの建物や魔物を薙ぎ払いながら追って来る。

「ヒィッ!?何なのよ!しつこい男はモテないわよ!」

そんな言葉などゴーレムに届いている訳も無くカサンドラが逃げ回っていると、建物の屋根に落ちて命拾いしたフライヤーが叫んだ。

「フェッフェッフェッ!いいぞ!エレメンタルゴーレム!そのレッドスペリウム光線で全てを薙ぎ払うのだ!フェッフェッフェッ!!!」

「うるさいわね!エレメンタルゴーレムとかレッドなんちゃらとか、いちいちダサい名前付けてんじゃないわよ!」

「ぐぬぬぬっ!オレ様の素晴らしいネーミングセンスを馬鹿にしやがって!許さんぞ!エレメンタルゴーレム!早くそんなオカマ野郎殺してしまえ!」

「チッ!オカマをナメるんじゃないわよ!オカマは男も女も超越した至高の存在なのよ!」

カサンドラはそう言うとフライヤーのいる方へ向かって走り出した。

その間もゴーレムの放つ光線はカサンドラを追尾して来る。

「な、なんでこっちに来る!?こっちに来るな!うわあああああっっっ!!!」

『ズドドドドドドドドッッッ!!!』

絶叫を上げながら逃げようとするフライヤーの前をカサンドラが横切った直後、ゴーレムの光線がフライヤーを跡形もなく吹き飛ばした。

そして、これが数千の魔物を召喚しマクグラン王国の転覆を企てたマクグラン史に残る大罪人サラディン・オイルッツ・フライヤーのあまりにもあっけない最後だった。


「これでうるさいのは消えたわね!」

そう思ったのも束の間、突如ゴーレムは光線を放ちながら右拳を構えるとカサンドラに向けて発射した。

「ウゴォォォォォッッツ!!!」

「そんなのアリ!?きゃああああ!」

右拳は炎を噴射しながら、逃げるカサンドラを捕らえるとそのまま地面にめり込ませた。

『ズゴゴゴゴォォォン!!!』

「ぐはっっっ!」

身体中の骨が砕ける音と同時に想像を超える激痛がカサンドラを襲う。

カサンドラは地面にめり込む瞬間、防御障壁を展開し衝撃を和らげたものの、その凄まじい威力を完全に殺す事は出来なかった。

「カサンドラ!?」

そんなカサンドラの危機的な状況に気付いたラムが助けに向かおうとするが、魔物の大群に阻まれ身動きが取れない。

ゴーレムはゆっくりとカサンドラに近付くと自分の右拳を拾い上げ元に戻した。

「かはっ!?ぐぅ…。ど、どうやら…これで死ぬ…みたいね…。あーあ、こんな事なら…トーマスちゃんにぶち込んで…おけば良かった…。」

そして、ゴーレムは右手の感覚を確かめ終わると、目の前で仰向けに倒れるカサンドラに向かって足を振り下ろした。

「カサンドラーーー!!!」

ラムの悲痛な叫びも虚しくゴーレムの足はカサンドラを押し潰した。

「ウゴォォォ!?」

だが、すぐに感触が無い事に気付いたゴーレムが足を上げると、そこにカサンドラの姿はなかった。

ゴーレムが忽然と消えたカサンドラを不思議そうに探していると突然若い男の声がした。

「随分と派手にやってくれたみたいですね。これなら俺も手加減しなくて良さそうだ。」

声のした方にゴーレムが振り返るとそこにはカサンドラを担いだウィルと、ミツハの姿があった。


ラム・クロロッソ・マッカラン

女性 42歳

マクグラン王国王宮魔道士団長にして、マッカランの愛妻でありミツハの母親。

白銀の長い髪と青く透き通る瞳が特徴的な美しい女性。

42歳であるものの人間族の倍の寿命があるエルフ族である為、身体年齢は20歳ほどにしか見えない。

普段は知的で優しいいかにも仕事の出来る上司を装っているが、実はおっちょこちょいで家事全般が苦手。

最近、街をミツハと歩いている時に妹に間違えられた事を気にして大人っぽい服装を心がけているが、大人っぽさをエロさと履き違えシースルーのローブを着て団員達の目のやり場を困らせている。


カサンドラ・ルナール・ヒソカテス

中性 ??歳

マクグラン王国王宮騎士団副団長。

薄紫色の逆毛と厚化粧が特徴的なオカマ。

心優しく面倒見も良い為、団員達からの信頼も厚いが好きな人が出来ると周りが見えなくなり暴走する事もある事から過去に何度かストーキング行為で捕まった事のある変態さん。

見た目は20代後半に見えるが年齢はヒミツらしい。



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