第79話 戯言
その後、ウィルはミツハ達と手分けしてガーゴイルに襲われた人々の手当てをしたものの、結局20人近い犠牲者が出ていた。
辺りに悲しみに暮れる人々の泣き声が響く中、ウィルは馬車の車列から少し離れた場所でアスティやその部下達からガーゴイルの群れに襲われた経緯を聞いていた。
アスティの話によると、今朝方、突如ポテット山から見た事もない魔物の大群がポテパの町に攻め込んできたらしく、アスティは王宮魔道士団長のラムの指示を受けて町の人々を連れ避難してきたものの、追って来たガーゴイルの群れに襲われてしまったという事だった。
「そうだったんですか…。クソッ!俺がもっと早く駆けつけていれば!アスティさん、すみません…。」
ウィルは馬車の車列の近くで、両親を亡くし泣きじゃくる男の子を見て思わず唇を噛み締めた。
「ウィルが謝る事はないさ。お前が来てくれなければ全滅してたんだ。助けてくれてありがとう。」
「いえ、お礼なんて…。そういえば、ポテパには王宮魔道士団や王宮騎士団が50人以上いたはずじゃ?それでも魔物達を抑え込めなかったんですか?」
「ああ、いたさ。だけどあまりの魔物の数に対処しきれなくてラム様が避難指示を出したんだ。お2人と団員の方々は逃げ遅れた住民を助けるって町に残ったよ。」
「でも魔物は少し前からラム様やカサンドラ様が討伐して数が減っていたはずでは?」
ミツハが納得出来ないとばかりにアスティに詰め寄ると、アスティは首を横に振った。
「確かに魔物は減ってたように見えたけど、それはポテット山の周りの森にいた魔物が減ってるように見えただけで魔物は山に隠れていたんだと思います…。」
「そんな…。」
ウィル達が話をしていると、突然ウィルの念話石の指輪が淡く光り始めカルデの声が聞こえて来た。
『…ウィル、聞こえるか?カルデだ。』
「カルデ、聞こえてますよ。どうしたんですか?」
『うむ、まだポテパには着いていないようだな?先程、グリドールから連絡があってポテパが想定を超える魔物の大群に襲われたらしい。』
カルデという名前にその場にいたアスティ達から驚きの声が上がるがウィルは構わず話を続けた。
「それは今ポテパから避難して来た人達から聞きました。」
「そうか、それなら話は早いな。当初はおぬしに任せる予定だったが事態を重く見たグリドールが兵を率いてそちらに向かうとの事だ。我は今イカントリ共和国にいるからすぐに駆けつける事は出来んが、代わりにフルーリー山脈の我の別邸からハニエルと神殿騎士団を向かわせた。ウィルは急ぎポテパに向かいラム達と合流してほしい。』
「それだけですか?他に話しておく事はありませんか?」
『あぁ、そうだったな。グリドールとハニエルなら明朝ポテパに到着する予定だ。我も…。』
カルデが付け加えるように話をしているとウィルが語気を荒げて遮った。
「違う!その事じゃない!なんで出発前にフライヤーが聖属性魔力を持つ何者かに力を借りているかもしれないって教えてくれなかったんですか!?それを話してくれてたら俺は飛行魔法でポテパに向かってましたよ!そうすればこんな風に犠牲者が出なかったかもしれない!」
『それは…。』
「ボルケニアの時だってそうだ!肝心な事は言わなかった!俺が何も知らずに動いたせいで人が死んでいるかもしれないのに、知らなかったから仕方無いってだけで簡単に割り切れる程、俺は図太くないんですよ!」
ウィルはボルケニア帝国でオグニイーナが開いた余興の際に死んでいった貴族や兵士達の事を思い出していた。
そして、そのほとんどが敵であった神聖派の者達であったとしても自分が事態を把握しもっと上手く立ち回れていれさえすれば犠牲者は少なく済んだかもしれないと思うとやるせないでいた。
そして、何よりまた同じ事が起きていると思うと言わずにはいられなかった。
『…。』
「確かに俺の言っている事は単なる自惚れなのかもしれない!でもカルデは前に言ってくれたじゃないですか!?俺にはその戯言を言う権利もその戯言を突き通すだけの力もあるって!あれは口だけだったんですか!?」
『ウィル…。』
「カルデ、俺に話していない事があるなら今の内に全部話して下さい。」
『…わかった。だがこれは極秘事項だ。人のいない場所に移動出来るか?』
「はい。わかりました。」
そう言うとウィルは瞬間移動で空へと移動するのだった。
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