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第54話 勲章

トーマス達に気付いたマイセンはララに覆いかぶさるのをやめ、気怠そうにベッドに腰掛けた。

「貴様!ララから離れろ!」

怒りの表情を浮かべ叫ぶトーマスを嘲笑うかのように、マイセンは慣れた手つきで鼻をほじり始めた。

「何だ?お前らは?…そうか、さっきの音はお前らの仕業か?せっかく、これから逃げられた女の代わりに姉上で新しい媚薬の効果を試そうとしてたのに、神殿騎士達は何をしてるんだ?こんな奴らを侵入させるなんて、後で死刑だな。」

マイセンは晩餐会でのオグニイーナの話の後、ララの部屋に来たものの邪険にされ一旦は部屋から出て行ったが、サーシャが逃げた事を知ると、再びララの部屋へと戻りララにパッカードから貰った媚薬を無理やり飲ませていた。

「私は、トーマス・バークリー・サウストン!ララの夫だ!貴様、ララに何をした!?」

「サウストン?あぁ、お前が姉上を奪ったウジ虫か?ヒャハハハ!何をしたって?これからする所だったんだよ。こんな風にな!」

そう言うと、マイセンはララの頬をベロリと舐めた。

「貴様ぁぁぁぁっ!!!」

それを見たトーマスは激昂し一瞬でマイセンがいるベッドとの距離を詰めると大剣を振り下ろした。

『バチバチバチバチバチッッッ!!!』

しかし、振り下ろされた大剣はマイセンに届く事なく、ベッドの周囲に展開された隔離結界によって、凄まじい音と共に弾かれた。

「何っ!?隔離結界か!」

「ヒャハハハハハッ!無駄だ!この結界はオグニイーナの特製なんだ!お前のようなウジ虫ごときが破れるはずないだろ!ヒャハハハハハッ!ウジ虫は姉上が俺様のモノになるのを大人しく指をくわえて見ているがいい!ヒャハハハハハッ!!!」

と、その時、ウィルとの戦闘を終えたウィリアム達が西塔の異変に気付き、トーマス達がいる部屋へとやって来た。

「マイセン様!こ、これは!?貴様ら、ここで何をしている!」

ウィリアムは剣を抜き放つと部屋を見渡した。

「ウィリアム!お前何してたんだ!?こんなウジ虫の侵入を許しやがって!後でお前も死刑だからな!とにかく、そこにいるウジ虫達を何とかしろ!あっ!でもそこのバカでかい剣を持った奴は半殺しにして転がしといてくれ!姉上が俺様のモノになる所を見せたいからな!ヒャハハハハハッ!」

「姉上?その女の事で…なっ!?何故、ここにその娘がいるのです!」

ウィリアムはベッドに横たわるララを見て驚きの声を上げた。

「あぁ!?お前には関係ないだろ!?いいから、とっととそのウジ虫を半殺しにしろ!」

そんなマイセンの言葉を無視して、ウィリアムはトーマスに話しかけた。

「私はオグニイーナ神殿騎士団団長のオルトレット・モルゴース・ウィリアム!貴様は何者だ!?おかしな魔法を使う者の仲間か!?」

トーマスは、おかしな魔法を使う者というのがウィルの事だと気付いた。

「私は、トーマス・バークリー・サウストン。ウィルは私の弟だ。私達は火の神オグニイーナによって攫われた我が妻ララを返してもらいに来た!」

「サウストンだと!?そうか、お前が…。それで、オグニイーナ様が攫ったとはどういう事だ!?ここには皇帝派の捕虜が幽閉されているのではなかったのか!?」

ウィリアムはオグニイーナからララに関する事はおろか、魂移しに関する事は何一つ聞かされていなかった。

「何?何も聞かされていないのか?オグニイーナは大天使ミカエルとジェレミエルを引き連れてサウストン家を襲撃し、私の妻であるララを攫ったんだ!その時、何人もの神殿騎士が死んだはずだ!何故、団長である貴様が知らない?」

ふとウィリアムは少し前にオグニイーナが皇帝派に寝返った貴族を粛清するからと言って、部下である神殿騎士達を連れて行った事を思い出した。

「そうか、あの時か。私に話さぬという事は、また我等が神は良からぬ企てをしているのだろうな…。」

ウィリアムは剣を鞘に収めると、胸に付けてあった神殿騎士団長の証である勲章を引きちぎりヘルムを外した。

その行動に、後ろにいたミレーヌと神殿騎士達が驚きの声を上げた。

「団長!?どうされたのですか!?」

ウィリアムは悲しげな表情を浮かべ、ベッドに横たわるララを見ると呟いた。

「ナタリー…。」

それは、今から3年前にオグニイーナにそそのかされララを毒殺しようとしたマイセンの母マルチナを止めに入り、錯乱したマルチナによって殺された、今は亡き愛妻の名だった。


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