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第53話 トーマス参上

「ゴホッ!ゴホッ!アリス、すまない。温泉で魔力が回復していたのを忘れていたよ。つい速度を出しすぎてしまった。ハハハッ!怪我は無いかい?」

アリスは背中でスヤスヤと眠っているラスクを見てホッと胸を撫で下ろすと、メイド服に付いた砂埃を払った。

「もう!トーマス様ってば、気を付けて下さいね!ラスク様が怪我でもしたらどうするんですか?…って、この状況マズくないですか!?」

アリスは、神殿騎士達と床に寝そべるゲンを見てその場のただならぬ状況を察し、トーマスの後ろへと隠れた。

「ああ、良くは無さそうだ。」

トーマスが周りにいた神殿騎士達に目をやると、そんな2人の様子を見ていた1人の神殿騎士が叫んだ。

「貴様ら、侵入者の仲間か!?」

「侵入者?ああ、そうか!ウィルの事だな!」

「きっとそうですよ!」

侵入者というのがすぐにウィルの事だと気付き、トーマスとアリスが顔を見合わせ笑みを浮かべていると、上半身を起こしたゲンが声をかけた。

「あ、あんたら、ウィルさんのお知り合いですかい?」

「はい!ウィルの兄です!あなたは?」

「俺っちはゲンと申しやす。ウィルさんと一緒にこの塔にいるララさんという方を助けに来やした!」

「本当ですか!?なんて偶然なんだ!それでウィルは…っと、まずは邪魔者を何とかした方が良さそうだ。皆は私の後ろへ下がっててくれ。」

トーマスは背中の大剣を覆っていた布を取るとおもむろに構えた。

「私の名は、トーマス・バークリー・サウストン。愛する妻を取り返しに来た、ただの男だ。

命が惜しくなければ掛かって来るがいい!」

その言葉に1人の神殿騎士が前に出た。

「フハハハハッ!我等がオグニイーナ神殿騎士団だと知って言っているのか?

そんな身の丈に合わない大剣で何が出来る?貴様など俺1人で十分だ!

死ねぇぇぇい!」

いかにもなセリフを叫びながら神殿騎士が剣を抜き放ち間合いを詰めた次の瞬間、目にも留まらぬ速さでトーマスが大剣を振り下ろした。

音も無く神殿騎士の身体が真っ二つに両断され崩れ落ちる。

トーマスが振り下ろした大剣の余りの速さに何が起きたのかもわからず神殿騎士達がざわついていると、トーマスが口を開いた。

「先日も戦って感じたけれど、やはりオグニイーナ神殿騎士団というのは大した事なさそうだ。これなら、そこらの町の自警団の方がよっぽど強い。君達には悪いが、私達は急いでいるんだ。一斉に掛かって来てもらえるかな?」

「ナメるなぁぁぁっ!死ねぇぇぇっ!」

トーマスの挑発にその場にいた10人程の神殿騎士達が怒りの声をあげ一斉に襲い掛かった。

「2人とも少し刺激が強いかも知れないから、目を瞑っていてくれ!」

その言葉にアリスとゲンは慌てて目を瞑る。

そして、トーマスが再び大剣を目にも留まらぬ速さで振るうと、一瞬にして神殿騎士達の身体はバラバラに切断され肉塊の山となった。

トーマスは大剣を背中に背負うと、魔法を唱えた。

聖昇風化セイクレットウェザリング!」

聖昇風化は風属性上級魔法で、ゾンビやゴースト系の魔物の浄化や死体の処理などに使われる浄化魔法である。

光を帯びた優しい風が肉塊の山を光の粒へと変えていき、神殿騎士達が身に付けていた鎧だけになると、トーマスは目を瞑っている2人に声をかけた。

「2人とも目を開けていいよ。それでウィルはどうしてるんですか?」

「すげぇな…。あ、ああ、ウィルさんなら…。」

鎧の山を見て驚いていたゲンだったが、トーマスの問いにふと我にかえると簡単に状況を説明した。

「なるほど、ウィルはミカエルと闘っているんですね。ウィルならきっと大丈夫でしょう。私達はララを助けに行きましょう。」

「はい。わかりやした。ララさんはこの塔の最上階にいるはずです。急ぎやしょう!」

ゲンが上の階に続く階段を指差すとトーマス達は頷き階段を駆け上った。

そして、最上階の部屋の前に辿り着くと勢いよく扉を開けた。

『バタン!』

「ララ!」

ララの名前を叫びながらトーマスが部屋に入ると、そこには虚ろな表情でベッドに横たわるララに、半裸のマイセンが覆いかぶさろうとしていた。


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