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第21話 心の友

「でやぁぁぁぁぁぁっ!」

気合の入った野太い声と共にパイナップルのような髪をした筋骨隆々の大男は、ウィルとの間合いを一気に詰めると大剣を振り下ろした。

ウィルはその大剣を左手をかざしただけで弾き返すと、ガラ空きになった大男の脇腹を銀色の魔力を纏わせた右拳で殴りつけた。

「うぐっ!?」

大男はインパクトの瞬間、右後方に飛んでダメージを最小限にすると着地までの間に高速詠唱を終わらせ、着地と同時に魔法を放った。

「キャノンブラスト!」

ぶ厚い鋼鉄の壁さえ貫通する風の渦が一直線にウィルに向かって襲いかかる。

ウィルは横に飛んでこれをかわそうとするが、突如、風の渦の挙動が変わりウィルを追尾する。

「えっ!?キャノンブラストって曲がるの!?」

ウィルは驚きながらも防御障壁を展開し、風の渦を受け止めようとするが勢いそのままに山肌に激突した。

『ドゴォォォォン!!!』

捲き上る砂煙を見ながら大男が勝ち誇ったように豪快な笑い声を上げた。

「わははははっ!ウィル殿、むやみやたらに防御障壁で防ごうとするのは悪い癖ですぞ…!?」

大男が勝ち誇っていたのもつかの間、いつの間にか大男の後ろに立っていたウィルが銀震刃を大男の首元に突きつけていた。

「マッカランさん、キャノンブラスト曲がるなんて知りませんでしたよ。それで降参しますか?」

マッカランは悔しげな笑みを浮かべながらゆっくりと両手を挙げた。

「あれは我輩の奥の手だったんですがな。いやはや無傷とは。降参するのだ。

それにしてもどうやって?」

この男はカルデ直轄の神殿騎士団の団長を務めるハルク・ハイランド・マッカランであり、現在ウィルはマッカランと戦闘訓練を行っていた。

ウィルが銀震刃を消すとマッカランが向き直る。

「さっきのは防御障壁を展開した瞬間、磁力操作で砂鉄の身代わりを作ってから瞬間移動でマッカランさんの後ろに移動しただけですよ。

昨日の訓練後にカルデ様に新しい魔法もいくつか試しておけって言われたんですよ。なかなか使えそうでしょ?」

理路整然と説明するウィルを見て、マッカランは呆れたようなため息をついた。

「はぁー。無詠唱だけでも厄介なのだが、無属性魔法とは何でもありですな…。」

ウィルはここ数日の戦闘訓練の中で、オグニイーナとの戦いで使用した銀震刃ビブリランドキリンジ重力渦ショーンズロッジに加え、授かった無属性魔法の知識の中からいくつか戦闘に使えそうなものを試していた。


反射ラフレクション

マッカランの大剣を弾き返した魔法で、物理攻撃を反射する事が出来る。上級魔法。

銀撃ラアクション

マッカランの脇腹を殴った時に使っていた魔法で、拳や蹴りに纏わせる事で通常の数十倍の威力で攻撃でき、尚且つ反作用でかかる力を無効化する。上級魔法。

磁力操作マグナタイシィ

磁力で地表の砂鉄を操作し様々な形に成型する事が出来る。超級魔法。

瞬間移動バーギャング

半径50メートル以内であればワームホールを通じて一瞬で移動する事が出来る。神級魔法。


2人が話をしていると、ウィルが世話になっているカルデの別邸のある方から馬に乗った神殿騎士が駆け寄って来た。

神殿騎士は近くまで来ると馬から降りて2人に敬礼した。

「従者長が、夕食の準備が整ったので身体を流してから大広間へ来るようにとの事です。」

初日の訓練でマッカランに朝までしごかれたおかげで夕食をすっぽかしたウィル達は、従者長にこっぴどく叱られ、以降夕食前になるとわざわざ使いの者をよこす様になっていた。

「は、はい。わかりました。マッカランさん。従者長、起こると怖いから早く行きましょうか。」

マッカランはもっと訓練がしたいのか不満げな表情を浮かべている。

「今日はウィル殿との訓練最終日ではないか。男の友情を深めるのはこれからだと言うのに、従者長の奴め、空気が読めんのか…。」

ウィルはそんなマッカランの大きな背中をポンポンと叩いた。

「マッカランさん、何言ってるんですか?俺たちは最初に拳を交わした時から既に心の友じゃないですか?またボルケニア帝国から戻ってきたら訓練お願いします。一週間ありがとうございました。」

沈みゆく夕陽を背にウィルがキラキラした眼差しをしながら握手を求めると、マッカランは感極まり号泣しながらウィルを抱き締めた。

「ゔおぉぉぉっ!ウィル殿ぉー!そうでしたな!我輩とウィル殿は既に心の友でしたな!」

そんな2人のやりとりに横にいた神殿騎士が引いていると、マッカランの鍛え上げられたぶ厚い胸板にウィルの顔面が押し潰され、さらに背骨から変な音が鳴り始めた。

『ミシッミシッミシッ…。』

「マッカ…ランさん…。く、苦しい。骨が、背骨が折れるぅ…。ガクッ。」

神殿騎士がウィルが動かなくなったのに気付き、止めに入るも時既に遅く、ウィルは口から泡を吹き出し白目をむいて失神していた。

「ウィル殿ぉぉぉー!!!」

その後、マッカランの回復魔法でなんとか意識を取り戻したウィルは別邸へと戻るのであった。


ハルク・ハイランド・マッカラン

男性 40歳

カルデ神殿騎士団団長であると共に由緒あるマッカラン公爵家当主でもある。

筋骨隆々の大男で、トレードマークは金髪のパイナップルの葉っぱのような髪型。

見た目はどこぞの戦闘民族のような風貌だが、とても優しい感激屋さん。

ウィルとは年の差を感じさせない、無二の心の友となる。


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